Blue Kenshi   作:外道カヤノ

20 / 32

 本日は二話投稿しております。
 もし読んでいない方は前話へ。


19.訪れた報復2

 

 万屋Kenshiのオフィスは、無惨な姿へと変わり果てていた。

 事務所区画は全て瓦礫と化し、中に居たであろう社員は、皆PMCによって捕縛、後頭部に銃を突きつけられた状態で寝かされていた。

 それは、地下にいた社員たちも同じで──アレサは、義手義足を外された状態で拘束されていた。

 

「動けば撃つ。まあ、お前は動けんだろうがな」

「…………」

 

 この状態になってから、かれこれ一時間以上は経っていた。撃たれても死にはしないとはいえ、常に銃を突きつけられた状態は、精神的に強く疲弊する。アレサはともかく、このような状況に怯える者は少なくなかった。

 

 動くことも、喋ることも許されない。ヒリついた時間だけが過ぎている中、ついに状況に変化が起こる。複数の足音。それにつられて首を動かそうとし、銃口で後頭部を突かれて元に戻る。だが、それを何者かが止めた。

 

「休め。連中の拘束、良くやった」

「はっ」

 

 万屋Kenshiたちに向けられた銃口が上げられ、兵士たちが揃って姿勢を楽にする。その瞬間を狙って反抗を起こせばできるだろうが、来た者たちを見れば、その気にはなれなかっただろう。

 

 ようやく頭を動かすことができたアレサは、それらを見て驚愕する。何せ、敵対者と共に、よく知る人物が居たからだ。

 

「──どういう、ことだ。アビドスに、先生も!」

 

 カイザーPMC。その理事長たる機械種族が、大勢の兵士を連れてやってきた。

 カイザーPMC理事長。四つ目の機械種族で、機械種族割には恰幅な体格をしている。黒のスーツとオレンジのネクタイを着けた姿は、アレサでもよく知っている。何せ、何度も情報収集の際に写真を見たからだ。

 

 そこまでは良かった。

 だが、その中に、アヤネを除いたアビドスの四人と、先生が混じっていたのだから。

 

 皆、こちらと同じように銃を突きつけられているが、違うのは歩けていることと、それぞれが得物を持ったままということだろう。明らかに処遇が違う。

 

「クククッ……何を意外そうに。貴様は私よりアビドスの者共と話していたのだろう? だったら、何故こうなったか分かっているんじゃないか」

「いや、分からない。分からないに決まっているだろう……! 本当に、どういうことなんだ。なあ、おい! ホシノッ!」

 

 焦り、口が開いたまま叫ぶ。シロコを見れば、何故と疑問を浮かべながらも冷や汗を垂らしていた。ノノミも同じようだが、悲しげにアレサを見つめている。セリカは苦虫を噛んだように周囲を睨んでいるものの、アレサに心配そうに目を配らせている。

 

 ──ホシノは、まるで敵を見つめるかのように、アレサを睨みつけていた。

 

「ホシ、ノ……?」

 

 カチャン、と銃口が向けられる。アレサの顔に、ホシノの散弾銃(Eye of Horus)が。

 

「ククク、クハハハッ! 鉄杖アレサ、貴様は好き放題し過ぎたな。だがもう終わりだ。貴様は、アビドスに売られたのだよ」

「売られた……? ま、待て! 私はアビドス生ではない。売られたとはなんだ? 一体どういうことだッ! 先生! お前も私のことはよく知っているだろう!? 何がどうなっているんだッ!」

 

 状況が読めず、ヒステリックに叫ぶアレサ。呼ばれた先生は、そんな彼女に、申し訳なく視線を逸らすことしかできなかった。瞬間、アレサの顔が強く歪み、射殺さんばかりにPMC理事を睨みつけた。

 

「お前、アビドスに何をしたァッ!!」

「やかましく吠えるなぁ。五月蝿すぎるが、今の貴様はお笑い様だ。這いつくばっている可哀想な貴様に、詳しく教えてやろう」

 

 PMC理事はわざとらしく両腕を広げ、ホシノとアレサの前を遮るように歩く。勝利が確定したかのように振る舞う彼は、経緯を話し始めた。

 

「まずは目先の疑問から答えてやろう。どうやって今まで身分がないまま生きていたかは知らんが、鉄杖アレサ、確かに貴様はどの学園の学生でもない。アビドスに正式入学した者は、ここにいる者と、校舎で拘束した一人とで五名。連邦生徒会の公開データベースにも、貴様の名前はない」

 

 そこまでは、アレサもよく知っている。自身のスマホは拾ったもので、アカウントやメールアドレスは作れているものの、身分証明となるものは一切ない。学園に所属することもなく、シャーレに何かしら身を置いたこともない。

 

「だがな、貴様は()()()()()()()()()()()()()

「……は?」

「疑問に思うのは当然だろう。しかし、貴様はアビドスと共に行動することが多く、アビドスのために個人的に行動していることも多い。身分の存在しない、ヘイローの持ち主かつ一企業の代表取締役社長が、まるで同盟関係の如く仲良しである──すなわち、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()として、見ることができるのだよ」

 

 詭弁だ! そう叫ぼうとした瞬間、アレサの顔面に熱いものが降りかかった。顆粒状の鉄が突き刺さり、悲鳴を上げることも出来ずに悶える。

 ホシノは、黙らせるかのように、彼女に一発撃ち込んだ。

 

「ほら見ろ。()()()()()()()()()()()()()()()も、お前をアビドス生だと認めているぞ」

「〜〜ッ! ……っ、ぶふっ、げほっ!」

 

 口に入った顆粒を吐き出し、今度はホシノを睨む。

 

「そして、貴様はやり過ぎたな。()()()()()()()()、我々の基地を荒らし、幾多の物資を奪い去った。金品も丸ごと盗んだようだなぁ?

 貴様と違って、残りの五人は、真面目に借金を返していたというのに」

「!!」

 

 PMC理事の言葉に、アレサは動揺を隠せなかった。そして、彼女を見るアビドスの皆の目つきも変化する。疑念から、軽蔑へ。

 

「何でも、ブラックマーケットで暴れていたのも貴様らしいな。あそこには我々の系列の銀行もあった。それを悉く破壊してくれるとは……クククッ」

 

 全て見覚えがある。全て、そこに自身が関わったことがある。動揺は焦燥へ、感じたことのない汗が、顔から噴き出てくる。

 

「お陰で、【アビドス高等学校】は信頼が落ち、今では利子が3億。期限は一週間以内だ! せっかく慈悲で月1.2%の利子に落ち着いていたのを、貴様のせいで週30%の返済に変わってしまった。その落とし前を、アビドスはまずは貴様で払うことき決めたのだよ」

 

 ようやく、アレサは事態を理解した。自身が暴れ過ぎた結果、カイザーに全て悟られてしまったのだ。

 やっと信頼を、一歩だけでも寄り添えたかもしれないホシノが、ここまで怒り狂っているのも、ようやく理解してしまった。

 

「此度のアビドスの信頼低下の原因は貴様だ。見ろ、貴様を見るアビドス共の目を」

 

 シロコも、ノノミも、セリカも、ここではない場所で見ているであろうアヤネも──皆、アレサに怒りを向けている。

 

 自分のせいで。

 

 尤もで、然るべきで、何も反論の余地もない。正しく、受け止めるべき罰が降ったアレサは、俯いた。

 

「だが、我々は慈悲をくれてやろうと思っていてな。鉄杖アレサ、貴様は我々が接収し、これから作るであろう『カイザー軍事訓練学校』の、初の生徒にしてやろう。その手ぐせの悪さと、狐坂ワカモと同等に戦える戦力、ただ処刑するには惜しい力の持ち主だからな。

 喜ぶといい、アビドスの皆々。こやつ一人のお陰だ。借金の返済期限を一ヶ月までに伸ばしてやろうじゃないか!」

 

 下衆な笑いが轟くが、アレサの耳には聴こえない。見捨てられ、絶望に染まった彼女は、穴に入るかのように顔を砂地に埋めた。

 批難されるべき罪に身を染めた彼女は、こうしてどん底に墜ちた。

 

「鉄杖アレサを連れて行け。他は放って構わん。所詮は此奴が居なければ烏合の衆だからだ。クハハハッ! ハハハハハッ!!」

 

 兵士によってアレサは持ち上げられ、そのままPMC理事と共に連れて行かれる。その様子をアビドスの四人はただ見つめ、先生は訝しげに状況を見守り、万屋Kenshiの皆は誰も動くことが出来なかった。

 

 四肢が無いからか、さもビニール袋のように雑に首根っこを掴まれて持って行かれるアレサ。

 ホシノは最後にその姿を一瞥し、何も言うことなくアビドス校舎に向けて歩き出す。

 

 

 

 

 しかし、誰も気付いていなかった。

 二人が悪ガキのような笑みを浮かべていることに。

 

 

 

 

 

 ▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 

 

 夜のアビドス校舎。その屋上にやってきた二人は、互いに柵に背中を預けた。冷たい風が頬を撫で、髪を揺らす。星明かりの下、先にアレサが口を開いた。

 

『ホシノ、お前は私を生贄にしろ』

『生贄、って、は?』

 

 言っている意味がわからない。そんな顔をするホシノに、アレサはあっけらかんと告白した。

 

『アビドス本校があった場所に、カイザーPMC基地が開発されていた。そこで私は、仲間と共に金品とオーパーツと企業機密情報と銃火器をいくつかとカイザーPMC理事の口座情報とクレジットカードの番号とパスワード情報を盗んだ』

『……盗み過ぎじゃない?』

『その罪をカイザーPMCの前で告発しろ。奴らは犯人探しに躍起になっているからな。その犯人が見つかったとなれば、それが私であれば、喜んで捕まえに行くだろうな』

 

 シロコの銀行強盗仕草を超える大犯罪っぷりに、流石のホシノも呆れ顔になった。なお、相手が相手なので、別にホシノは責めはしなかったが。

 とはいえ、ホシノは少し考えてから、真面目に言う。

 

『……そうなると、君はカイザーPMCに捕まることになるけど、どうしておじさんたちが言い出さなきゃいけないわけ? 自白すれば捕まえてくれるじゃん』

 

 アビドスとアレサ──万屋Kenshiは、仕事柄協力的なだけで、関係性は意外と薄い。そこにアビドスが協力する義理はないが、そこにこそアレサの考えがあった。

 

()()()()()()()()()()()。既に私の情報は、『闇銀行大破壊事件』と、昨日の騒動である程度目星が付けられているだろう。そこに、アビドスがとても有益な情報を提供することで、お前たちは私と敵対視、あるいは裏切った、と印象付けられる』

『なるほどぉ……あれ、じゃあなんで捕まるの?』

『ふふっ、よくぞ聞いてくれた』

 

 PMCに捕まるとどうなるか。あまりホシノには想像がつかない……したくないのだが、ハッキリ言ってロクな目に遭うことは無いだろう。

 だが、コイツの場合、逆に──

 

 

 

 

 

『当然、内部から全部ぶっ壊すためだ』

 

 

 

 

 

 カイザーPMCの方がロクな目に遭わないだろう。

 

ブルアカステータス風のプロフィール

  • 見たい
  • いらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。