Blue Kenshi   作:外道カヤノ

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22.手を伸ばしてでも掴んだもの

 

 カイザーPMC、施設表層壊滅前──

 

「「は?」」

 

 作戦開始直前、空崎ヒナは狐坂ワカモとバッティングしていた。

 

「何の用でここに居るの、『七囚人』ワカモ」

 

 ──ヒナは、サッドニールに呼び出され、事情を聞いて即アビドスの作戦に参加を決めた。万屋Kenshiの社長、アレサがカイザーPMCに誘拐された。*1アビドスに作ってしまった大きな借りを返済する意味でも、ヒナは『ゲヘナ風紀委員会』の全メンバーを叩き起こし、サッドニール率いる『算術工学部』も加えてアビドス砂漠を進軍していた。

 

 働き詰めの疲れなど消し飛ばした。謹慎中だったアコも引っ張り出し、今はサッドニールと共に管制室の席にはりつk……着かせている。イオリとチナツも、寝起きではあるものの士気は十分。

 

 そんな時に、彼女とかち合ってしまったのだ。

 

「貴方も、如何なる用事があってここに居るのでしょうか?」

 

 ──ワカモが来たのは、風の噂を耳にしたからだった。「アレサがカイザーPMCに誘拐された」という、らしくもない言伝。しかし、友達がどこの馬の骨かもしれない傭兵企業に攫われたのが事実か、確認しなければならない。

 もし本当なら絶対カイザーPMCを滅ぼすと思いつつも、彼女は感覚だけで夜のアビドス砂漠を渡り、カイザーPMC基地の目の前まで駆け抜けた。

 

 で、さあ大変。

 

「私は、アビドスと、あの『国殺し』に借りを返すつもりで来た。カイザーPMCは我々が手を下す」

「『国殺し』……? 私は、かの方を助けに行かねばと思いまして」

「「…………」」

 

 一触即発。それぞれ武器を構え、対峙せんと──

 

『横から失礼するよ、狐坂ワカモ。おそらく君と僕たちの目的は同じだ』

「っ、何者ですか」

『すまない。僕はサッドニールという。この子たちの講師をやっていてね……いや今はそれはいいか。君は、アレサを助けに来たんじゃないかい?』

 

 ──したところで、鶴の一声(サッドニール)が入り込んだ。

 

「アレサ……まさか、貴方方も?」

 

 静かに頷くヒナに、ワカモは初めて耳にした『国殺し』の異名に驚く。確かに、彼女の戦闘力は自身に匹敵するほど。そして戦いを好む性分。シナジーが合うところも多い。しかし、如何なる事をして、()()という名を与えられたのか。

 

 また、逢ってみたい。

 

「ふふ、ウフフフ……っ! そう、そうですか」

「……良ければ、一緒に来ない?」

『えっ委員長!?』

「アコは少し静かにしてて」

『はい……』

 

 二人は顔を見合わせ、互いに塾考した後──同じ方角を向き合った。

 

 それ以上、言葉は要らない。

 奇妙なタッグが組まれたこの瞬間、カイザーPMCの地上部は全て焼き払われることが確定した。

 

『あ、あの……良いんでしょうか。仮にも指名手配と手を組むなど……』

『問題ない。我々はアビドスに作ってしまった借りを返しているだけなのでね。今の状況だって、公的には「学外にいる僕の友人の救助活動」となっている。不要な責任は『大人』が背負うものさ。

 ……基地全体にソノブイ散布完了。後は僕の生徒たちと、君たち風紀委員会の実力の見せ所だ』

 

 

 

 

 

 

 ▲ ▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 

 

 ──時は、便利屋が万屋Kenshiオフィスで対談をしていた頃に遡る。

 

『時に……どうしようもない悪が居たとしよう』

『? な、何の話かしら』

『例え話だ。そのまま聞き流して貰っても構わん』

 

 チェスを打ちながら、アレサはアルに問いかける。アルは盤面を把握するためにそれどころではないが、言われた通りにした。でなければ、駒を打つに打てない。

 

『気に入らないと思った人間はすぐに殺す。欲しいものは盗み、女子供で性欲を満たし、金品をかき集め私服を肥やしていた。そんな誰がどう見ても、悪と言える存在が居たとしよう』

『……嫌なヤツだね』

『そうだろう? だが、ソイツが国を統べる王だったとしたら?』

 

 アルの手が止まる。口を挟んだカヨコもアレサに目を向け、ムツキもまたスマホから顔を上げた。ハルカは、盤面を静かに見守りつつも、耳を傾けていた。

 

『邪智暴虐の王は、そう簡単に罰せない。彼が王ならば、彼が法だ。彼が人を殺そうが、女子供を嬲ろうが、民衆から多額の税を引っ張り上げようが、誰もその罪を咎められない。彼は王だから罰せられない』

『っ! そんなの!』

『納得できないだろう?』

 

 アルは「悪」を目指す自称アウトローだ。しかし、話の中の「悪」は、アルが目指す悪ではない。ハードボイルド、つまりは「カッコいい悪」なのだ。話に出た「悪」は、「醜悪」でしかない。

 

『だがそこに、王を殺す「悪」が居たとすれば?』

 

 四人が見つめる。その「悪」とは、

 

『誰も手出しできない中、一人の小悪党が立ち上がった。玉座にふんぞり返り、自分が死ぬと微塵も考えていない王は、ポッと出の小悪党にアッサリと殺されるのさ』

『!』

 

 そう。そういうものだ。アルは目を輝かせた。自身が憧れた「悪」とは、まさにそのような「カッコよさ」。黄金の精神を持ちうる、矮小でも偉大なる「悪」にこそ惹かれるのだ。

 

『民衆はただ王の死という吉報だけを知り、小悪党は静かに国から去ってゆく。殺した者は英雄と称えられるが、王という法を殺したことで、小悪党は同時に大罪人となった……』

 

 目には目を、歯には歯を。

 断罪できぬ者には、罪を犯す覚悟がある者を。

 

『(か、カッコいい……!)』

『お前たちがハードボイルドなアウトローを目指すというならば、このくらいはして欲しいものだな』

『へっ!? ふ、ふふっ! 無論よ……けど、面白い例えだったわね』

『実体験だったからな』

『へぇ……え?』

 

 コトン、と駒が置かれる。アルの駒の配置と、アレサが先程置いた駒の位置。それらは勝負を決定づけるもので……

 

『おっと。今のは無かったことにしてもいいか?』

『あ、アァーーーッ!? い、いいえ! 駄目よ!』

 

 結局、最後の発言を掘り返すことはできず、アルはそのまま自身の敗北を受け入れた。

 

 ──その数日後に、アレサが元依頼主に捕まったという知らせを聞くとは、微塵も思っていなかった。

 

「ムツキの爆弾が起爆したわね──フフッ(やっちゃった! 本当に爆破させちゃったっ!?)」

 

 既に基地内に侵入した『便利屋68』は、襲いかかる兵士を蹴散らし、道を切り開く。たった四人ではなく、『万屋Kenshi』のメンバーがいくつか混ざり、少数精鋭+多数の歩兵という組み合わせで進軍していた。

 

 風紀委員会に見つかり、アビドスに滞在が叶わなくなった彼女たちは、いそいそと引越しの準備をしていた。夜中にトラックを動かすつもりでいると、【シャーレ】からの正式な依頼が飛び込んできたのだ。

 友達を助けるために、力を貸して欲しい。シンプルな文面だったが、アルは即座に受諾した。

 

『──! たった今、アコ行政官から情報を入手。共有します』

「ありがとう、スソノ。確かに、()()()()()()()()()()()()

「それじゃ、もう一発ぅ! いっくよー☆」

「死んでください死んでください死んでください死んでくださいぃぃぃッ!!」

 

 カヨコが盾となる兵士たちを強制的に翻させ、ムツキがそこを爆撃。ハルカは邪魔な死体*2を散弾で弾き飛ばし、遠距離の相手はアルが狙う。そして、空いた箇所は万屋Kenshiのメンバーがカバーし、暫定指揮官としてスソノがオペレーターを務める。

 完璧なポジショニング。理想的な戦術。アルのテンションはうなぎ昇りだった。そして、テンションの高まりは彼女だけに留まらない。皆が皆、イキイキしていた。

 

「ところで、良かったの? あの理事長、アビドスの獲物だったんでしょ?」

『問題ないです。ああいう手合いは、無様に、哀れに、誰にも知覚されることなく勝手に死ぬのが似合っています。言葉も死体も要りませんよ』

(こっわッ!? ……あれ?)

「……あの理事長は少し気に入らなかったし、別にいいか」

「ふーん。まっ、悪にはお似合いの末路だね」

「アル様を馬鹿にした人です。当然の報いだと、思いますッ!」

 

 スソノの言葉にアルが何かに思い当たったが、直前に自身が狙われている感覚がし、即座に視線の方向へ神秘を込めた狙撃弾を放つ。着弾時に爆発が伴い、迷彩を被っていた兵士が転がり落ちた。

 

 カイザーPMC理事長は、先行部隊のフリデとカトが『ゴリアテ』に細工をしていた。カイザーPMCは堂々と社長専用機などを用意してくれていたため、一台一台にハッキングプログラムを流す必要がなく、スムーズに進んでいった。なお、オマケに機体の中にムツキお手製爆弾を限界まで詰め込んだので、威力はガチである。

 

「まあ、依頼をバックれた件については、これで不問にしてあげるわ」

『……弊社社長にもそう伝えておきます』

「けれど、チェスはリベンジするわよ! アレからちょっと練習したんだから!」

(練習で勝てたの、ハルカくらいしか居なかったのに……)

(私に全然勝てなかったのに……?)

(誇ってください……アル様はお強いですから!)

『(あっ、ふーん……)』

「……なんで皆して視線が温かいのよ!?」

 

 戦況は既に佳境に入っている。アビドス組も進軍しており、後はアレサを迎えるだけ。そして──

 

「先生、早く来ることね。でないと、また呆気なく終わってしまうわよ」

 

 

 

 

 

 

 △▽△▽△▽△▽△▽△

 

 

 

 

 

 各々がカイザーPMC基地で戦っている頃、先生はシャーレのオフィス地下にいた。横にはエリが居て、それぞれタブレット端末とスマホを手に、リアルタイムで状況を把握しつつも、()()()()()()()を待っていた。

 台座の中央で、宙に浮く白い石板。五つの星と術式らしきものが刻まれた、見るからにオーパーツらしきソレは、『クラフトチェンバー』と呼ばれる、『連邦生徒会長』が遺したシャーレ専用設備だ。

 

「おい、まだか!?」

"あと少し、もう少しなんだ。多分冷却中だと思うから"

「くそっ、じれってぇ!」

 

 ──アレサ不在の今、エリは最低限の情報伝達と指揮だけを行い、万屋Kenshiに残っていたオーパーツと設計図をかき集めてここに来ていた。

 

 先生は、あの夜の日に頼まれていたことを実践していた。エリが持って来るであろうオーパーツと設計図。それらを材料とし、とあるものを造って欲しいと。

 

"本当はあの子と一緒に見届けたかったけど、仕方がない──だけど"

 

 カチン、と。クラフトチェンバーの動作が停止し、放熱される。

 台座の排出口が開き、造られた品が露わになる。その輝き、カタチ、異質さ……二人は目の前のものに、苛立ちも焦りも忘れた。

 

"君の欲しかったものは、私が責任もって造り出した(引き当てた)よ"

 

 それは、全長二メートルはあろう蒼穹の剣。

 

 刃と柄が、それぞれ一メートルずつ分けられた、大剣じみたもの。「ノ」の字に反った刃は分厚く、それを吊り上げるように柄が伸びている。そのデザインは薙刀にも見えなくもないが、一番近いものとして包丁が挙げられるだろう。

 

 かつて、彼女はこれを「自殺刀」と呼んだ。天の頸を刈り取る刃(フォーリング・サン)という銘は、担い手も対象になると。

 

 だが、世界はそれを否定した。

 この世界では「剣」は意味がない。人を斬れぬ剣に、剣の存在意義は見いだせない。だが、それでも彼女は「剣」を使う。

 

 ならばこれは、太陽を墜とすためのものではない。

 

 世界を覆う曇天を斬り、覇道を切り拓く「剣」。

 

 人殺しの道具などではなく、象徴だ。

 

"この銘を決めるのは彼女だ。エリ、急いで届けにいくよ"

「オーケー。車の運転は任せなァ!」

 

 神秘的な水晶と蒼き鋼鉄を熔かし重ね、円盤の聖刻文字を溶鉄に刻み、生命を宿す油を使い鍛え、古書に記された術式で武器そのものに神秘を持たせた。

 キヴォトス唯一にして、かつての世界でも絶対に製造できない逸品。『名刀』を超えたその等級は──

 

 

 

 ──『透き通ったメイトウ』

 

 

 

 布に剣を包み、抱えて車に向かう先生は、少女のことを想いながら走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"って重ォッ!? エリちょっと手伝って!"

「軟弱だなオメー……って重ッ!? これアイツが振り回すってマジ?」

 

 なお、剣の重量は80kgである。*3

*1
半分嘘

*2
死んでない

*3
メイトウ等級フォーリング・サンが40kg





 MOD「血に塗られたメイトウ」や、「Soul World」、「狐武器追加」などでメイトウを超える上位等級がポンポン出ているので、等級の新造に関してはお許しください。
 もし駄目だったら浦和ハナコが責任もって全裸になります。

ブルアカステータス風のプロフィール

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