ハーメルンでの投稿は初投稿となります。温かい目で見ていただければ幸いです。
「あれが地球だよ、パパ…」
(ん?)
どこだここ。
自分を呼ぶ声が聞こえた気がして目を開く、そこにはまったく見覚えのない部屋が映し出された。部屋の内装は近未来的というかやけにメカメカしく、目の前のモニターには青い星、おそらく地球が映し出されている。
(なんだこの状況)
おかしいのは部屋だけでなく自分の体にも違和感を感じる。なんというか、やけに目線が高く、体の大きさが何倍にもなったようなそんな錯覚。
いや、錯覚ではない。首を下に向け自分の体を確認すると明らかに自分のものではない、いや、もはや人間とは思えない体と手足が目に入った。
いったいどういうことだと、慌てふためく自分に再び声が掛けられる。
「聞いてるのかい、パパ?」
(ぱぱぁ?)
声のした方に目をやると体のいたるところをサイボーグ化した二足歩行のトカゲのような男がこちらを見上げていた。いや、俺はこいつを知っている。その姿を見て反射的に名前を口に出してしまった。
「…フリーザ?」
「はぁ、やっぱり聞いてなかったんだね」
ため息をつきながらこちらを睨みつけてくるフリーザ。そしてふんと鼻を鳴らすと、不愉快そうに顎で目の前のモニターを見るように促してきた。
「あれが地球だよ、パパ」
あれもしかして俺、
コルド大王になってる!?
なんで?どうして?、とパニックに陥りそうになったところでフリーザが怪訝な顔をしながら又もこちらを睨んでいることに気が付いた。
まずい、何か言わないと…
「ふ、ふん、小さな星だ。一発で消してしまえばよかろう」
た、確かこんな会話をしてたはず!若干声が震えていたような気がするがどうだ!?
内心冷や汗を滝のように流しながらちらり、とフリーザの様子を確認する。
「ふふ、それじゃあボクの気が済まないよ。あいつに思い知らせてやりたいんだ。パワーアップしたボクをね」
どうやら俺の答えはお気に召したらしい。
フリーザは不敵な笑みを浮かべながらモニターに映る地球に視線を戻した。
(な、なんで…、なんでこんなことに…)
その傍らでコルド、もとい俺は頭をフル回転させ、記憶を辿っていた。
(俺はさっきまで自分の部屋で漫画を読んでいた筈。それで確かうたた寝をして…、くそっ、だめだ思い出せない)
何の変哲もないただドラゴンボールが好きなだけの何処にでもいる一般人、それが俺だ。
そんな俺がなぜコルド大王となってしまったのか、その理由も経緯もさっぱり不明だ。ただ、この世界のことは良く知っている。なにせ自分の好きな漫画の世界なのだ。
「くっくっく、レーダーで分かっているぞ。貴様も地球を目指して飛んでいるのを…。すぐに分からせてやる、本当の宇宙一が誰なのかを…!」
目の前で拳を握り、復讐の炎をメラメラと燃やしているフリーザをそっちのけで俺は思考を巡らせる。俺の中にある原作知識、もし、その知識の通りに今後の展開が進むとしたら…。
(じ、冗談じゃない。ここのままだと俺はトランクスに殺される!)
そう、フリーザ親子は地球に来襲してすぐに未来から来たトランクスによってあっけなく殺されてしまうのだ。何としてでもそれだけは阻止せねばならない。いや、フリーザはどうなってもいいが俺だけは何としてでも生き残ってみせる!
といってもおそらく、というよりかは絶対にトランクスへの命乞いは成功しない。彼の経歴を考えるとそんな甘さを持ち合わせているような人間ではないのがよく分かる。
ならば孫悟空はどうか?彼ならもう悪さはしないと頭を下げて謝れば見逃してもらえるのではないだろうか。なにせナメック星ではフリーザの命乞いすら受け入れたのだ。彼の仲間や地球の人間に手を出さなければきっと成功する筈だ。
「フ、フリーザよ、こういうのはどうだ? 我々はここで待ち、超サイヤ人とやらを先に地球に帰らせるのだ。そして奴の仲間の目の前で超サイヤ人を殺す。我々に対抗できる唯一の存在が目の前で捻り潰されるのを見せつけてやるのも面白いとおもわんか?」
「それじゃあダメだよパパ。確かに地球にいる孫悟空の仲間たちの絶望した顔を眺めるのは面白そうだけど、ボクが一番憎んでるのは地球の連中じゃなくて孫悟空なんだ。孫悟空が帰ってくる前に地球の連中を皆殺しにする。そして悔しがる奴をボクのこの手で殺す。これしか考えられないよ」
く、やはり上手くいかないか。
孫悟空への命乞いが成功すればトランクスも悟空の意を汲み、渋々とはいえ命だけは見逃してくれる。そんな一縷の望みに賭けてフリーザに到着を遅らせる提案をしてみたが一蹴されてしまった。
(ま、まずい。何か、何か手はないか!?)
いっそのこと暴れてこの宇宙船を破壊してみるか?この肉体なら宇宙空間でも生存は可能の筈。いや、もしそんなことをすればフリーザが黙っていないだろう。コルド大王とフリーザ、どちらが強いかというのは漫画やアニメ、ゲームと作品によって諸説ある。もし、この世界ではフリーザの方が強いとなった場合ここで暴れても殺される相手がトランクスからフリーザに変わるだけだ。
それに仮にコルドの方が強かったとしてもその肉体を動かすのは俺なのだ。いくら肉体の戦闘力が高くても殺し合いだなんてしたことがない俺がフリーザに勝つのはまず無理だろう。
そもそも今の俺の戦闘力の数値も分からない。なんたって中身が違うのだ。もしかしたらコルド本来の戦闘力すらも失われているかもしれない。
(くそ、せめてもっと早く目覚めていれば…)
せめてもう少し早ければ何か手は打てたかもしれないが、なんでよりによってこのタイミングなのか。こんなところで記憶が戻り今後の展開が分かったところでどうすることもできやしない。
気分はなんの抵抗もできないままただ刑の執行を待つ死刑囚である。
そんな時、この宇宙船の乗組員であろうカエルのような姿をした宇宙人がこちらに話しかけてきた。
「コルド大王様、フリーザ様、我々の船はまもなく地球に到着します。それと例の超サイヤ人ですが、奴が地球に到着するのは約3時間後になるかと思われます」
「3時間、ククク、それだけあれば地球人を皆殺しにするには十分かな。」
(皆殺しにされるのは俺たちなんだよ!)
そんな俺の心の叫びも届かず、フリーザは既に勝ったかのように笑っている。
くそっ、呑気に笑いやがって、心の中で毒づきながら視線を前に向けるとモニターに映し出された地球が先程よりも随分と近づいて見えた。どうやらもう時間は余り残されてないらしい。
焦りからか椅子を握る自分の手に自然と力がこもる。すると・・・
バキッ!
(やっべ、壊れた)
座っていた玉座のような椅子の手すりが盛大に音を立て粉々に壊れてしまった。途端に静まり返る空気、今この場にいる全員の視線が俺に向けられている。
しまったどうにか誤魔化さねば。
「…地球人などはどうでもいいが、超サイヤ人だけは必ず息の根を止めねばならん。宇宙一の力を持つ者は我が一族でなければならんからな」
「どうやらパパもやる気十分みたいだね。まぁボクとパパの二人でかかれば絶対に勝てるよ。多分パワーアップしたボクだけでもいけるんじゃないかな」
握り潰された椅子は闘志の現れだと勘違いしたであろうフリーザ。何かいろいろ言っているが無視だ無視。やる気なんて一切ないし死んだって協力するもんか。
(というか協力したら死ぬんだよなぁ)
だがこれで確信を持つことができた。
中身こそ別人だがこの肉体、つまりコルド大王の持つ戦闘力はそのままと考えてもよさそうだ。絶望的な状況は依然として変わらないがまぁ強い力はあるに越したことない。
「これより地球の大気圏に突入! 大気圏内を抜け次第、着陸ポイントに向けて飛行を開始します!」
「いよいよ、か」
誰にも聞こえないようにぼそりと呟く。
結局碌に作戦も思い浮かばないまま地球に着いてしまった。しかしまだすべてが終わったわけではない。
原作知識、そして宇宙トップクラスの戦闘力、この二つを並べれば手札はそう悪くないように見える。なら後はどんな手段を使ってでもやることは一つ。
(絶対に生き残ってみせる!)
どんな手段を使ったとしてもだ!
宇宙の帝王って書くとかっこいいけど宇宙の大王ってなんかダサいですよね。