VS13号、これにて決着です。
合体13号の放った全力のS.Sデッドリィボンバーの威力は凄まじいものであった。
氷の大地は姿を変え、いまやここら一帯を覆っていた雪や氷の殆どが消し飛ぶ有様だ。
「ぶはぁっ…、はぁ…、はぁ…、い、生きてる…」
俺は水面から顔を出し、辛うじて辿り着いた岸辺にもたれかかる。
あのとんでもない威力の大爆発、生還できたのは奇跡と言ってもいいだろう。
(危なかった…、俺とエネルギーの球、その間にあった奴の強靭な体が盾代わりになったんだ、まともに受けてたら今頃お陀仏だったな…)
本当にぎりぎりの戦いだった。
体力も気力もすっからかんだ、もはや岸辺にしがみ付くのが精いっぱいで自力で水に浸かった半身を陸に引き上げることもままならない。
(いつの間にか変身も解けてる、ダメージを受けすぎたからなのか? いや、それよりも悟飯は、もしあの爆発に巻き込まれてたら…、ん…?)
ふと、周囲に影が差す。
なんとか顔を上げてみるとそこには…
「ソン…、ゴ、クウ……!」
「…馬鹿な」
奴が、13号が俺を見下ろしていた。
あの大爆発の直撃を受けても尚、奴は立ち上がり俺の前に立ちふさがったのだ。
(そんな、あ、あれだけやっても倒せないなんて…)
しかし奴も無傷とはいえない、それどころか全身がズタボロだ。
体の至る所から燃料のような液体が漏れ出ており、青い肌を黒く染めている。顔の半分の皮膚も吹っ飛んでおり、機械でできたその中身が剥き出しになっている。
だが、それでも奴は己の足で立ち、任務を遂行しようとしているのだ。
「ジャマモ、ノ…マッサツ…!」
体の中で機械部品がショートしているのだろう、火花を散らしながらも13号は俺を殺すべく拳を振り上げる。
(だ、駄目だ、もう動く力が…、やられる!)
もはや俺の体に、防御も、回避も、反撃する余力は一切残されていない。
半身を水に沈めつつ、拳を振り上げた13号を見上げることしかできない。
そして13号の拳が振り下ろされるその時だった。
「魔貫光殺砲!!」
奴の胸を一筋の光線が貫いた。
「ガッ、アア…ア………」
貫いた光線は13号の体に風穴を開けると、やがて遠くの雪山へと螺旋を描きながら消えていった。
胸を貫かれた13号、その巨体が水の中へと崩れ落ちる。そして水中で爆発したのか大きな水飛沫が上がった。
(た、助かった…?)
「コルドさん、無事ですか!?」
「ご、悟飯、生きておったか…」
絶体絶命のピンチを救ってくれたのは未来の悟飯だった。
悟飯はすぐに俺に駆け寄り、水の中から引き揚げてくれた。
「すみません、俺は、コルドさんとあいつの戦いをただ見ていることしかできなかった…、本当に、本当にごめんなさい」
「何を謝っておる、ワシ一人では間違いなく殺されていた。今ワシが生きているのはお主が助けてくれたおかげだ」
本当に間一髪だった、悟飯に感謝しなければ。
かっこつけて変身したというのに結局助けられてしまった、情けない話である。
「それよりも悟飯よ、今の技は…?」
「あ、はい、昔、ピッコロさんに教えてもらって、ずっと練習してたんです」
そうだったのか、これは未来のピッコロにも感謝だ。奴の驚異的な防御力を貫くにはあの技が最も適しているだろう。
「まだ俺はあの技を溜めるのに時間がかかるので、コルドさんが奴と戦っている間ずっと隙を伺っていたんです。…それでも奴の体を貫けたのはあいつもダメージを負ってたからで、万全の状態だったらとても…」
「そうだとしても素晴らしい判断だ。この戦い、間違いなく二人の勝利と言えよう」
…それにしても勝ったというのに悟飯の表情がいまいち優れない。
(俺に戦闘を任せたことを気にしてるのか?)
未来から助けに来たのに逆に助けられてしまったことを気に病んでる?
いや、そんなこといったらそもそも俺が余計な心配をせずに最初から変身して戦えばもっと楽に倒せたかもしれないわけで、あまり落ち込まれると逆に申し訳なくなる。
「それよりも悟飯こいつを食え、仙豆だ。クリリンからちょうど2粒預かっている」
「…いえ、俺はまだ余裕があります。念の為、1粒残しておきましょう」
むぅ、まぁ本人がそういうなら無理強いできんか。
申し訳ないが俺は遠慮なく一粒いただくことにする、流石にもう限界だ。
余った仙豆は後でクリリンにでも返しておこう。
「よし、とにかく13号達は倒した。もう一方は今頃どうなっているか…」
「…! よかった、皆の気を感じる。全員無事だ…! でも、どうして皆バラバラにいるんだ、17号達はいったい…?」
遠くに意識を集中すると確かに全員の気を感じることができた。
17号達は本来の歴史通り戦士達を見逃したようだ。
(もしかしたら17号達の性格も俺の知るものとは異なる可能性もあったからな、本当に良かった…)
悟空の家に大きな気がいくつか集まっている、クリリンとトランクス達だ。
とすると今頃は悟空をヤムチャの飛行機でカメハウスに運び込もうとしているところだろう。
ここに合流することができれば情報共有にちょうどいいタイミングだ。
「悟飯よ、悟空の家に向かおう。とにかく今は情報が必要だ」
「そう、ですね。お父さんの事も気になります」
13号達の登場は予想外だったが、なんとか倒すことができた。
まだ油断はできないが、とりあえずは本来の歴史通りに修正できただろう。
俺と悟飯は悟空の家へと向かう。
△
「よし、必要なものはあらかた積み終えたぞ」
「急いでカメハウスへ向かいましょう!」
まったくとんでもないことになったもんだ。
未来から来たというトランクスと悟飯には驚かされたが、それよりも驚かされたのは人造人間だ。
トランクス達の話では2人だったのに現れた人造人間はまさかの6人。正直言ってあまりの怖さに腰を抜かしそうになっちまったよ。
でも本当に恐ろしいのは奴らの強さだった。
ピッコロに天津飯、それどころか超サイヤ人のベジータにトランクスまであっという間に倒されてしまった。俺なんてただ見てることしかできなかった。
でも何故か俺たちは見逃された、あくまで奴らの目的は悟空の命らしい。
それを防ぐためにも、とにかく今は悟空を避難させないといけない。
「な、なぁ。未来の悟飯とコルドは13号達を倒せたかな?」
「…分かりません。あいつら13号達、そして16号と呼ばれた人造人間は未来では存在していませんでした。どれほどの強さなのか俺には見当もつかない…」
「そ、そうか。そうだよな。…二人とも無事だといいんだが」
話によると17号達もトランクスの知る奴らよりもパワーアップしているらしい。
最悪の状況、祈る思いで悟飯の到着を待っていると複数の気がこちらに接近してくるのを感じた。
「あれは、悟飯! それにコルドと未来の悟飯も! お前たち、無事だったのか!」
「はい、ブルマさんを家に送り届けてここに向かう途中、偶然すぐそこで二人と合流して、それで一緒に…」
「クリリンよ、状況はどうなっている、17号達は? 孫悟空は無事なのだろうな?」
「話は後だ、今はとにかく飛行機に乗ってくれ!」
それから俺たちはヤムチャさんの運転する飛行機の中で今の状況を互いに説明しあった。
状況が状況のため、話がかなり長くなってしまった。特に未来の悟飯のことをチチさんに説明するのには苦労した。
「うわあああああああ、まさかオラの悟飯ちゃんが未来でそんな酷い目にあってるだなんて…!」
「お、お母さん、恥ずかしいよ」
「もう帰らなくていい、ずっとこの世界で、オラたちと一緒に暮らすといいだ!」
「…そういう訳にはいかないよ、あっちの世界にもお母さんやお爺ちゃんもいるんだ。それに、ブルマさんや、生き残ってる人々を見捨てるわけにはいかない…!」
未来の悟飯に抱き着きながら涙を流すチチさん、まぁそうなるよな。普段の悟飯の溺愛っぷりを考えれば当然だ。
とりあえずチチさんのことは未来の悟飯に任せるとしよう。
「それにしても助かったぜ、お前たちが13号達を倒してくれてなんとか希望が見えてきた!」
「…それでも人造人間はまだ3体、まだまだ喜べる状況じゃありません」
「で、でもよぉ、変身したコルドはめちゃくちゃ強いんだろ? それこそ、その合体したっていう13号を倒せるくらいにさ。17号達もなんとかならないのか?」
今の俺たちの最高戦力は間違いなくコルドだ。ベジータたちがやられてしまった以上、こいつで無理ならもうどうしようもない。
コルドは目を瞑り考え込んだ後、口を開いた。
「…厳しい、な。一対一ならともかく17号と18号を同時に相手取り勝利を掴むのは難しいだろう」
「それなら皆で一斉にかかればなんとか…」
「話を聞く限り、お前たちは17号と18号の二人に圧倒的にやられたのだろう? 相手には16号という未知なる敵が控えている。例え全員で戦っても果たして勝てるかどうかは…」
コルドの答えに飛行機内の空気が重たくなるのを感じた。
人造人間の半分を撃破した、と言えば聞こえはいいがまだまだ状況は厳しそうだ。
「ともかく、総力戦を仕掛けるにしても孫悟空の力が不可欠だ。今はこやつの回復を待つしかあるまい」
結局、悟空が復活するまで様子を見るしかないという結論に至った。
話がまとまったところでブルマさんに連絡をすると、どうも奇妙な状況に、なんでもタイムマシンらしき乗り物が見つかっただとか。
送られてきた写真を見てみると確かにそれらしき乗り物が写っている。
「そんな…、トランクス、確か君がタイムマシンを持っている筈だよな?」
「はい、カプセルにしてここに…」
「…ワシにもその写真を見せてくれんか」
「え、ええ。それにしても、いったいどういう事なんだ…?」
「…………」
「コルド? どうしたんだよ、そんな怖い顔して」
例の写真を見て黙り込むコルド。
…なんというか、こいつ、時々こんな風に固まるんだよな。まるで何かを考え込んでるみたいに。
とにかく、例の乗り物を探しに行くトランクスにこっちのちっこい悟飯がついていくことになった。
「本当にいいのか、トランクス。俺も一緒に行かなくて…」
「大丈夫ですよ、何も戦いに行くわけじゃない。悟飯さんはチチさんと悟空さん、お二人と一緒にいてあげてください」
「…万が一何かあれば超サイヤ人となり、全力で気を高めるのだ。その時はすぐに駆け付けよう」
「はい、ありがとうございます。それでは後ほど!」
残った俺たちは悟空をカメハウスに連れていく。
人造人間に追われていると考えるとゾッとするが、そんな弱音を吐いている場合じゃない。
コルドも、未来の悟飯も悟空を守ってくれてるんだ、俺だけ逃げ出すわけにはいかない。
(お前のことは絶対に守ってやるからな、親友!)
…だから悟空、なんとか早く心臓病を治してくれ!