あれから悟空をカメハウスへ送り届けた後、俺はトランクスとクリリンと共にジンジャータウンへと向かっていた。
俺たちがカメハウスに辿り着いてすぐに例のニュースが流れ始めたからである。ジンジャータウンの住人、その全員が忽然と姿を消してしまったあのニュースが。
「コルドさん、やはり、悟空さんの側にいた方が良かったのではないでしょうか」
「…無理を言って済まない、だが人造人間もすぐに孫悟空を見つけるのは不可能のはず、今はどうしても消えた住人のことが気になるのだ」
「ま、まぁ心配すんなよトランクス。もし悟飯たちの気が膨れ上がったらすぐに戻ればいいさ」
本当は皆に、俺が悟空の側にいた方がいいと説得されたが、もう一度調査に戻ると言うトランクスに無理を言って同行したのだ。
俺もそうするべきだとは思うのだが、やはり例の写真、セルのことが気がかりだ。
13号達の事もある、できればこの目で本来の歴史通りに事が進むか確認したい。
(13号達は倒した。もうこれ以上、変なことは起こらないでくれればいいんだが…)
しかし、悪い予感ほどよく当たるというのだろうか。
ジンジャータウンまであと少しというところで、俺たちは異変を感じ取った。
「な、なんだこの気は!? コルドさんの気だと…馬鹿な、どうして!」
「ま、待て、コルドだけじゃない…、フリーザの気も、それに悟空やピッコロまで…、どうなってるんだ!?」
「もう一つ大きな気を感じます、誰かがこいつと戦っている!」
ジンジャータウンの方角から感じ取った途方もなく大きく、不気味な気。
悟空を始めとするありとあらゆる武術の達人たちの気を併せ持った存在、俺はそいつの正体を知っている。知っているのだが、
(なんで、なんでセルから俺の気が最も強く感じられるんだ!? …セルと戦っている大きな気、変化しているがきっとこれはピッコロの気だ)
ピッコロの気の変化、これはおそらく神と同化したことが原因だろう。
俺の知るかつてのピッコロよりも大きくパワーアップしている、いるのだが何かがおかしい。
(明らかにピッコロよりもセルの気の方が大きい、どういうことだ!?)
ジンジャータウンで戦いを繰り広げている二つの気、それを比べると明らかにセルの気の量がピッコロのそれを上回っている。
俺の記憶が確かなら、現時点では神と同化したピッコロの方が優勢だったはず、だというのになぜ!?
「な、なにが、いったい何が起こってるんだよ…」
クリリンが震えた声で呟く、俺が聞きたいくらいだ。
やがてぶつかり合う一方の気が小さくなりはじめた、まずい、ピッコロの気が減り始めている。
俺は全身に力を込め、素早く変身する。
「な、おまえ、その姿!?」
「これがコルドさんの変身…!」
「クリリン! 仙豆は持ってきておるな、ワシは先に行く!」
驚いている二人、しかし今はそれに構っている暇はない。
みるみるうちに小さくなるピッコロの気のもとへと全速力で向かう。
ジンジャータウンの郊外、周辺は戦闘の余波で地形が変わっている。
そこにセルとピッコロの二人の姿があった。
(な、ピッコロが負けてる…!? 相手はやっぱりセル、でもどうして!?)
ボロボロのピッコロは地面に倒れ、セルがその体に足を乗せている。
セルの方も無傷ではない、しかし勝敗は明白だ。
「くくく、素晴らしいパワーだったぞ、ピッコロ大魔王、いや、ピッコロ! お前の生体エキスを吸えばかなり完全体に近づくことができそうだ!」
「くそったれ…、ば、化け物め…」
「では、いただこうか…」
セルは自らの尻尾を伸ばし、ピッコロへと突き立てようとする。
「(まずい!)きぇい!」
「ぬっ、何者だ!」
俺は咄嗟にビームを今にもピッコロに突き刺さらんとしていた尻尾へと放った。
それは見事に命中し、セルの尻尾を中ほどから千切り、先端を吹き飛ばすことに成功した。
「無事か、ピッコロ!」
「この気は…、おやおや、これはこれは、コルド大王。会えて嬉しいぞ、我が兄弟、いや、お前のことは父上とでも呼んだ方が相応しいかな?」
「な、父上だと!?」
どういうことか全く分からない、が、またしても俺の知らない何かが起こりつつあるのは確かだ。
セルの足元で倒れているピッコロが力を振り絞り、声を上げる。
「コ、コルド、こいつの名はセル! こいつも人造人間で未来から…ぐぁっ」
「わざわざ、説明しなくても私が語ってやるさぁ…」
そしてセルは語りだす、自らがドクターゲロのコンピューターが生み出した人造人間であること、ある目的の為にタイムマシンを奪い未来からやってきたこと、そして自分の体の秘密を。
「私は戦闘の達人たちの細胞を集め、合成された人造人間だ。孫悟空、ベジータ、ピッコロを始めとしたお前たちの細胞をな」
(そんなことは知っている、それじゃあこのパワーアップの説明がつかない…!)
「その中でもお前たち一族の細胞は特に素晴らしいものだった。フリーザ、コルド大王、まさに宇宙最強の一族を名乗るに相応しい、…だが、残念なことに、フリーザの細胞は孫悟空との戦いでその殆どが失われ、採取できたのはほんの僅かだった。だが、幸運なことにお前は、コルド大王は生き残り、この地球で暮らし始めたのだ!」
「ま、まさか…、貴様からワシの気が最も感じられるのは…!?」
「そうだ、コルド大王、お前の細胞はこの私の基礎パワーを上げることに最も貢献してくれたと言ってもいいだろう。事実、他の細胞と違い、私を構成する大部分がお前の細胞によって構成されているのだ、まさしく父上と呼ぶに値するほどにな」
つまり、原作のセルと比べて俺の、コルド大王の細胞がより多く使われているから奴は原作よりも強くなってしまった、ということらしい。
(そんな馬鹿な、たったそれだけでこうも強さが変わるなんて…!)
「平穏に過ごすお前から、細胞を盗み取るのは実に容易かったぞ。この時代でもお前の細胞は採取され続けていたことだろう…。まったく、お前には礼を言わねばならんな」
そしてセルは不気味に笑みを浮かべながら気取ったように一礼を繰り出した。
「生き残ってくれてありがとう、父上。ふふふ、ハァッハッハッハッハ!!」
最悪だ。
コルド大王が、俺が生き残ることで何もかもが狂ってしまった。
13号達の登場もそうだ。原作よりも強化されたセル、こいつが過去に来たことで俺の知る歴史がねじ曲がり、本来いるはずのない敵を呼び寄せてしまった。
俺の存在が事態を悪化させた。俺の生存が、生き残った事がその全ての始まりだったんだ。
…俺が全ての元凶だったんだ。
「コンピューターはこうも言ったぞ! 17号と18号を吸収すれば、私はより完璧な、想像を絶する恐ろしい力を手に入れることができると! それがこの時代にやってきた一番の理由というわけだ!」
セルは饒舌に己の目的を語り続けているがもはや俺の耳には入ってこない。
俺はもうそれどころではない。
(こいつを生かしておくのはまずい。現時点でこの強さ、もし完全体になってしまったら…)
最悪の場合、超サイヤ人2となった悟飯も敗北してしまうかもしれない。いや、そもそもセルゲームが行われるかも分からない、完全体となる前に仲間の誰かが死んでしまうなんてこともありえる。
(…こいつが強くなったのが俺の所為なら、俺が責任を取るべきだ)
奴に悟られないように指にエネルギーを集中させる。
「コルドさん、無事ですか!?」
「あれは、ピッコロ! 酷い怪我だ…!」
「あれは…、トランクスだと!? なぜこの時代に…」
置いてきた二人が追いついてきた、トランクスとクリリンが俺の横に並ぶ。
「コルドさん、これは、どういう状況ですか…!?」
「…(すまん、トランクス。今は話す余裕がないんだ)」
「…コルドさん?」
参考にするのはさっき未来悟飯が使用した魔貫光殺砲だ、3年間の修行でもピッコロが使っていたのを見たことがある。
時間をかけてでもいい少しでもエネルギーを収束させろ…!
「ちっ、私もダメージを受けている。それにコルド大王も私が知る姿ではない、かなりパワーアップしているな。…流石にこの状況、少々分が悪いか」
(こいよ、太陽拳だろ? 知ってんだよ手の内は…)
こいつはこの場から逃げるために太陽拳を使うはず。
来ると分かっていればどうとでも凌げる技だ、目を瞑り気で捉えてしまえばいい。
(こいつは今ここで殺す! さぁ、使え! その瞬間、頭をぶち抜いてやる…!)
おそらく、俺の放つ攻撃は魔貫光殺砲とまではいかなくとも、それでもかなりの貫通力を持つ光線には違いない。セルの頭を貫くことはできるはず。
セルの頭を吹き飛ばし、すぐさま残った体も気で消してしまう。
奴が太陽拳を使うその時、その瞬間が最大のチャンスだ。
「17号と18号は必ず手に入れてみせる! まともな戦力がコルド大王一人では、貴様らにそれを防ぐ手立てはない!」
そして奴は、千切れた尻尾を再生させながら、地面に倒れたピッコロをこちらに向けて蹴り飛ばした。
(な、は?)
「かめはめ波ぁ!」
そして飛んでくるエネルギー波、それは蹴とばされたピッコロに向かって吸い込まれていく。
「まずいっ!」
咄嗟にピッコロに飛びつき、抱きかかえるように受け止める。
が、すぐそこまで迫る奴のかめはめ波を避ける時間はない。ピッコロを庇うように迫りくるそれに対して背中を向ける。
「っづぅ……!」
そして爆発、背に感じる焼けるような痛みに、いや実際に焼かれているのだ。その痛みに苦悶の声が漏れる。
失敗した、セルが太陽拳を使うと決めこんだのがいけなかった。奴が別の手段を取ることを考えていれば対応できたかもしれないというのに。
「コルド!」
「コルドさん!」
二人の叫ぶ声が聞こえる、大丈夫、ピッコロは無事だ。
それよりも今はセルだ、焼ける背中の痛みを無視して、振り返りながら奴に向けて指を向ける。
「セル!」
そこに奴の姿は無かった。
「お、おのれぇ! 何処へ隠れた!」
上空に飛び上がり、気を高ぶらせながら闇雲に辺りを飛び回る。
まんまと逃げられてしまった。セルは絶対に太陽拳を使ってくると思ったが完全に読みが外れた。
「まだ近くにいるはず、奴を逃がすわけには…!」
「お、おい、落ち着けよコルド。今はピッコロが先だ、お前も背中の怪我を治療しないと…」
「ぐっ……」
確かにクリリンの言う通りだ。
俺の怪我はともかく、ピッコロは危うい状態。このままセルを探し続けるよりも優先すべきことがある。断腸の思いで捜索を諦め、変身を解除する。
俺達はピッコロのもとに集まり、仙豆を持っていたクリリンがピッコロに仙豆を食べさせた。
「くそっ! せっかく神の野郎と同化したというのになんて様だ! まさかあんな化け物が未来からやってくるなんて…!」
「お、おい、俺とトランクスにも説明してくれ。何者なんだよ、あの化け物は?」
「…ベジータと天津飯がここに向かってきている。もうすぐ着くだろう。あいつらが着いたらまとめて話す。…それと済まなかった、コルド。奴に逃げられたのは俺のせいだ…」
「謝るな、……この状況の責任はワシにある」
やがてベジータと天津飯が合流し、一同はここで何が起きたのかを共有した。
急激なピッコロのパワーアップ、未来から来た新たな人造人間セル、そしてその目的。
「すまない、セルのあの異常なパワーはワシのせいだ…」
「なんでお前が謝るんだよ、細胞が使われてるのは俺達も同じなんだ。悪いのは全部ドクターゲロの奴さ」
「……」
そういう訳ではないのだ。俺のせいで本来の歴史が歪み奴がパワーアップしてしまった。
しかしそれを説明するわけにもいかず、ただ黙り込むしかなかった。
「…あのセルという化け物、とんでもない強さだったが今の俺とコルドの二人がかりなら倒すことができるだろう。奴が完全体になる前になんとしてでも倒さねば…」
「でも人間から生体エキスってのを吸い取ってどんどん強くなるんだろ? 次見つけたときに勝てるかどうかは…、なぁ、今から研究所に行ってセルを破壊しても無駄なのか?」
「はい、…それでも破壊はしておきましょう。少なくともこの次元ではセルが生まれなくなる」
一同は今後、どう動くべきかを話し合う。
セルの完全体への進化の阻止、それが最優先だ。しかしベジータがそれに異を唱える。
「ちっ、せこい作戦ばかり立てやがって、合体させてやればいいだろう。倒す敵が減って手間がはぶけるってもんだ」
「甘く見るなベジータ。もし奴が17号と18号を吸収すれば手のつけようが…」
「この俺に偉そうな口をきくんじゃねぇ!」
「と、父さん…!」
「合体だの吸収だの、気に食わねぇ奴らだ。…いいか、必ず俺は超えてやるぞ、貴様らも、人造人間共もだ! 超サイヤ人を超えて、必ずだ!」
そう言い残しベジータは何処かへと飛んでいってしまった。
俺たちも動き出さないといけない。
「よし、トランクスとクリリンは研究所に戻りこの時代のセルを破壊するんだ。俺たちは奴が手に負えなくなる前になんとしてでも探し出し、殺す。」
「……いや、もう一つ作戦がある」
「なに?」
気を消しながら人々を襲い続けるセルを捉えるのはおそらく不可能だ。例え俺の前世の記憶を活用したとしても奴の居場所は分からない。
しかし、もう一方の人造人間、あの3人組が確実に現れる場所を俺は知っている。
「今のパワーアップしたピッコロならば17号達とも互角にやりあえるだろう」
「…確かに可能だ。しかし、奴ら全員を相手にするのは…」
「17号か、18号、そのどちらかとワシが1対1の状況さえ作ることができればいい、可能か?」
「状況次第だが、…そうか、コルド、お前の作戦というのは…!」
「そうだ」
今現在、俺たちにできるセルの完全体を阻止する作戦。
それはパワーアップしたセルの撃破だけではなくもう一つ方法がある。
「セルに吸収される前に、17号と18号を殺す。それが最善の策だ」
というわけでセルには大幅なパワーアップをしてもらいました。
強化された説得力がちょっと弱いような…、しかしなんとしてでもコルド大王のせいにしたかったのでこうなりました。