誤字報告も大変助かっております!
今回は箸休め、というか茶番回です。
目が覚めると俺は神様の神殿にいた。
第二形態のセルに気絶させられた俺を誰かが運び込んでくれたらしい。
痛みを訴える体を無理やり起こし、状況を確認する。
「ぐ、セルはどうなった…、教えてくれ」
「コルド! よかった、目が覚めたか」
近くに立っていた天津飯に何があったのかを説明してもらった。
天津飯に助けられたこと、悟空が瞬間移動でここまで連れてきてくれたこと、それとピッコロも無事に生きているらしい、死にかけていたところを悟空が急いで神殿に連れてきたとのことだ。
そしてセルは完全体となるべく、18号を捜索中のようだ。現状の俺たちの戦力ではそれを黙ってみていることしかできず、いまはただ16号と18号が見つからないことを祈ることしかできない。
「そうか、お前がワシを助けてくれたのか、礼を言わねばならんな天津飯」
「礼など不要だ、…お前があれだけ命を懸けて戦ったんだ、俺も命を懸けるのは当然のことだ」
…なんというか、Z戦士達が命を張ってまで俺を助けてくれたことに熱いものが込み上げてくるのを感じる。
最初の頃はフリーザの父親ということで全員からかなり警戒されていたものだが、俺も随分と馴染んだものだ。
一人で感慨にふけっていると悟空達も俺の様子を見にやってきた。
「お、コルド、体の調子はどうだ?」
「まだ本調子ではないがだいぶマシになった。お前にも感謝せねばならんな」
「気にすんなよ、お前が時間を稼いでくれたおかげでセルもまだ18号を探し回ってる。これならなんとかベジータ達の修行が終わるまで持ちこたえられるかもしんねぇ」
悟空の言葉で我に返る。
そうだ、勝手に感動している場合じゃない。
事態はまだまだ予断を許さない状況。いつセルが18号を見つけて、完全体へなってしまうかも分からないのだ。気を引き締めなければ。
しかし、今の俺たちにそれを防ぐ術はない。ベジータ達の修行が終わることを待つ、俺たちにできるのはただそれだけだ。
(頼むベジータ、早く出てきてくれ…!)
「おーい、ベジータとトランクスが部屋から出てきたぞー!」
「ほんとか!?」
ポポの知らせに戦士達が沸き立つ、俺も痛む体を起こし、ベジータ達のもとに向かう。
「皆さん、お待たせしてすみませんでした」
「トランクス! 素晴らしい、見違えたな、まるで別人ではないか…!」
一年の修行でトランクスから感じられる力が驚くほど高まっているのを感じる。後ろで腕を組んでいるベジータも同様だ。
精神と時の部屋での修行を終えた2人なら今のセルでもなんとかなるかもしれない、だが…
「どうやら、上手くいったみたいだな、ベジータ」
「さあな、だがお前らがこの部屋に入っても無駄だ、この俺がすべて片づけてしまうからな」
「…17号を吸収したセルはとんでもない強さだった。超サイヤ人を超えたとしても油断できる相手じゃねぇぞ」
「ふん、勝手にほざいてろ」
悟空の言う通り、ジンジャータウンでのピッコロの件もある。
果たして第二形態のセルに超ベジータが通用するのかは分からない。原作通り圧倒してくれるに越したことはないが、もしかしたら、ということがある。
「ベジータよ、孫悟空の言う通り、奴はこれ以上ないほどに危険だ。油断するでないぞ」
「ちっ、どいつもこいつもやかましい連中だ。貴様らはただ黙ってみていればいいんだ」
(一番怖いのはお前がセルをわざと完全体にすることなんだよ…!)
そんなことをしない、と信じたいが、事実、ベジータは本来の歴史でそれをやらかしている。
しかしどう警告したものか、少なくともベジータには何を言っても無駄だろう。
ベジータに聞こえないように小声でトランクスに話しかける。
「トランクスよ、セルを倒せるチャンスがあれば不意打ちでも何でもいい、お前が倒してしまえ」
「え、は、はい、分かりました」
「いいな、絶対に容赦するなよ、セルが完全体になるのをベジータが手助けしようものならその瞬間セルに止めを刺してしまうのだ」
「さ、流石に父さんもそんなことはしないと思いますが…」
するから言ってるんだって。
しかし実際にまだ起こっていない事実を証明することはできない。あまりしつこく言う訳にもいかないが、とりあえず釘はさしておいた。
これで故意に完全体にしてしまうことはなくなる、といいのだが…。
「ちょっとー、皆どこにいるのー」
そうこうしていると外からブルマの呼ぶ声がする。一同は宮殿の外へと向かった。
「あれ、ブルマ、なんでここが?」
「クリリンに聞いたのよ。人造人間の緊急停止コントローラーを渡しに行ったらみんなここにいるって言ってたから」
(そういえば緊急停止コントローラーがあったか…)
しかし、緊急停止コントローラーを使用した18号の破壊作戦は失敗に終わるだろう。
原作通りクリリンは18号を破壊することはできないはずだ、…そして俺にそれを責める資格もない。
(俺もあの時、迷わず剣を振り下ろしていれば18号を殺すことはできた。だが俺にはそれができなかった。…これだけの力を手に入れたというのに性根は昔のままだ)
自分にできなかったことをクリリンにやれ、というのはお門違いというもの。果たして俺が緊急停止コントローラーを持っていたとしても、18号を容赦なく破壊できたかは疑わしい。
「それよりもブルマ、いったい何をしに来たというのだ!」
「あ、そうそう、忘れてたわ。ベジータに頼まれてた戦闘服を持ってきてあげたのよ」
そういってブルマがいくつかのカプセルを投げると大きな箱が現れた。
ホイポイカプセル、相変わらず便利な道具である。
「この服、すごい防御力よね。いっぱい作ってきたから皆の分もあるわよ」
「へぇ~、オラたちの分もか。ちょっと見せてくれよ」
悟空達が戦闘服が入っているという箱に近づいていく。
ベジータも精神と時の部屋での修行でボロボロになった自分の戦闘服を着替えようと箱を覗き込んで、そして驚愕の声を上げた。
「な、これはどういうことだブルマ!?」
「どうって、戦闘服よ。あんたたちのね」
箱の中に並べられていた数着の戦闘服、いやコルド大王の着ている戦闘服というべきだろうか。
他にもベジータの着用している手袋やブーツ、青いタイツなども入っているが、肝心のプロテクター部分はいずれもが俺の着用している戦闘服と同じものだ。
「どうしてわざわざこいつの着ている戦闘服を作ったんだ!」
「なんでって…、こっちのが新型らしいじゃない。新しい方があんたも嬉しいでしょ?」
そういえばいつだったか宇宙船と一緒に俺の戦闘服も渡した気がする。
俺としては着慣れているからありがたい話だが、当のベジータはなんというか、かなり嫌がっている。
「余計な事をしやがって…、どうしてこの俺がコルドと同じ服なんかを着なければいけないんだ…!」
「何よ! そんなに嫌なら裸で戦いにいけばいいじゃないの!」
「ぐっ…」
渋々、といった様子で着替え始めるベジータ。
(…そんなに嫌なのかベジータ?お前ももともと似たようなの着てたじゃん。)
「へぇ~、思ったより軽いんだなこれ。それに肩のも意外と邪魔にならねぇな」
「う~ん、なんだかナメック星で着てたのより肩の部分が大きいような…?」
気が付いたら孫親子がコルド式戦闘服に着替えていた。
…やべぇ、全然似合わない。悟飯の言う通り肩パッドのでかさがやけに目立つ。俺の戦闘服が見本だからか?俺が着る分にはそうではないが他の皆が着ると妙に大きく見える。
唯一の救いは下にベジータの着ている青いタイツを履いていることだろうか、本来のコルドとおなじブーメランパンツスタイルだったらますますカオスなことになっていただろう。
「…あ~、まぁまぁ似合うんじゃ…ない?」
作ってきたブルマ本人も懐疑的だ、なんだか悲しい気分になってきた…。
「ゴホン! お前たち、マントを忘れているぞ、これを着用しなければ真にこの戦闘服を着こなしているとはいえんな」
悔しくなってきたのでマントも勧めてみる。おそらくこれを付ければもう少しましに見える、筈だ。やけに大きい肩パッドもマントを付ける前提の設計なのだろう、そうに違いない。
「え~、別にマントはいらねぇよ。動きにくそうだし…、付ける意味ねぇよ」
「い、意味ならある。見ろ、こうしてうまくマントで隠せば武器を持っていることを気づかれにくいという利点がだな…」
「オラたち別に武器を持たねぇしな…。やっぱりいらねぇよ」
「ぼ、僕もマントは必要ないかな…」
にべもなく断られてしまった。
…悟空はともかく、悟飯はピッコロの道着でマント付けてなかったか?いや、それはこの後か。
そういえば天津飯もピッコロも着替えてない、まぁこの2人が着替えないのは原作通りだ。一応勧めておく。
「お前たちもどうだ? なかなか悪くない着心地だぞ、それにマントも付けようではないか」
「…気持ちはありがたいが俺は遠慮しておこう」
天津飯には断られた。やはりこの服にいい印象がないからか、…それともやはり見た目の問題だろうか。
そういえばピッコロはいつもマントを着用している、それに肩の部分も特徴的でこの戦闘服とどことなく似ている気もしないでもない。
「なぁピッコロよ、お前も普段はマントを着ているな…?」
「…俺を巻き込むな。それに俺のは修行の為に重くしているんだ、お前の様に何の意味もなくつけているわけではない」
いや、だから武器を隠せるんだって、心の中で反論するがどうにもアウェー感が否めない。
見ればベジータが着替え終わっている、昔は似たような戦闘服を着ていたからかそこまで違和感はない。…折角なのでマントの布教を試みる。
「まぁいい。性能は殆ど変わらないんだ。いまはこれで我慢してやる」
「そう言うなベジータ。お前もこれを付ければ考えが変わるというものだ」
ベジータの後ろにそっと回り込み、マントをカチャリとつけてみる。
おー、なんか…、ベジータ王みたいになった。意外と似合ってる。
「おお、なかなか似合うではないか。やはりサイヤ人の王族だけある、マントがよく映え、ぶっ…」
「触れるな、鬱陶しい」
ベジータの裏拳が俺の鼻っ柱に突き刺さる。精神と時の部屋での修行を経てパワーアップしただけあってめちゃくちゃ痛い。なにもここでその真価を発揮しなくていいだろうに。
痛みで蹲っていると未来の悟飯が声をかけてくれた。
「大丈夫ですか、コルドさん」
「あ、ああ、すまない悟飯…、お、おお!」
「俺はいいと思いますよ、このマント!」
振り返ればマントを付けた未来の悟飯が…!俺の味方はお前だけだ、悟飯!
がしりと強く握手を交わす、皆の冷めた目なんて何の気にもならない。
…でも似合ってないと思ったのは内緒だ。
「ちっ、馬鹿どもが…! 付き合ってられん。トランクス、もう行くぞ!」
「ま、待ってください! まだマントが上手く付けられてなくて…」
「―――っ! そんなもの付けなくていい! 早くしろ!」
ベジータはトランクスの持っていたマントを引ったくると、俺の付けたマントと一緒にびりびりに破り捨て、飛んで行ってしまった。
な、なにもそこまでしなくても…。
着替えるのに悪戦苦闘していたトランクスもマントを諦め、ベジータを追いかけようとする。
「あ、父さん! す、すみません僕ももう行きます、それでは!」
「死ぬでないぞ、トランクス! …さっき言ったこと、くれぐれも頼んだぞ」
「はい、行ってきます!」
そしてトランクスもベジータを追いかけて飛んで行った。
なんとも締まらない出陣となってしまったが、今はあの2人に望みを託すしかない。
ベジータ、トランクス、セルの完全体を阻止できるのは彼らしかいない。
(トランクス、帰ってきたらお前の分のマントも用意しておいてやるからな…!)
余談だが、ブルマが今後コルド式戦闘服を作ることはなかった。おそらくベジータのせいだろう。
…俺も似合わないと思ったから別にいいけどさ。
ベジータの着ている戦闘服は悟空達に似合う似合わない諸説ありますが、コルド大王の戦闘服は誰一人として似合わなさそうですね。