大王転生   作:イヴァ

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完全体を超えろ、鬼気迫る大王の超修行!

 ベジータ達の奮闘も空しく、ついにセルは完全体となってしまった。

 俺たちはその光景を神殿からただ見ていることしかできなかった。

 

「あ、あれがセルの完全体…! なんてパワーだ。強い、強すぎる…!」

「お、おのれ、セル…」

 

 かなり距離があるはずだが、完全体となったセルの力がこの神殿にまで伝わってくる。その力はもはや俺たちの理解の範疇を完全に超えていると言ってもいい。

 ただ幸いなことにセルはベジータとトランクスを圧倒した後、2人を見逃した。

 やはりこの世界でもセルゲームを開催するつもりなのだろう。

 

 

 翌日、再び俺たちは神殿へと集まっていた。

 俺の想像通りセルは今朝、テレビ局を襲い、全世界に向けてセルゲームの開催を発表した。

 何もかもが原作通り、セルの力だけが大きく上昇してしまっていることを除いてだが。

 

「セルの野郎、ふざけやがって…! おい、カカロットはまだ部屋からでてこんのか!」

 

 そろそろ悟空たちが精神と時の部屋での修行を終える頃だ。

 一同は悟空たちが部屋から出てくる瞬間を待ち望む。

 

「ベジータ、悪いが次は我々の順番だ、それにピッコロも部屋を使うらしい。ちょうどいいだろう、お前も少しは休んでおくことだ」

「ちっ、大きなお世話だ。この俺さえいれば貴様たちの出番なんて…」

「お父さんたちの気! 部屋から出てきたみたいだ!」

「なんだと、な、なんでこんなに早く…?」

 

 どうやら悟空達も修行を終えたようだ。

 やがて超サイヤ人に変身した悟空と悟飯が姿を現した。修行の一環で体を超サイヤ人の状態に慣らしているのだろう。

 

「あれ、ベジータにトランクス? セルの気も感じる…、どうなってんだ?」

「説明しよう、孫悟空」

 

 悟空達に何が起きたのか、そしてセルゲームの事を説明する。

 ボロボロになった服を着替えながらその話を聞く悟空、危機的な状況だというのに悟空の表情は楽し気だ。

 

「へー武道大会、おもしれえ事考えやがったな」

「どうなんだ、セルに勝つ自信はあるのか」

「そりゃ見てみないと分かんねぇよ、オラちょっくら行ってくる」

 

 悟空は額に手を当てると瞬間移動で消えてしまった。

 完全体となったセルを実際に見に行ったのだろうが、相変わらずマイペースな奴である。

 ただ待っているのも暇なのでいつの間にかピッコロの道着に着替えた子供の悟飯に話しかける。

 

「む、悟飯、その道着よく似合ってるではないか」

「本当ですか…! ありがとうございます!」

「しかしおかしいな、確かお前はマントは不要だと…、う~む、ワシの記憶違いか…?」

「え!? そ、そんなこと言ったかな…、は、はは…」

「…お前、意外と根に持つタイプなんだな」

 

 うっせぇ天津飯。

 俺のマントとピッコロのマント、何の違いがあるというのか。しかし当の悟飯は笑って誤魔化すのみである。えーい、都合のいい奴め。

 そんな馬鹿な話をしていると悟空が帰ってきた。

 

「ど、どうでしたか、悟空さん!?」

「…正直あそこまで強くなってるとは思わなかった。どうすっかなぁ…」

「もう一度精神と時の部屋を使うがいい。まだ丸一日は時間が残っているだろう」

「う~ん、いや、オラたちはもういいよ。後は体を休めながらこっちで修行する」

「な、なんだと!?」

「オラも悟飯も限界まで鍛え上げた。多分、これ以上あの部屋で修行しても意味がねぇさ。それじゃあ悟飯、行こう!」

 

 それだけ言い残すと悟空たちは神殿から去って行ってしまった。

 

「どういうつもりなんだ孫の奴…!」

(もし、今悟空が言ったことが事実だとすれば、状況はかなりまずいな)

 

 おそらく悟空と悟飯は原作通りの強さ、それにこれ以上鍛えようはないと言っていた。

 それに比べ、セルは原作よりも大きくパワーアップしている。ジンジャータウン、そして超ベジータとの戦いがそれを物語っている。

 

(果たして通用するのか、悟飯の超サイヤ人2が…)

「な、なんだ…! 悟空の気が!?」

「と、とんでもない大きさだ!」

 

 突如、足元で膨大な気の嵐が巻き起こる。

 おそらく悟空がカリン様に自分とセルの力を見比べてもらっているのだろう。確か、俺の記憶が正しければこの時の悟空は半分ほどの力を解放していたはず。

 

(これで半分だと!? つまりこの倍の力を持ってしても原作のセルには届かない、そしてこの世界のセルは更にそれよりも強い…!)

 

 果たして俺がこの領域に辿り着けるだろうか。

 しかし、悟空たちが既に限界まで鍛え上げている以上、現状を好転させることができるのはイレギュラーの俺のみ。

 

(…あるいは未来の悟飯に期待するかだ)

 

 そして俺と同じく、原作に存在しない未来悟飯。

 彼が精神と時の部屋で修行すればどこまで伸びるかは未知数だ。この世界の悟飯を凌駕するかもしれないし、もしくは悟空未満に収まるかもしれない。

 なんにせよ、過度な期待は厳禁だ。ここにきて人任せにするわけにはいかない。

 少なくともセルのパワーアップの責任は俺にある。

 できるできないの問題ではない、死ぬ気で強くならなければいけない。

 幸いなことに先程の悟空の気のおかげで目指すべきハードルは朧気ながら確認できた。

 

「悟飯よ、次は我々の番だ。準備はよいな!」

「はい! 行きましょう!」

 

 未来悟飯と共に精神と時の部屋に向かう。

 ベジータ親子、孫親子、それに続いて俺たちが、まぁ俺たちは親子ではないのだが。

 しかし、同じ戦闘服に身を包み、マントをはためかせる姿は遠目にみれば親子の様にも…

 

(…全然見えないな)

 

 くだらない思考を打ち切り、俺たちは部屋の扉をくぐった。

 

 

 

 

 

 白、白、見渡す限りの白。

 精神と時の部屋、どんなものか知識では知っていたが、実際にこの目で見ると圧倒される。

 何処までも続く白一色の空間、下手すると気が狂いそうな気になる。

 

「ここが精神と時の部屋…、すごい、聞いていた通りだ」

「ん? その口ぶり、まさか知っていたのか?」

「ええ、実は未来の世界でもこの部屋を使うことをコルドさんが提案したのですが…、ポポさんが言うには事前に神様がこの部屋を外の世界と繋がないとだめだそうで、結局使うことは叶いませんでした」

 

 …そんな仕様聞いたこともなかったが、やはり原作知識をそのまま鵜呑みにすることは危険のようだ。

 未来の俺もいろいろと行動を起こそうとしたみたいだが、そこら辺についてもおいおい未来悟飯に話を聞いておこう。辻褄を合わせておきたいし、なにか参考になることもあるかもしれない。

 

「さて、それでは早速修行というわけだが…、悟飯よ、お前は何か良い修行方法を考えているのか?」

「はい、とりあえず俺も父さんの様に超サイヤ人の状態に体を慣らしていこうと思います」

 

 そう言って超サイヤ人に変身する未来悟飯。

 確かにこのやり方が同じサイヤ人の血を引く悟飯に最も適した修行方法だろう。

 ただ闇雲に体を鍛えるよりも、戦いの申し子である孫悟空の修行を模倣するのが賢い選択だ。

 

「コルドさんはどのように鍛えるつもりなんですか?」

「ワシは…」

 

 …どうしたものか、人造人間が現れるまでの3年間の修行、あの時は悟空やピッコロの2人がいた為、どのようにして鍛えるかなんて意識していなかった。

 筋トレや組手に加えて気のコントロール方法など、あくまで基礎的な修行が多かった。

 それだけでここまでパワーアップできたのはやはりこの肉体が優れた潜在能力を持っていたからに他ならないだろう。

 

「一応だが目指すべき姿は思い浮かんでおる、だがどのようにしてそこまで辿り着くかが…」

 

 情けない話だが俺の頭では考えつかない。

 ならば偉大なる先達を真似るのみ、とりあえず俺も変身してみる。

 

「ふん! ふぅ、…この姿にも少しは慣れてきたな」

 

 俺の第2形態、エイリアンのような姿。

 この変身にも当初よりは慣れたものだが、しかしまだまだ違和感のようなものも残っている。スタミナの消費量もやはり増加している気がする。

 ここは俺も悟空の修行方法を模倣し、まずはこの姿に完全に慣れることを目標とすべきかもしれない。

 

「よし、ワシもお前たちを見習い、まずはこの姿に慣れてみようと思う。ということで、しばらくはこの姿で生活するぞ」

「え、そ、その姿でですか…!?」

「うむ」

 

 サイヤ人と同じようにいくかは分からないが、俺も自らの壁を、目の前にある限界を超えなければ完全体となってしまったセルに太刀打ちはできないだろう。

 そのためにもただ漫然と修行するだけではだめだ。本気で取り組まないといけない。

 

「さぁ、悟飯。早速修行を始めるぞ! まずは組手だ、一刻も早く互いに体の負荷に慣れるのだ!」

「は、はい! …な、慣れるまで時間がかかりそうだな」

 

 なにやら悟飯が呟いていたがよく聞き取れなかった、まぁいいだろう。

 俺が必ずセルを倒す、いや、倒さねばならない。その思いを胸に修行を始めるのだった。

 

 

 

 

 コルドと未来悟飯が修行を開始して半年ほどが過ぎた。

 

「ふぅ(超サイヤ人の状態にもかなり慣れたな…)」

 

 瞑想を終えた悟飯が立ち上がる。

 超サイヤ人の状態を常に維持しつつ修行を行う、それは食事や睡眠といった日常生活も含めて。

 最初の頃は悟飯もかなり難儀した。体力が減った時や、特に睡眠のタイミングではいつの間にか超サイヤ人が解けるなんて場面もあった。

 

「今の俺なら奴らを、あの悪魔たちを簡単に葬り去る事ができるはずだ…!」

 

 しかしこの時代の孫悟空が考案した修行方法は未来の悟飯に大幅なパワーアップを与えた。

 今の悟飯なら、未だ未来の世界で暴れ続ける17号と18号の2人をあっけなく倒してしまうことができるだろう。その確信が悟飯にあった。

 この部屋に入る前の己と比べれば雲泥の差、しかしそれでも悟飯の表情は優れない。

 

(…でも、それじゃあダメだ。あのセルを、完全体のセルを倒すにはまだまだ足りない)

 

 悟飯はセルが完全体となったときに発した力を思い出す。

 セルから感じた気にはまだまだ及ばない、悟飯はそのことをよく理解していた。

 

(もっと強くならないと、…少なくともあの人の様に!)

 

 上空を見上げる悟飯、悟飯の頭上で莫大な気の嵐が渦巻いていた。

 

「ぬうぅぅぅぅぅぅ…!」

 

 そして嵐の中心にコルドはいた。

 コルドは膨大な気を放ちつつも、座禅を組みながら未だに気を高め続けている。

 

「相変わらず凄い気だ…! この部屋に入ってから、まるで際限のないようにどんどんと上昇し続けている…」

 

 コルドもまた、未来の悟飯に負けず劣らずの成長を遂げていた。渦巻く気の嵐が、稲光の如き発光が、まるで大嵐のような光景がいまのコルドのレベルを表している。

 それほどまでに精神と時の部屋での修行が優れたものであるというのは間違いない、のだが。

 

「…それでも、コルドさんの強さへの執着はやはり変だ」

 

 悟飯は精神と時の部屋で修行するコルドに対して違和感を感じていた。

 鬼気迫る表情で強さを求めるコルド、勿論悟飯も強くなるために必死で修行しているのだが、コルドは更にそれを上回る。

 

(…少なくとも俺はあの人が変身を解いたのを見たことがない。それに俺よりもずっと長い時間鍛え続けている)

 

 悟飯の中にはかつて己の父である孫悟空から受け継がれた亀仙流の教えが根付いている。

【よく動き、よく学び、よく遊び、よく休む。】

 流石に状況が状況なので、遊ぶようなことは今はしないが、その教えの通りに、悟飯は休息を疎かにすることはない。

 この部屋の環境を考えれば尚更重要なことだろう、しかし。

 

『ワシの肉体はお前たちよりも遥かに頑強だ。より強い負荷を与え続けねば強くなることはできん』

 

 悟飯はコルドの言葉を思い出す。

 その言葉の通り、コルドは睡眠や食事こそ取るものの、それ以外の殆どの時間を修行に費やしている。

 確かに極限環境でも生存可能な肉体を持っていることは間違いない、それにしても悟飯から見て我武者羅に強さを求めるコルドの姿は異常だ。

 

(お父さんや、ベジータさんとは何か違う。いったい何があの人を駆り立てるんだ…!)

 

 悟空やベジータと違い、コルドは戦いを楽しんでいるような気配を悟飯は感じない。それはこの世界でもそうだし未来のコルドも同じだった。

 好きだから、楽しいからではなく、やらなければいけないからやる。そんな義務感のような、あるいは責任を背負っているかのようなコルドの姿に悟飯はどう接するべきか分からなかった。

 

「ぐっ…!?」

「…! コルドさん!」

 

 その時、コルドの口から漏れ出た苦悶の声を悟飯は聞き逃さなかった。

 咄嗟に飛び立ちコルドのもとに向かう悟飯、荒れ狂う気の嵐に阻まれ近づくことも困難だ。

 

「コルドさん! 聞こえますかコルドさん!?」

「…ん? 悟飯、どうかしたか?」

 

 悟飯の呼びかけに気づくコルド、途端に気の嵐が収まる。今までの光景が嘘のように普段通りの様相を取り戻す精神と時の部屋。

 その落差に呆気にとられる悟飯。

 

「え、あ、その…、食事にしませんか? この部屋、こんな風景だから時間が分かりにくいけど、もう遅い時間です。そろそろ休む準備をしないと…」

「む、もうそんな時間か。…悟飯は先に休むがよい、ワシももう少ししたら休息を取ろう。ふんっ…!」

「な、くっ!」

 

 そして部屋の中に再び気の嵐が吹き荒ぶ。

 先程よりもさらに勢いを増す大嵐を前に悟飯はこの場を離れるしかなかった。

 

(コルドさんがこれほどまでに強さを求めるのは俺が頼りないせいだ…!)

 

 悟飯は考える。

 もし俺がもっと強ければコルドも自分を頼ってくれるだろう、しかし彼がそうしないのは俺が弱いからだ、と。

 コルド本人の口から聞いたわけではない、それでも悟飯はその考えを振り払うことができなかった。

 

(もっとだ、もっと強くならないと…!)

 

 さらなる決意を胸に刻み、悟飯もまた過酷な修行に身を投じる。

 来るべき決戦の時に備えて。

 

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