俺と未来の悟飯が精神と時の部屋での修行を開始して1年の時が流れた。
遂に1年間の修行を終え、俺たちは今日この部屋を出る。
「ついに部屋を出る時だ。悟飯よ、忘れ物はないか?」
「はは、ありませんよ。そもそも何も持ち込んでないじゃないですか」
悟飯の言う通り、忘れ物なんてある筈がない。互いにこの身一つでこの部屋に来たのだ。
強いていうなら身に着けた戦闘服だが、それも1年の修行の中でボロボロになってしまった。その有様が如何に過酷な修行だったかを物語っている。
「よし、ならば出発だ。この部屋ともいよいよお別れだな」
「はい、行きましょう」
俺たちが精神と時の部屋を出て宮殿の外に出てみるとなにやら人だかりができていた。
俺たちの出迎え、というわけではなさそうだ。
「悟飯さん! それにコルドさんも、修行が終わったんですね!」
「やぁ、待たせたなトランクス。それにしても…、いったいどうしたんだい?」
「実はドラゴンボールを復活させるために悟空さんがナメック星から新しい神様を…」
「なんだって!?」
ちょうどドラゴンボールを復活させるイベントの真っ最中みたいだ。
何か手を出した方がいいことがあったかと思ったが、もう既にドラゴンボールは復活した後のようだ。
(まぁ変に調整してもらう必要もないか)
叶えられる願いの範囲や数を変えることもできたかもしれないがここは原作通りで構わないだろう。後で問題が発覚した時、新ナメック星のポルンガの事をそれとなく伝えておけばいい話だ。
そんなことを考えていると、戦士たちの足元から小さな影が顔を出した。
「貴方は…まさか貴方が未来の悟飯さんですか!?」
「君は…デ、デンデ!? ま、まさか新しい神様って君の事かい!?」
「はい!」
よく考えれば未来の悟飯からすれば十数年ぶりの再会である。
しかしこの地球の神となってくれる以上俺も挨拶くらいはしておきたい、懐かしい友人同士の再会に水を差すようで申し訳ないが俺もデンデに声をかけようとして、
「へ!? フフフフリーザ!? あ、あわわわわ…」
滅茶苦茶怯えられてしまった。
…どうやら俺の事は事前に説明されてなかったらしい。
「どど、どうしてフリーザがここに…?」
「ま、待ってデンデこの人はフリーザじゃないよ、コルドさんって名前で…」
「そ、そうそう、フリーザの父親なんだが悪い奴じゃなくて、今は一緒に戦う仲間なんだよ」
怯えるデンデにこの時代の悟飯とクリリンが慌てて説明に入ってくれた。なんだかこの扱いも久しぶりである。
話を聞いたデンデもなんとか落ち着きを取り戻してくれた。
「…そ、そうでしたか。僕の名前はデンデ、よろしくお願いします」
「ああ、聞いての通りワシはコルドという、この地球の神、引き受けてくれたことを感謝するぞ」
「ほ、本当に仲間なんですね…、あのフリーザの、お父さんが…」
…デンデからしたら複雑な話だ。
フリーザは自らの故郷を襲った悪党、その父親が恩人たちの仲間になっているのだ。フリーザ本人ではないとはいえ思うところがあるのは仕方ないだろう。
「…ナメック星の事だが、我が息子フリーザが随分と非道を働いたようだ、息子に代わり謝罪をさせてくれ。本当に申し訳ないことをした」
「い、いえ、…貴方に謝られても仕方がない。今、悟飯さん達の味方というなら僕から言うことは何もありません」
フリーザの非道、そしてコルド大王の悪事、俺には関係ないことだという思いもある。しかしこちらはともかく相手からすればそうはいかない。
今後もこの体で、コルドとして生きていく以上、その全てとはいかないが今の様に向き合う必要のある場面と出くわすこともあるかもしれない。
「よし、じゃあオラとコルドでドラゴンボールを集めてくる。悟飯はもう特訓はいいからデンデと一緒にいてやれ」
「え? で、でも…」
「いいから、ほら行こうぜコルド」
色々と考え込んでいると悟空に声をかけられた。
確かに俺はこの場にいない方がいいと思う、正直な話その誘いはありがたい。
もしかしたら悟空はデンデに気を使ってくれたのかもしれない、…あるいは俺に対しても。
「よし、同行しよう。未来の悟飯よ、お前も皆に積もる話があるだろう。セルゲームまではこの神殿で休息をとるといい」
「わ、分かりました。…コルドさんも十分に休んでください」
「当然だ、互いに残された時間はあくまで体を鈍らせない程度の修行に抑えよう。では孫悟空、頼んだぞ」
「おう!」
悟空の肩に手を置いた途端、一瞬のうちに景色が切り替わる。
瞬間移動、相変わらず便利な技である。
その後、カプセルコーポレーションに向かいブルマからドラゴンレーダーを受け取った後、俺と悟空は2人で散らばったドラゴンボール集めだした。
道中、特に問題はなく、7つのドラゴンボールはあっという間に集まった。
集まったドラゴンボールを持って神殿に向かう道すがら悟空が口を開いた。
「…なぁコルド、おめぇたち修行はどうだった? おめぇも未来の悟飯もかなり力上げてるみたいだけどよ」
「うむ、お前たち同様、限界まで鍛え上げたつもりだ」
「そりゃあ楽しみだ。セルゲームでも頼りにしてるぜ」
…実際のところ、悟空はセルの強さをどう捉えているのだろうか。
原作では公にはしていなかったが悟飯が潜在能力を引き出せば確実にセルに勝てるという魂胆だった。果たしてこの世界でも同じ考えなのだろうか?
「特に未来の悟飯の潜在能力は凄まじいものだ、もしかしたらお前すら超えている可能性すらある、…この時代の悟飯同様にな」
「…! そうか、おめぇも気づいたんか」
少し、探りを入れてみる。
俺が現代の悟飯の眠れる力を知っているのは勿論原作知識があるからだ。しかしそれを抜きにしても、未来悟飯の力が悟空を超えているというのも嘘ではない。
俺の見立てでは2人の悟飯は確かに孫悟空を上回っているだろう、あくまでその真の力を引き出すことができればの話だが。
「孫悟空よ、お前はどう見る。悟飯が真の力を解放すればセルを倒せると思っているのか?」
「…はっきり言う、分かんねぇ。確かに悟飯の潜在能力はすげぇさ。でもセルの隠された力もそれに匹敵するんじゃねぇかとオラは考えてる」
やはり原作にあった孫悟空の自信が失われている。
俺に修行の成否を聞いたのもそれが原因か、悟空の目から見ても勝てるかどうかはかなり厳しいものがあるのかもしれない。
「何か作戦がある、というわけでもないのだな?」
「ああ、悪ぃがこればっかりはやってみねぇと分かんねぇよ。少なくとも今のオラたちにできることはもうないと思ってる」
悟空も、そして悟飯も現段階で限界まで鍛え上げた。そしてピッコロやベジータ、トランクスも再び精神と時の部屋に入り更に仕上げてくるはずだ。
悟空の言う通り、今はセルゲームに備えて体を休め、万全の状態でその時を迎えることが俺たちにできる唯一の事だ。
「それよりおめぇはどうなんだ?」
「なに?」
「かなりパワーアップしたみたいだけど、おめぇの方はセルを倒せる自信はあるんか?」
「…どうだろうな。ワシとて1年間の修行、ただ遊んでいたわけではない。しかし勝つ自信を問われると、情けない話だがあるとは言い切れん」
嘘偽りのない本音を答える。
俺もまた大きなパワーアップを遂げた。今なら完全体のセルともやりあうことはできる、だがあの異常ともいえる超パワーを前にどこまで張り合えるかは分からない。
「だが、無論勝つつもりではある。それこそ如何なる手を使おうともな」
「どんな手を使っても勝つ、か…。…そうだな、お互い頑張ろうぜ」
悟空と話をしているうちに神様の神殿に着いた。
7つ揃ったドラゴンボールは神殿に保管されることになった。ここなら安全だし、セルゲームを終えた後、神龍にセルの犠牲となった人々の蘇生を願う必要がある。
ドラゴンボールをミスターポポに預けたところで解散の流れになった。
「よし、それじゃあオラは家に帰るけどよ、コルド、おめぇはどうする?」
2人の悟飯は神殿へと泊まることとなった。トランクスはカプセルコーポレーションに帰るつもりらしい。
特に行く当てもないので俺も悟空と共に帰り、孫家に泊めてもらおうとしたところである考えが俺の頭をよぎった。
「ワシも共に…(あ、そういえば…、確かこのタイミングだった、か?)」
俺の考え、それは孫悟天のことである。
孫悟空とチチの第二子、孫悟飯の弟である孫悟天。…確証はない、しかしこのタイミングでチチがその命を宿すという説を聞いたことがある。
(だとすると下手したら俺の行動次第で悟天の存在が消えてしまう可能性が…)
いや、実際どうなのかは勿論分からない。
分からないのだが、迂闊な行動をとれないのもまた事実。
もし、俺がずかずかと悟空とチチの2人っきりの時間に踏み入ったことで未来が変わってしまうなんてことが起きるのだけは避けねばならない。
…念には念を、だ。
「あ、あー、そ、そうだな、ワシの事は気にするな。お前1人で戻るがよい」
「? そうか、分かった。じゃあまたな」
結局、瞬間移動で飛び立つ悟空を見送ることとなった。
これでよかったのだと思う。多分。
(…さて、これからどうしたもんか)
今になって気づいたが、現状俺は孫家に居候している立場である。悟空の家に帰れないとなったいま割と真剣に行く当てがない。
デンデの事もあるため、悟飯たちと一緒に神殿に泊めてもらうというのも考えものである。
…ここ数日はカメハウスに泊まり込んでいたし、頼めばセルゲームまで泊めてもらうこともできるかもしれない。クリリンやヤムチャたちもいるんだ、1人くらい増えても問題はないだろう。
のろのろとカメハウスに向かおうとしたところでトランクスに声をかけられた。
「コルドさん、よかったらうちに来ませんか?」
「なに? しかしいいのか?」
「はい、母さんにも話はしています」
「それは助かる。正直行く当てがなくて途方に暮れていたところ、喜んで世話になるぞ」
「あ、あはは」
苦笑いを浮かべるトランクス、情けない大王で申し訳ない。
ということで、俺はしばらくカプセルコーポレーションに厄介となることになった。
無事にセルゲームを乗り越えることができたら住むところも本格的に考えなければ。いつまでも孫一家にお世話になり続けるわけにはいかない。
「…ん? ちっ、何故貴様がここにいる」
(げ、ベジータ)
「まぁいいだろう。ちょうどいい少し付き合え」
その後、ばったりとベジータに出くわし、重力室でたっぷりと修行に付き合わされた。
疲れた。