「くたばれ!」
「な、何故だぁ!?」
目の前でフリーザがトランクスによって圧倒されているのを見上げながら考える。
(これどうしようもなくね?)
コルド大王の死、その未来を何とか変えようと意気込んでいたがこの状況になるまであっという間だった。
だって宇宙船から降りたらもうそこにトランクスがいるんだもん。行動を起こす暇どころか言葉を発する暇もなかった。未来を改変する隙なんてどこにもないでやんの。
周囲には先ほどまで一緒に宇宙船に乗っていた部下たちが既に事切れ、倒れ伏している。フリーザも時間の問題だろう。あ、地面に叩き落された。
「フリーザーッ!」
そしてトランクスが両腕をシャカシャカと動かしたかと思うとその手から強力なエネルギー弾が放たれた。それは地面に着弾すると同時に強烈な爆風と砂煙を巻き上げる。
「ぐ、この程度で俺を…!」
「たぁー!」
「なっ!?」
砂煙から飛び上がるフリーザ、その先には剣を最上段に構えたトランクス。
もう見るまでもない、フリーザは一刀両断、そのままバラバラにされ、そしてトランクスによって完全に消し去られた。
(やばい、結局なんの作戦も思い浮かばなかった)
目の前に降り立ち、こちらを向き鋭い視線を向けてくるトランクス。
(ど、どうする、いきなり命乞いか?いや、それとも全力で逃げてみるか?案外真正面から戦えばなんとかなるかも?)
様々な考えが頭の中を駆け巡るが、どれもこれも役に立たない策ばかりだ。
それよりもこの沈黙状態がまずい気がする。問答無用で攻撃が飛んできてそのままお陀仏なんて可能性もあるのだ。場を、場を繋げねば!
「や、やるではないか。素晴らしい、まさに想像以上だ。我が子フリーザを一瞬で倒してしまうとはな。」
「…」
怖えぇー!めっちゃ無言で見てくる。どうしろってんだよマジで。
考えもまともに纏まらない中、なんとか話を続けようと口を開く。
「どうだ、フリーザの代わりに我が息子にならんか? 宇宙一強いおまえこそ我が一族たる資格があるというものだ」
いや、何言ってんだろねほんとに。テンパってるとはいえ本来のコルド大王と同じことを言うことになるとは思わなかった。
何を考えてるんだ俺は。原作再現でも目指してんのか。
「っ…」
(や、やばい、怒らせたか…?)
一瞬、トランクスの表情が歪んだ気がした。
まぁいきなり息子になれというのも意味が分からんし怒るのも当然か。コルド大王はいったいどういう考えでこの発言をしたんだろうか。
と、とにかく話題を変えなければ。
「と、ところでそれは素晴らしい剣だな。あの強靭なフリーザの体をいとも簡単に切り裂いてしまうとは…。どれ、ちょっと見せてくれんか?」
もうだめだわ、完全に原作再現ルートに入ってる気がする。
いや、別に狙ってやってるわけではない。こっちも必死に会話を続けようと精一杯なんだよ!
誰に言い訳しているのか心の中で必死に弁明しているとトランクスから剣を投げ渡される。それを落とさないようになんとか受け止めその刀身をまじまじと眺める。
「ほぉ、なるほど。この鋭さ、よく磨きこんでありそうだ。手入れも十分にいきとどいていると見える」
正直剣の良し悪しなんてまるで分からないがとりあえず分かっている様なふりをして、それらしい雰囲気を醸し出す。
「うーむ、本当に素晴らしい。これほどの業物は初めて見るかもしれん。いや、大したものだまったく」
「…もう十分だろう」
「う、うむ」
このまま3時間過ぎればいいのにと、剣を褒め続けていたがそんな願いも空しくトランクスに剣を返すよう急かされ、泣く泣く剣を投げ返した。
流石に切りかかるような真似はしない。そんなことすれば見事に完全なる原作再現となってしまう。
さて、これでいよいよ会話のネタも尽きてしまった。ここから先はまったく未知の領域だ。
「…」
「…」
無言の時間が流れる。いっそのことこのまま回れ右して宇宙船乗って帰ってしまおうか。
などとそんな馬鹿げたことを考えているとトランクスがその口を開いた。
「…コルド大王、あなたに話しておかなければならないことがあります」
「へ?」
なんだこれ、こんな展開知らないぞ。そう呆気に取られているとトランクスは後ろに振り向き遠くの岩陰に向けて声を張り上げた。
「これから孫悟空さんを出迎えに行きます! 一緒に行きませんか!」
「「「な、なに!?」」」
いったいいつの間に近づいてきていたのだろうか。岩陰から顔を覗かせていた数人の人影から驚愕の声が聞こえてきた。
(お、おぉ! 本物のZ戦士達だ!)
よく見てみるとそこには、ベジータや、ピッコロといったドラゴンボールの主要メンバー達がいた。
しかし、そのことに感動する暇もなくトランクスがこちらに話しかけてくる。
「勿論、あなたにも来ていただきたい。話は孫悟空さんも合流した後に行います。構いませんね?」
その問いに俺は黙って頷くことしかできなかった。
△
何故か超サイヤ人に変身することができる謎の少年。そしてフリーザとよく似た姿をした大柄の宇宙人。
戦士たちは戸惑いながらもその二つの背中を追いかけるように飛んでいた。
「ちっ、いったい何がどうなってやがる」
ベジータが苛立ちを隠そうともせずに言い放つ。
「さぁな。だが今はついていってみるしかないだろう」
「で、でもあまり悪い人って感じじゃありませんよ」
「なら何故奴はあの大男を始末せん。それに超サイヤ人になったことといいあまりにも不審な点が多すぎる」
悟飯とピッコロの会話に割り込むようにヤムチャに抱えられながらついてきていたブルマが疑問を口にする。
「ね、ねぇ、あの角の生えた大男がフリーザなの?」
「いや、ちがう。フリーザはあの超サイヤ人が倒してしまった。あっというまにな。あの大男はナメック星でも見たことがない。姿からしてフリーザと同族に違いないが…」
正体に心当たりがあったのか、ベジータが忌々し気にその疑問に答えた。
「…聞いたことがある。今でこそフリーザ共はフリーザ軍を名乗り、宇宙の支配者面をしていやがったがその昔はコルド軍という名称だったらしい、つまりフリーザの父、コルド大王がその指揮をとっていたということをな」
「じ、じゃあ、あ、あいつはフリーザのお父さんってこと…?」
「さぁな。俺が生まれてすぐにコルド大王は軍の指揮権全てを息子であるフリーザに譲ったらしい。だから俺もコルド大王の実際の姿を見たことはないが…」
ベジータは冷や汗を流しながらも不敵に笑った。
「おおかたカカロットの野郎に敗れたフリーザが父親に泣きついて一緒に地球に復讐に来たってところだろうぜ。つまり奴こそがフリーザの父、コルド大王ってわけだ」
戦士たちの間に沈黙が流れ、誰かがゴクリと、唾を飲み込んだ音がした。
「じ、じゃあなんであの男の子はそんな悪い奴を倒さないわけ!? あの子は超サイヤ人になってフリーザを倒しちゃったんでしょ!?」
「そんなこと俺が知りたいぐらいだ。ちっ…、なぜフリーザ同様さっさと殺してしまわんのだ…」
その時、最悪の可能性を思いついたクリリンが顔を青ざめさせた。
「ま、まさか、あの二人、仲間ってわけじゃあないよな…?」
「その可能性はないとは言い切れんが、もしそうだとしたらどうしてフリーザを殺したというんだ」
戦士たちは様々な憶測を交わしながら彼らの正体を考察するが一向に答えは出ない。
やがて痺れを切らしたのかベジータが荒々し気に言い放った。
「ふんっ、どうせここでうだうだと話をしても答えはでないんだ。そんなに気になるなら奴らに直接聞いてみるがいい」
「どうやらそうするしかないみたいだな。…!? 見ろ、奴らが降りるぞ!」
気づけば、前方を飛んでいた二人が地面に降り立っていた。
フリーザをも圧倒する謎の超サイヤ人、そしてフリーザの父親であろう謎の宇宙人。これから帰ってくるであろう孫悟空。
積み重なる疑問、真実を解き明かすため、戦士たちは二人を追い、地上に向かうのであった。