大王転生   作:イヴァ

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セルゲームの幕開け、孫悟空の意外な作戦

 セルゲーム開催当日、俺たちはひとまず神様の神殿に集合し、全員でセルゲームの会場へと向かうことになった。といってもベジータだけは一足先に会場へ飛んで行ってしまったが。

 後は悟空の到着を待つのみ、悟空を除いた戦士たちは復活したドラゴンボールについて話し合っていた。

 

「ええっ! 1度蘇らせた人間はもう生き返れないのか!?」

「す、すみません。最初に言っておけば…」

「そ、そんな…」

 

 願いの数が増え、叶えられる願いの範囲も変わったドラゴンボール、それにはデメリットも伴う。それは以前のドラゴンボール同様、2回目以降の死者蘇生が叶わないという事。

 生憎、俺が精神と時の部屋から出た際、既にドラゴンボール復活の儀式が終わっていたため、口を出すことはできなかった。しかしそこは大した問題ではない。

 

「落ち着け、話を聞く限りナメック星のポルンガというものは何回でも同じ死人を生き返らせることができるのだろう? ならばもしもの事があればナメック星人たちに頼めばいいではないか。彼らなら快く協力してくれるだろう」

「あ、そうか、その手があったか! ナイスアイデアだぜコルド!」

 

 変に神龍の性能を変えて願いの数が減ってしまうなんてことになれば、後々どんなしっぺ返しがくるか分からない。これくらいの助言をしておくのがちょうどいいだろう。

 懸念が無くなった戦士たちが安堵の表情を浮かべる。

 

「よっ、ん? 何話してたんだ、おめぇら」

「悟空! そうだな、お前にも話しておかないと…」

 

 そこに瞬間移動で悟空もこの場に到着し、クリリンがドラゴンボールの事を説明した。

 

「…そっか、それなら安心だな。よし、それじゃあ行こうぜ」

 

 準備は万端、死人が出たときにどうするかの共有もできた。

 俺、そして戦士たちはセルゲームの会場に向かって飛翔する。

 運命の日が、この星の命運をかけた戦いがいよいよ訪れようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 セルゲーム開催まであと僅か、会場に着いた俺は辺りを見渡した。

 リングの中心で腕を組みながらその時を待つセル、それを睨みつけるベジータ、少し遠くにミスターサタンの姿も確認できた。

 そんななか、俺たちに近づいてくる人影の姿が視界に映る。

 

「コルド、クリリン、やはりお前たちも参加するのだな」

「お前は…、16号! 無事だったんだな!」

 

 思えば俺はここ数日、カプセルコーポレーションに泊まっていたが16号の姿は見なかった。

 おそらく、原作に比べて受けたダメージが少なかったため、修理を必要としなかった。それでいままで姿を隠していたがセルゲームの話を聞き、彼もまたセルとの戦いに参加しに来たのだろう。

 

「な、人造人間…! いったい何の用だ! まさかまたお父さんを狙って…」

「落ち着け悟飯、敵対の意思はないようだ。そうだろう?」

 

 突如現れた16号に未来の悟飯とトランクスが警戒するが、なんとかそれを宥める。

 

「ああ、俺も一緒に戦う。必ず役に立って見せるつもりだ」

「…17号の事、すまなかった。ワシでは奴を守ることができなかった」

「…俺もまた18号を守れなかった、お前に罪はない」

 

 17号を連れて逃げてみる、と16号を説得した時の事を思い出す。しかし結果として、セルは完全体となってしまった。

 

「全ての罪は俺の生みの親、ドクターゲロにある。俺はそれを清算するためにここにやってきたのだ」

「16号…」

 

 しかしそれでも16号に俺を責めるような気配は感じない、むしろ自分を責めているような気すらする。彼は命を懸けて戦うつもりなのだろう。

 あまり無茶をするな、なんて虫のいい言葉をかけることはできない。

 俺もまた自分のせいでパワーアップを果たしたセルを命懸けで殺しに来たのだから。

 

「時間だ、どいつからでもいい。さっさと出ろ」

 

 そしてその時が来た。

 セルの言葉が戦いの始まりを告げる。そしてそれに応えるように悟空がリングに上がろうとする。

 そこに横やりを入れようとする者が現れた。

 

「勿論、チャンピオンの俺から…、ておい! お前、何をっこ、こら…!」

「まぁまぁ、世界チャンピオン殿、何も貴殿から戦う必要もあるまい。ここは我々に任せてくれたまえ」

「お前、俺を誰だと…い、痛たたた、そんなに強く押すんじゃない!」

 

 セルに挑もうとするサタンを力づくで抑えておく。皆から怪訝な目で見られるが仕方ない。

 彼なら死ぬようなことはないと思うが万が一がある。もし原作同様にセルが手加減しなければリングは血の海、そんな光景は見たくない。

 抗議の声を上げるサタン、納得はいかないだろうがこれから始まる戦いを目にすればすぐに静かになるだろう。

 目を丸くした悟空もすぐに調子を取り戻し、今度こそリングへと上がった。

 

「よーし、じゃあオラからやらしてもらおうかな」

「いきなり貴様からか、孫悟空。楽しみは最後までとっておきたかったのだが…」

 

 悟空が構え、セルも腕組みを解いた。

 静寂、そして…

 

「…こい!」

 

 セルの言葉を皮切りに、悟空がセルに突撃する。

 悟空の蹴りが、拳がセルを襲うが、セルはその全てを防いでいる。そして悟空の猛攻の合間を縫ったセルの反撃が悟空を捉えた。

 

「くっ…、でりゃあ!」

 

 悟空も負けじと反撃を繰り出すが、やはりセルには届かない。悟空の怒涛の勢いで繰り出されるラッシュをセルは完全に見切っている。

 

(強い、強すぎる。完全に悟空が押されている…!)

 

 やはり俺の知るセルの強さが大幅に上がっている。 

 原作でもセルの方が上だったとはいえ、まだ戦いにはなっていた。セルが力を抑えていたというのもあるが少なくとも互角のような戦いを悟空は繰り広げていた。

 それに比べて、今眼前で行われている戦いは明らかにセルが悟空を上回っている。

 そしていままで受け身に徹していたセルが悟空に攻撃を仕掛け始めた。

 

(まずいセルがペースを上げてきた、このままでは…、ん?)

 

 しかし悟空もまたセルの攻撃を防ぎ、躱す。

 2人の力の差を考えるとセルが攻めに転じれば悟空はひとたまりもないと思っていたが、思いのほか戦えている。

 流石は孫悟空、単純な力で劣っていても彼には優れた戦闘センスや積み重ねてきた経験がある。今のセルでも孫悟空を倒すことは一筋縄ではいかないのかもしれない。

 …しかし、本当にそれだけなのだろうか、悟空の戦いにほんの少しの違和感を感じる。

 

「流石に戦いなれているな孫悟空」

「…そりゃどうも。でもおめぇ、まだまだ力隠してんな?」

「フッ、貴様もそうだとありがたいのだがな」

 

 激しさを増す2人の戦いを戦士たちは固唾を飲んで見守る。

 

「す、すげぇ、なんて戦いだ…。でも悟空の奴も負けちゃいない…、も、もしかしたらなんとかなるかもしれないぞ!」

「…そうでしょうか?」

「へ?」

「感じるんです、お父さんの戦いから…何か違和感を」

「違和感って…、悟空が手を抜いているってことか!?」

「いえ、間違いなくお父さんは全力で戦ってます。…でも、何かが変だ」

「…僕も、そう思います」

 

 俺と同じ違和感を未来の悟飯も感じ取ったようだ、そしてこの時代の悟飯も。

 2人の悟飯の言葉に戦士達に困惑が広がるが、そんなギャラリーを置いて戦いは進む。

 激しい殴り合いの中、弾かれたように悟空が上空へと飛び上がった。

 

「か~め~は~め~…」

「…何を考えている孫悟空、そんな位置からかめはめ波を放てばこの星が吹き飛ぶぞ!」

(これは…!)

 

 前世で見たことのあるシーン、間違いない、瞬間移動かめはめ波だ。

 実は戦いが始まる前から考えていたことがある。それは悟空の瞬間移動かめはめ波でダメージを受けたセルに俺もすぐさま追撃を加えることだ。

 俺の記憶ではセルはあの攻撃で体の半分を失っていた、今の俺が全力で攻撃すれば残りの体を消してしまうことも可能の筈。

 皮算用に過ぎない稚拙な作戦だが、俺もいつでも飛び出せる準備をしておく。

 

「よ、よせ、孫! この星を破壊する気か!?」

「な、何考えてんだ悟空の奴…!」

「…なるほど、そういうことか」

(ま、まさかセルの奴…!?)

 

 握った拳に力が入る、そこで気が付いた。

 慌てる戦士達に反して、セルは焦ることなく落ち着いて上空で気を高め続ける悟空を目を細めて睨んでいる。

 背筋を伝う冷たい感覚、嫌な予感を感じ、悟空に警告するため大声を張り上げる。

 

「よせっ孫悟空! 気づかれてるぞ!」

 

 しかし、あと一歩遅かった。

 かめはめ波を溜めた悟空の姿が消える、そしてセルのすぐ側に現れた孫悟空が気を解き放とうとして、

 

「そこだ!」

 

その体を、孫悟空の首を、セルの手刀が捉えた。

 

 

「ご、悟空!?」 

(まずい!? 完全に急所をやられたっ、…ん?)

 

 首を切り裂かれた孫悟空、その姿が薄れ、煙の様に消えてゆく。

 

「…残像拳、か」

「へへ、当たり~」

 

 セルのすぐ側に悟空が現れる。

 セルは悟空の瞬間移動かめはめ波を完全に見切り、カウンターすらも仕掛けてみせた。しかし悟空もまたそれに反応し、回避して見せた。

 

「なんという攻防…! 凄まじいレベルの戦いだ…!」

 

 高次元の戦闘にピッコロが驚愕の声をあげる、しかし今の攻防に俺の中の違和感がより大きくなるのを感じた。

 

(…今のセルのカウンター、なぜ悟空は反応できた?)

 

 瞬間移動かめはめ波、あの必殺の一撃に初見で対応したセルも凄まじいが、悟空の咄嗟の判断にも目を見張るものがある。彼の卓越した戦闘センスがそれを可能にした、と説明することもできる。しかし、それだけであの超スピードのカウンターを見切ることができるのだろうか。

 

「…いい加減にしろ、孫悟空」

 

 俺が今の攻防について考えているとセルが口を開いた、その声には僅かに怒気が含まれている。

 

「貴様、私に勝つ気で戦っていないな」

「…なんのことだよ」

「とぼけるな、貴様は最初の攻防で私に敵わないと悟り、防御や回避を重視した戦いに切り替えた。今の攻撃もそうだ、貴様は私のカウンターに反応できたわけではない、最初からかめはめ波を撃つ気はなかったのだ、だからこそ避けることができた、違うか?」

「へへ、全部お見通しって訳か」

「何故だ、何故そのような消極的な戦いをする。この私を倒すつもりはないのか?」

 

 セルの説明により、今まで感じていた違和感の正体が分かった。

 孫悟空は本気でセルを倒そうとしていない、受け身の戦いに徹することでなんとかセルと渡り合っているのだ。

 おそらくその理由は、戦いを長引かせ、少しでもセルを消耗させるために。

 

「別にお前を倒すつもりがねぇ、って訳じゃねぇよ。…ただ、それがオラじゃなくてもいいってだけだ」

「なんだと…?」

「悔しいが、オラじゃおめぇには敵わねぇ。でもよオラを超える戦士がおめぇを必ずぶっ倒す、それがオラの狙いで、作戦だ」

 

 俺の睨んだ通り、悟空はセルを消耗させ、自分の後に戦う悟飯が少しでも有利に戦えるようにするのが狙いなのだろう。

 しかしそれは悟飯が真の力を引き出したとしてもセルに勝てないかもしれない、と悟空が本心から考えている証拠でもある。

 事前に聞いていたとはいえ、いざその答えが真実だと目の当たりにすると、その事実が俺の心に重くのしかかる。

 

(…それほどまでに強いのか、この世界のセルは!)

 

 複数人で挑むこと前提の彼らしからぬ作戦、悟空もまた悟空なりに、なりふり構わずセルを倒そうとしているのだ。

 

「…なるほどな。しかしこんな消耗戦を仕掛けられては、私はちっとも楽しめん」

 

 その作戦がセルの不興を買うこととなる。

 目の前の敵、孫悟空に対する興味がセルから失われてしまった。

 

「このまま何の張り合いもない戦いをだらだら続けるのは御免だ。だが、貴様の言う孫悟空を超える戦士、というものには私も興味がある」

 

 それが最悪の展開を引き起こすこととなる。

 

「そこで、このセルゲームに一つルールを付け加えることにした」

「ルールだと?」

「なに、簡単なテストを設けるだけだ…、このようにな」

 

 そしてセルは己の尻尾を広げる、そこから小さな影がいくつも飛び出してきた。

 子供のような、青い体をした生命体がその産声をあげる。

 

(あ、あれは…!)

「「キキキ…」」

「な、なんだあの化け物は!?」

「こいつらの名前はセルジュニア、まぁ私の子供のようなものだ」

「まさかテストというのは…!」

 

 生み出されたセルジュニア、その数はちょうどこちらの戦士と同数だ。

 ここまでくれば嫌でも理解できる、セルの用意したテストというのは…

 

「私の付け加えるルール、それはこの私と戦うに値する実力を示すこと、つまりこのセルジュニアを倒したものだけがこのセルと戦う権利を得る、ということだ!」

「な、なんだと!?」

「勿論、貴様もこのテストを受けてもらうぞ孫悟空。こいつを倒すことができればまた相手をしてやろう」

「くっ…!」

「さぁ、テストを始めろセルジュニア! この私と戦い得る戦士をあぶりだすのだ!」

「「キキー!」」

 

 セルジュニアが孫悟空に、そして試合を観戦していた俺達にも向かってくる。

 1人につき1体、戦士たちは襲い来るセルジュニアを迎え撃つべく気を高める。

 

「気をつけろ皆の者! こいつら、途轍もなく強いぞ!」

「そ、そんな…」

「ぐ、くそったれが!」

 

 あちこちで戦いが巻き起こる、地球の命運をかけたセルゲームは混迷を極めることとなった。

 

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