「キキキ…!」
(まさかこんな展開になるなんて…!)
セルジュニアの相手をしながらも思考を回す、原作通りには進まないと覚悟はしていたが想像を超える展開につい心の中で悪態をついてしまう。
「このちび共がぁ!」
「と、父さん! このままでは皆が…」
「他人の心配をしている場合か! 目の前の敵に集中しろトランクス!」
だというのにセルジュニアの強さは原作通り、あるいはそれ以上か、とにかくとんでもない強さだ。
ベジータやトランクス、2人の悟飯など、サイヤ人組は戦えているものの、それでも苦戦している様子だ。
このままではまずい、なんとかして状況を打破しなければならない。
(悟飯が超サイヤ人2に目覚めるのを待つというのもある、だがそれは…)
悟飯が覚醒すれば状況は変わる、だがそれには少なからずの犠牲が伴うだろう。
それに流れも原作とは異なっている、もしかしたらこのまま全滅なんてこともありえるかもしれない。
(…それだけは絶対に避けないと、俺のせいで皆を死なせてしまう訳にはいかない!)
そもそもの責任は俺にある、だというのに誰かをあてにするわけにはいかない。
他ならぬ俺自身がこの状況をなんとかしなければ。
「(やるしかない、…俺がセルを倒す!)はぁぁぁ!」
「キキ…?」
突如高まりだした俺の気に、相手をしていたセルジュニアの攻撃が止まる。
このまま気を限界まで高め、姿を第二形態へと変化させる。
「かあぁぁぁぁぁ…!」
「む…、なんだ?」
変化しても尚、気を高め続ける。俺の急激なパワーアップにセルもこちらを注目している。
やがて俺の姿が更に変化していく、その戦闘力に相応しい新たなる姿へと。
衝撃で舞い上がった土煙が俺の姿を覆い隠した。
「な、なんだこの馬鹿でかい気は…、まさかコルドだというのか…!」
土煙の中、周囲の視線が俺に集まるのを感じる。俺と戦っていたセルジュニアは驚愕してこちらの様子を窺っているようだ。
ちょうどいい、俺は煙の中からセルジュニアに向けて指先からビームを放つ。
「…ギッ!?」
それはセルジュニアの頭を吹き飛ばした、頭を失い、パタリと人形のように地面に倒れるセルジュニア。
万が一を考え、残された胴体も吹き飛ばしておく。その攻撃で俺を覆っていた土煙が晴れた。
「コ、コルドさんの姿が…!?」
「…ちっ、あの姿…フリーザの野郎を思い出すぜ」
第二形態を超え、さらなる変身を遂げた俺。その姿は最終形態のフリーザ、というよりかは変身前のクウラに近いだろう。
とにかく、2度の変身を経てパワーアップした俺はセルのもとにゆっくりと歩いて向かう。
(他のセルジュニアも片づけるべきか? いや、今は少しでもエネルギーを温存したい。奴らを倒すのはセルを倒した後だ)
「ほう…、孫悟空の言っていたことはまんざら嘘でもないということか」
奴は勘違いしている、あくまで悟空の言っていた戦士は悟飯のことで俺ではない。だが、そんなことはもう関係ない。時間稼ぎや悟空の様に消耗狙いの戦いをするつもりはないのだ。
やがて俺はリングへと辿り着いた、セルは己の前に立ち塞がる脅威を前に笑みを浮かべる。
「ククク、まさかお前が一番に突破するとはな、驚いたぞコルド大王。だがなんとなくそんな気もしていたぞ…、流石は我が父、というだけはある」
「…ふん、お前のような息子を持った覚えはない」
しかし認めるのは癪だが、セルの言葉もあながち間違いではない、こいつは間違いなく俺の細胞が生み出したのだ。
「これでお前は三度、私の前に立ち塞がることとなる。面白いものだ、言うならば運命というやつかもしれんな。…フフ、少々陳腐な表現だったかな?」
そして細胞だけでない。
セルの完全体を防ぐタイミングはあった、ジンジャータウン、17号と18号の破壊、そのチャンスを俺は自身の甘さ故に逃し続けた。
俺の細胞が、甘さが、行動が、命が、俺の全てが今のセルを、この怪物を生み出したというのならば、俺はその責任を取る必要がある。
だからこいつは、この俺の手によって死ななければならない。
(セル、お前はこの俺に…、殺されるべきなんだ…!)
決意を、そして殺意を胸に抱き、気を全開にする。
今の俺の戦闘力は先程の悟空を完全に上回っている。それでもセルは余裕を崩さず、奴もまた己の気を高めてみせた。
互いに言葉はなく、沈黙が周囲を支配する。そしてその静寂が破られた。
「…来い、コルド大王!」
「いくぞ、セル!」
そして俺と奴の拳が衝突し、それと同時に空気が爆ぜた。
「「はぁぁぁぁぁぁ!!」」
互いに声をあげながら殴り合う。
俺の拳が奴に突き刺さり、セルの蹴りが俺に炸裂する。激しい打撃と打撃の応酬、大気を震わす俺たちの殴り合いに戦士達が驚愕する。
「すげぇ…、コルドの奴、セルと互角に戦っている!」
「い、いいぞ! コルド、やっちまえ!」
皆が何かを言っているが、今の俺にそれに反応する余裕はない。
「ふはははは! 素晴らしい、その調子でまだまだ私を楽しませてくれ!」
「ぬぅぅ…!」
傍から見れば確かに互角に見えるだろう、しかし、俺は実際に奴と拳を交えることでその恐ろしさを痛感していた。
(強い! パワー、スピード、そして技のキレ、全てのレベルが異様に高い! これが完全体のセル…!)
セルの強さはまさに完全無欠、と表現するほかない。
確かに俺は孫悟空よりも強くはなった、しかし実戦では戦闘のセンスや経験などと、単純な数値だけで測れない要因も作用してくる。
悔しいがセルは俺と違いそのどれもが一級品、戦闘力は互角とはいえこのまま殴り合いを続けても勝ち目は薄いだろう。
仕切り直すために一度距離を離したとしたところでセルが俺に二本の指を向けた。
「魔貫光殺砲!」
「っ!(危ねぇ!?)」
螺旋を描く光線を上半身を反らして回避する。
恐ろしいほどまでに凝縮されたエネルギー光線。溜めのモーションもなしにこれほどまでの威力の魔貫光殺砲を撃つことができるセルに対してさらに危機感が募る。
攻撃を躱した俺にセルはすぐさま逆の手を振るった。
「逃がすか!」
「ぐっ! なんだ!?」
同時に俺の体が切り裂かれ出血する、傷は浅いがまったく技を捉えることができなかった。
「そらそら! さぁどうする!」
セルがまた腕を振る、その手の動きを頼りに咄嗟に回避する。
すると、俺が先程までいたところにまるで刃物に切られたような跡ができていた。
(く、不可視の斬撃! このリングを建てたときに使ってた技か!?)
うっすらと漫画でそんなシーンがあった記憶がする。
しかしこのままではまずい。殴り合いでは分が悪い、かといって距離を離してもそれは変わらない。特にあの斬撃を回避し続けるのは難しい、斬撃の数が増えれば対処できなくなる。
なんとか状況を好転させるために記憶を探る。
(確か元はフリーザがナメック星で使った技のはず、でもあの斬撃に具体的な対処方法なんて…、ん? フリーザの斬撃…)
一つだけ、ある思い付きが頭を過る。上手くいくかは分からないが、このままジリ貧の状況を続けるくらいならここは賭けるべきかもしれない。
手を上に向け、エネルギーを集中させる。
「…む?」
「ふん!(…できた!)」
「あ、あれはまさか俺の気円斬か!?」
半分正解で半分外れ、あくまでこれはフリーザが使っていた技。
セルに向かって作り上げた気の円盤を投げつける。
「デスソーサー!」
「ふん、そんな攻撃に私が当たるとでも?」
俺の投げつけたデスソーサーはいとも簡単にセルに回避されてしまう。しかし、気の円盤はその進路を曲げセルを追いかける。
「無駄だ! そいつは何処までもお前を追いかけるぞ!」
「…はぁ、ふっ!」
「な!?」
セルはため息をついて俺のデスソーサーをいとも簡単に破壊してしまった。
そしてセルは俺を面白くなさそうに見下ろしている。
「コルド大王よ、まさかこんなつまらん技を使うとは…。あまりこの私をがっかりさせてくれるなよ」
「つまらん技だと…? フッフッフ、ならば…二つならどうだ!」
次は両手にデスソーサーを生み出す。
そして勢いよく投げようとしたところで悟空が待ったの声をあげた。
「待て! コルド、その技は…」
「黙っておれい、孫悟空!」
俺は悟空の警告を最後まで聞くこともなく技を放つ。
悟空の言いたいことは分かる、この技を放ったフリーザの末路を知っているからこそ俺にこの技を使わせたくなかったのだろう。
(そんなこと俺も知っている…! でも俺も考えなしにこの技を使っているわけじゃない!)
「ちっ、馬鹿な奴め」
俺の行動に心底がっかりしたようにセルは俺のデスソーサーから逃げ回る。だがさっきと違い、今度は2つある。
2枚の気の円盤がそれぞれ別の軌道を描き、逃げるセルを追い詰めていく。
やがて、気の刃がセルを切り裂いた。
「やった…!」
「残像だ、阿呆め」
「なっ…、おのれ!」
突如として俺の背後からセルの声が聞こえ、振り向きながらも拳を放つ。
しかしその拳はあっさりと掴み取られ、俺はあっさりと腕を捻りあげられてしまう。
見れば、俺の技に当たったかのように見えたセルの姿が掻き消えている。先の戦いで悟空が使った残像拳だろう。
「は、放せ…!」
「お前には失望したぞ、コルド大王。貴様は力こそこの私に引けを取らぬがまるでセンスがない。これならばまだ孫悟空の方が楽しめたというものだ」
セルの言っていることは尤もである。俺には戦闘の経験もセンスも何もかもが足りていない。
この世界に来て、それなりの修行をしたとはいえ長年戦い続けてきた悟空達と比べるとどうしても技術の面で劣る部分がある。
つまり俺は力こそ大きいが絶望的に戦いが下手なのだ。
「興が冷めた、もはや私が手を下すまでもない。自らの技でバラバラになるがいい!」
俺の放ったデスソーサー、2つの気の円盤は依然としてセルに向かい続けている、…セルに拘束された俺を気にも留めることなく。
「ま、まずいぞ、コルドの奴、あのままじゃ自分の技で…!」
「ぬぅぅぅ…、放せ、放さぬか!」
セルの狙いは俺に自身の放った技で自爆させることだ。気の刃が俺を切り裂いてから自分だけ回避するつもりだろう。
そして2つの刃が俺の体にぶつかり、
気の円盤がバラバラに砕け散った。
「な!?」
「かかったな、セル!」
予想外の結果にセルが驚愕の声をあげる。俺はその隙を見逃さなかった。
捻りあげられた腕と逆の腕でセルに肘鉄をぶちかます。
虚を突かれたセルは俺の肘をもろに顔面にくらい大きく体勢を崩した。同時に俺は拘束から逃れ、隙を晒したセルに怒涛のラッシュを仕掛ける。
セルは俺の仕掛けた作戦にまんまと引っかかってくれた。奴ならばすぐにあの技の弱点に気づき、俺に自爆させようとすると読んだのだ
しかし俺が放った技、2つのデスソーサーに殺傷能力なんて一切ない。あれは相手を追うだけの見せかけの刃、言うなればただの派手なフリスピーみたいなもの。
目論見が外れたセル、この戦いが始まってようやく隙を晒してくれた。俺が戦いが下手ということは俺自身よく理解している、そんな俺が戦闘で優位に立つにはこうやって小賢しく立ち回るほかないのだ。
「だだだだだだだだ!」
殴る、殴る、殴る、殴り続ける。
劣勢続きのこの戦いでようやく訪れた千載一遇の好機、このチャンスを逃すわけにはいかない。されるがままに俺の拳を受け続けるセル、俺はそんな奴を渾身の前蹴りで吹き飛ばす。地面を転がるように吹き飛ばされていくセル。
さらに追撃を加えるべく、俺は左手で右腕を抑え、右手の人差し指に全力でエネルギーを込める。フリーザが得意とするデスビームを俺なりにアレンジしたものだ。
「受けてみろ、セル! これがワシのフルパワーだ!」
そして放たれるフルパワーのデスビーム。本来の細い光線と比べると何十倍もの太さの極太のビーム、その光の奔流はセルを瞬く間に呑み込んだ。
コルド(第三形態)、つまりフリーザ最終形態に相当する変身です。
見た目は変身前のクウラを若干老けさせた感じかなと妄想してます。