大王転生   作:イヴァ

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コルドか!セルか! 勝利を賭けた最終攻撃!

(頼む、今の一撃で終わってくれ…!)

 

 セルが死んでいることを心の底から願う。

 あの手ごたえ、俺の全力の一撃は確かに決まった。しかしセルを倒しきれたかは不明だ。

 そして砂煙が晴れ、奴の姿が露わとなる。

 

「ぐ、コ、コルド大王、まさかここまで…、力を上げていたとは…!」

 

 そこには右半身が肩から抉れるように消し飛んだセルの姿があった。

 その顔には苦渋に満ちた表情が浮かび上がっている。

 

「や、やった…。コルドの奴やりやがった!」

「ち、ちくしょう! ちくしょぉぉぉ……!」

 

 素人目から見てももはや戦える姿ではない、そんなセルの姿にヤムチャが歓喜の声を上げる。

 反面、俺の心はその真逆、失意を胸に苦々しく口を開く。このくだらない茶番劇を終わらせるために。

 

「…つまらん芝居はよせ、セル。その程度の損傷、お前ならすぐに治せるはずだ」

「おや、気づかれていたとは…、こいつは残念だ」

 

 俺が指摘するとセルは一瞬で失った半身を再生させてしまった。やはりあの程度のダメージではまるでこたえない。

 ピッコロの、ナメック星人の細胞が奴に備わっている以上、例え四肢を欠損させてもすぐに再生されてしまう。セルを殺しきるにはもっと致命的な一撃を食らわせる必要がある。

 

「いや、実に見事な作戦だったぞコルド大王。この私としたことがまんまとしてやられてしまったよ」

 

 苦々しい表情を浮かべる俺や戦士達に対して、セルは悪戯がバレた子供が開き直ったかの様に飄々とした態度だ。むしろ楽し気すら感じさせる。

 

「私も貴様を見習い、騙し討ちの一つでもしてみようかと思ったがなかなか上手くいかないものだ。ククク、あらゆる達人の技を模倣できるこの私も貴様の小賢しさだけは真似できそうにないな」

 

 舐めたような態度で俺を煽ってくるセル、そんな見え透いた挑発に引っ掛かりはしない。

 だが、今の攻撃で倒しきれなかったのは痛かった。焦燥がじわじわと俺の心の中に浮かび上がる。

 そんな俺の胸中を見透かしたかのようにセルは気を高めると、力を解放する。

 

「やはり戦いとは策を弄するより、真っ向勝負でなければいかん。…こんな風にな!」

「ぐっ…!」

 

 そして放たれる無数のエネルギー波、それは押し寄せる波の様に俺に殺到する。

 なんとか防御を試みようと飛来する弾幕を防ぎ、弾き、そして回避する。しかし一発一発がとんでもない威力を持っている、それに加えてこの数、とてもじゃないが捌き切れない。

 慌ててセルから距離を開けるべく、後退するために飛翔するが、

 

「無駄だ、逃がさんぞ!」

 

 セルもまた俺を追いかけるべく飛翔する。

 必死に逃げ惑う俺、そしてそんな俺の背中を追いつつも奴はエネルギー波を撃ち続ける。

 凄まじい弾幕が辺り一帯を蹂躙する。

 

「まずい、お前たち、この場を離れるんだ!」

「ひ、ひえぇぇぇ」

 

 仲間達が、そしてサタン達も大急ぎで避難を始める。

 申し訳ないが、今の俺はセルの攻撃から逃げるのに必死でそちらを気に掛ける余裕がない。なんとか各自逃げてもらわなければならない。

 

(すまない、皆。上手く逃げてくれ!)

「ハーハッハッハッ! どうしたコルド、逃げるだけか!」

「おのれ…!」

 

 高笑いをしつつも、弾幕を張りながら俺を追いかけるセル、攻撃を躱しきれず少しづつ俺にダメージが積み重なっていくなか、俺の中にある考えが浮かんでいた。

 

(さっきの茶番、あれはただ俺に騙し討ちをやり返したかったわけじゃない…)

 

 先程のセルの茶番劇を思い返す、あたかも俺への意趣返しが目的かのように奴は語っていたが俺の直観が別の意図が隠れていると囁いている。

 流石のセルもそれだけを理由に己の四肢を自ら吹き飛ばすだろうか?そうは思えない。それにあの時確かな手ごたえを俺は感じていた。

 つまりセルの半身を吹き飛ばしたのはあくまで俺の攻撃。おそらくあの余裕の態度はその事実を隠すため。

 余計なことをせずに煙の中ですぐさま再生していれば、俺は自分の攻撃が有効かどうかも分からないまま戦い続けるしかなかったのだ。しかし奴は選択を誤った。

 

(墓穴を掘ったな、セル。確信したぞ、俺の攻撃はお前を殺し得る!)

 

 もしかしたらこの考えは誤りかもしれない、しかしそれでも今はこの推測に縋るしかない。

 先ほどのフルパワーのデスビーム、そして今も尚続くセルの攻撃で俺の体力もかなり減っている。

 このまま残された体力で逃げ回ってもいても勝ち目はない、反撃を、奴に俺の残された全てのエネルギーを用いて攻撃を仕掛けるんだ。もうそれしか方法はない。

 俺は闇雲に逃げ回りながらもなんとかセルゲームのリングに降り立った。

 

「む…? ついに観念したか!」

「セル、これからお前に最後の攻撃を仕掛ける! ワシの最後の挑戦、まさか逃げるとは言わんな!」

 

 正真正銘の最後の攻勢、俺の全てを賭けた攻撃に付き合わせるべくセルを挑発する。

 この調子で戦えば確実にセルが勝つ、ということは奴も感づいているはず。しかし奴の性格上、挑発を受けて俺の挑戦から逃げるような真似はしないはずだ。

 俺は気を限界まで高めつつ、リングの上で剣を抜き放つ。そして気を纏わせながらそれを構えた。

 

「ククク、いいだろう! 受けて立つぞコルド大王!」

 

 俺の予想通り、奴はエネルギー波の連射を止め、自身の右手に気を集中させる。俺の剣に手刀で対抗するつもりなのだろう。

 手刀、とはいえセルの実力を持ってすればこの世のどんな武器さえ凌駕する名刀と言っても過言ではない。

 奴は勢いのままに物凄い速度で俺に迫ってくる、互いに全力を尽くした最後の攻防が始まろうとしていた。

 

「「いざ、勝負!」」

 

 リングの上で俺の剣とセルの手刀が激突する。おおよそ生身に切りかかったとは思えない金属音が鳴り響く。俺の剣はセルの腕を切り裂けなかったが、奴の手刀もまた俺の剣を打ち砕くことはできなかった。

 そのまま鍔迫り合うように互いに睨みあう。

 

「ぬぅぅぅ…!」

「ククク…、はぁ!」

 

 そして拮抗が崩れる、セルが俺の剣を弾き、俺の肉体をその手刀で切り裂こうとするが俺もただでやられるつもりはない。ずしゃり、と嫌な音を立てながら頬が切り裂かれるが、お構いなしに剣を振る。

 俺の一太刀がセルの胸板を切り裂く、しかしセルは上体を逸らすことで間一髪それを躱す。傷は浅く薄皮を切る程度のダメージだ。

 そのまま鉄と鉄がぶつかり合うような甲高い音を鳴り響かせながら激しい剣戟へと移行する。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

 激しい気の高まりが、斬撃の余波がリングを滅茶苦茶にするが、俺もセルも一切気に留めない。リングアウト、だなんてルールはもう互いに考えていない。

 場外による決着なんて奴は絶対に認めないだろうし、勿論俺もそうだ。

 俺は自分の体の至る所を切り裂かれながらも必死に剣を振る。

 

(殺す! 今ここで、確実に、殺しきる!)

「ちぃっ!」

 

 そして激しい剣戟の最中、その天秤が僅かに俺に傾きだした。セルの表情が忌々し気に歪む。

 俺が最後の攻勢に剣を選んだのには理由がある。

 スパイロボットによって、悟空を始めとするあらゆる武術の達人たちのことをセルは知り尽くしている。

 しかしその中に剣術を使う戦士はいただろうか?少なくとも俺の知る範囲で剣を使うキャラはあまりいない。俺はそこに勝機を見出した。

 ほんの僅かとはいえ、格闘で戦うよりも剣術で戦う方が勝つ確率が高いのでは、と予想したのだ。

 その予想が的中したのか、あるいは俺の執念が奴を上回ったのかは分からない。だが俺が若干の優位にいることは事実。

 

(このまま押し切る…!)

「…フッ、甘い!」

「がっ…!」

 

 その時セルが手刀にした右手と逆の左手を振り上げる。それと同時に俺の体が深く切り裂かれ、血が噴き出る。

 不可視の斬撃、先程セルが使用していた技だ。不利を悟ったセルが俺の不意を突くために繰り出した逆転の一手。

 

「もらった!」

 

 不意の一撃に、俺は体勢を崩した。

 その一瞬の隙を見逃すセルではない、仰け反るような姿勢の俺、その心臓に奴は容赦なくその手刀を突き立てようとする。

 勝利を確信した奴が笑みを浮かべる。その瞬間、俺もまた隠し持っていた奥の手を奴に仕掛ける。

 

「かぁっ!」

「なっ、なに!? 体が…、動かん!?」

 

 これが俺の最後の切り札、サイコキネシスだ。

 フリーザにできるならば俺にもできるのではないかと、精神と時の部屋で練習していたのだ。そして俺はこの技を習得できた。いざという時、ここぞという大一番で使うために俺はこの手札を隠し持っていた。

 ただこの技はセルほどの実力者相手に正面から使ってもすぐに破られてしまう、だからこそ奴が最も油断する瞬間、俺への止めの瞬間に使おうと俺はこの攻勢の最初から決めていたのだ。

 結果、この作戦は成功した。俺の目の前で固まったように動かないセル。

 しかし、この硬直も長く続くものではない、時間にしてほんの数秒、一瞬が限界だろう。そして俺もまた体勢を大きく崩している。

 体勢を立て直す時間はない、俺は仰け反った姿勢から力任せに剣で奴の体を切り裂いた。

 

 

 そして、セルの体が横一文字に、上半身と下半身に両断された。

 

 

「コルドー! まだだ、それじゃあ奴は再生するぞ!」

 

 切り裂かれたセルを見たピッコロが大声で叫ぶ、が俺もそんなことは承知している。

 セルが再生しないうちに、奴を殺しきる。そのためには最も重要な生命機関を破壊する必要がある。

 

(狙うは核、おそらくその位置は頭!)

 

 俺は両断されたセルの上半身、その頭部に剣を突き立てた。

 

「頭を潰した! これならもう奴も再生は…」

(いや、まだだ。まだ完璧じゃない…!)

 

 頭部を刺し貫いたとはいえ、この状態でも油断はできない。描写から見るに、セルの核はかなり小さいはずだ。破壊できていない可能性は十分にある。

 このまま剣に込めたエネルギーを解放して、セルの上半身を肉片一つ残さずに消し飛ばす。そしてその後すぐに残された下半身も粉々に吹き飛ばす。それが理想的な決着だ。

 

「完全に消えてしまえ、セ、ごはぁっ…!?」

 

 突如、腹部に鋭い衝撃が走った。

 何が起こったのかと視線を下ろすと、セルの下半身がひとりでに動き、俺の腹部を蹴り上げていた。想定外の状況に一瞬、思考が止まる。

 

(なっ、なんで、ま、まさか核があるのは下半身!? まずい、読み間違えた…!)

 

 予想外の反撃に加え、読みが外れたことに、焦りが生じる。

 だが、状況はまだ俺に分がある。流石のセルも下半身だけではこれ以上の反撃はできないだろう。

 エネルギーの解放を中断して、剣をこのまま振り下ろし、下半身を更に切り裂いてバラバラにしたところを気で消し飛ばしてしまえばいい。

 腹部の痛みを無視し、さらなる追撃を加えるべく、セルの頭部に刺さった剣に意識を向けたところでそれが俺の目に映る。

 

 

 

 大きく膨れ上がったセルの上半身、その光景を最後に俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 爆発、コルドとセルが激しく打ち合っていたリングを中心に、突如大爆発が巻き起こる。

 突然の爆発に戦士たちに動揺が走る。

 

「な、なんだ!? いったいなにが…」

「セルはどうなったんだ!? コルドの奴、やりやがったのか!?」

 

 戦士たちが最後に見た光景、それはコルドがセルの頭部に剣を突き立てた姿。そしてその後すぐに爆発が起きた。

 もしかしたらコルドはセルを倒したのでは?、戦士たちの間にそんな期待に満ちた雰囲気が充満する。

 

「見てください皆さん、煙が晴れます…、なっ!?」

 

 やがて煙が晴れる、地形は荒れ果て、リングはもはや原型をとどめていない。

 そしてかつてリングのあった場所にその男は立っていた。

 

「フフフ、天晴だコルド大王。見事な攻撃だったぞ」

 

 再生により五体満足で、傷らしい傷は見当たらないセル。

 

 

 

 そしてその足元には黒焦げのコルドが倒れていた。  

 

 

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