なので本人に弁明してもらいます。※あくまで本作の設定です。
コルドとセルの激闘、その結末に戦士達が目を見開く。
セルの頭に剣を突き立て、勝利したかのように見えたコルド。しかし煙の中から現れた光景は戦士達が思い描いた勝敗とは真逆のものであった。
「ククク、驚いているようだな貴様ら。いいだろう、あの時何が起こったのか説明してやる」
そしてセルは語りだす、あの瞬間、何が起こったのかを。
「この男が私の頭を潰そうとした判断は間違いではない、いくらナメック星人の細胞を持つ私でもこの頭にある核を潰されてしまえば死んでしまう。しかしあの時、コルドに動きを止められ、今にも切り裂かれそうになった私は咄嗟の判断で頭部の核を下半身に移動させたのだ。つまり、奴が追撃を加えた上半身は抜け殻、下半身こそがこの私の本体だった、というわけだ」
「じ、じゃああの爆発は…?」
「なんてことはない、私は残された上半身を自爆させたのだ。抜け殻、と言ってもその程度の操作は何の造作もないこと、何もしなければコルド大王は核のある下半身にも攻撃をしていただろう。私にはその確信があった、だから一か八か自分も巻き添えを食らうことを覚悟してこの方法を選んだのだ。尤も、私自身は爆発から逃れるためにこの男の影に隠れさせてもらったがね」
種明かしを終えたセルは倒れたコルドを見下ろしながら満足げに笑った。
「いや、正直肝が冷えたよ。今の攻防、私が一手でも読み間違えていれば逆の結果になっていた可能性も十分あり得る。まったく、大したものだよ、この男は」
セルの言葉に嘘はなかった。
事実セルが言った通り、もしコルドがセルを切り裂いた時、最初から上半身ではなく下半身を狙っていれば勝敗は真逆のものになっていただろう。
まさしく接戦、その実力はセルが勝っているものの、コルドはセルをあと一歩で倒せる所まで追い詰めてみせた。故にセルの称賛に嘘偽りはない。
だが決着はついた、セルはコルドに背を向けて歩き出そうとして、その足を掴まれた。
「ま…、まだ、だ、…セル、まだ…終わって、ないぞ…」
「…これは驚いた、まさかその体で生きているとは」
コルドは生きていた。爆発により全身を焼かれ、黒焦げになりながらも辛うじて生き残ったのだ。
そしてそんな姿になっても尚、セルを倒そうと立ち上がる。しかしその体にもはや一片の戦う力が残されていないことは明らかだった。
「まったく大した生命力だ。だがそんな姿になってまでこの私に勝てるとでも?」
「だ、だま…れ…!」
「やれやれ、しかしお前が立ち上がってしまったからには、私が相手をしなければならない。そういう取り決め、ルールだからな」
力なく構えるコルドに再び向かい合うセル。
しかしこんな状態のコルドに勝ち目なんてない、それはセルにもよく分かっていた。だからこそセルは静止していたセルジュニアに再び命令をだす。
「セルジュニア達よ、テストを再開しろ! この私と戦うに値する戦士を再び探し出すのだ!」
「な、よ、よせ…!」
「新たな戦士が現れるまで、貴様には暇つぶしに付き合ってもらうぞコルド大王。まぁもっとも、お前以上の戦士が現れるとは思わんが…」
傍観に徹していたセルジュニアがセルの命令により、再び戦士達に襲い掛かる。
再度、あちこちで戦いが巻き起こる、戦士達とセルジュニア軍団の戦いはやはり戦士たちの劣勢であった。
「キキ―!」
「くそっ…、こいつらなんて強さなんだ…!」
「ぐ、お、俺達に敵う相手じゃ、ない…」
瞬く間に窮地に陥る戦士達。そしてその凶行を止めるべく、コルドもまたセルに立ち向かう。
「セル…! あいつらを…、セルジュニアを止めろ!」
「ならばこの私を倒し、止めてみろコルド大王。…できるものならな」
「っ…!」
セルは眼前のコルドから目を離し、セルジュニアと戦う戦士達に注目する。
しかし、いずれの戦士もセルジュニアに勝るものがいないと分かると落胆のため息をつく。
「はぁ…、地球人達が死にかけているのは当然としてベジータやトランクスでもあの様…。私との戦いで体力を消耗している孫悟空も時間の問題か」
セルの言った通り、クリリンやヤムチャ、天津飯の3人はもう立っていることもままならない。ピッコロと消耗している悟空も徐々に押されている。
ベジータとトランクスはまだ互角の戦いを繰り広げているがやはり厳しい状況であることは否めないだろう。
「ククク、16号はもう壊れる寸前ではないか、あんな姿でよく粘る」
そして16号の状態は酷い有様だった。戦いこそ成立しているものの頭の一部を砕かれ、体もところどころ砕けている。それでも尚戦い続けるのはその執念が彼の機械の体を支えているのだろうか。
「…む? あれは…、この時代と未来の悟飯か。やるではないか、この私の生み出したセルジュニアとあそこまで張り合えるとは、少々意外だな」
唯一、2人の悟飯だけが、セルジュニアを相手に優勢に戦いを進めることができていた。しかし、それでもまだ撃破には至らない。
じりじりと疲弊していく地球の戦士達、状況は最悪であった。
そして、そんな最悪の状況に未来の悟飯もまた焦燥を感じていた。
(このままじゃ、まずい…!)
傷つき、倒れていく戦士達。互角に戦えている戦士もいるとはいえ、大局的にみれば全滅は時間の問題ということに未来悟飯は確信していた。
そして苦戦している他の戦士の加勢に向かおうにも、
「キキキ…」
「く、そこをどけ!」
対峙するセルジュニアがそれを許さない。
セルは戦士達を試すために、数にして10体のセルジュニアを生み出した。コルドが1体を倒したとはいえ、残り9体は健在。
そしてその強さは量産された生命体としては恐ろしいまでの強さであった。
「う…、う、あ…」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ…!」
「くそったれが…!」
クリリンやヤムチャは既に倒れ、戦う力が残ってないにも関わらずセルジュニアは残酷にも彼らをいたぶり続けている。
ベジータとトランクスは互角とはいえ、このまま戦い続ければどうなるかは分からない。
1人、また1人と倒れていく戦士達に悟飯にかつての記憶が蘇る。
(皆死んでしまう…、あの時と同じように…!)
かつて人造人間に蹂躙された己の世界の事を思い出す。
当時、悟飯はドラゴンボールを集めるためその戦いに居合わせることはなかったが、仲間たちの気が1つずつ消えていくあの恐ろしい感覚は悟飯の脳裏に深く刻まれ、未だ忘れることのできない記憶となっている。
「がはっ、く、すまねぇ、皆…。まさかこんな結果になるなんて…」
「孫! しっかりしろ! くっ…」
「キキ―!」
(お、お父さん…!)
いよいよ悟空も力尽き、その体が地面に沈む。それでも尚、セルジュニアは追撃の手を緩めようとしない。
傷ついた悟空を、己の父を見て、未来悟飯の脳裏にかつての光景がまた蘇る。
父親の死、仲間の死に追い打ちをかけるように訪れたあの瞬間を悟飯は生涯忘れることはない。
悔し涙を流す自らの祖父、泣き崩れる母。そして何もできなかった幼き日の自分。
「あ、あ…、ああ…!」
その時、未来悟飯は己の中で激情が渦巻くのを感じた。
仲間を、家族を傷つける敵に対して、そしてなにより無力な自分への怒りが、己の心をざわつかせる。
そしてまた一人、限界を迎えた戦士が、仲間が倒れる。
「流石の貴様も限界か、コルド大王」
「お、の…れ、セ、ル…」
全身を黒焦げにしながらもセルに食らいついていたコルドがついに倒れる
その姿に未来悟飯が最後に聞いた、彼の言葉を思い出す。
『悟飯よ、トランクスと共に生きるのだ。そして耐え抜き、いつか必ず二人で奴らを倒せ。それこそがワシの、最後の希望なのだ』
そして、未来悟飯は己の中で何かが切れるのを感じた。
「む、なんだ!? この途轍もない力は!?」
最初に異変に気付いたのはセル。それに続き、セルジュニアや他の戦士達も突如発生した気の嵐に驚愕の視線を向ける。
「あ、あれは…未来の僕…?」
「へ、へへ、そうか、やっぱり未来のおめぇも同じ、力を…」
最もその絶大な力を感じ取ったのは未来悟飯と対峙していたセルジュニアだ。
セルジュニアは己の前に巻き起こった気の爆発に恐怖していた。それを巻き起こした張本人は言葉を発することなく静かに佇んでいる。その様子がセルジュニアには逆に恐ろしかった。
「キ…キキ…キ?」
そしてその姿をセルジュニアは見失う。
己の目の前にいたはずの敵が忽然と姿を消したことに驚き、どこに消えたのかを探そうとして、
体の大部分が消し飛ばされ、セルジュニアはその短い生涯を終えることとなる。
「な、速い…!?」
流石のセルでさえも驚きを隠すことができなかった。
自らの生み出した強力な戦士が何の抵抗もできずに殺されてしまったのだから。
「す、すげぇ…未来の悟飯の奴、とんでもない強さだ…」
「クリリンさん、皆に仙豆を、まだ間に合います」
「…へ!? お、お前いつの間に…?」
いつの間にかクリリンのもとに移動していた未来悟飯。この場の誰もがその動きを捉えることができなかった。
気づかずに己の側に立っていた未来悟飯に驚愕の声をあげるクリリン。
「で、でも助けようにもあの小さいのがいるんじゃ…」
「こいつらは俺が倒します」
「なっ、消えた!? い、いったい何処に…」
そして一陣の風が吹き抜けた。
それはこの場にいる一同の合間を駆け抜けると同時に、凶行に及んでいた残りのセルジュニアを次々と消し飛ばしてゆく。
そのままセルの足元で倒れていたコルドを安全な位置に運ぶとセルの前にその姿を現した。
「…驚いたぞ、まさか貴様がこれほどまでのパワーを隠し持っていたとはな」
溢れんばかりの気、迸るスパーク、その姿は紛れもなく超サイヤ人2と呼ばれる変身。
怒りによって己の潜在能力を引き出し、覚醒した未来悟飯がセルと対峙する。
「もう二度と…、貴様たち人造人間に俺の仲間を殺させるものか!」
△
「…はっ、い、いったいなにが…?」
「よう、目覚めたか、間に合ってよかったよ」
ふと、意識が浮上する。
目が覚めて一番最初に視界に映ったのはこちらを覗き込むクリリンの顔であった。
「仙豆が足りてよかったよ、ちょうどお前で最後の仙豆だったんだ」
どうやらセルに敗北し、倒れていた俺にクリリンが仙豆を食べさせてくれたみたいだ。周りを見渡せば、セルジュニアに手酷くやられていた皆の体力も回復している。
唯一、完全な機械である16号は破損した肉体がそのままのため、痛々しい姿ではあるもののなんとか自身で立っている。
「そ、そうだ! セルは、奴はどうなった!? それにセルジュニアは!?」
「落ち着けって、あの小さい化け物は未来の悟飯が全部片づけてくれた」
「な、未来の悟飯が…!?」
「ああ、凄かったぜ、あの数を一瞬で倒しちまうんだから」
「それでセルは?」
その質問にクリリンは上を見上げることで答えを返した。他の皆も同じ方向を見上げている。
俺もそれに習い、空を見上げてみると…
「はぁぁぁぁぁぁ!」
「遅い!」
「がぁっ、ぐ、なんという速度…!」
セルと戦う未来悟飯の姿がそこにあった。
未来悟飯は激しいスパークを迸らせながら、あのセルを相手に完全に優勢に立ち回っている。
(あれは超サイヤ人2! そ、そうか、この時代の悟飯ではなく未来の悟飯が覚醒したのか…!)
精神と時の部屋の修行でその力の片鱗は俺も感じていた。
結局、修行の中でその力を引き出すことは敵わなかったが、この時代の悟飯と同様に超サイヤ人2への可能性は十分に考えられた。
しかし実際にその力をこの目で見るとその凄まじさを実感する。今の未来悟飯から感じられるパワーはあのセルさえも凌駕しているのだ。
「くぅっ…、ならばこいつはどうだ!」
セルがその腕を振る、おそらく俺との戦いで使用した不可視の斬撃。
あの技には随分と苦渋を舐めさせられた、しかし悟飯は自らの指に気を集中させると無数に放たれた斬撃を全て防いでしまった。目を見開くセル。
「なぁ!? ま、まさか…そんな、ぐぉっ!」
「…諦めろ、貴様ではもう俺には勝てないぞ」
次の瞬間、悟飯の拳がセルの腹に突き刺さっていた。その凄まじい速度と威力は傍から見ているだけの俺達にも伝わってくる。
「勝てる、これならセルに勝てるぞ!」
「すごい、今の悟飯さんなら絶対に負けない…!」
2人の戦いを見物する戦士達が勝利の予感に浮足立つ。俺もその一人であった。
この世界のセルは幾度となく俺たちを窮地に追い詰めてきた。本来の強さを上回る奴ならば超サイヤ人2にさえも食い下がるのではないかと危惧していたが、この様子だと俺の杞憂だったかもしれない。
「やれ! 悟飯、このまま一気に奴を倒してしまうのだ!」
勝てる、勝利を確信した俺は未来の悟飯に大声で呼びかけると同時に、俺自身も何かあればいつでも飛び出せるように準備する。
追い詰められた奴が自爆なんて手段を取るかもしれない、下手にダメージを与えて回復させれば原作の様に凄まじいパワーアップをしてしまうかもしれない。
(奴が不審な動きを見せれば必ず俺が防いで見せる。あらゆる可能性を考えろ、奴に都合のいい奇跡なんて絶対に起こさない!)
もし自爆を目論めばその瞬間俺も参戦して奴を仕留める。未来悟飯の攻撃で核だけが残るなんてことも起こるかもしれない、その時も同様だ。少なくともサイヤ人の細胞による復活パワーアップだけは絶対にさせない。
幸いなことに、未来の悟飯はセルを無意味に痛めつけようとせずに容赦なく攻撃を加え続けている。
「だだだだだだだだ!」
「ぐぅぅぅぅぅぅ…!」
隻腕というハンデをものともせずに激しい連撃をセルに叩きこむ未来の悟飯。
そんななか、俺の目は確かに捉えた。
その身を嵐のような打撃に晒されながらも口角を上げるセルの姿を。
「ぅぅぅ―――フフッ…」
「っ! 悟飯よ、止めだ! セルに止めを刺せ!」
嫌な予感が湧き上がる、自爆か、あるいは別の秘策を隠し持っているのか、セルが何を考えているかは分からない。
ただ、奴がまだ諦めていないということだけは分かる。
俺の呼びかけに応えるように未来悟飯はセルを地面に叩きつけるとその強大な気を更に高めた。
「魔閃光!!」
そして悟飯から膨大な気の奔流が放たれる。
範囲も、速度も、申し分ない、今からセルにこいつを回避することは不可能だ。
「はぁぁぁぁぁ!」
セルはそんな悟飯の魔閃光に対して両腕をクロスして防御姿勢とる。
そしてセルは光の中に消えていった。
(勝った! いくらセルでもあの威力のエネルギー波をまともに受けて耐えられるものか! …いや、油断するな。まだ核が残っているかもしれない、喜ぶのは後だ!)
悟飯の放った魔閃光により、砂煙が巻き起こる中、俺はセルの気を集中して探る。
核が残っていて再生、そしてパワーアップなんて可能性もあり得る。しかし露出した核を潰すことは俺にでもできる。
万が一に備え、セルの気を探していると、煙の中に奴の気を感じた。
(く、まだ生きてる…! だが捉えたぞ、俺が止めを刺してやる!)
いくら奴でも今の攻撃を受けて無傷とはいかないだろう、核だけが残っているなんてこともある。
セルに止めを刺すべく、煙の中に飛び込もうとして…。
「ずぁっ!」
「なっ!?」
そのセルによって煙が吹き飛んだ。飛び出そうとした俺の足が止まる。
「はぁっ…、はぁっ…、ク、ククク…、素晴らしいパワーだぞ、孫悟飯…!」
ボロボロになりながらも、不敵な笑みを崩さないセル。
それはセルゲームがまだ終わっていない何よりの証拠であった。