コルド、孫悟空、孫悟飯、未来の孫悟飯。
4人の放ったかめはめ波、4本の光線は一つに合わさりセルのスーパーノヴァに伸びていく。
膨大なエネルギー波とエネルギー球のぶつかり合い、この星の命運を賭けた正真正銘最後の戦いの火蓋が切られた。
「フハハハハハ、無駄だ! いくら貴様らが力を合わせてもこの私には遠く及ばん!」
「ぐっ! ち、ちきしょう…!」
「ぬぅぅっ!」
互いの全てを賭けた力比べ、その天秤はセルに大きく傾いていた。
4人分のかめはめ波。この時代、そして未来の世界も含めた最高戦力4人の力を一つにしてもセルにはまだ届かないのだ。
恐ろしいほどまでの力、更なる変身を遂げた完全体セルの超パワーは消耗しても尚健在であった。
「おのれ…!(まずい、このままでは押し切られる! な、なにか手はないか!?)
「オメェ達、持っている力を全部出し切るんだ! そうすりゃ勝てる、絶対だ!」
「で、でもお父さん…、僕達に残された力なんて、もう…」
「ある! 悟飯、オメェ達2人のパワーはこんなもんじゃねぇ。まだ残された力が必ずあるはずだ!」
悟空が2人への悟飯に発破をかける、紛れもなくこの戦いの鍵を握るのは超サイヤ人2に覚醒した悟飯達の力だ。悟空とコルドが援護に駆けつけたとはいえそれは変わらない。
しかし、悟飯達は先程のセルとの戦いで大きく消耗している。いくら父親の言葉とはいえ、2人の悟飯は己にまだ力が残されていることが信じることができなかった。
そんな2人の姿を見てコルドは考える。
「(無理だ! 2人ともかなり消耗している、しかし2人の力がないと勝てないのも事実、俺に、俺にできることはなにかないか!?)」
「た、確かに今の俺たちにもうフルパワーを出すことはとても…」
「(フルパワー…、よし!)…ククク、どうしたお前達、まさか力の出し方を忘れてしまったのか? 仕方のない奴らだ、ならばよく見ているがいい!」
「コルドさん…?」
「かぁぁぁぁ…!!」
コルドが力を込めると同時に、全身の筋肉が膨れ上がり、気が充実していく。
その姿に悟空は見覚えがあった。それは紛れもなく、ナメック星での最終決戦、フリーザが最後に見せた正真正銘の全力。
100パーセントのフルパワー、変貌したコルドの姿はまさしくそう呼ばれるものだった。
「(で、できた! ぶっつけ本番だったがなんとかなったぞ…!)さぁ、お前たち! このワシに続け! このコルドの様に100パーセントの力を出し切るのだ!」
「は、はい!」
コルドが考え付いた手段、それは自分のパワーアップだけが目的ではない。
勿論、コルド自身の出力が増加したというのもある。ただそれ以上に2人の悟飯に奮起を促すのが目的だ。
コルドは自身が限界ギリギリの力を振り絞ることで悟飯達に道を示したのだ。
「へ、へへ、コルド、オメェまだそんな力を隠し持ってたんか…!」
「ク、ククク、どうした孫悟空? お前はそれが限界なのか!?」
「い、言ってくれるぜ…! それじゃあオラももう少しだけ、力、いれるとすっか…、界王拳!」
そしてその姿に影響を受けたのは悟飯達だけではない。
悟空を包むオーラに赤色が混ざる。かつて界王様から受け継いだ戦闘力を大きく増加させる秘技、界王拳。悟空は超サイヤ人を会得してからこの技を使うことはなくなったが、この局面で、それを発動した。
普段、悟空が超サイヤ人と界王拳を同時に使用しない理由は簡単だ。この2つの技の併用はあまりにも肉体への負担が大きすぎるからに他ならない。
しかしことこの状況で、悟空は2つの技の同時使用に踏み切った。例えこの戦いの後に自身が死んでしまおうと構わない、後先を考えない不退転の決意が悟空にそうさせたのだ。
「「はぁぁぁぁぁ!!」」
ここにきてコルドと悟空のかめはめ波が勢いを増す、それに釣られるように2人の悟飯も勢いを取り戻した。
じりじりと押してくるように迫りくるスーパーノヴァの動きが止まり、やがて僅かにだがセルの方にへと押し戻されていく。
「なっ!? く、死にぞこない共が、まだ粘るか…! ならば、もう一つこいつをくれてやるぞ!」
セルがスーパーノヴァを押さえつける手とは逆の腕を上空に向ける。
「な!?(そ、そんな、もう一発だと!?)」
セルはこの拮抗に対して、もう一度同じスーパーノヴァを撃ち込むことで無理やり決着をつけようとしているのだ。
いくらコルド達が勢いを取り戻したとはいえ、同じエネルギー球がもう一つ追加されれれば一溜りもないだろう。しかし、目の前のスーパーノヴァに手一杯の4人に打つ手はない。
そしてセルの指先にエネルギー球が生成されるその時、
「さぁ、今止めを…」
「「ファイナルフラッシュ!!」」
横合いから放たれた光の奔流がそれを阻止した。
時は少し遡る。
悟空親子とコルド、そしてセルの最後の戦いに巻き込まれないように遠巻きに見物する残された戦士達。
「な、なんて気のぶつかり合いだ…!」
「く、悔しいが俺達ではもうどうすることもできん…」
苛烈を極める大きな気と気の衝突、もはや次元の違う戦いに残された戦士達はただ見ていることしかできなかった。
…2人のサイヤ人を除いて。
「父さん、俺達も援護に向かうべきです! 俺達がセルに攻撃し、なんとか隙を生み出すことができれば奴を倒せる!」
「…ふざけるな、トランクス。何故この俺がカカロットやコルドに手を貸してやらねばいかんのだ!」
「父さん…!」
トランクスは悟空たちの援護に向かうために、己の父であるベジータを必死に説得していた。しかし、その説得は難航していた、ベジータのそのプライドによって。
「でも、このままじゃ地球が!」
「そんなこと俺の知った事ではない!」
「お、おい、セルを見ろ!」
その時、セルが片手を上げ、新たなスーパーノヴァを放とうとしていた。
もし、もう一度あの技が放たれれば、敗北は確実。それはこの地球の最後を意味していた。
「お願いします、父さん! このままでは皆死んでしまう!」
「何度言わせるつもりだ、俺は貴様らと一緒に戦うくらいなら一人で戦って死んだ方が…」
「俺はこんなところで死ぬわけにはいかないんだ!」
「っ!?」
ベジータの言葉を遮り、トランクスが叫ぶ。
その勢いに、ベジータだけでなく、他の戦士達の視線も吸い寄せられる。
「俺だけじゃない、悟飯さんもそうだ。もし、俺達が死んでしまえば未来の世界から希望は完全に失われてしまう! もう二度と、あの悪魔を、人造人間を倒すことができなくなってしまう!」
まるで血を吐くが如き、トランクスの叫びにベジータは何も言い返すことができなかった。
「俺達は生きなければならない! 残された人々、散っていった仲間達、そして未来で帰りを待つ母さん…、皆の想いに応える為にも、こんなところで死ぬわけにはいかないんだ! 生きて、戦い続けないとダメなんだ!」
叫び終えると同時にトランクスは超サイヤ人へと変身し、ベジータに背を向ける。そして一人、セルのもとに飛び立とうとして、ベジータも同じく超サイヤ人にへと姿を変えた。
背後に感じた大きな気に振り向くトランクス。
「な、何を…?」
「…ちっ、何をもたもたしているトランクス。さっさと片づけるぞ!」
「父さん! ありがとうございます!」
「勘違いするなよ、俺の最終目標はあくまでカカロットだ。奴にこんなところで死なれるわけにはいかん。…いいな! こんなのはこれっきりだぞ!」
トランクスの返事も待たずに飛び立つベジータ。
決して本人は言葉にしないだろうが、トランクスの言葉がベジータの心を動かしたのは明白だ。
「はい!」
飛び立ったベジータの後を追うトランクス。その顔には絶望的な状況に似合わぬ笑みが浮かび上がっていた。
そして飛び立った親子を見送る残された戦士、彼らもまた今のやり取りに心を動かされていた。
「クリリン、ヤムチャ、天津飯、お前たちの気を全部俺に集めるんだ!」
「へ、な、何をしようってんだよ、ピッコロ」
「あいつらが戦っているのにこのまま黙って見ていられるか。俺達も戦うぞ!」
「…分かった。俺に残された気、全て持っていけ」
「よ、よし、頼んだぜピッコロ。セルに一泡吹かせてやれ!」
クリリン、ヤムチャ、天津飯、3人の気がピッコロへと集まる。
力こそ今戦っているサイヤ人達やコルドに劣るとはいえ、この地球を守るという意思は彼らにも引けを取らなかった。
そして時は戻る。
「「ファイナルフラッシュ!!」」
「なっ!?」
再びスーパーノヴァを放とうとしたセル、その横合いから強力なエネルギー波が襲い掛かる。
セルは咄嗟に技を中断し、技を放とうとしていた手を防御に回す。
「ベジータ! トランクス! 余計な真似を…!」
「セル! お前の好きにはさせないぞ!」
ベジータ親子のファイナルフラッシュをセルは片手で受け止める、その力の差は歴然だ。
しかし、ベジータ親子に気を取られたことでもう一方の、かめはめ波に対する意識が疎かになる。少なくとも、今のかめはめ波の勢いを流石のセルも片手で対処することはできない。
「ふん、ならば先に貴様らを殺すまで、呆気なく死ねい!」
セルは先にベジータ親子を殺すべく、ファイナルフラッシュを防ぐ手からエネルギー波を放つ。それはぐんぐんとファイナルフラッシュを押し返し、ベジータ親子に迫る。
「く、くそ、駄目だ、押される…!」
「何を弱気になっているトランクス、さっきの言葉はどうした! 戦い続けるというのは噓だったのか!?」
「ぐっ…、はぁぁぁぁぁ!」
「そうだ、それでいい! はぁ!」
ベジータ親子もまた悟空達と同じように全力を振り絞る。だが、それでもセルの攻撃の勢いは止まらない。
セルのエネルギー波にベジータ親子が呑み込まれようとした時、一筋の光線がセルに迫る。
「魔貫光殺砲!」
収束した螺旋を描く気の光線、ピッコロ、そして残された地球の戦士達の気も合わせ込められたピッコロ達の最後の足掻きがセルに吸い込まれていく。そして、
「…ふっ、無駄だ!」
「なっ!?」
セルの目から放たれた怪光線により、それは打ち消された。
セルはベジータ親子に続く更なる強襲を予想していたのだ。そして見事にピッコロの不意打ちに対応して見せた。
「ハァーッハッハッハ、いいアシストだが、残念だったな。当たりさえすればこの私も少しはダメージを受けたかもしれん、当たりさえすればな!」
「く、くそったれめ…!」
「悪足掻きだということが分からんか! 貴様ら雑魚共がいくら集まっても無意味だということだ!」
「いや、意味ならあるさ」
「なに!?」
その時だった。
何処から現れたのか、ボロボロの16号がセルを羽交い絞めにした。いや、セルが微動だにしていない以上、羽交い絞めというよりかはしがみ付くと表現すべきだろうか。
「感謝するぞ、ピッコロ。お前のおかげでセルに近づくことができた」
「いつの間に…! 今更何の用だ16号!」
「流石のお前も俺の存在にまでは気が回らなかったようだな。あいつらの悪足掻きのおかげだ…!」
「ちぃっ! だがそんなボロボロのお前に何ができる!」
何ができるか、そう問われた16号は意を決し、大声で宣言をした。
「セル! 俺はお前と共に自爆する!」
「な、なんだと!?」
「無論、俺の自爆でお前を倒せるとも思わん。だがこの状態ならばいくらお前でもただでは済まないはずだ!」
16号の言う通り、今のセルはコルドと悟空親子のかめはめ波、加えてベジータ親子のファイナルフラッシュに同時に対処している状態だ。
流石のセルもこんな状態で16号の自爆をまともに食らえばただでは済まない。少なくともこの拮抗状態が崩れ去ることは確かだ。
「分かっているのか、貴様も確実に死ぬのだぞ!?」
「承知の上だ。俺とお前、ドクターゲロが残した負の遺産を、罪の象徴を纏めて清算できるまたとない機会、躊躇う必要がどこにある!」
「や、やめろぉ!」
「だぁ―――!」
爆発、セルが、そして16号が爆炎に包まれる。
本来の歴史で語られた通り、その威力は凄まじいものであった。それこそ地表で爆発していればこの地球にも大きなダメージが残っていただろう。しかし、セルが上空に飛び上がっていたことが幸いし、その爆発はセルにだけ被害をもたらした。
そして煙が晴れる。
「お、おのれ、ガラクタ風情が! よ、余計な真似を…!」
煤に塗れたセル、セルの体に刻まれたダメージは決して大きいものではない。五体は無事だし、大きく気を減らした訳でもない。だが、16号の捨て身の自爆で少しのダメージを受けたのは事実。
この大勝負の舞台ではその少しのダメージが致命的となる。
コルド、悟空、そして2人の悟飯はセルのスーパーノヴァが確かに軽くなったのを感じた。
「っ!(なんだ、急に軽く!?)」
「今だぁぁぁぁぁ!!」
「(なんでもいい! 今しかない…!)ぬおおおおおおおお!!」
コルドの気が膨れ上がる。100パーセントを、限界を超えたパワーが解放される。
悟空の気もまた高まる。界王拳の倍率を更に高めたのか、纏う黄金と赤のオーラ、その色が更に濃くなり勢いを増す。
「「うあああああああああ!!」」
そして、その2人に背中を押されるように、悟飯と、未来悟飯も最後の力を振り絞る。
迸る稲妻がさらに激しくスパークする、それに伴い、2人の気が更に大きく膨れ上がった。残された気を、隠された力その全てを完全に解き放ったのだ。
限界を超えた4人、かめはめ波の威力が爆発的に増加し、セルのスーパーノヴァを一気に押し戻す。
「な!? ぬぅぅ、お、おのれ…!」
セルは勢いよく押し戻されるスーパーノヴァを抑え込もうと、咄嗟に両手をスーパーノヴァに向ける。そうするしかなかったとはいえ、セルはすぐにその代償を支払うこととなる。
「今だ、トランクス! 全て出し切れ!」
「はい!」
その瞬間、ベジータ親子のファイナルフラッシュがセルの全身を包み込む。
「ぎぃぃぃぃぃ!」
流石のセルも、ベジータとトランクスの攻撃を受けながらコルド達4人のかめはめ波を抑え込むことはできない。セルは全身を焼かれながらも必死に己の技とかめはめ波を押し返そうとするがぐんぐんとそれは迫ってくる。
そして、4人のかめはめ波は、スーパーノヴァを打ち砕き、セルを飲み込んだ。
「ば、馬鹿なぁ! こ、こんなこと、が…ぁぁ…ぁ…」
かめはめ波が、そしてファイナルフラッシュが交差する。それはまるで地上から伸びる十字架の如く天に昇っていく。
親子達が放つ膨大なエネルギー波、それが交差する地点にて、セルはその体を徐々に消し飛ばされていく。
やがて、核が消え去り、細胞の一片も残すことなく、セルはこの世界から完全に消え去った。