大王転生   作:イヴァ

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掴み取った勝利と変わった歴史

「か、勝った…」

 

 ポツリと、上空を見上げながら呟く。

 確信があった。今の攻撃でセルは間違いなく死んだ、その自信がある。それでも万が一に備えてセルの一部が残ってないか周囲を注意深く探る。

 そうやって周囲の気配を探っているとバタリ、と誰かが倒れる音がした。視線を向けると、現代と未来の、2人の悟飯が地面に倒れていた。

 

「お、終わったぁ…」

「やりましたよ…、お父さん」

 

 とっくに変身も解け、2人並んで大の字で寝そべっている。

 本当によく頑張ってくれたものだ。セルを倒せたのは紛れもなくこの2人が頑張ってくれたからに違いない。現代と未来、2人の悟飯の底力が合わさらなければ成し得なかった奇跡だ。

 そんな2人の息子に悟空が声をかけようとして、

 

「ああ、オメェら、ついにやった…」

 

 悟空もまた地面に倒れこんだ。

 

「お、おい、孫悟空よ、大丈夫か!?」

「へ、へへ、も、もう…限界、だ。さ、流石に無茶しすぎた…」

 

 俺の問いかけに悟空は消え入りそうな声で返事をする。

 彼もまた己の限界を超えて頑張ってくれた。なにせ超サイヤ人と界王拳を併用していたのだ。倒れるのも無理はないだろう。

 体にかかった負担が心配だが幸いなことに命に別状があるような状況ではなさそうだ。と言っても本人はかなり辛そうにはしているが。

 

「…む? ぬぉ!?」

 

 俺は悟空を助け起こそうと足を動かそうとするが俺の足は固まったかのようにピクリとも動かなない。それどころか立っていられなくなり、そのまま腰を抜かしたかのように座り込んでしまった。

 

「はは…、どうやらオメェも限界みてぇだな」

「そ、そのようだな…」

 

 へたり込んだ俺の姿を見て、悟空が弱弱しく笑う。悟空の言う通り、足にまったく力が入らず、立ち上がることもままならない。

 しかし変に格好つける必要もないだろう、それにセルが復活する様子も感じられない。俺はそのまま背後に倒れこみ、寝転がることにした。

 見上げた空には雲一つない青空が広がっている。俺達のかめはめ波が全てを吹き飛ばしてしまったのだ。

 

「お~い、大丈夫か~」

 

 そのまま俺達が寝転んでいると遠くからクリリンや他の皆がぞろぞろと近づいてくるのが見えた。

 

「おお、クリリン、無事だったか」

「ああ、お前達のおかげさ、ほんとによくやってくれたよ!」

 

 よく見て見るとクリリン達もかなり消耗している。

 直接この目で見たわけではないが、あの戦いの最中、皆の気がセルに向かって飛んでいくのを感じた。おそらくだが俺達とセルが戦っている時に援護してくれていたのだろう。

 

「ワシらだけで勝てた戦いではない、お前達も手を貸してくれたのだろう?」

「ふん、生憎だが俺達の攻撃は奴に届かなかった、トランクスとベジータに感謝することだな。…それと16号にもな」

「なに? そういえば16号の姿が見当たらんが…」

「じ、実は…」

 

 16号の姿が見当たらず不思議に思っているとクリリンが説明してくれた。あの戦いの最中、何が起こったのか、誰が何をしたのかを。

 俺はセルの攻撃を押し返すのに必死で周りがあまり見えていなかったため、クリリンの話を聞いてそれら全てを知ることができた。

 

 16号が自爆をしたことを聞かされた時は驚いた。

 本来、16号の爆弾はブリーフ博士によって取り除かれることになる。しかし彼はこの世界においてカプセルコーポレーションで修理を受けていない。

 その爆弾を利用して俺達を助けてくれたのだ。己の命を犠牲にして。

 

「16号…」

 

 もし俺が上手くやれば彼を救うことができただろうか、だなんて意味のない考えが頭を過る。しかしそんなことを考えても時間を巻き戻すことはできない。

 彼のおかげでセルを倒すことができた。今はそう考えるしかないのだ。

 

「…まさか人造人間に助けられることになるなんてな」

 

 俺が考え込んでいると未来の悟飯が呟いた。

 未来の二人にとっては複雑な思いだろう。彼らにとって人造人間とは仇そのもの、そんな存在に助けられることとなったのだから。

 

「悟飯さん…?」

「…いや、なんでもないさ。それよりトランクス、君もよく頑張ってくれたな。本当にありがとう…そういえばベジータさんは?」

「と、父さんはセルを倒した後、すぐに何処かに飛んで行ってしまいました…」

「ハハ、あの人らしいや」

 

 トランクスとベジータにも感謝しなければいけない。と言っても当のベジータはこの場にいないみたいだが。ともかく、2人の協力も無ければセルに押し勝つことは間違いなくできなかった。

 上体を起こしてトランクスに手を伸ばす。

 

「トランクス、よく頑張った。お前達の援護無くして奴に勝つことは不可能だっただろう」

「コルドさん…、ありがとうございます!」

 

 トランクスが俺の手を握り返す。そのまま彼の助けを借りてなんとか立ち上がる。

 セルを倒した以上、いつまでもここにいる必要はない。神殿に辿り着けばデンデの治療を受けることができる、早急に皆の体力を回復させなければ。

 

「さぁ、行くぞ、皆の者。神殿へと帰ろうではないか!」

 

 傷つき、疲れ果てた俺達は肩を貸し合いながら、ふらふらと神殿へと向かうのであった。

 

 

 

 

 神殿に辿り着き、デンデの治療を受けながら、俺達はセルに殺された人々を生き返らせるために神龍を呼び出す準備をしていた。

 俺はそんな皆を眺めながら、改めて現状を確認していた。

 

(セルを倒すことはできた、…俺の知る歴史と変わってしまったこともあるが)

 

 一つはセルが18号を吐き出すことなく奴を倒してしまったことだ。だから彼女は原作と違いこの場にいない。しかし神龍の願いによって蘇生することは可能だ。セルに殺された人々の括りに含まれるはずなので17号と18号の2人は蘇ることができる。

 しかし、おそらく16号を復活させることはできないだろう。完全な機械である16号はきっとその願いの範囲に含まれないのか、実際に原作でも蘇りはしなかった。ブルマに修理をしてもらおうにも一片の欠片も残さずに吹き飛んでしまった以上、それも叶わない。

 

(…でも悪いことばかりじゃない)

 

 それは孫悟空の生存だ。本来の歴史と異なり、彼が生きたままセルゲームを乗り切ることができた。ただ、この結果が今後にどう響くかは不明だ。

 本来であれば悟空は今後の7年間をあの世で修行することになる。しかしこの世界では今後もこの下界で暮らすことになるのだ。

 それがどのような影響を及ぼすのかは分からない。しかし、今はとにかく悟空が生き残った事を喜ぶべきだろう。

 

「いでよ、神龍! そして願いを叶えたまえ!」

 

 俺が現状を振り返っているといつの間にか準備が終わったのか、神龍が呼び出された。そして当初の予定通りセルに殺された人々を蘇らせる願いが叶えられた。

 問題はもう一つの願いだ。

 

「あと一つ願いが残っているが…どうする?」

「セルに殺された人達を生き返らせた以上叶えて欲しい願いもないな…」

「ううむ…(本来は蘇った17号と18号の爆弾を取り除くために使われるけど…俺が言いだすのも違うか)」

「なぁ、2つ目の願いだけどよ、オラが使ってもいいか?」

 

 俺達が頭を悩ましていると悟空が声を上げた。なにか叶えたい願いがあるらしい。

 

「構わんが…、いったい何を願うつもりだ?」

「未来の悟飯の腕を治してもらうんだよ、悪くない願いだろ?」

「お、お父さん…!」

「なるほどな、確かにそれは良い考えかもしれん」

 

 悟空の願い、それは未来悟飯の失われた片腕を元に戻すこと。

 確かにそれはありだ。傷が古く、既に治ったという扱いになっているせいか、仙豆やデンデの回復能力でも治すことはできなかったが、神龍の願いを使えば間違いなく腕を取り戻すことができるはずだ。

 勿論、17号と18号の体内に仕掛けられた爆弾に思うところもあるが、今回はこちらを優先してもいいだろう。 

 

「皆さん、ありがとうございます。…でもその願いは受け入れられません」

「な、何故だ!?」

「そうですよ、悟飯さん! いったいどうして!?」

 

 しかし、その願いは未来悟飯本人によって断られる。

 

「何気ない日常、大切な人の命、俺達の世界ではその多くが失われました。それでも残された人々は必死に、歯を食いしばって生きているんです。そんななかで俺だけが失ったものを取り戻すのは、なんていうかその、ずるいかなって…そんな気がするんです」

「悟飯さん…」

「そんな顔をするなよトランクス。君を責めているわけじゃないんだ」

 

 どうやら彼には彼なりの考えがあるらしい。

 俺としてもこの機会に彼に腕を取り戻してほしい思いはあるが、本人が断るというなら仕方ないだろう。

 

「…分かった。おめぇがそう言うなら、オラは何も言わねぇ」

「すみません、お父さん。せっかく気遣ってくれたのに…」

「気にすんな。…いつか全部取り戻せるといいな、悟飯」

「はい…!」

 

 悟空と未来悟飯のやり取りを眺めながら今後について考える。上手くいくかは分からないが、成功すれば未来の世界で失われた全てを取り戻すことができるかもしれない。

 ただ、この場で言うにはまだ早い、彼らを落胆させないためにももう少し策が纏まってから話すべきだ。

 

「しかしどうする? 願いはまだ一つ残っているが…」

「…皆、この願い、俺が使ってもいいかな?」

「クリリン? いったい何を願うつもりなのだ?」

「それは…」

 

 結局、本来の歴史通り最後の願いはクリリンによって、17号と18号の爆弾を取り除くことに使われることになった。

 他に願いも思いつかないということもあり、他の皆も異論はないみたいだったが、ここにきて俺は少し焦っていた。

 

(…あ、18号がこの場にいないってことはクリリンとのフラグが…、大丈夫か、これ?)

 

 別にこの一幕が全てではないだろうが、クリリンと18号の関係に大きな影響がある事には間違いないだろう。それが無くなったことでもしかしたら未来の2人の関係性も変わってしまう可能性もある。

 

(や、やばいぞ、クリリンの結婚が…、な、なんとかしないと…)

「よし! 願いも叶え終わったし…、そろそろ帰るか!」

 

 焦る俺を置いて場の空気は既に解散の流れだ。

 

「そういや、おめぇ達はいつ未来に帰るんだ?」

「今日はしっかりと休んで、明日帰ろうかと…」

「そうか、なら今日は家に泊まれよ、一緒に帰ろうぜ」

 

 未来の悟飯は悟空達と共に、そしてトランクスはカプセルコーポレーションへ、他の皆も各々帰るべき場所に帰るみたいだ。思えば人造人間達やセルとの戦いで、ゆっくりする暇もあまりなかった。異なる時代の、とはいえ別れの前に家族で過ごす光景を見ることができて本当によかった。

 

(いや! それは良いんだけどクリリンが…)

「コルドさん、何してるんですか? お父さんも未来の僕も待ってますよ?」

 

 不意に手を引っ張られる、見れば現代の悟飯が俺の腕を引いていた。

 

「お~い! 何してんだよ、置いてくぞ!」

「早く帰りましょう!」

 

 ナチュラルに俺も孫一家の一員に数えられているのは嬉しいが、結局、クリリンと18号の関係性をどうにかする策は思いつかないままだ。

 一瞬の逡巡、どうしたもんかと考えて…。

 

「待たぬかお前達、そう急かすでない。…すぐに向かおう!(すまん、クリリン。何も思いつかん!)」

 

 諦めて悟空達の後を追うことにした。

 クリリンなら大丈夫だろう、彼ならばこの状態からでも18号を射止めることができるはずだ。多分。

 投げやり気味に思考を放棄しながら皆に手で挨拶しながら悟空達と共に神殿を後にする。

 とにかくセルは倒した、後は未来悟飯とトランクスを見送るだけだ。

 

「なぁ、孫悟空よ、少し聞いておきたいことがあるのだが…」

「ん? なんだ?」

 

 その前に、俺はある企みを実行する準備を進める。彼らが未来に帰る前に間に合えばいいのだが。

 

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