大王転生   作:イヴァ

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ブウ編開幕!、天下一武道会までの数日間

 

「見てくださいよコルドさん! この衣装…かっこいいでしょう!」

 

 一目見てヒーローと誰もが分かる衣装に身を包んだ悟飯が俺に自信満々に問いかけてくる。

 

「…ああ、そうだな」

 

 頭ごなしに否定するのもかわいそうなのでとりあえず同調しておく。尤も否定したところで傷つくようなメンタルをしていたらこんな衣装を着ることはないだろうが。

 

「でしょう! いや~やっぱりコルドさんは話が分かるなぁ! クリリンさんやピッコロさんじゃこの衣装の良さが分かってくれなくて困ってたんですよ!」

「…そいつは残念だったな」

 

 困っているのは俺の方だ。なにもこのやり取りはこれが初めてではない。悟飯が高校に通いだしてから幾度となく繰り返されてきた光景だ。

 治安の悪いサタンシティで起こる犯罪を悟飯がスーパーヒーローに扮し解決するようになるまでそう時間はかからなかった。

 おかげで少し前から格好いいポーズや名乗り口上を考えるのに付き合わされたりしている。

 

「ちなみにこの衣装、以前と変わったところがあるんですが…コルドさんなら勿論分かりますよね?」

「…ヘルメットがサングラスとバンダナに変わっているのだろう。勿論分かるとも」

「さっすがコルドさん!」

 

 悟飯が俺の手を両手で掴みぶんぶんと振り回す。

 いろいろと言いたいことはあるが本人が楽しそうなので俺の心の中に閉まっておくことにする。悟飯もまだまだ若い、今のうちにこういった活動を楽しむのもいい思い出になるだろう。

 

 …確かいい歳になってもヒーローごっこをやっていた気もするが…まぁいいか。

 

 思考を打ち切り悟飯に問いかける。

 

「それで…またどうしてそんなマイナーチェンジをしたんだ?」

「実はこの服で天下一武道会に出ようとしていたんですがどうにもヘルメットがルール違反みたいでして、ブルマさんに相談したらこうしたらいいと教えてくれたんです」

 

 遂にこの時が来た。そのシーンは俺も前世で見たことがある。ということは先程名前が挙がったクリリン達にも天下一武道会の話は伝わっているはずだ。

 いよいよブウ編が始まったという実感が嫌でも湧いてくる。

 

「クリリンさんに18号さん、ピッコロさんとベジータさんも出場するそうです。お父さんと僕も出る予定なんですけど…コルドさんはどうします?」

「ううむ…(天下一武道会か…)」

 

 別に絶対に出る必要はない。

 いざ事が起これば観客席から飛び込めば済む話だ。…ただそれは俺の知る歴史通りに事態が進めばの話である。

 人造人間との戦いでそう上手くいかないことは嫌というほど思い知った。それに現状も本来の歴史と比べて大きく異なっている。

 万が一を考えるとやはり固まって行動しておいた方がいいかもしれない。

 

「そうだな、ワシも出場してみるとするか」

 

 ということで俺も天下一武道会に出場することにした。正直どっちでもいい気もするが折角なので出てみてもいいだろう。いい思い出にもなるかもしれない。尤も武舞台に立つことがあるかは疑わしいものだが。

 

「そうと決まればコルドさん用の衣装も用意しないといけませんね!」

「…は? 待て待て、何故そのようなことをする必要がある」

「なんたってコルドさんは宇宙人ですからね。正体はなるべく隠した方がいいでしょう」

「そう…なのか?」

 

 それっぽい理屈でつい納得しそうになるが冷静に考えればそんな必要はまったくない。

 現に俺はこの姿のまま平気で大きな街や都に出入りしている。勿論初見の人は驚くが2度目となるとそんなことはない。せいぜい珍しい恰好、外国の人かな?みたいなノリで受け入れられている。たまに俺の顔を見た人達がひそひそと小声でなにやら話していることもあるがそんなに気にならない。

 そう説明しようとするが悟飯は既に何やらぶつぶつと呟いており、完全に自分の世界に入ってしまっている。

 

「悟飯よ、ワシにそんなものは不要だ」

「顔を隠すには何がいいかな…仮面とか? だとするとヒーローネームは…」

「おーい、悟飯。聞こえてるかー?」

「決まりました! 正体を隠すために仮面をしましょう、そしてこう名乗るんです、マスク・ド・コルドと!」

 

 だっさ。てか正体隠れてないぞ。思い切り実名名乗ってるじゃん。せめてマスク・ド・キングとか…、いや、それでも十分にダサいが。

 悟飯のセンスにげんなりとしていると悟空と悟天が通りかかった。なんとかしてくれと視線で助けを訴えてみる。

 

「ねぇお父さん。兄ちゃんたち何してるの?」

「…さぁな。それより悟天、あっちで父ちゃんと遊んでようなー」

「(逃げやがった!?)」

 

 そそくさと悟天を連れてこの場を離れる悟空。悟空、お前の息子だぞ、なんとかしてくれよ。

 そんな俺の思いも露知らず悟飯は上機嫌に語り続けている。

 

「でもコルドさんはヒーローというよりどちらかというと悪の親玉ですよね、ハハハハ!」

 

 言いたい放題かこの野郎。

 流石に頭にきたので少しお灸を据えることにする。

 

「悟飯よ…、天下一武道会にでるならその鈍り切った体を鍛え直す必要があるな…」

「へ? どうしたんですか急に?」

「このコルド自らがお前を鍛え直してやろうではないか。なあに遠慮は不要だとも」

「め、目が怖いですよ、コルドさん? コルドさん!?」

 

 久々の悟飯との修行でいろいろと分かったことがある。

 一応超サイヤ人2までは変身できたがあの時の強さは完全に失われていた。これほど弱体化していたとは正直想像以上だ。悟空が惜しむ気持ちが少しわかった気もする。

 いい機会なので全盛期に少しでも近づけるようにみっちりと鍛え直すことにした。

 決して他意はない。別に悪の親玉みたいと言われたことを気にしているわけではないのだ。

 

 

 

「ぜぇっ…ぜぇっ…、す、少し休憩にしましょうコルドさん…」

「甘い! この程度でへばっているようでは悟空やベジータには絶対に勝てんぞ!」

「そ、そんなぁ…」

 

 やはり体力もかなり落ちている。戦闘の勘、技のキレなども失われており、地面に座り込む今の悟飯が7年前に共にセルと戦ったあの少年と同一人物とはとても思えないほどだ。

 厳しく悟飯を鍛え直していると飛行機がこちらに向かって飛んできた。何事かと思って見ていると飛行機が着陸するや否や降りてきた人影が俺に向かって飛びかかってきた。

 人影が繰り出してきた蹴りを腕で防ぐ。

 

「くっ、防がれた…!」

「ビ、ビーデルさん!?」

 

 人影の正体は悟飯の同級生であるビーデルである。すっかり失念していたがそういえばあのイベントを忘れていた。しかし何故攻撃されたかはさっぱり分からない。

 ビーデルは俺の腕を蹴りつけた反動で飛び上がると悟飯を守るように俺の前に立ち塞がった。

 

「悟飯君! 大丈夫!?」

「ちょっ、ちょっと待ってください! どうしたんですか突然!?」

「どうしたも何も悟飯君がこの人に襲われてるのを助けにきたのよ!」

 

 何となく流れが読めた気がする。

 へたり込んだボロボロの悟飯に腕を組みながらそれを見下ろす俺、ビーデルは俺が悟飯を襲っている悪人かなにかと勘違いしたのだろう。

 

「誤解! 誤解ですよビーデルさん!」

「誤解…?」

 

 慌てて俺とビーデルの間に割って入った悟飯が事情を説明する。

 険しい顔で話を聞いていたビーデルも事情が分かるにつれ顔を青くし大慌てで俺に頭を下げた。

 

「ご、ごめんなさい! 私、とんでもない勘違いをしたみたいで…」

「気にするでない、ビーデル、だったかな? 傍から見ればそなたの勘違いも当然の事。それよりもいい蹴りだったぞ、見どころがある。武術を嗜んでいるようだな」

「は、はい。父が武道家なので私も格闘技を…」

 

 ビーデルの謝罪を素直に受け入れつつもさっさと話を変えてしまう。これぞ大王の巧みな話術。あまり縮こまれてもやりにくいというものだ。

 

「それよりもビーデルさん、どうしてこんなところに?」

「どうしてって…約束したでしょ。空を飛ぶ方法を教えてくれるって」

「え…あー、そ、そういえばそうだったね」

 

 悟飯が頭を掻きながら困ったようにこちらをチラチラと見てくる。言葉にせずとも悟飯の心情が伝わってくる。なので俺は悟飯の為にこの場に相応しい行動をとることにした。

 

「そうだったか、ならば邪魔するわけにはいかんな。悟飯よ、しっかりと教えてやるのだぞ」

「えっ」

 

 後はお若いもんで、と2人の邪魔をしないように俺はこの場を去ることにした。老婆心かもしれないが若人の青春を邪魔するほど俺も野暮ではない。

 悟飯を鍛え直すのはビーデルが帰ってからだ。天下一武道会を控えた今の時期ならチチも悟飯に鍛錬をつけるのを認めてくれるだろう。悟空と相談もして悟飯の修行メニューをしっかりと考えねばならない。

 そう考えを纏め、手で軽く挨拶を済まし俺はこの場を離れた。

 

「コ、コルドさん、どこ行くんですか!?」

「さ、早速始めましょ。ちゃんと教えてよね?」

「は、はい…」

 

 この分なら天下一武道会に出場予定の皆もみっちり鍛え直しているだろうし俺もそれを見習って偶には一人でじっくりと修行するのもいいだろう。

 悟飯とビーデルに背を向けて歩いていると2人の話し声が聞こえてきた。

 

「それにしても…あの人何者なの?」

「えーっと、コルドさんって名前でうちの近くに住んでるんだ」

「随分と変わった見た目してるけど…?」

「ああ、宇宙人なんだよ。確か…10年くらい前に地球にやってきたんだ。一緒に暮らしていたこともあるよ」

「…やっぱり悟飯君って少し変よ」

 

 

 

 

 ちなみにピッコロほどではないがこの体の聴力もなかなか高いもので遠くの話し声も割と聞こえてきたりする。なので…

 

「…ねぇあの人本当に悪い人じゃないの?」

「うん、見た目はともかく凄くいい人だよ。昔はよく勉強を見てもらったりしてたんだ」

「へぇ~、どう見ても悪人面だけど…人は見かけによらないのね。でもあの人何処かで見たことがあるような…?」

 

 悟飯とビーデルのこそこそ話もしっかりと聞こえていたりする。

 そこまで悪人面をしている自覚はなかったので割と傷ついた…仮面…つけようかな。

 

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