くじ引きが終わりいよいよトーナメントが始まる
第1試合は原作通りクリリンが俺達以外の一般の参加者と戦うこととなり、あっという間に勝利を収めてみせた。
『続いて第2試合! シン選手VSマスク・ド・コルド選手! それでは両選手どうぞー!』
司会に促され、シン選手こと界王神様と2人並んでリングに歩いていく。出場すると決めたもののまさかこんな展開になるなんて思いもしなかった。バビディ一味の乱入で結局は途中で試合どころではなくなりいざ武舞台に立つことはないと考えていたのだ。
「ぷっ、おいおい見ろよあの変な覆面。馬鹿みてぇ!」
「でもあの巨体だ、結構力はあるんじゃないか?」
俺の姿を見た観衆が好き勝手感想を述べる。角はアクセサリーと思われているにしても尻尾とか肌の色に対してあまり言及はないのはなぜなのか。しかし獣人などが存在している世界で今更か。
『それでは試合スタート!!』
試合の開始が宣言され、互いに構えをとる。
俺は油断なく相手を見定めながらその戦闘力について考えてみることにした。
界王神、この宇宙の頂点に立つ神であり、その戦闘力はあのフリーザを一撃で倒すほど、というのが俺の知る情報だ。
だがフリーザを一撃、と例えられてもあまりピンとこない。実際にどうなのかは分からないが界王神はフリーザの変身を知らないのでは?などとそんな説も聞いたことがある。
つまり彼の実力はまったく想像がつかないのだ。ただどうも俺の知る界王神像のせいであまり強い印象はない。
そして界王神が動きを見せた。
「来ないのですか? ではこちらから…シッ!」
「なっ!?(は、速っ…ぐっ!)」
想像以上の速度で近づいてきた界王神に反応することができず、腹に掌底を打たれ、俺の体がくの字に折れる。そして下がった俺の首に界王神の手刀が振り下ろされた。首に痛恨の一撃を食らった俺はリングに突っ伏すこととなる。
一瞬の出来事に観衆達がおお、と感嘆の声を漏らす。
「お、おいおい、あのシンって奴滅茶苦茶強いじゃないか!?」
「へーすげぇな。まさかオラ達以外にあんな奴がいるなんてな」
「まさかコルドの奴負けちまったのか…!?」
悟空達も同様に驚いている。彼が界王神と知らないということも勿論あるが、俺が瞬く間にダウンをとられたことに驚愕する一同。しかしなめてもらっては困る。
『マスク・ド・コルド選手ダウンー! カウントを…っておお! 立ち上がったぁ!』
「…驚いた、常人なら気絶しているはず。少々この星の人間のことを侮っていたかもしれませんね」
「(この星の人間だと?)」
すぐさま立ち上がった俺に驚く界王神。そして今の言葉で分かったことがある。
俺が会場で迷っていたこともあり、界王神は俺のことを悟空の仲間と知らないようだ。だから先程の一撃もかなり手加減したのだろう。急所への一撃の割にダメージが少なかったのはそのためか。
「ふんっ、あの程度の攻撃でこのワシが倒せるとでも? 片腹痛いわ!」
勢いよく啖呵を切るが内心は冷や汗でいっぱいだ。もしさっきの攻撃が手加減されていたものでなければ白目をむいて気絶していた可能性もある。
勝手なイメージで界王神様の事を見くびっていたがここからは本気だ。なめてかかって勝てる相手ではないことがよく分かった。
「さぁ! 今度はこちらからいくぞ!」
「いいでしょう、かかってきなさい!」
今度は俺から攻撃を仕掛けるが界王神に上手くいなされてしまう。すぐに反撃が飛んでくるが俺もそれを防いでみせる。先制攻撃は食らってしまったがここからはそうはいかない。なんとか巻き返そうと猛攻を仕掛ける。
俺と界王神の攻防を呆気に取られて見ていた司会が我に返り実況を始める。
『な、なんということでしょうか! マスク・ド・コルド選手の巨体から繰り出される剛腕をシン選手は華麗に捌いています! 流れるような動きはまるで舞いの如く、凄まじいレベルの戦いです!』
高次元の戦闘とそれを盛り上げる実況により会場のボルテージがどんどんと上昇する。
それにしてもどことなく界王神贔屓の実況な気もするが…やはり見た目のせいだろうか。初戦で主人公に敗北する噛ませ犬の大男みたいな扱いを受けている気がする。
そんな余計なことを考えていたからだろうか。
「ハッ!」
『おおーっと! シン選手の掌底が顎を捉えたー! しかし倒れない! マスク・ド・コルド選手、恐るべきタフネスです!』
「ぬうっ、お、おのれ…!」
「くっ、これでも倒れないのですか…!」
またしてもいい一撃をもらってしまった。
正直な話このままではまずい、はっきり言って負けそうだ。変身が禁止されている以上このまま戦い続けるしかないがこの姿のまま戦うには少々厳しい相手だ。しかし気功波や超能力を使うわけにもいかない。
このままでは本当に噛ませ犬の大男、それだけは勘弁してほしい。
「(ど、どうする!? なにかいい手は…、そ、そうだ!)」
妙案を思いつき、一度界王神から距離をとる。
「驚きました、私とこれほど戦えるとは…貴方は本当に地球人なのですか?」
「…フッフッフ、なるほど、そういうことでしたか」
「…?」
作戦を実行するべく、不敵に笑い声をあげる。突然の俺の様子の変化に警戒の色を強める界王神。しかし界王神が完全に俺のことを地球人と勘違いしているが…まぁ好都合か。
周囲に聞こえないようになるべく小声で界王神に語りかける。
「まさか貴方様のような御方がこのような辺境の星にお越しになるとは…、いったいどのようなご用件で? …界王神様」
「なっ、何故私の正体を…!?」
「隙ありぃ!」
俺の狙い通り正体を言い当てられた界王神が動揺を見せる。その一瞬の隙を狙って俺は全身全霊で界王神に掴みかかる。
せこくないかって?失敬な、コルド大王らしいフレキシブルな作戦だろうが。
「うおおおおおおおお!」
「くっ放しなさい!」
界王神を掴んだ俺はそのままリングの角目掛けて力任せに突き進む。技比べならともかく力比べではこの肉体に分があるようだ。
しかしあともう少しでリング外のところで俺の拘束を脱出する界王神、だが武舞台の端まで追い詰めることができた。ここまで辿り着いたのなら俺の勝ちは確定したようなもの。
リングの角で場外を背に構える界王神に俺は殴りかかる。そして全力で地面を、リングを殴りつけた。
「な!? し、しまった…!」
「もらったぁ!」
リングが崩れ、バランスを崩す界王神に俺は容赦なく追撃を加える。崩れたリングを足場になんとか粘る界王神はこの状況を脱出しようと大きく飛び上がる。この時を待っていたのだ。
界王神が飛び上がることを予想していた俺もそれに合わせて跳躍、空中でリング外目掛けて彼を蹴り飛ばした。そしてとうとう界王神は場外へと足をつけることとなる。
『シ、シン選手場外! マスク・ド・コルド選手の勝利です!』
司会が決着を告げ、観客の大きな歓声により会場が熱に包まれる。
常人からすれば今の戦いは恐ろしく高次元の戦いに見えたことだろう。その実態は言葉で動揺させたところへの不意打ちが決め手になったわけだが、まぁ盛り上がってるしいいか。…リングを壊したのはよくなかったかもしれないが。
「ま、まさかこのような結果になるとは…、お見事です、マスク・ド・コルドさん」
「いやいや、界王神様が本気で戦っていればまた結果は変わっていたことでしょう。それよりもいったい何故貴方のような御方がこのような星に?」
「それについては控室で話しましょう、他にも一緒に話をしたい人達がいます。私も貴方に聞きたいことがある。それに…」
『え~、マスク・ド・コルド選手により武舞台が破壊されてしまったので復旧作業を行います。試
合再開まで今しばらくお待ちください』
「幸い、時間もあるようです」
…やっぱりやりすぎだったようだ。すまん、運営の人。
俺と界王神様が控室に戻ると仲間達が集まってきた。聞きたいことが山ほどあるのだろう。まず口を開いたのはピッコロだ。
「お、お前…この方が界王神様と知ったうえであんな手を使ったのか…」
「…勝負の世界に身分なぞ関係ないもの、普段ならともかくあの場でそのような気遣いは不要だろう」
とりあえず言い訳をしておく。間違ったことを言っているつもりはないが、それはそれとしてあの不意打ち染みた作戦はまずかっただろうか。少なくとも武道大会でするには相応しくない方法だったかもしれない。
「(れ、冷静に考えるとやり過ぎたかも、正々堂々戦うべきだったかもしれん…)」
「いえ、この敗北は私の未熟故の結果。彼に非はありませんよ」
「か、界王神様がそういうなら…」
まぁ本人も気にしてないみたいだしいいか。それに今は他に話すべきことがある。
「なぁ、さっきから何なんだよ、その界王神様ってよ」
「そうだよ、俺達にも分かるように説明してくれよ」
「そうですね、まずは自己紹介から始めましょうか」
話についていけない悟空達に自己紹介を始める界王神様。その正体を知った一同が驚きの声をあげる、そして話の内容は界王神様の目的にへと移っていく。
「それでその界王神とやらがこの地球に何の用だ」
「単刀直入に言います。貴方達の力をお借りしたいのです」
「なんだと…?」
「この地球で恐ろしい魔人が蘇ろうとしているのです。…狡賢い魔導士、バビディの手によって」
「魔人に魔導士バビディ?」
「(…ん? ここで説明するのか)」
てっきりバビディのもとに向かいながら説明をするものと思ったが…いや、俺のせいか。俺がリングを破壊してしまったので余計な待機時間ができたのが原因だ。
だがちょうどよかったかもしれない。移動しながらよりもここでじっくりと説明を聞きたいところだ。
「はい、魔人ブウという恐ろしい魔人です」
「魔人…、なんだか聞いたことあるような?」
「なんですって?」
「えっと…、以前にそんな話をしてませんでしたか?」
「ワシが?」
悟飯が俺の方を見てくる。はて、何処かで言っただろうか?
前世の知識を昔に宇宙で聞いたことがあるという体で話すことはたまにある。子供たちに教えたフュージョンもその一つだ。
ただブウに関しては…いや、7年前に未来へ帰る悟飯とトランクスを見送るときに話していたような気がする。
「魔人ブウの事を知っている? 私の正体に気がついたことといいあの強さ…、マスク・ド・コルドさん、貴方はいったい…」
『え~、リングの復旧作業が終わりましたので第3試合を開始します。マジュニア選手とスポポビッチ選手はリングに上がってくださーい』
第3試合開始のアナウンスにより界王神様の話が中断される。…が今なんて言った?
トーナメント表に目をやると第三試合の対戦者がピッコロとスポポビッチとなっている。本来はビーデルだったはずだが俺のせいで順番がずれたのか?まぁいいか。
ビーデルがリンチにされる心配をせずに済んだ。
「とにかく今は貴方達の力を借りたい。あのフリーザを倒した貴方達の力を」
「オラ達はなにをすればいいんだ?」
「まずはピッコロさん、貴方には次の試合を棄権していただきたい」
「俺が…? いえ、今は界王神様を信じましょう」
「ありがとうございます」
界王様の指示通りピッコロは試合を棄権しスポポピッチが勝ち上がる。そして第4試合である悟飯とキビトの番となる。きっとここから原作通りの事が起きるだろう。
止めるべきかと悩んだがバビディの居場所が分からないのはまずい。先程から気で居場所が分からないか探っているが全然見つからない。おそらく魔術か何かで見つからないように対策されているのだろう。
バビディの居場所を特定するためにも心苦しいが悟飯には犠牲になってもらうしかない。
そして俺の知る歴史の通りに事が進んでいく。
「超サイヤ人になるのだ、孫悟飯」
「え…、ここでですか? …分かりました」
武舞台の上で超サイヤ人になる悟飯。
「凄まじいエネルギー…あいつだ!」
「しっかり押さえておけよ、スポポビッチ!」
あっという間にスポポビッチとヤムーは悟飯のエネルギーを奪い取り会場から飛び去って行く。会場はちょっとしたパニックになるが界王神様は全て予定通りと言わんばかりに2人を追いかけようとする。
「よろしければ私と一緒に来てください。とても助かります」
それだけを言い残し会場を後にする界王神。
「お、おい、どうするんだ、悟空」
「オラはついてくさ、界王神様に詳しい話も聞きたいしな!」
「待てカカロット! 俺達の対決はどうするつもりだ、そのためにこんなくだらない大会まで来たんだぞ!」
「どうせここじゃ本気で戦えねぇじゃねぇか。おめぇもついて来いよ、向こうでやろうぜ」
「ちっ、確かにこんなちっぽけな会場じゃ満足に戦えんか…。いいだろう、魔人だかなんだかしらんがすぐに片づけてやる!」
界王神を追いかけようとした際にベジータが異論を唱えたがすぐに納得してくれた。この世界では悟空があの世から1日だけ帰ってきているわけではない。なんなら日を改めて再戦しても問題ないわけだ。
キビトに悟飯の回復を任せ、悟空達も飛び立っていく。俺も界王神の後を追うべく準備する。ということで観客席にいるブルマ達のもとに向かった。
「ちょっと、いったい何がどうなっているわけ!?」
「説明をしている暇はないがとにかく緊急事態だ。万が一に備えてお前達はなるべく固まって行動をしておいてくれ」
「わ、分かったわ」
時間が無いのでしっかりと説明はできないがとりあえず皆で固まっておくようにだけ指示しておく。念の為というやつだ。
急いで俺も界王神様を追いかけようとしたらヤムチャに呼び止められる。
「おい、コルド! 忘れ物だぜ!」
そして俺が渡しておいた剣が投げ渡される。危ない危ない、すっかり忘れるところだった。
「何が起こってるか分からないが気をつけろよな!」
「安心しろ! すぐに終わらせるさ!」
「頼りにしてるぜ! それといつまで覆面してるつもりだー?」
そういえばそうだった。もうこんな覆面は必要ないだろう。
気を頼りに界王神様を追いかけながら剣を担ぎ直し、覆面を脱ぐ。ようやくいつものスタイルに戻れた。やはりこの格好がしっくりくる。
やがて先に飛び立っていた悟空達の姿が見えてきた。
「お、きたきた、おーいコルドー、こっちだー!」
「コルド…? なっ、お、お前は…馬鹿な!?」
悟空の声に反応した界王神様が俺を見てその顔を驚愕に染めた。
「ま、まさかお前はコルド大王!? あのフリーザの父親がどうしてここに!?」
…いや、知ってたんなら気づけよ。