「ま、まさかお前はコルド大王!? あのフリーザの父親がどうしてここに!?」
俺の顔を見た界王神が驚愕の声を上げると同時に警戒の色を強める。確かに素顔を見せるのはこれが初めてなわけだがまさかコルド大王の存在を知ったうえで気づいてないとは夢にも思わなかった。てっきりコルド大王の存在を知らないのかと勘違いしていたわけだが。
「な、なんだよ急に、界王神様はコルドの事を知ってるんか?」
「知っているも何も…、この宇宙を長く生きていればこの男のことを知らない人はいないでしょう。かつて強大な力と巧みな手腕によって東西南北の宇宙を支配した恐ろしい男です」
「…そうなんか?」
悟空がこっちを見てくるが俺も知らん。界王神様曰くそうらしい。
「何故かは知りませんが随分と昔に己の息子に軍の実権を明け渡し、表舞台からその姿を消したと言われていました。まさかこの地球で出会うこととなるとは…いったい何が目的で…、はっ、ま、まさか既にバビディの手駒に!?」
「落ち着けよ、界王神様。こいつはもう何年も前から地球に住んでんだ。別に何も企んじゃいねぇよ?」
「な、なんですって?」
俺、いやコルドが何故この地球にいるのか、その経緯を悟空達が説明してくれた。このまま俺が危険人物扱いでは話が進まないので界王神様には早く警戒を解いてもらいたい。
「なるほど…、にわかには信じ難い話ですが皆さんが嘘を言っているとも思えない。まさかあのコルド大王がこの地球で隠居生活を送っていただなんて…」
あまり納得はしていないようだがなんとか敵意は引っ込めてくれたようだ。
「あのマスク・ド・コルドとは己の素性を隠す暗号名…なるほど、よく考えられた名だ。まったく気が付きませんでした…」
「(そこは気づけよ…)」
まぁ確かに界王神様曰く宇宙の支配者だった男が変な覆面を被って辺境の惑星で武道大会に出場しているなんて夢にも思わないか。かつてのコルド大王を知っているからこそ気がつかなかったということだろう。
ただ名前を褒めるのはやめてもらいたい。皆からの評価が下がりかねんぞ。
「しかし、貴方がコルド大王だとするならばやはりこの先には連れていけません」
「どうしてです?」
「魔導士バビディは恐ろしい魔術を使います。邪心を持った相手を強制的に支配下に置いてしまうおそろしい洗脳の術です。一度術にかかってしまえば抜け出すことは不可能、貴方では確実に…」
界王神様は俺がバビディに操られてしまうことを警戒しているようだ。だがその気持ちもわかる。コルド大王をバビディのもとの連れて行くなんて彼からすれば正気の行いではないだろう。
だが俺が自分で反論しても意味はない、もうしばらく黙っておくことにする。
「なんだ、じゃあ問題なさそうだな」
「なっ、どうして!?」
「要するに悪い心を持ってない奴は操れねぇんだろ? じゃあコルドは大丈夫さ」
「だな、見た目はこんなんだけど意外と頼りになるんすよ、こいつ」
悟空とクリリンが俺を擁護してくれる。…クリリンは一言多いが。それにしてもこのやり取りも久々である。
フリーザと共に地球にやってきた10年ほど前、あの時は誰も俺のことを信用してくれなかったので必死で自分で説得したものだ。しかし今は自分で何も言わずとも仲間達が弁護してくれる。ありがたい話である。
「何故そこまでこの男を信用できるのですか…?」
「界王神様、気持ちは分かりますがこの男なら心配ないでしょう。魔人復活を阻止するためにも是非連れていきたい」
「ふんっ、俺からすればこのお人好しがフリーザの父親だといまだに信じられん」
更にピッコロ、そして驚くべきことにベジータまでもが援護射撃をしてくれた。俺がここまで信頼されていることに界王神様も予想外だったのか、困惑の表情を浮かべた。
「ご安心ください界王神様。このコルド、必ずや魔人ブウ復活阻止の一助となってみせましょう。ご存じの通り腕には自信がありますぞ?」
最後に俺自身でアピールしておく。界王神様としても戦力は多い方がいいはずだ。
「…分かりました。確かに武道大会で彼と戦った時、邪悪な力は感じられなかった。皆さんがそこまで言うのならば私も彼を信じましょう。疑ってすみませんでした、コルド大王…いえ、コルドさん」
皆の説得もあり、ついに界王神様も折れてくれた。
それにしても俺が信用できるできないでひと悶着あるとは思わなかったがこれで一件落着…ではない。むしろ本番はここからだ。
その後、悟飯とキビトが追い付いてきた。ビーデルも途中までは一緒だったが置いてきたらしい。
そして俺達はバビディ一味が潜伏しているであろう場所に辿り着いた。宇宙船の入り口らしきものの周辺にバビディの部下らしき宇宙人達が数人佇んでいる。
隠れて様子を窺っていると地中から突き出た宇宙船の中から2人の男がでてくる。
「バビディ! それにダーブラまで!?」
「え、どっちがどっちだ?」
「あの大きい方です。まさか奴までもがバビディの手駒になっていたとは…!」
「何者なんです? そのダーブラって…」
「暗黒魔界の王ダーブラ、この世界一の戦士は貴方方でしょうが魔の世界一の戦士は間違いなく奴です。これは厄介なことになった…」
悟空達の会話を聞きつつも俺は考える。
「(…これ、このまま攻撃したら駄目かな?)」
ずっと考えていた。変に動いてフルパワーで魔人ブウが復活してしまうくらいなら不完全な状態で蘇らせる方がマシなのではと。短絡的な考えかもしれないが今の俺達の戦力なら確実に勝てる自信がある。それは魔人ブウが完全な状態で復活したとしてもだ。
しかし実際に事が起これば何がどうなるかは分からない。俺の知る魔人ブウは幾度となく変身し、その度に大きく戦闘力を変動させる。万が一俺達の手に負えないレベルに成長してしまう可能性を考えれば今ここで先制攻撃を仕掛け、不完全なブウをさっさと倒してしまうのがいいだろう。
ただこのやり方だと、魔人ブウが最終的に仲間になることはない。しかし、ブウを味方にするのは意図的に可能なのだろうか?封印が解けた魔人ブウをそのまま仲間に引き込んでも不安が残る。
ならば敢えてブウをフルパワーで復活させ、バビディを倒した後、サタンと友達になってもらい、サタンを半殺しにして出てきた純粋悪のブウを倒す?はっきり言って不可能だ、現実的でない。
それに俺には前科がある、セルとの戦いで18号を殺害することができずに奴を完全体にしてしまった過去だ。
また自分の甘さで状況を悪化させてしまえば今度こそ目も当てられない。ここは容赦なく、最速でこの戦いを終わらせるべきだ。
「(ただこの作戦は界王神様に必ず却下される…、だからあくまで不可抗力を装うんだ)」
このままいけばダーブラが俺達に強襲してくるはずだ。その時にダーブラへの反撃を宇宙船に当ててしまう。そうすればブウが封印されている玉諸共バビディは吹き飛ぶ。後はダーブラを
倒してそれで終わりだ。
誰も死ぬこともなく、この地球が破壊されてしまうこともない、そんな終わり方ができるならそれが最善だ。
考え込む俺を置いて事態は進んでいく。バビディは用済みとなったスポポビッチとヤムーを殺害、悟飯から奪い取ったエネルギーをブウの封印に注入するべく宇宙船の中に入っていった。
そしてこの場に残ったダーブラがこちらを見てニヤリと笑みを浮かべた。
「バレているぞ! 俺達の事…!」
「(来た!)」
ベジータが叫ぶと同時に高速で俺達に距離を詰めてくるダーブラ、しかし来ると分かっていれば対処できない速度ではない。
ダーブラの掌がキビトの顔に向けられた瞬間、キビトを抱えて上に飛び上がる。その瞬間、ダーブラの手から強力なエネルギー波が放たれた。
「ちぃっ! 上手く避けたか…」
「ぬぉっ! す、すまん、助かったぞ」
「気にするでない、それよりも次が来るぞ!」
ダーブラがもごもごと口を動かす。きっと唾を吐いて俺達を石化させるつもりだろう。
だがちょうどいい立ち位置だ、俺とダーブラの延長線上にバビディの宇宙船がある。唾を打ち落とすついでに全力の一撃で奴と一緒に宇宙船を吹き飛ばしてしまおう。
キビトを投げ捨て、腕を上げる。そして指を立ててエネルギー球、デスボールを生成する。
「(これで終わりだ、バビディ!)吹き飛べ――がぁっ!?」
「な、コルド!?」
しかし俺は背中に上空から飛んできたエネルギー光線をもろに食らい、撃ち落とされてしまった。慌てて体勢を立て直すが技は中断、そして…
「ペッペッ!」
「まずい! その唾に触れてはいけない!」
「(し、しまった! クリリン達が…!)」
「な、なんだ…これ…は……」
「あああ……あ………」
ダーブラを妨害することができずにクリリンとピッコロが石化唾に触れてしまった。みるみるうちに石像になっていく2人。しかし今はそれどころではない。
誰が俺を攻撃したのか、それを突き止めるべく俺は上空を見上げる。
その男は太陽を背にこちらを見下ろしていた。しかし、強い太陽の光によってシルエットを捉えることしかできない。
「フリーザ…?」
悟空がポツリと呟いた。
「違うな、そいつは俺の弟の名。残念ながら人違いだ」
やがて陽の光に目が慣れ、徐々にその姿がはっきりと見えてくる。
「俺の名はクウラ。かつて貴様が倒したフリーザの兄、そしてその男の息子だ」