大王転生   作:イヴァ

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時代を越えた邂逅、コルド大王と勇者タピオン

 神様の宮殿。

 悟空からのが念話が途絶えた後、俺達は今後どうするべきか話し合っていた…が場に言葉は飛び交うことはなく、ただ重苦しい空気に包まれていた。

 その沈黙を打ち破ったのはピッコロだ。

 

「コルドよ、お前なら地上で暴れてるあいつらをなんとかできないか?」

 

 ピッコロの提案、それは俺が魔人ブウとヒルデガーンを倒すというもの。そのことは俺も考えていた。

 先程の2体の魔人との戦いの感触からして、2体同時に相手取ることは難しいが1体ずつなら話は別。戦闘力だけなら十分にやりあえる範囲だ。

 

 今の魔人ブウならば吸収やお菓子光線さえ警戒すればなんとか俺一人で勝てる範囲かもしれない。ただ一撃で一片の細胞を残さず消さねばならない、というのが唯一の懸念と言ったところか。ブウを倒すエネルギーを溜めつつ奴を相手にしなければならない、果たして俺にその芸当ができるかどうかが鍵だ。とにかく絶対に勝てると言い切ることはできない、だが勝てるかもしれないそんな微妙な相手だ。

 

 そしてヒルデガーン、こっちはブウよりも厳しい相手だ。劇場版の敵ということで参考になる情報が少ないので詳しい戦闘力は分からないがブウ編後のゴテンクスや悟飯でさえもやられていた描写がある。結果だけ見れば超サイヤ人3の悟空が撃破していたがそれだけで俺でも勝てると決めつけるのは危険だ。

 それに奴は進化か変身か、パワーアップの手段を残しているはずだ。俺が先程それなりに戦えていたのは変身前というのが大きいだろう。

 

 以上の点を踏まえるとヒルデガーンは厳しいがブウに関しては試してみる価値はある、というのが俺の結論だ。

 

 ただゴテンクスの存在を考えると話は変わってくる。だが今の2人を叩き起こし、戦いに向かわせる真似は俺にはできない。せめてもう少し落ち着く時間が彼らには必要だ。とりあえず現状動かせる戦力は俺一人として考えよう

 

「ヒルデガーン、あの巨人はおそらく無理だろう。ワシ一人の力で勝てる相手とは思えん。ただ魔人ブウの方はなんとかなるかもしれんが…確実に勝てるとは言い切れんな」

「…ならば悟空達があの世の異変を解決するまで動かないのも手かもしれん。あいつらが戻り、戦力を整えてから戦うのも悪くないはずだ」

 

 ピッコロの言うことは一理ある。何も今すぐ動かなくてもあの世とこの世の行き来が自由になってから悟空達と共にあの魔人達と戦うのも全然ありだ。

 しかしそれは悟空達がジャネンバを倒せるかどうかにかかっている。

 

 ジャネンバ、こいつも劇場版の敵ということもあり詳しい戦闘力は分からないが確かかなり強かったはずだ。少なくとも悟空一人で戦っても勝てる相手ではない、悟飯も同様だ。なんなら潜在能力が解放され、アルティメット悟飯となっても一人で勝てる保証はない。

 

「(待てよ、今のあの世にはベジータがいる。上手く合流できれば…)」

 

 もし悟空とベジータがあの世で合流し、フュージョンでゴジータとなれば確実に倒せる。おそらくそれが最善で最速の倒し方だ。しかしこれはあくまで皮算用、彼らの動きが分からない以上ジャネンバを倒し、皆が地上に戻ってくるのがいつになるかは分からない。それまでこの星が破壊されないようになにかしらの手を打つ必要がある。

 せめてあの世と連絡が取ることができれば…。

 

「デンデよ、あの世の状況がどうなっているかなんとか知ることはできないか?」

 

 そういえば前の神様は神殿と閻魔大王のもとを自由に行き来していた。デンデにも同じことはできないだろうかと聞いてみる。

 

「すみません、普段ならともかく今の状況ではどうしようも…。閻魔界が強力な結界に覆われていることしか分かりません」

「そうか、強力な結界…ハッ、しまった!」

 

 デンデの言葉で重要なことを思い出し、慌てて神殿の縁から地上の様子を窺う。予想した通り、そこには恐ろしい光景が広がっていた。

 

「いったいどうしたと言うのだ、コルド。何を焦っている?」

「…ピッコロよ、地上を見るがいい。そうすればすぐに分かる」

「なに…? なぁっ!? な、なんということだ…!」

 

 地上を見下ろし、驚愕の声をあげるピッコロ。俺達の後を追ってぞろぞろと他の仲間達が近寄ってきた。

 

「ど、どうしたんだよ、そんな顔して…、何かあったのか?」

「簡単に説明しよう。…死人が蘇り、人々を襲っているのだ」

 

 俺達が見た光景、それは蘇った死人が暴れ、地上の人々を襲っているというものだ。見覚えのあるマークや、服装、主に暴れているのはフリーザ軍やレッドリボン軍が目立つ。

 

「う、嘘だろ? なんだってそんなことに…」

「おそらく閻魔界が結界に覆われたことが原因でしょう。生死を司る閻魔様が閉じ込められ、その秩序が完全に崩壊してしまった。これでは地上はもう…」

「くっ、しかも蘇っているのは悪人ばかりではないか…! いったいなぜだ!?」

 

 確かに蘇った死人は悪人しか見当たらない。まるで地獄の罪人達をそのまま地上に送り込んだかのように。もしかしたらベジータも一時的に地上に戻ってきているかもと考えたが、彼の気は感じられない。

 それがなぜなのか、事態の原因を知る俺にはなんとなくそれが理解できた。

 

「(ジャネンバだ…、奴は適当に異変を起こしているわけじゃない。明確な悪意を持ってあの世とこの世を滅茶苦茶にしようとしているんだ…!)」

 

 ジャネンバは地獄行きの悪人達の邪悪なエネルギーが凝縮されて生まれた存在だ。その行動が悪意に塗れたものだとしても何も不思議ではない。奴の目的はあの世はおろか地上も含めた全世界を混沌に陥れることだろう。

 それにしてもこのままではまずい。

 

「このまま奴らを放置し、街や人々が殺し尽くされればブウとヒルデガーンは次なる標的を求めて他の惑星に移動するだろう。…この星を破壊してな」

 

 果たして一日持つだろうか。本来であれば魔人ブウの攻撃で一日近くで人類は壊滅状態に陥っていた。それがこの世界ではヒルデガーンと地獄の悪人達もいるのだ。

 下手すれば半日、いや、今この瞬間にも地球が破壊される可能性がある。警戒すべきはブウとヒルデガーンだけではない。きっとフリーザやセルも蘇っているはず、奴らでもこの星を破壊することは可能なのだ。

 一刻も早く奴らをどうにかしなくてはいけない、だが…

 

「もし、なんとかブウとヒルデガーンを倒したとしよう。本来であれば奴らは地獄行き、しかしこの状況で奴らを倒したところで正常にあの世に送ることができるのか?」

 

 俺の疑問に答えたのはデンデだ。

 

「…分かりません、閻魔様が封じ込められるなんて前代未聞の事態です。あの世で魂だけとなるはずの魔人達が肉体を持ち、再び現世に戻ってきてもおかしくはありません」

「なんということだ…」

 

 あくまで仮定の話だが、もし今のデンデの話が本当のこととなればもうどうしようもない。勝てるかも分からない魔人との戦いに勝ったとしてもすぐに復活してしまうなんてまさしく悪夢だ。本当に打つ手がない。

 

 地獄をひっくり返したかのような現実に言葉を失っていると神殿の中からポポ達の言い争う声が聞こえてきた。

 

「おい、安静にしてろ、まだ寝てないとダメだ」

「放してくれ、俺にはやることがあるんだ!」

 

 やがて神殿の中からタピオンが姿を現した。

 

「あの男はお前が連れてきた…、いったい何者なのだ?」

「それは…、ワシも詳しくは知らん。あの戦場で倒れていたところを連れてきたのだ」

 

 知識として俺は彼のことを知っているがあくまで初対面、とりあえず白を切ることにした。

 神殿から出てきたタピオンが俺達に気がついた。ちょうどいいので彼自身に自己紹介をしてもらうのがいいだろう。

 

「貴方達は…、…俺を助けてくれたのは貴方達ですか?」

「お前をここに連れてきたのはワシだ、と言っても本当に連れてきただけだがな。それよりも自己紹介といこうではないか、ワシの名は…」

「命を助けてもらったことは感謝します。しかしもう俺には関わらない方がいい」

 

 俺との会話を打ち切り、神殿を去ろうとするタピオンをデンデが慌てて引き留めた。

 

「い、いけません! 貴方はまだ万全じゃない、もう少し安静にしてないと…!」

「…それどころではありません。急いで奴のもとに向かわないと、ぐっ」

 

 胸を押さえて蹲るタピオン。やはりデンデの言う通りまだ彼は回復しきっていないようだ。なんとか彼を引き留めようと会話を投げかける。

 

「奴、というのはあの幻魔人、ヒルデガーンのことだな? 詳しく説明してくれ。なにか力になれるかもしれん」

「…知っていましたか。奴は今どこに?」

「人々を襲いながら地上を暴れまわっておる。幸いこの場所はまだ気づかれていないが…、奴がこの星を破壊し尽すのも時間の問題だろう」

「そ、そんな…!」

 

 俺の話を聞いたタピオンは血相を変えて目を見開いた。そしてまだ本調子ではないだろう体を無理やり立ち上がらせるとこちらに背を向けた。

 

「おい! まだ安静にしておけと…」

「俺はもう行きます。……これ以上、貴方達を巻き込むわけにはいかない」

 

 それだけを言い残し、神殿から飛び立つタピオン。俺はその姿にどこか既視感を感じた。

 

「い、行ってしまった…」

「…ワシはあいつを連れ戻してくる」

「なっ、本気か!? 今の地上の状況はお前も知っているはずだろう」

「放っておくわけにもいくまい。安心しろ、すぐに戻ってくるつもりだ。ピッコロ、すまんがしばらく皆のことを頼む」

 

 仲間達のことをピッコロに任せ、俺はタピオンの後を追う。俺にはどうしてか彼を放っておくことができなかった。

 

 

 

 

 

 タピオンにはすぐに追いつくことができた。

 少し大きな都市…だった場所。今は荒れ果て、瓦礫の山となってしまっている。ヒルデガーンかブウ、或いは地獄の亡者共によって破壊されたのだろう。

 そんな人の気配もない廃墟、崩れた建物に手をついて苦し気に呻くタピオンに声をかけた。

 

「はぁっ…はぁっ…、くそっ…!」

「言ったはずだ。まだお前は万全ではない、ワシと共に神殿に戻ろうではないか」

「…どうして追ってきたのですか」

 

 共に神殿に帰ろうと促すがタピオンは俺の言葉に従おうとしない。思えば映画でもトランクスが彼の信用を得るのにも時間がかかっていた。だが今はゆっくりと時間をかけている暇はない。

 少々ずるい気もするが、俺の知識を利用することにする。

 

「その服装、そして幻魔人ヒルデガーン…、察するにお前は勇者タピオンだな?」

「っ! どうして俺の名を!?」

「知っているとも。お前、いや、千年前のお前達兄弟と幻魔人の伝説はワシも聞いたことがある。南の銀河ではお前達のことは今も語り継がれているのだ」

 

 申し訳ないが半分は作り話、俺が知っているのは勿論前世の知識のおかげだ。彼らの事がどこまで語り継がれているかは分からない。

 だが俺が多少なりとも事情を知っているとなれば話をしてくれるかもしれない。

 

「俺のことを知っているのならば話は早い。もう放っておいてくれ、俺は…」

「ヒルデガーンを討たなければならない、か?」

 

 タピオンが傷ついた体を引きずってでも先を急ごうとする理由は分かる。ヒルデガーンを自らの手で倒すつもりなのだ。

 彼を突き動かすもの、俺にはそれが痛いほど分かった。

 

「責任を感じているのだろう? この有様に、今まさに破壊され続けているこの星に」

「それは…! …その通りだ、これ以上俺達の問題にこの星を巻き込んでしまうわけにはいかない。俺は一刻も早くヒルデガーンを倒さねばならないんだ!」

 

 声を荒らげるタピオン。その姿で先程感じた既視感、その正体がはっきりと分かった。

 

 

 似ているのだ、7年前の俺と今のタピオンの姿が。

 

 7年前、セルとの戦いで俺が感じていたもの。それは強い責任感だ。

 自分のせいで悪化してしまった事態。本来迎えるべき歴史が、来るべきハッピーエンドが自身のせいで失われてしまうかもしれなかった。自分の存在が恐ろしい脅威を招いてしまった。

 あの時、俺は自分の手でセルを倒そうと躍起になっていた。そんな俺とタピオンの姿が重なって感じたのだ。だから俺は彼を放っておくことができなかった。

 

「落ち着けタピオンよ、一人でできることには限りがある。無為に死にに行くような真似はやめるんだ」

「貴方に何が分かる…!」

「分かるとも、ワシもかつて似たようなことを経験した。自分のせいで誰かが危険にさらされる、それが耐え難いものであることはよく理解している。しかしあの時は結局ワシ一人の力ではどうすることもできんかった」

 

 セルとの戦いを思い返す。俺は敗れ、未来の悟飯と現代の悟飯に戦いを押し付けてしまったことを。そして2人の悟飯でさえもどうにもならず、俺と悟空が助太刀に入ったことを。最後は仲間全員で力を合わせて勝利を掴んだことを。

 

「だが仲間達と協力して危機を乗り越えることができた。一人ではどうしようもない時も、仲間達と力を合わせれば見えてくるものが確かにあるのだ」

「…だが俺に仲間はもういない。千年の時の流れ、故郷であるコナッツ星にも俺の知る者はもはや誰もいないだろう。唯一俺を覚えているであろうミノシア…、俺の弟もきっと既に殺されてしまっている。俺が頼れる者なんてもう誰も…」

「ならばワシを頼れ!」

「なっ!?」

 

 俺の言葉に驚いたように目を見開いたタピオン、俺は膝をついて彼に目線を合わせた。

 

「ワシも、そしてワシの仲間達も、お前に協力しよう。皆で戦えばあのヒルデガーンを倒すことも可能の筈、今こそ共に戦おうではないか!」

「なぜだ、なぜ見ず知らずの俺にそこまで…」

「確かにワシ達は初対面、それどころか生まれた星も、種族も、時代さえも違う。信用するのは難しいかもしれん。だが奴を倒し、平和を取り戻そうとする志は同じ、手を取り合う理由なぞそれだけで十分、それが仲間というものなのだ」

 

 俺はタピオンに向かって手を差しだす。

 

「さぁタピオン、ワシの手を取れ!」

 

 タピオンは俺の手をじっと見つめて、そしてポツリと呟いた。

 

「…名前を、貴方の名前をまだ聞いていなかった」

「そういえばまだ名乗ってなかったな。ワシの名はコルド、この地球の人間ではないのだが訳あって今はこの星で暮らしている」

「そうか…」

 

 ほんの少しの逡巡、やがてタピオンは顔を上げて俺の手を握った。

 

「…分かった。コルド、どうか力を貸してくれ…!」

「任せるがいい、タピオン!」

 

 向き合い、固く握手を交わす俺達。平和を取り戻す、2つの意思が時を越えて、今一つになった。

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