大王転生   作:イヴァ

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思いがけない再会、地獄から蘇りし一族

 俺の説得により協力の意思を表明してくれたタピオン。

 俺達は共に一度神殿に戻っている最中だ。タピオンもまだ本調子ではないし俺がこれからどう動くのかもまだ定まっていない。これからについては神殿で仲間達と話し合って決めた方がいいだろう。

 その道中、この地球の現状を簡単にタピオンに説明していた。

 

「なんてことだ…、まさかこの星がそんな状況に陥っていたとは…」

「うむ、気を落とすなとは易々と言えん、しかしこの惨状はヒルデガーンだけが原因ではない。魔人ブウに地獄から蘇った悪人共、奴らによる被害もかなりのものだ」

「事情は分かった。しかしヒルデガーンが人々を襲っているのも事実…、コルド、君は何から手をつけるつもりだ?」

「ううむ…」

 

 問題はそこである。あの世の異変を解決、つまり悟空達がジャネンバを倒すまでこの地上でできることはあるのだろうか。

 仮にブウやヒルデガーンを倒せても今の現状だと再びこの地上に送り返される恐れもある。それも肉体付きでだ。かと言ってこのまま奴らを放置しておくのもまずい。地上の人々が殺し尽くされ、破壊できるものが無くなった地球を奴らが破壊してしまう可能性も考えられる。

 時間稼ぎの為に戦うにしても瞬間移動を使える人間がいないと離脱するのも一苦労だ。戦って逃げてを繰り返すのは現実的ではない。せめて魔人以外の悪人達だけでも倒してしまうべきか。

 

「た、助けてくれーー!!」

「この声は…!」

 

 良い考えが思い浮かばず、沈黙していると地上から助けを求める声が聞こえてきた。タピオンがその声の方に向かう、俺も思考を打ち切り大急ぎでそれを追いかけた。

 そこにいたのは銃を持った地球人、軍服を着ているのを見るとおそらく軍人だろうか。そしてそれを追いかける人物は見覚えのある服装をしている。いや、見覚えのあるのは服装だけではない。

 

「た、頼む! 殺さないでくれ!」

「へっへっへ、このナッパ様に立てついてただで済むと思ってるのか?」

「(あ、あれは…、ナッパ!?)」

 

 一般人を甚振るように追い立てているのはあのナッパだ。奴も地獄から蘇ったのだろう。

 状況が読めてきた。地球の軍人が事態を鎮圧しようと地獄からの死者に立ち向かったものの歯が立たずに逃げ回っているところだろう。

 

「はっ、追いかけまわすのも飽きたな、そろそろ殺すとするか…、死ねー!」

「させない!」

「なにぃ!?」

 

 逃げる軍人の背中に放たれたエネルギー弾、それをナッパと軍人の間に割って入ったタピオンが切り裂いた。

 

「ここは危ない、すぐに逃げるんだ!」

「は、はい! ありがとうございます!」

 

 大慌てでこの場から逃げ去る一般人、しかしナッパの興味は既に自分の攻撃を防いだタピオンに移っていた。お楽しみを邪魔されたナッパがタピオンに怒鳴る。

 

「誰だか知らねぇがこの俺の邪魔をするとは…、いい度胸してるじゃねぇか!」

「貴様が地獄から蘇った悪人という奴だな。無意味に人々を襲う真似はこの俺が許さん!」

 

 タピオンとナッパの力量は一目瞭然、気を察知できないナッパには分からないだろうがタピオンの方が圧倒的に上だ。何も心配はないだろうが見ているだけなのもなんなので俺もタピオンの隣に降り立つ。

 

「上等だ! ぶっ殺して…って、あ、あああ、貴方様は!?」

「ん?」

 

 今にも飛びかからんと怒りで顔を赤く染めたナッパの顔が俺を見た途端、真っ青になる。そして腰が抜けたかのようにその場にへたり込んでしまった。

 何がなんだと言うのだろうか。

 

「あ、貴方様はまさかあのコルド大王様で!?」

「(あ、コルドの事知ってるのか)」

 

 理由はすぐに理解できた。ナッパは俺のことを、いや、この肉体の本来の持ち主であるコルド大王を知っているのだ。だからどうというわけでもないので、手早く倒してしまおうと思ったところで俺はとある作戦を閃いた。

 

「(…待てよ? この状況…、上手く利用すれば…)」

 

 この作戦が上手くいけば地球の被害を減らすことができるかもしれない。俺はすぐさま腕を組みふんぞり返る。

 

「ほう、貴様、このワシのことを知っているのか。見たところサイヤ人のようだが…、名をなんという?」

「ナ、ナッパと言います! コルド大王様のことは以前に軍をフリーザ様にお譲りになる際にお見掛けしたことがございまして…」

 

 多分だが映画のあのシーンのことだろう。サイヤ人達にコルドが息子のフリーザを紹介している場面があった。確かナッパも名門出のエリート戦士らしいし年齢的にもあの場にいてもおかしくはない。

 しかしこれは好都合だ。この作戦は俺のことを知っている方が話は早い。

 

「コ、コルド大王? いったい何の話をしているんだ?」

「…あー、すまん、タピオンよ。とにかくこの場はワシに任せてもらえると助かる」

 

 話についてこれないタピオンが疑問を浮かべる。いろいろ聞きたいことがあるだろうがこの場は我慢してもらうことにする。…後で説明するのが大変そうだ。

 

「それでナッパよ、貴様はこの星でいったい何をしているのだ?」

「そ、それは…フリーザ様のご命令でカカロットの野郎と謎の超サイヤ人の2人を探しているところです。フリーザ様曰く地球人を襲えば向こうからやってくるだろうと、だから適当に街を破壊して…」

 

 やはり俺の予想通り、ナッパは地獄でもフリーザの言いなりらしい。この分だとフリーザは大勢の部下を引き連れ、組織的に行動しているに違いない。ますます運が向いてきた。

 

「愚か者め! よりにもよってこの星で破壊活動とは…、この地球がワシの所有している惑星と知っての狼藉か!」

「コ、コルド大王様の星ぃ!?」

 

 顔を青くしたナッパの顔が更に青く染まる。そしてへたり込んだ体勢からすぐさま頭を下げる、所謂土下座の姿勢をとった。

 

「もももも申し訳ございませんでした! し、知らなかったんです、私はフリーザ様の命令に従っていただけで、貴方様に歯向かう意思なんて微塵もございません! な、何卒、お許しを!」

 

 ガタガタと震えながら土下座するナッパ。可哀そうに思えるほどの怯えっぷりだがそうでなきゃ意味はない。

 

「本来であれば貴様の行動は到底許されることではない。だが我が息子、フリーザの命令となれば話は別だ…。ナッパよ、面を上げい!」

「は、はいぃぃぃ!」

 

 土下座の姿勢のまま顔だけをあげてこちらを見るナッパを見下ろしながらなるべくコルド大王らしい振る舞いで話を続ける。

 

「このワシ自らが息子と話をつけよう。ナッパ! 今すぐにフリーザのもとに案内せい!」

「フリーザ様の所へ!? し、しかしまだカカロットの野郎共を見つけていないのに帰ったら俺はフリーザ様に…」

 

 話の内容を纏めるとフリーザは悟空への復讐が目的、ナッパは悟空を誘き出すために街を破壊している。成果も無しにフリーザのもとに帰ればその結末は明らかだ。

 だがフリーザの居場所を知っているなら何が何でも案内してもらう必要がある。

 

「ふむ。フリーザは確かにワシ以上に冷酷かつ残忍、何の成果も無しに帰れば消されるのは必然だ。だがそれはここでワシに歯向かっても同じこと、そうは思わんか?」

「そ、それは…」

「安心せい。ワシをフリーザのもとに連れて行けばこの星で暴れた罪は帳消し、なんなら貴様に対するフリーザの処罰も止めてみせよう」

「本当ですかい!?」

「本当だとも、ワシは息子達よりもずっと優しいのだ。貴様の身の安全は保障しようではないか」

「わ、分かりました! このナッパ、僭越ながらコルド大王様の案内役を務めさせていただきます!」

 

 大慌てで飛び立つナッパを追いかける。

 少々抵抗されたが身の安全をちらつかせたらすぐに了承してくれた。最初から拒否権はないのだから早く連れて行ってくれたらいいものを。

 とにかくこれでフリーザのもとに行ける。俺の作戦の要はここからだ。

 

 

 

 

 ナッパに連れられて辿り着いたのは先程よりも大きな都市だ。

 先程の街と同様に酷く破壊されており、地球人の姿はない。上手く逃げ遂せたか、あるいは殺されたか、フリーザの非道に苛立ちが募るが今は我慢だ。

 そしてお馴染みの戦闘服に身を包んだ大勢のフリーザ軍が集まっているところに辿りついた。近づく俺達に気がついた戦闘員が立ち塞がる。

 

「おい! この先にはフリーザ様がおられるのだ! 何を勝手に入ろうと…」

「道を開けろ! この御方を誰だと思ってる。フリーザ様の父、コルド大王様だぞ!」

「フリーザ様の父だとぉ?」

 

 俺の顔を見上げる戦闘員。

 

「何をバカなことを…確かにフリーザ様に似ているがそんな話が信じられるわけあるか!」

「ば、馬鹿野郎! 早く道を開けねぇと殺されるぞ!?」

 

 こいつはコルド大王のことを知らないのだろう。見たところ比較的若そうな外見をしている、と言っても宇宙人の年齢なんてよく分からないが。

 言い争うナッパと戦闘員にフリーザ軍の注目が集まる。そしてその争いに釣られてか、奥から人影が現れた。

 

「何を騒いでいるのですか騒々しい! はやく孫悟空を見つけて…、なっ、お前は!?」

 

 現れたのはフリーザだ。その姿はあの時のまま、ではなくサイボーグでは無くなっている。地獄から蘇る際に与えられた肉体のおかげだろうか、全身が生身の状態だ。

 それよりも向こうから出向いてくれるとはラッキーだ。

 

「…まさか今になってまた会うことになるとは思わなかったよ、パパ」

「10年ぶりか? 久しいな、フリーザよ」

 

 このやり取りで俺達が親子と疑う者はもはや誰もいないだろう。俺とフリーザのやり取りをフリーザ軍の面々が息をのんで見守っている。

 

「地獄で見かけなかったからまさかとは思っていたけど…、やっぱりパパは死んでいなかったんだね、驚いたよ。それにしてもどうしてここに?」

「決まっているだろう、貴様の馬鹿な真似を止めに来たのだ」

「馬鹿な真似? フフフ、何を言っているんだい? まさかボクの部下がこの星で暴れまわっていることを言っているかな?」

「そのまさかだ。この地球を攻撃するのを今すぐ止めろ、さもなくば…」

 

 その瞬間、俺の顔に光線が飛んできた。顔を動かし、その攻撃を避ける。見るとフリーザが人差し指をこちらに向けていた。

 

「フンっ、まさかクウラが言っていたことが本当だったとはね…」

「クウラだと? 貴様、あいつに会ったのか?」

「ついさっきね。驚いたよ、まさか超サイヤ人、あの憎き孫悟空と仲良くこの星で暮らしているなんてね」

「(ちっ、知ってたのか…、だとすると厄介だな)」

 

 どうやら俺の現状はフリーザに筒抜けらしい。できれば言葉だけで上手く乗り切りたかったがこの様子じゃそれも厳しそうだ。

 面倒なことになったと考えているとフリーザが口を開いた。

 

「クウラは色々と言っていたけど…、どうせパパの事だから命乞いでもして見逃してもらったんだろう? まったく、こんなのが自分の父親だと思うと反吐がでるよ」

 

 …いや、まぁこれに関してはその通りだ。

 実際に俺は全力で命乞いするつもりだったし本来のコルド大王も似たようなもんだ。クウラと比べてフリーザの方がコルド大王に対する理解が深いらしい、…まぁどうでもいいか。

 

「とにかくボクの邪魔をするなら例えパパでも容赦はしないよ? あの超サイヤ人共を見つけ出して今度こそこの手で殺す、パパは大人しく引っ込んでてよ」

「…まったく、出来の悪い息子を持つと苦労する」

「なんだって?」

 

 俺の言葉にフリーザが反応する。こうなった以上フリーザを説得するのは不可能だろう。ならばこのまま会話を続ける意味はない。

 俺はフリーザに瞬時に接近して奴の腹を殴りつけた。

 

「ごはぁっ!? な、なに…を……?」

「出来の悪い息子を持つと苦労すると言ったのだ。馬鹿息子め」

 

 そのまま白目を向いて気絶するフリーザ。

 突然の俺の行動にフリーザ軍の面々が固まる。そんな彼らを無視して俺は周囲のフリーザ軍に大声で命令を下す。

 

「聞け、フリーザ軍よ! フリーザに代わりこのコルド大王が命令を下す! 今すぐに破壊活動を止め、この地上を暴れる者共を鎮圧するのだ!」

 

 俺の作戦、それはフリーザ軍にこの地球を防衛させるのだ。普通は不可能だが、この体、コルド大王が命令したとなれば話は別だ。フリーザの父であるコルドの命令であればフリーザ軍を動かすことができる。つまりこれよりフリーザ軍改め、地球防衛軍というわけだ。

 

 突然の命令に動揺が広がる。周囲がざわつく中、俺の真意を聞こうとナッパがおずおずと話しかけてきた。

 

「な、何を…、いったいどういうおつもりで…!?」

「聞こえなかったか? 貴様らでこの地球を守れと言ったのだ。フリーザは知らなかったようだがこの星は我が軍にとって重要な拠点となる。決して破壊していい星ではないのだ!」

 

 重要な拠点、と言うのは出鱈目だ。ただ適当な理由があった方がこいつらも動きやすいだろう。しかしまだ納得がいかないのか、なかなか動き出そうとしない。

 そんな面々に追い打ちをかけるように気絶したフリーザを片手で鷲掴みにして掲げあげた。

 

「ワシの命令を無視したければするがいい。ただし、その際はこのフリーザのように生温い制裁では済まさん。地獄の責め苦すらも忘れる恐怖をワシ自らが刻み込んでやる!」

 

 恐怖による支配。これではまるでフリーザとやっていることは同じだが手段を選んでいる暇はない。地球を守る為ならなんだってやってやる。

 俺の一喝でフリーザ軍も大慌てで動き出した。

 

「お、お前達、急げ! コルド大王様の命令に従うんだ!」

「決して一般人は傷つけるな! 暴れているものだけを鎮圧するのだ! この場にいない兵士にも伝達を忘れるな!」

 

 念を押して命令しておく。やがてフリーザ軍は散り散りとなり残されたのは俺とタピオン、そして気絶したフリーザだけだ。

 

「こ、コルド、君はいったい何者なんだ…?」

「…気にするな、大王と呼ばれたのは昔の話だ」

「そ、そうか…」

 

 タピオンが若干引いているので弁明しておく。

 折角心を開いてくれたのに下手したら敵対しないかと不安だったが、今の一連の出来事がこの星の為に行われたことだということは理解してくれたようだ。

 

 それにしてもフリーザ軍を地球防衛の為に動かせたのは幸運だった。

 目には目を、死者には死者を、戦闘力は大したことないかもしれないがこの地球の軍よりかは遥かに高レベルだ。数もそれなりにいるし地獄に送り返されても再び地上に戻ってくる可能性を考えれば時間稼ぎにもってこいだ。

 これでなんとか悟空達がジャネンバを倒すまで地球の破壊は防げるかもしれない。

 

 用は済んだのでタピオンと共に神殿に戻ろうとすると何者かがこちらを窺っている気配を感じた。そして俺はこの気配を知っている。

 

「何か用か、クウラよ」

「…気づいていたか、親父」

 

 物陰から見覚えのある姿が現れる。

 そこにいたのは紛れもなく先程倒したはずの男、俺の、コルド大王のもう一人の息子、クウラだった。

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