大王転生   作:イヴァ

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いつか必ず超えてみせる、地獄から蘇った男の誓い

 突如、再び現れたクウラに俺は警戒の色を強める。

 地獄から悪人達が蘇っている時点でこいつの復活も予想はしていた。だが俺に手も足も出ないことは実証済み。何のために現れたのか、クウラの真意を確かめるために俺は奴に問いかける。

 

「クウラよ、お前もフリーザ同様に復讐が目的か? だとすると狙いは…」

「そうだ、俺の目的は親父、あんただよ」

 

 やはり自分を殺した俺への復讐が目的か。しかしその行動はあまりにも短絡的過ぎる。

 バビディの洗脳によって強化された状態で俺に大敗したのだ。その強化すら失われたクウラが俺に勝てる確率は皆無、しかし奴自身が戦いを挑むと言うのならば俺も降りかかる火の粉は振り払わなければならない。

 手早く終わらせようと気を高めようとして…、

 

「…勘違いするな、確かに俺の目的はあんたへの復讐。だが今はその時ではない」

「なんだと?」

 

 目的に反して戦いの意思を見せないクウラに俺は困惑する。そんな俺を無視して奴は言葉を投げかけてくる。

 

「親父、かつての俺はあんたが俺達兄弟を恐れているものかと思っていた。しかし実際は違った。あの時見せたパワー、そしてあの姿、あんたは以前から力を隠していたのか?」

 

 クウラが投げかけた質問、それはかつての、俺の意思が目覚める以前のコルドの話だ。それについて俺ははっきりとした答えを返すことはできない。なにせかつてのコルドの記憶を持ち合わせていないのだ。

 それでも何となくだが分かることはある。フリーザやクウラの話したコルドの印象からすれば2人が言っていることは概ね真実だろう。

 自身を超える力を持つ2人の息子に対して早々に頂点の座を譲った。そしてそこにどんな思いがあったのかは分からない、だが強大な力を持つ自らの息子に対する誇りのようなものは感じていたのではないだろうか。と言っても全て俺の推論に過ぎないのだが。

 

「答えろコルド! あんたの足元にも及ばない俺達を、そして自らこそが最強だと思い上がった俺をあんたは心の中で嘲り笑っていたのか! どうなんだ!?」

 

 鬼気迫るクウラの問いかけに少しだけ気圧される。

 このやり取りに付き合う義理はない。有無を言わせずクウラを倒してしまい神殿に帰還することもできる。だが、なんとなく俺には今のクウラを無視することはできなかった。

 こいつは間違いなく悪人、同情すべきでない相手ではない。しかし何というか、親子がすれ違ったまま、というのは立場関係なく寂しいものがある。どうせもう会うことは無い、この誤解を解くくらいは許されるだろう。

 

「落ち着けクウラよ。お前の言っていることは全て誤りだ。かつてのワシの引退、それはお前達兄弟の優れた潜在能力を見抜いての事。お前達の能力は親であるワシを完全に上回っていたのだ」

「だったらあの力はなんだ…! あの魔術師によって力を引き出された俺を倒したあの力は!? それに今もあんたはフリーザを一撃で倒して見せた、どうやってそれほどのパワーを手に入れた!?」

 

 クウラの視線が気絶したフリーザに注がれる。クウラにとってフリーザは自分に匹敵する数少ない存在、それが一撃で倒されたとなれば無視はできないわけか。

 俺が強くなった理由、それは単純明快だ。別に隠すことでもない。

 

「何も不思議なことではない。ワシもまた修行によって己の内に眠る力を引き出しただけにすぎん。ただそれだけのことだ」

「しゅ、修行だと!? たったそれだけのことであれだけの力を…?」

「何を驚くことがある。日々の鍛錬、それこそが重要なのだ。地道なトレーニングに勝るパワーアップ方法などあるものか」

 

 こう言っといてなんだが、地道な修行を経ずとも滅茶苦茶なパワーアップをする連中もいるにはいる、が今は考えないものとする。…正直そういう連中が羨ましいのは内緒だ。

 

 俺の返答に言葉を失うクウラ。無理もない。

 ただ生まれたときから頂点に君臨してきた自ら一族、その自身の親が真面目に修行して強くなりましただなんて想像にもしていなかったのだろう。

 沈黙の末、やがてクウラが口を開いた。

 

「……ならばこの俺もまだ強くなる余地があるということか?」

「さっきの戦いでも言ったはずだ。お前が修行したうえであの魔術師に強化されていればこうはならなかったと。その言葉が全てだ」

「…ククク、なるほどな。そいつはいいことを聞いた」

 

 不敵に笑いだしたクウラに嫌な予感を覚える。

 今更ながら喋りすぎたかもしれない。明らかに余計なアドバイスをしてしまった気がする。

 

「決めたぞ、いつか俺は必ずあんたを超えてみせる。いつか…絶対にだ!」

 

 燻っていたクウラの闘志が再び激しく燃え上がるのを感じた。

 …気のせいではない。余計なことを話し、新たなる脅威を自らの手で生み出してしまったのは火を見るよりも明らかだ。今になって後悔してきた。修行して強くなったというのは隠しておくべきだった。

 

「…好きにするがいい」

「首を洗って待っていろ。次に会う時、その時があんたの最後だ!」

 

 しかし今起こっているあの世の異変が解決すればこいつも再び地獄に送り返される。あまり深く考える必要はない…はずだ。内心冷や汗をかきながら誰にするでもない言い訳を必死に考える。

 

「そうだ親父、フリーザは置いていけ。心配するな、こいつが暴れださないように見張っておいてやる」

「随分と気が利くな、なんのつもりだ?」

「なに、あの薄汚い魔術師から解放してくれた礼だ。これくらいの手助けはしてやるさ」

 

 奴の言う通りにするべきか悩んだが、嘘を言っているようには思えない。結局従うことにした。クウラに向かってフリーザを投げ渡す。放置しておくのも危険だし神殿に持って帰るのも気が引けたので正直助かった。

 

「クックックッ、いいか、あんたはこの俺の手で必ず殺す。それまでは簡単に死んでくれるなよ?」

 

 受け取ったフリーザを地面に投げ捨てたクウラは上機嫌に近くの瓦礫に腰掛けた。奴はこれ以上会話を続ける気はないようだ。

 俺達も神殿に戻ろうとしたところでタピオンが口を開いた。

 

「コルド、奴を放っておいていいのか? あれほどの力を持った男を放置しておくのは危険だと思うが…」

「心配するな、クウラが嘘を言っているようには思えん。ワシには分かるのだ」

 

 今のクウラは無意味に暴れるようなことはないだろう。同じ血が流れているからこそか、なんとなくだが奴の真意が伝わってきた。

 俺を自らの手で殺すこと。それだけが今のクウラの目的だ。この地球や人々に危害を加えるというなら話は別だが、そんなつもりもなさそうだ。

 奴の殺意の標的になってしまったことは正直気が重い、だが狙いが俺だけというのならば後回しだ。今はそれよりも優先することがある。

 纏わりつくようなクウラの殺意から逃げるように俺とタピオンは神殿へと戻った。

 

 

 

 

 

 

「戻ったか。随分と遅かったじゃないか」

「すまん、少し寄り道をしていてな」

 

 ほどなくして神殿へと辿り着く。

 当初はタピオンを連れ戻してすぐに帰ってくるつもりだったが、予想外のことが起きてかなり帰ってくるのが遅れてしまった。だがそれ以上の収穫があったのも事実。

 タピオンの紹介も兼ねて、俺達は何が起きたのか情報交換を始めた。

 

「なるほどな、フリーザ軍が…。にわかには信じられんが確かにお前なら可能か」

「まさかフリーザの部下が地球を守ってるなんてな。複雑だぜ…」

 

 俺の命令によって地球を守るために働くフリーザ軍に皆がなんとも言えない表情を浮かべるが今はそんなことを言ってる場合ではない。

 とにかく今は少しでも時間を稼がなければならないのだ。フリーザ軍には地球防衛軍となってもらい頑張ってもらおう。

 

「それでタピオンと言ったな。あの巨人について詳しく知っているようだが…」

「はい、俺の知る全てをお話しします」

 

 そしてタピオンが自身の経歴と幻魔人ヒルデガーンについて語りだす。

 故郷であるコナッツ星の事、千年前に起きた悲劇、幻魔人ヒルデガーンについて己の知る全てを説明するタピオン。

 その内容は概ね映画で語られた通りの俺の知るものだった。話を終えたタピオンに幾つか質問する。

 

「タピオンよ、ヒルデガーンを再び封印することはできないのか?」

「…難しいと思う。千年前は二つに切り裂いたヒルデガーンを俺と弟の2人で分けることでなんとか封印できた。だがここに弟はいない。奴が完全な姿に戻っているということは弟はもう…」

 

 今暴れているヒルデガーンは上半身と下半身が合体した姿だ。タピオンの言うように彼の弟、ミノシアは既に殺されてしまっているだろう。

 やはり再封印は現実的ではないか。しかし今の現状を考えるとこの方法が最善手だ。なんとかならないだろうか。

 

「ならばある程度弱らせたヒルデガーンをタピオンが封印してしまう。これならばどうだ?」

「それは…、それならいけるかもしれない」

「本当か!」

 

 ならばこの作戦が一番かもしれない。タピオンには少しの間我慢してもらう必要があるが事態が落ち着いて悟空達が戻り、戦力を整えてから改めてヒルデガーンを倒してしまえばいい。

 

「ヒルデガーンを二つに分けたのは強大な力を持つ奴を1人で封印することができなかったからだ。奴自身の力が弱まれば俺一人でも封印できるだろう。しかしヒルデガーンを弱らせることなんてできるのか?」

 

 奴との戦いを思い出す。あの時は怒りで我を忘れていた為あまり覚えていないが、どうせ避けられると考えて奴への攻撃は殆ど行わなかった。

 しかし力任せに奴の体を投げ飛ばしたり拳を殴りぬいた記憶がある。その時に俺は確かに奴の実体に触れている。倒せるかは別としてダメージを与えて奴を弱らせることぐらいはできるはずだ。

 問題はヒルデガーンが進化を残していることだが、それに関しては進化される前に封印を狙うしか方法はなさそうだ。

 

「案ずるな、奴とは一度戦った。ヒルデガーンを弱らせる役目はこのワシが引き受けよう」

 

 作戦は決まった。ようやく希望の光が見えてきたというところだろうか。ただまだ懸念すべき点はある。倒すべき魔人はまだもう1体存在するのだ。

 

「そういえば魔人ブウの方はどうなった? 何か動きはあったか?」

「魔人ブウか…、実は奇妙なことになっていてな、実際に見た方がいいだろう」

 

 何か不都合が起きたのだろうか、ピッコロに促されてブウがいるであろう方角に意識を向ける。そして流れ込んできた光景についその名前を呟いてしまう。

 

「あれはミスターサタン…?」

 

 俺の見た光景、それは魔人ブウとサタンが一緒に犬と遊んでいる光景だ。

 おそらく本来の歴史同様に暴れまわるブウをサタンが退治しに来たのだろう。そして同じ流れを辿りブウと仲良くなった、と考えるべきか。

 地上の荒れ具合からしてこうなるとは考えていなかった。だが明らかに理性を持たないヒルデガーンではなく話し合いの余地があるかもしれないブウの方にサタンが向かうのは必然だったのかもしれない。

 

「そうだ、どういうことか分からんがあの男が来てから魔人ブウは暴れることを止めた。さっきからずっとあの様子だ」

「(これは…どう考えるべきだ?)」

 

 魔人ブウが大人しくしているのはありがたい。もしかすると戦う必要が無くなるかもしれない。だがこの状況には見覚えがある。

 

「どうする? このまま奴らを放っておくべきだと思うか?」

「…ブウが暴れてない以上様子を見た方がいいだろう。今はヒルデガーンに集中するべきだ」

 

 こうなった以上ブウはしばらく様子を見た方がいいだろう。もし下手に手を出してブウが分離、凶悪な変化を遂げれば今度こそ収拾がつかない。

 

「ピッコロよ、奴らを刺激する者がいないか見張っておいてくれ」

 

 そして馬鹿な地球人が余計なことをしないために手を打っておく。仮にあの悪人達が馬鹿な真似を始めたとしても俺の命令に従うフリーザ軍にすぐに取り押さえられるだろう。そもそも今の地上の惨状を考えれば既に死んでいる可能性は十分にある。それでも念の為だ。

 

「分かった、だがここからだと手が出せんぞ?」

「なに、近づく者がいれば念話で呼びかければいい。並大抵の者であればそれだけで逃げ出すさ」

 

 急に頭に声が響けば普通の人間なら逃げだすに違いない。ブウとサタンの見張りをピッコロに任せつつ、あることを思い出した。

 

「そういえば悟天とトランクスはまだ寝ているのか?」

「いや、あいつらはもう目覚めた。今は精神と時の部屋で修行している。…ベジータの仇を討つためにな」

「…そうか」

 

 まだ若いのに強い子供達だ。もう立ち直り自らの力で歩き出しているなんて。

 状況次第ではあの2人の力も借りる必要があるだろう。子供を頼りにするなんて情けない話だが…今更か。

 

 思考を切り替えて今の現状を整理する。

 

 地獄から蘇った悪人達は有象無象であればフリーザ軍が取り押さえてくれるはずだ。ついでにヒルデガーンを相手に時間を稼いでくれると見てもいいだろう。勝てないにしても注意を引いてくれれば十分、例え弱くても襲う相手がいればいるほど地球を破壊する可能性は低くなる。

 

 魔人ブウは幸運なことにサタンが抑えてくれている。本来の歴史のように凶悪変化の可能性が怖いがそれは俺達が刺激しても同じこと。ならば余計な手は出さずに様子を見た方がこちらも自由に動けるというものだ。

 今、最優先で対処すべきはヒルデガーンだ。先程話したように上手く封印してしまえれば言うことは無い。

 

 少しずつ事態が好転してきているのを感じる。そう考えているとタピオンがデンデに話しかけていた。 

 

「地球の神よ、俺が後どれくらいで万全の状態に戻るか分かりますか?」

「そうかからないと思います。横になって数時間も休息すればすぐに良くなりますよ」

 

 デンデ曰くタピオンの回復にあまり時間はかからないそうだ。

 

「よし、タピオンが調子を取り戻し次第こちらから打って出る! それまで皆は自由に過ごしてくれ。ただし地上は危険だ、動くのはあくまで神殿内で頼むぞ」

 

 各自に解散を言い渡す。気を張り詰め過ぎるのも良くないので皆には休息をとってもらおう。

 

「デンデ、精神と時の部屋だがワシも入ることはできるか?」

「コルドさんが? ええ、可能ですよ。念の為に3人以上でも使えるよう少し前に調整しておきました」

「流石デンデだ、そいつは助かる」

 

 軽く流そうとしたが本当に流石すぎる。もしかしたらデンデの神としての才能はかつての神を大きく上回っているのかもしれない。まったく頼もしい神様だ。

 

「なんだ? お前も精神と時の部屋に入るつもりか?」

「うむ、タピオンの回復まで数時間、ただ待っているのも退屈だ。あいつらにちと修行をつけてやろうと思ってな」

 

 精神と時の部屋で修行する悟天とトランクス。フュージョンを習得している彼らだがまだその強さには不安が残る。ゴテンクスの状態で超サイヤ人3に変身できるようになるのをこの目で確認しておきたい。

 それにゴテンクスなら今の俺の修行相手にも十分、俺も少しでもパワーアップしておきたい。

 

「ピッコロ、さっきも言ったがブウを見張っておいてくれ。デンデはあの世の様子を、何かあればすぐに呼んでくれ。頼んだぞ」

「ああ、任せろ」

「分かりました、コルドさんも無理しないでくださいね」

 

 2人に念を押し、俺は精神と時の部屋に向かう。あの部屋に入るのも7年ぶりか。

 まずはゴテンクスの超サイヤ人3習得が最優先、そして俺も超サイヤ人3のゴテンクスに負けないくらいに強くなる。いや、ならなければならない。

 来るべき決戦に備えて俺もまた静かに闘志を燃やすのであった。

 

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