今更ながら今後も矛盾点や独自設定がでてきますが、温かい目で見ていただければ幸いです。
…特に今回からブウ編ラストまで突っ込みどころが多々あると思いますが、何卒ご容赦を…。
修行を終えて精神と時の部屋から出てきた俺達。デンデに体力は回復してもらったがあの部屋での修行は精神的にも負担がかかる。時刻も遅い時間ということもあり、悟天とトランクスには少し仮眠をとってもらうことにした。俺も来るべき戦いに備えて休息をとっておく。
するとどこからか笛の音が聞こえてきた。このメロディーは聞き覚えがある、と言ってもこの世界に来る前のことだが。
音の出所を探すとすぐに見つけることができた。タピオンが神殿の端でオカリナを演奏していたのだ。近づく俺に気がついたのか、タピオンが演奏を止める。
「…コルドか。すまないな、起こしてしまったか?」
「気にするな、それよりもいい音色だな。まるで心が洗われるようだ」
タピオンの演奏について素直な感想を述べる。落ち着いた雰囲気のいい音色だ。物静かで、そしてどこか悲し気な音色。この笛に幻魔人を抑え込む力があるというのも頷ける気がする。
「子供の頃、よく弟のミノシアと一緒にこの笛を吹いていたんだ。今でもあの頃のことはよく覚えてる」
「昔からお前達兄弟がそのオカリナを持っていたのか? 確かその剣と笛はコナッツ星にとって重要な物だと言っていたが…」
「ああ、元々俺達は幻魔人様の像を管理する一族だったんだ。このオカリナの吹き方や剣の扱いは父から教わったものだ」
「とすると…、ヒルデガーンを2つに切り裂いた神官というのはまさか…」
「そうだ、当時の神官は俺の父だ」
そうだったのか。だとすると彼の父は自らの息子2人にヒルデガーンを封じ込め、オルゴールに封印したことになる。きっとそこには俺なんかでは想像もつかない、並々ならぬ思いがあったはずだ。
「オルゴールに封印されるとき、もう二度と家族と会うことはできないと覚悟はしていた。だが…、実際に封印が解かれ、俺の知る人間が誰一人残っていないというのは、…想像以上に辛いものだ」
「タピオン…」
その封印も解かれ、彼は千年後の世界で正真正銘の孤独を味わっている。あまつさえヒルデガーンは好き放題に暴れまわり、彼ら家族の覚悟も踏みにじられてしまった。
そんな彼になんて声をかければいいのだろうか、俺には分からない。だが一つだけ俺から約束できることはある。
「…あまり気を落とすな。上手く事態が収束すればお前は弟と再会できる」
「な、そんなことが可能なのか!?」
ドラゴンボールのことを知らないタピオンからすれば当然の反応だ。普通は死者は蘇られないし壊された星はもとに戻らないのだ。あまり乱用すべきでないことは分かっているが彼の弟を蘇らせる、その願いは叶えてしかるべきだ。
「ああ、この星にはドラゴンボールというものがあってな。どんな願いも…とはいかんが大抵の願いなら叶えることができる。おそらくだがお前の弟が死んでそう時間は経っていないはず、ならば蘇らせることは可能だ」
「そんなものが…」
どうせこの戦いが終わればドラゴンボールで今回の被害を元通りにするんだ。今回の死が2度目であるベジータの蘇生には新ナメック星のポルンガも必要である。そう考えれば願いの数が足りないなんてこともないだろう。
「にわかには信じられない話だが……コルド、君が言うなら嘘じゃないんだろう。信じるよ」
…だがそれは全てが上手くいけばの話だ。
あの世のジャネンバ、地球の魔人ブウとヒルデガーン、蘇る死者、なんとしてでもこの全てを解決して元通りにしなければならない。
「さぁ、明日に備えてそろそろ休むぞ。必ず我らの手でヒルデガーンを打ち倒すのだ」
「…ああ、絶対に勝とう」
そうだ俺達は勝たなければならない。
あの世で戦い続けてるであろう悟空やベジータ、この地球と仲間達、そして新たな友人であるタピオンのためにも。
絶対に勝つ、そう心に刻み込み俺は戦いの時を待った。
翌日、神殿の広場に俺達は集まっていた。
この戦いが始まってそろそろ1日が経過しようとしていた。
「ピッコロ、魔人ブウに動きはあったか?」
「いや、あのミスターサタンという男が現れてから奴は破壊活動の一切を止めたままだ」
ありがたい話だ、サタンには感謝しないといけない。このままジャネンバとヒルデガーンを倒すことができるまで大人しくしてもらえれば言うことなしだ。
「地上の様子はどのようになっている?」
「…既に人々の殆どが殺されてしまったが、お前の命令通りに動くフリーザ軍のおかげでまだ辛うじて攻撃を免れている場所もある。だがそのフリーザ軍ももはや壊滅状態、ヒルデガーンが地上の人間を殺し尽くすまでそう時間はかからないだろう」
「タイムリミットは後少し、ということか…」
話を聞く限り、僅かな数だが人々が生き残れたのはヒルデガーンに対するフリーザ軍の抵抗があったからだろう。おかげで今まで地球は破壊されずに済んだ。
奴らは生前に地獄行きの判決をくらうほどの悪人ではあったが、事が済めば地獄での刑期を少し短くしてもらえるように閻魔様にお願いするくらいのことはしてもいいかもしれない。尤も俺の嘆願が聞き入れられるかは分からないが。
「(フリーザが暴れている様子もなし。…これはクウラのおかげ、か)」
クウラは自らが言った通りにフリーザをしっかり見張ってくれているようだ。正直、奴に感謝するのは複雑な気分だが、フリーザを抑えてくれていることには素直に感謝しておこう。
これで暴れているのはヒルデガーンのみ、奴を封印することができればとりあえず地上の戦いは片が付く。
「そうだ、僕からも報告があります」
「どうした、デンデ?」
「閻魔界を覆っていた結界が破壊されました。完全ではありませんが生と死の境界が安定してきています。生身のまま行き来することはまだできませんが、今なら倒した敵が現世にそのまま戻ってくるなんてことにはならないはずです」
「本当か!(…とすると今頃悟空達はジャネンバと戦っているってところか?)」
ますます俺達にとって追い風だ。きっとあの世の悟空達のおかげだろう。あちらの詳細な状況は未だ不明だが、これで敵相手に変に気を使わずに倒してしまうことができる。
これならばヒルデガーンも…、いや、奴がパワーアップを残している以上、作戦通り封印する前提で動いた方がいいかもしれない。奴の完全撃破はあくまで悟空達と合流してからだ。
「だが問題もある。主だって暴れているヒルデガーンだが…少しずつ力を増している。おそらく地上の人々や蘇った死者達からエネルギーを吸収しているのだろう」
「なんだと…!?」
ヒルデガーンに吸収能力?いや、そう言われればそんな場面があったような気もするが…如何せんあの映画を見たのはもう十年以上も前のこと。そんな能力が奴にあったとは、完全に頭から抜け落ちていた。
やはり最優先で対処すべきは幻魔人ヒルデガーンだ。そのためにも俺はある決断をする。
「悟天、トランクス、お前達はこの神殿に残るのだ」
「え! な、なんで!? 俺達にも戦わしてよ!」
「そうだよ! せっかくいっぱい修行したのに!」
予想はしていたがやはり2人は納得いかないようだ。勿論、ヒルデガーンの戦いについてきてくれた方が戦力的にはありがたい。俺としてもゴテンクスは是非とも連れていきたい気持ちはある。しかし全戦力を奴に向けるわけにはいかない理由がある。
「落ち着け2人とも、いいか、おそらくワシがこの場を離れた後、ある敵がここに現れるはずだ。そいつから皆を守れるのはお前達しかおらんのだ」
「て、敵…?」
「お、おい、いったい何が現れるってんだよ?」
俺の言葉に首をかしげる一同。ただ一人、ピッコロだけは俺の言っていることに気がついたようだ。
「コルド、まさかお前の言う敵とは…」
「ああ、ワシらもよく知っている奴だ」
「馬鹿な、奴が蘇っているとしたら何故今まで姿を見せない!?」
奴が姿を隠している理由、俺にはそれがなんとなく分かる。非常に気に食わないことだが、何せ奴もまた俺の息子のような存在なのだ。なにかしら通じる部分があるのだろう。
それをピッコロにも説明してやる。
「これはあくまでワシの推測だ。おそらくだが――――」
「ちっ、そういうことか。くそっ、こんな時に厄介な奴だ…!」
俺の説明にピッコロも納得し、忌々し気に舌打ちをする。俺も同じ気持ちである。今になってまた奴に頭を悩ませるはめになるとは思っていなかった。
しかしまだ納得のいかないトランクスが俺に食い下がる。
「そ、それじゃあおじさんがここに残って俺達が戦いに行けばいいじゃん!」
その采配も考えはした、しかしいくらゴテンクスとはいえヒルデガーンを相手に勝利を収めることは難しいだろう。それは俺も同じだがそのための封印作戦なのだ。
子供達ではなくある程度臨機応変に動ける俺が前線に出向いた方が間違いなくいいはず。しかしトランクスにとってヒルデガーンはベジータの仇。簡単に説得はできないだろう。
…少々心苦しいが狡い手を使うことにする。
「トランクスよ、ここにはブルマがいるのだぞ? お前は自分の母親が危険に晒されると分かっていながらこの場を離れる気か?」
「そ、それは…」
「ベジータのことを思い出せ。あいつは己の命を捨ててまでお前を、家族を守ろうとした。ならばあいつの息子であるお前もそうするべきだとは思わんか?」
「う…」
黙り込むトランクスに俺は言葉を続ける。
「トランクス、ベジータに代わってお前がブルマを、母を守ってやるのだ。これはお前にしかできない、いや、お前だからこそできることなのだ」
「…分かったよ、おじさんの言う通りにするよ」
俺の説得でなんとかトランクスも折れてくれたようだ。助かった、実際に俺がここを離れたら仲間達を守ることができるのはこの2人だけなのだ。
少し不貞腐れた様子のトランクスに悟天が声をかける。
「大丈夫だよトランクス君! 僕達ならそんな奴すぐに倒せるよ! そしたらおじさんを追いかけよう!」
「…そうだな悟天! おじさん! すぐに追いかけるから先に倒さないでよね!」
「ククク、ならばお前達とワシ、どちらが先に敵を倒せるか競争といこうではないか」
「よーし、負けないぞ!」
「おー!」
2人とも調子を取り戻してくれたみたいだ。盛り上がる悟天とトランクスをよそに俺はピッコロに小声で話しかける。
「ピッコロ、悟天とトランクスのことを頼む。頼もしいがまだ子供、危なっかしいところもまだまだ見受けられる」
「ああ、こっちは任せておけ。…お前も死ぬんじゃないぞ」
戦力的にはゴテンクスが頼りだがこの中で頭が最も回るのはピッコロだろう。ここに残された面々の舵取りは彼に任せることにする。
これで準備は整った、そろそろ出発の時だ。
「待たせたな、タピオン。そろそろ出発しよう。準備はいいか?」
「ああ、問題ない。体もすっかり良くなった、準備はできている」
「そうだ、コルド、念のためこいつを持っていくといい」
ピッコロから渡されたのは2粒の仙豆だ。そういえば今回はまだ一度も仙豆を使ってなかった。おそらくこれは本来の歴史でビーデルとベジータが食べた分だろう。そうだとすると全ての仙豆を持っていくことになる。
「いいのか? 全て持っていくことになるが…」
「気にするな。こっちにはデンデがいる。お前が持っておいた方がいいだろう」
そういうことならありがたく持っていくことにしよう。この戦いで何が起こるか分からない。
仙豆の入った小袋を剣の鞘に括りつけて神殿を飛び立つ。仲間達に見送られながら俺とタピオンはヒルデガーンのもとに向かうのであった。
△
コルドとタピオンの二人が神殿を離れてからしばらく経った後、ある存在が神殿に降り立った。
「フッフッフッ、コルドめ、ようやくここを離れおったか」
その正体はセル。この男もまた今回の一件で地獄から蘇っていたのだ。セルの襲来に気がついたピッコロがすぐに姿を現した。
「…セル、やはり貴様も蘇っていたか」
「おやおや、これはこれはピッコロではないか。久しいな、かれこれ…7年ぶりか?」
ピッコロを前に余裕の笑みを浮かべるセル。ピッコロも7年前より強くなったとはいえセルには及ばない。ましてやこの世界のセルは本来の歴史より大幅に強化されている。
そのことが分かっているセルは楽しそうに笑った。
「おや、孫悟飯やコルドの姿が見えないが…、随分と忙しそうじゃないか、お取込み中だったかな?」
「ちっ、白々しい。貴様はコルドがここを離れるのを待っていたんだろう!」
「ほう…、気づいていたか」
「一応聞いておいてやる。お前はもっと早くにここに来ることができたはずだ。何故今まで隠れて様子を窺っていた!」
「いいだろう、教えてやる」
己の行動の真意を語り始めるセル。
「勿論私の目的はお前達への復讐だ。だが私が現世に戻ってきたとき、すぐに気がついたさ。この復活は一時的なものだろうと、な。違うか?」
「…そうだ、あの世で起きている異変が収まればお前は再び地獄に戻される」
「フフフフ、やはりそうか。だから私は考えたのさ。どうすればお前達に最も苦痛を味わわせることができるかを、そして思いついた。孫悟空の仲間達の中でも力の弱い者から順に殺していけば効率がいい、とな」
本人ではなくその仲間達を先に殺し、心理的な苦痛を与えること。それは奇しくもサイボーグと化し地球にやってきたフリーザと似たような発想であった。
コルドの細胞のおかげでより残虐に、より狡猾になったこの世界のセルならではの思い付きだ。
「安心しろ、貴様らを殺し尽くした後にすぐにコルドの後を追うさ。孫悟空や孫悟飯の気が感じられんが…、ピッコロ、貴様を甚振るついでに居場所を聞くとするかな」
「ちっ、下衆野郎が…!」
「勿論抵抗してくれて構わんよ? 私としてもあまりにも呆気なく終わるのもつまらないというものだ」
一歩、また一歩とピッコロに、そして非戦闘員が隠れる宮殿に歩みを進めるセルにピッコロが構える。そこでピッコロが口元に笑みを浮かべた。
「…ん? 何が可笑しい?」
「へっ、何から何までコルドの言っていた通りだったもんでな。つい笑っちまったぜ」
「なんだと…!?」
コルドはこの襲撃を予期していた。そしてその動機すらもお見通しだったのだ。
同じ細胞を持つ、コルドとのある種の親子のような繋がりが、セルの行動を予見させた。そしてそれに対する対抗策も用意されていた。
「お前達、出番だぞ!」
「なに!?」
「「じゃじゃじゃ、じゃーん!」」
セルが驚愕しながら視線を向けるとそこには小さな二人組がいた。その二人を見たセルが笑い声をあげる。
「フ、フハハハハハハ! 何かと思えばこんな子供が…、いや、待てよ、その姿、さてはこの時代のトランクスか! だとするとそっちは…、孫悟飯の弟と言ったところか?」
2人の正体を言い当てたセルが更に上機嫌となる。
「これはいい! お前達を殺せば私の溜飲も下がるというもの。こんな素晴らしい標的を用意してくれているとは…、最高だ!」
戦士達に深い恨みを持つセルからすれば2人はこれ以上のない復讐の標的だろう。意気揚々と悟天とトランクスに歩みを進めるセル。
「ねぇトランクス君。あいつ僕たちの事知ってるみたいだよ?」
「どうでもいいだろ、そんなこと。さっさと終わらせようぜ。おい、昆虫野郎! ここに来たのは間違いだったな! すぐにボコボコにしてやるぜ!」
「ほう、どのようにしてこの私をボコボコとやらにするのか、是非教えてもらいたいものだ」
余裕を崩さないセルを置いて、二人があの技のポーズを取った。
「すぐに教えてやるよ! やるぞ、悟天!」
「オッケー、トランクス君!」
「「フュー…ジョン! はっ!」」
2人の指がぴたりと合わさる。そして2人の姿が重なり、一人の戦士として生まれ変わった。吹き荒れる気の嵐はさっきまでいた2人の子供とは比べ物にならないものだ。
ここにきてセルの余裕の表情が崩れ、驚愕の表情へと変わる。
「な、なんだ!? この気の嵐は…、あのガキ共はどこに消えた!? 貴様は何者だ!?」
「何者だって? 俺様の名はゴテンクス! お前をぶちのめす男の名前だ、よ~く憶えとけ!」
現れたゴテンクスが髪を金色に染め、超サイヤ人へと変身する。
蘇った人造人間セルと合体戦士ゴテンクス。本来の歴史ではありえなかった戦いの幕が切って落とされた。