大王転生   作:イヴァ

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あの世とこの世のフュージョン、大活躍の合体戦士達!

 地上でコルド達がヒルデガーンと戦っている頃、あの世での戦闘も佳境を迎えていた。

 あの世とこの世の境界を滅茶苦茶にした元凶であるジャネンバに相対するのはポタラにより大幅にパワーアップした界王神だ。2人の戦い、と言っても界王神の狙いはあくまで時間稼ぎだが、その戦闘はますます激化していく。

 

「ギィィィィィィ…、ガァッ!」

「くっ、やはり強い、しかし彼らが戻ってくるまで何としてでも耐えねば…!」

 

 地獄の至る所を瞬間移動しながら戦うジャネンバと界王神。単純な戦闘力を比較すればジャネンバが圧倒的に界王神を上回っている。しかし、界王神はそんなジャネンバを相手になんとか食らいついていた。

 

 その理由としては界王神の技が豊富であったことが大きいだろう。界王神が元々持っていた金縛りや念力、それに物質創造。加えてキビトの能力である瞬間移動も使用できるのだ。界王神はこれらの神通力を利用して、付かず離れずの戦いに専念していた。

 しかし技の数はジャネンバも負けてはいない。手足を伸ばし、剣を振るえば斬撃が飛び、極めつけは空間さえ歪ませるジャネンバの能力。

 

 いくら界王神が強くなったといってもやはりジャネンバを相手に戦い続けるのは厳しいものがあった。ジャネンバの拳に対して、カッチン鋼を創造して防御を試みる界王神。するとジャネンバは拳を開き、カッチン鋼に掌で触れる。

 

「…ギヒッ!」

「なっ!? しまっ…かはっ!」

 

 途端にカッチン鋼は形を変えて石柱となり、界王神の顎を打ちぬいた。

 ジャネンバの強みは技が多いだけではない。相手の動きを読むことに長けたジャネンバの戦闘技術が界王神の動きの癖を読んだのだ。

 石柱は更に形を変えて界王神の体を拘束する。身動きの取れない界王神にジャネンバが剣を振り上げる。紅い刀身が界王神に振り下ろされようとしたその時だった。

 

「ゲヒャヒャヒャヒ…ッ!?」

「おっと、そこまでだ!」

 

 突如現れた男の手によって刀身が掴まれる。

 

「あ、貴方は…!?」

「待たせて悪かったな、界王神様。後は俺に任せてくれ」

 

 メタモル星人の民族衣装に身を包んだ男。男が手をかざすと界王神を拘束していた鉱物が粉々に砕け散った。

 かなりの硬度を誇るカッチン鋼を何事もなく破壊してしまった男を見て、界王神は自分が役割を果たすことに成功したことを確信した。

 

「えっと、悟空さん…ではありませんよね。しかしベジータさんでもない…。ま、まさか貴方達は…!」

「そうだ、俺は悟空でもベジータでもない。2人が合体して生まれた、まったく別の戦士だ」

「合体…、私たちと同じだ…」

「しかし名前がないと不便だな、いったいどうしたもんか…」

 

 ジャネンバの剣を素手で掴みながらも口元に手を当てて思案する男。目の前のジャネンバのことなんてまったく気にしてない。

 その光景に界王神が冷や汗をかく。

 

「あ、あの、今はそれどころではないのでは…?」

「待て待て、もうちょっとで思いつきそうだ。え~っと…」

「ギ、ギギッ…!?」

 

 ジャネンバが男の手を振り払おうとするも剣はピクリとも動かない。ジャネンバが手を抜いているわけではない、むしろ全力に近いレベルで力を込めている。にもかかわらず押しても引いても微動だにしない剣を見て、ジャネンバは生まれて初めての動揺を抱いた。

 

「よし、思いついたぞ。俺の名はゴジータ。貴様を倒す者だ!」

 

 そして刀身が握りつぶされる。砕けた刃が地面にパラパラと落ちるのを見て、ジャネンバが驚愕して後ずさる。男は、ゴジータは余裕の笑みを浮かべながら、その髪を金色に染めた。

 

 そこからの戦いは一方的なものだった。それはもはや戦闘ではなく、蹂躙と呼んだ方が正しいだろう。

 超サイヤ人のゴジータに対して、ジャネンバは成す術もなく圧倒されていた。豊富な技はそのどれもが一切通用せず、動きを見切ることすらできない。そもそも動きを読もうにも捉えることができないのだ。今この瞬間も、ゴジータの猛攻がジャネンバの体を傷つけていく。

 

「す、すごい、同じ合体でもここまで違うなんて…、やはり彼らの力は凄まじいものだ!」

 

 ゴジータの圧倒的な力に界王神はただ驚愕することしかできない。方法は違えど同じ合体戦士、しかしそのパワーの差は歴然たるものだった。

 

「ギッ、グッ、ガァ…!」

「悪いが急いでるんだ、そろそろ終わらせるぞ!」

 

 ゴジータの掌に虹色の光球が生成される。その光にジャネンバは恐怖した。あの光球は間違いなく自分を殺し得るモノだと。触れれば確実に自分は消滅してしまうと。

 絶対的な死を前に、恐怖に駆られたジャネンバはゴジータに背を向けて逃げ出そうとする。しかし、逃げようとして逃げられる相手ではない。

 

「よっ、と」

「アガッ!? ガ、ア…、アア……」

 

 いつの間に接近したのか、ジャネンバの背中にゴジータは直接虹色の光球を叩きこんだ。それが決着の一撃となる。

 ジャネンバの体が光の粒子となり、瞬く間に消えていく。残されたのはこの騒動の本当の原因とも呼べる男、つまり件のタンク係の男である。

 

「…あれ? ここ、どこ…? あんた、だれオニ?」

 

 意識を取り戻したタンク係の男。男にジャネンバだった時の意識はなく気がついたら見知らぬ場所にいる自分に疑問を浮かべる。

 そして男は気がついた、自分を冷たく見下ろす最強の戦士の存在に。

 

「……」

「ひぃっ!? お、お助けオニ~~~!」

 

 明らかに歓迎されていない雰囲気、ゴジータの圧に男は大慌てで逃げ出した。

 

「はぁ、ったく、あいつにはしっかりとお灸を据えてもらわないとな、頼むぜ閻魔様」

 

 逃げ出した男の背を見て呆れたようにため息をつくゴジータ。ともかくジャネンバは倒され、事態の収拾が一歩進んだのは事実だ。

 今ここに一つの戦いが決着を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 地球、神殿にて、強襲を仕掛けてきたセルとゴテンクスの戦いも同じく決着が近づいていた。

 

「お、おのれ! このセルがこんなガキ共に…ありえん!?」

「おらおら! どうした昆虫野郎! こんなもんか!」

 

 今のセルに戦いが始まる前の余裕は一切なかった。力を出し惜しみしているわけではない。今のセルは既に変身しており、全力で戦っている。コンディションだってあの連戦続きのセルゲームの時と比べると万全に近い状態だった。だというのに自身が追い詰められている現状をセルは受け入れることができなかった。

 

「凄まじいな…。フュージョンによるパワーアップがまさかこれほどのものとは」

 

 戦いを観戦するピッコロも目の前の光景に驚きを隠せなかった。

 

「…それにしても超サイヤ人3だと? まったく大したガキ共だぜ」

 

 それもそのはず、今のゴテンクスは超サイヤ人3の姿となっている。流石のセルといえど、超サイヤ人3、それも合体戦士となれば相手が悪い。むしろ戦いになっているだけでも健闘している方と言ってもいいだろう。

 

 地獄で魂のみの存在となったセルの強さは7年前から殆ど変化はしていない。だというのにゴテンクスと渡り合えている事実がこの世界のセルの完成度の高さを証明している。しかしゴテンクスはそのセルを更に上回っているのだ。

 究極の人造人間と次世代の天才2人、力の天秤は後者に大きく傾くこととなった。

 

「そろそろ終わりにしてやるぜ!」

「ち、ちくしょう、こんなはずじゃあ…、こうなったら…」

 

 ちらりと、宮殿に視線を向けるセル。神殿内からはいくつか気が感じられる。おそらく非戦闘員のものだとセルは確信すると、じりじりと神殿に近づく。

 セルの行動、それは神殿内の人間を人質にすることが目的だ。その作戦は相手がゴテンクスだけであれば成功していたかもしれない。

 

「むっ! 気をつけろ、ゴテンクス! セルは何か企んでいる、奴を宮殿に近づかせるな!」

「くっ、ピッコロめ…、余計なことを…!」

 

 しかしこの場にいるのはゴテンクスだけではない。油断なくセルを観察するピッコロにより、狡猾なセルの狙いは看破される。

 

「あまり奴を追い詰めるな、何をしでかすか分からんぞ!」

「おっけーピッコロさん! 俺のとっておきで一気に決めちゃうぜ!」

 

 ゴテンクスが口から白い塊を吐き出す。塊は形をお化けのような人型と変える。まるで幽霊となったゴテンクスのようだ。ゴーストは意思を持ち独りでに動き出す。それどころか言葉を話しだす。

 

「へっへっへ、お化けだぞ~」

「「な、なんだあの技は?」」

 

 見たこともない奇妙な技にセルとピッコロが同じ疑問の言葉を発する。驚く2人にニヤリと笑みを浮かべたゴテンクスが自らの技に命令を出す。

 

「行け、スーパーゴーストカミカゼアタック! 突っ込め、お化け!」

「くっ!?」

 

 自分に向かうゴーストに咄嗟にエネルギー光線で迎撃するセル。それが命運を分けた。光線が命中したゴーストが凄まじい大爆発を起こしたのだ。その威力にセルは愕然とした。

 

「な、なんだこの威力は!?」

「なぁ!? バ、バカ! お前が神殿を破壊してどうするんだ!?」

 

 スーパーゴーストカミカゼアタックがもたらした破壊の痕にピッコロが激しく動揺する。ただでさえセルとゴテンクスの戦いで神殿が荒れていくことに気が気でなかったのだ。それに追い打ちをかけるような爆発にピッコロは平静ではいられなかった。

 そんなピッコロの言葉にゴテンクスが反論する。

 

「もう、そんなこと気にしてる場合じゃないって! ピッコロさんも見てたでしょ? こいつ、滅茶苦茶タフなんだもん。大技で一気に倒さないとこっちが時間切れになっちゃうよ!」

「そ、それはそうだが…」

 

 ゴテンクスも余裕がある、というわけではない。戦闘力的には勝っているがセルの生命力には辟易としていた。セルはコルドの細胞故かかなり打たれ強く、ピッコロの細胞のおかげで再生能力も有しており生命力や持久力に優れている。それはゴテンクスの弱点である合体の時間切れを狙うのに適した特性だ。

 超サイヤ人3に変身してそれなりに時間も経過していることもあり、自身の弱点を把握しているゴテンクスとしてもそろそろ決着をつけたいところであった。

 

「ということで…、用意しましたのがこのお化け軍団!」

「なっ!? い、いつの間にそんな数を…!」

 

 いつの間にか、ゴテンクスの背後にゴーストの軍団が綺麗に整列して並んでいた。ゴースト1体でさっきの威力、それが数十体も並んでいるとなればセルも、そしてピッコロも冷静ではいられない。

 

「お、おい、あんな威力の技をこんなに連発したら…」

「これで終わりだ! やっちまえ、お化け軍団! 一斉突撃ー!」

「「「イエッサー!!」」」

「お、おおおおおお!?」

 

 ピッコロの制止も聞かずに、ゴテンクスの命令によって大量のゴーストがセルに殺到する。なんとか逃れようと上空に飛び上がるセル。しかしみるみるうちにゴースト軍団に取り囲まれて逃げ場がなくなっていく。やがてセルは大爆発の中に姿を消した。

 

「勝った!」

「…あいつが空に逃げてくれて助かった。あんな数、下手したら神殿が消し飛んでいたぞ」

 

 スーパーゴーストカミカゼアタックの凄まじい威力に遠い目をするピッコロ。

 

 

「わっ、フュージョンが解けちゃった」

「あの姿、滅茶苦茶強いんだけどこれが厄介だよな~」

 

 それと同時にゴテンクスのフュージョンが終了する。凄まじい力を誇る超サイヤ人3、その代償に本来30分間の時間制限が5分間にまで縮まってしまうデメリットがある。

 

 

 その瞬間だった、上空の煙の中から影が飛び出した。

 

 

「ん? この気は…! あいつ、まさかまだ生きて…ぐわっ!?」

「「ピッコロさん!?」」

 

 蹴り飛ばされたピッコロが宮殿に突っ込む。ピッコロを攻撃した張本人、セルの姿は酷いものだった。変身は既に解け、全身ボロボロ、ひしゃげた左腕はもう使い物にならないだろう。腕を再生させないのはもうそんな体力も残ってないからだろうか。

 

「はぁっ…はぁっ…、このガキ共め、絶対に許さんぞ…!」

 

 それでもセルはゴテンクスの攻撃に耐えきった。その異常な生命力はコルドの細胞によるものか、あるいは子供相手に自分が負けるはずないという執念によるものか。とにかくセルは満身創痍ながらも悟天とトランクスによろよろと迫りくる。

 

「よくもピッコロさんを…わっ!?」

「悟天! くっ!?」

 

 咄嗟に立ち向かおうとした二人。しかしセルはトランクスの首を残った片腕で締めあげ、悟天を足で踏みつけた。

 

「このクソガキ共め! もうさっきの姿はお終いか!?」

「は、放せよ…」

「うぎぎ…!」

「ならこのまま殺してやるぞ! 今すぐその首をへし折って…ぐっ!? な、なんだ!?」

 

 その時、宮殿から飛んできたエネルギー波がセルの背に着弾した。

 

「へっ、今の攻撃を防げんとは…、あの時と違って随分と焦ってるじゃないか!」

「ピ、ピッコロ…!?」

「ピッコロさん! よーし…」

 

 7年前のセルとの最終決戦、あの時のピッコロのアシストは防がれてしまった。しかし今回は違う。ピッコロの攻撃にセルがたたらを踏んでよろめいた。

 悟天は自分を踏みつけていた足から解放されると目一杯の力で飛び上がった。悟天の頭突きがセルの顎をかちあげた。

 

「ぐぉっ、このガキっ、がはっ!?」

「ナイスだ、悟天!」

 

 悟天の頭突きによって生じた隙にトランクスもセルを蹴りつけて拘束から逃れる。

 

「悟天、合わせろ!」

「うん! かめはめ…」

「「波ぁっ!!」」

 

 2人のエネルギー波が合わさり、セルを呑み込んだ。

 

「おのれ…! このセルが、こんなガキ共に…馬鹿なぁぁぁぁぁぁ!」

 

 体力を使い果たし、満身創痍のセルはそれに抵抗することはできなかった。悟天とトランクスのエネルギー波にされるがままに吹き飛んでいくセル。

 7年前、戦士達を苦しめた最強の人造人間は再び敗れることとなった。

 

「む!? あれは…」

 

 その時、ピッコロはエネルギー波の中から人魂のような何かが抜け出て、空へと消えていくのを見逃さなかった。

 

「ふー、なんとか勝てた。なんだかしつこい奴だったね~」

「まったくだぜ。ピッコロさん達も昔あいつと戦ったんでしょ? あんなのよく勝てたね」

「けっ、あれだけ圧倒しておいてよくいうぜ。ったく、生意気なガキ共だ。だがよくやったぞ悟天、トランクス」

 

 子供達を労うピッコロが話を続ける。

 

「それよりも…お前達、見たか?」

「へ、何を?」

「奴の魂があの世に帰っていった。おそらくあの世とこの世の境界が正常に戻ったんだ」

 

 セルがあの世に送り返されたことでピッコロはあの世の異変が解決されたことを確信した。

 

「本当!? じゃあお父さんと兄ちゃんも戻ってこられるんだね!」

「やったな、悟天! あ、でもパパは…」

「…あまり気を落とすな、トランクス。ベジータを蘇らせる方法はある。この戦いが終わったらまた会うことができる」

「…うん!」

 

 落ち込むトランクスをピッコロが優しく諭す。

 ピッコロ達の間でポルンガを使用すれば2度目の蘇生も可能であることは共有されている。しかしそれはこの戦いが完全に終わってからにはなるだろう。少なくとも瞬間移動が使える悟空が戻ってこないことには始まらない。

 

「よ~し、さっそく俺達もコルドおじさんを助けに…」

「だめだ」

「な、なんで!?」

 

 勢いを取り戻し、そのままコルドの援軍に向かおうとしたトランクスをピッコロが制止する。

 

「フュージョンのできないお前達が行っても足手まといだ。1時間後まで我慢するんだな」

「そんな~…」

 

 ピッコロの言うことは尤もだ。少なくとも今のフュージョンが使えない2人が向かってもコルドの助けとはならない。むしろ邪魔になってしまう。2人が勝手な行動をとらないようにピッコロは目を光らせるのであった。

 

「さっきからヒルデガーンの気が安定していない、何が起きてるか分からんが…コルド、生きて戻って来いよ」

 

 コルドの向かった方向を見つめるピッコロ。

 

 

 

 

 その視線の先から大きく外れた場所で、事態は進行していた。

 

 

 地獄でのジャネンバとの戦い、蘇ったセルとの戦い、そして今も尚続くヒルデガーンとの戦い。それらの戦いの裏で、コルドが恐れていた事態が起こっていることに、誰も気づいていなかったのだ。

 

 

 誰一人として気づくことができなかった。

 

 

 魔人ブウが凶悪な変化を遂げていることに。

 

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