トランクスが帰った後は概ね原作通りだったといえる。
説明に困る悟空に代わって原作同様、ピッコロが肝心な部分を伏せたうえでうまいこと皆に説明してくれた。皆は告げられた恐ろしい未来に驚愕していたが、最後は来るべき決戦に向けて修行しようとの結論に至った。
問題が起きたのはその後、つまり俺の処遇の話だ。
「分かったわよ、人造人間とは戦うのはもういいわ。…それより本当にこのコルド大王を信用しちゃっていいわけ?」
ブルマの疑念にみんなの視線が俺に向けられる。そう、まだこの話が残っているのだ。
「安心せい、ブルマよ。何度も言っておるがワシに貴様らと戦う気はない。むしろその逆、お前たちに協力してやるのもやぶさかではないぞ。超サイヤ人をさえも凌駕する人造人間とやらに我が一族の力を見せつけてやるのも面白いではないか」
「こうは言ってるがやはり俺は信用できない。こいつはあのフリーザの父親なんだぞ」
天津飯が俺の言葉を否定する。
さっきから何度も暴れる気はないと説明しているが、やはりというべきか、なかなか信用してもらえない。やはりフリーザの父親というのがネックなのだろう。
(くそ、フリーザめ。死んでもなお足を引っ張りやがって)
「…俺は信用してもいいと思う」
(お?)
「な、し、正気か、ピッコロ!?」
意外なことにピッコロがこちら側についてくれた。天津飯が驚いているが、そうか、ピッコロはトランクスの話を聞いていたのだ。ある程度の事情は把握済み、思うところはあれどなんとか納得してくれたみたいだ。
「まぁまぁ、天津飯。オラも大丈夫だと思うぞ。もし何かあってもオラが止めてみせるさ」
「確かに孫ならば可能か…」
「へへ、安心しろって。それにフリーザの父ちゃんってくらいだからすっげぇ強いんだろ? そんなやつと修行できるなんてわくわくすっぞ!」
…これ修行に付き合わされる感じか。
いや、口では協力するとは言ったが正直な話あまり矢面に立つ気はなかったのだ。ここまできたら原作通りに展開が進み、後は見ているだけですべてうまくいくと思っていたのだが。
(なんというか、ヤムチャの横あたりで突っ立てるだけの存在になるのが理想だったんだけどな…)
そんなせこいことを考えているとまだ納得のいかないベジータが口を開いた。
「ふざけやがって、どいつもこいつもこの男を信じるだと? カカロット! 貴様は知らんだろうがこいつはかつて宇宙を支配していた大悪党だぞ。さんざん悪事を働いていたに違いない。そんな悪人を信じるというのか!?」
「落ち着けよベジータ。昔はともかく別に今は違うかもしれねぇだろ? それにオメェだってつい最近までさんざん悪いことやってた悪人じゃねぇか」
「ぐっ、くそったれめ!」
おお、ベジータが悟空に言い負かされとる。
しかしまだ納得がいかないのかベジータはわなわなと震えながら悟空を、そして俺を睨みつける。
「カカロット、超サイヤ人になったからっていい気になるなよ。俺もすぐに追いついて貴様を叩きのめしてやる! もちろん貴様もだ、コルド!」
そう言い捨てると、何処かへ飛んで行ってしまった。
(でもこれはまずいのでは…?)
いまはまだいい、俺の方が戦闘力が上だ。それが分かっているからベジータも引き下がったのだろう。しかしベジータが超サイヤ人となれば力関係は逆転、もしかしたら真っ先に殺されるかもしれない。
とすると俺もこのままではいられない、それに対抗できる力を、つまるところ修行をしなければ。正直気が進まないがそんなこと言ってる場合じゃない。
「よし、じゃあピッコロそしてコルド、オラや悟飯と一緒に修行しようぜ。組手とかやりたいしな」
「いいだろう、望むところだ」
「む、このワシもか」
「ああ、皆もオラが近くで見ていた方が安心だろ?」
悟空のその問いにこの場の全員が無言で頷く。どうやら拒否権はなさそうだ。
まぁ皆からすればこんな危険人物を野放しは嫌だもんな。
「じゃあみんな、3年後にまたな!」
△
荒廃した都市、ここはかつて西の都と呼ばれ、地球でトップクラスに繫栄していた都市のひとつである。しかしいまやその姿は見る影もなく建物はひび割れ、瓦礫が散乱している。住んでいる人の気配すら感じられない。
いまから十年以上も前に現れた二人の人造人間によって破壊されつくしてしまったからである。
そんななか比較的損害の少ない大きな建物のすぐ近くに卵型の乗り物が突如出現した。
「ふぅ、よかった、無事に帰って来れて…」
そうタイムマシンによって過去に向かったトランクスが未来へと帰ってきたのである。
トランクスはタイムマシンをカプセルに戻すと誰にも見つからぬよう、素早く建物の中へと入っていた。
「ただいま、母さん!」
「トランクス! 無事だったのね!」
出迎えたのは彼の母であり、タイムマシンの発明者、ブルマである。そして、
「その様子だとうまくいったみたいだな、トランクス」
トランクスの師匠である孫悟飯。
その姿は過去の悟飯と比べ、青年と呼べるほどの歳にまで成長していた。
「はい、悟飯さん。無事に薬を悟空さんに渡してくることができました。これであの世界では悟空さんの心臓病はどうにかなるはずです」
「…そうか、お父さんが死ななくて済む、か」
その言葉に悟飯は唯一残った右手を強く握りしめた。かつて心臓病で死んでしまった父、孫悟空の姿が悟飯の脳裏に浮かぶ。
いつだってお気楽そうに見えて、しかし何処かその姿に安心感が感じられた。そして何より誰よりも強かったあの背中を思い出す。もしお父さんが生きていれば、この十数年、何度同じことを考えたか分からない。
「大丈夫、孫君が生きていれば人造人間なんて絶対倒してくれるわ。あんたたちはもう一度過去に行ってこの世界の人造人間を倒すヒントを手に入れてくる、きっと上手くいくはずよ」
「そうだね、あの人なら、悟空さんなら、なんとかしてくれる。そんな風に感じさせてくれる、そんな人だった」
「そうだ、トランクス。ベジータはどうだった? 一応あんたのお父さんなんだけど」
「い、一応って…。ベジータさん、父さんには会うことはできたけど、ずっと睨まれていただけで会話もまともにできてないからまだなんとも…」
「そっか、あの頃のベジータはそんなもんよね」
まぁずっと変わらなかったかしら、などと笑うブルマ。
トランクスにとっては初対面に等しいがブルマや悟飯にとっては懐かしい話。そんなかつての仲間たちの話の中である名前が挙がる。
「そういえば、あまり皆さんと話すことはできませんでしたが、おじさんとは少しですが話をすることができました」
「おじさんって、コルドさんか!」
「はい!」
懐かしい人物の話題に悟飯の表情が緩む。
「コルド大王、ね。あいつがフリーザと一緒に地球にやってきたときはどうなるかと思ったわ」
「はは、確かに俺ももう終わりだと思いましたよ」
「不思議よねぇ、まさかあいつとあんなに長い付き合いになるなんて夢にも思わなかったわ」
「本当に不思議な人でした。フリーザと違って最初から敵意も感じられませんでしたし」
この3人にとってコルドはある種特別な人物である。
ピッコロやベジータといった前例はあるものの、フリーザの父と共に戦うこととなると、過去の自分たちに言ってもなかなか信じてもらえないだろう。
しかし人造人間との十数年に及ぶ戦いを共にしたのだ。この3人にとってはかけがえのない戦友である。
「あの人には随分と世話になった。人造人間との戦いで仲間を失った俺を立ち直らせ、共に戦い続けてくれた…、だというのにお礼の一つも言えないまま死んでしまうなんて…っ」
「悟飯さん…」
いまこの場に悟飯がいること、それは間違いなくコルドのおかげといえるだろう。
4年前、死を覚悟して人造人間との戦いに赴く悟飯に代わり、コルドは一人で人造人間との戦いに挑んだのだ。そしてそれが、彼の最後の戦いであった。
「…俺にとっても、おじさんは特別な人です。物心つく頃から側にいてくれた、そして悟飯さんと一緒に俺に戦いを教えてくれた。師匠でもあり、父親のようなそんな人です」
「まったく、まさかあのフリーザの父親があんたたち二人にとって父親代わりだなんて…、わっかんないもんよね~。ほら、二人とも、そんなしょぼくれた顔してたらだめよ、3年後もう一度過去に応援に行くんでしょ? そんな顔してたら笑われちゃうわよ」
「そうだね、母さんの言う通りだ」
「その時は俺も一緒にいくよ。トランクス、必ず人造人間を倒す方法を探し出そう!」
「はいっ、悟飯さん!」
「…それにしてもどうしてコルドさんと話を? 話すのはお父さんだけって予定だっただろ?」
「あ! そ、それはその~、じ、実は…」
その後、自分の勘違いで過去を大きく変えてしまったことをトランクスは怒られることになるのだがそれはまた別のお話である。
ここからは不定期更新となりますが完結を目標に頑張りたいと思います。
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