大王転生   作:イヴァ

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一か八かの方法、残された最後の切り札!

 地球がブウの手によって破壊されてしまった。つまりそれは、俺達の仲間達も地球の爆発に巻き込まれてしまったことを意味する。神殿にいた面々では咄嗟に地球を脱出する手段はない。考えたくはないが、全員死んでしまったことは確実だろう。

 

「ちくしょう…、チチも、悟天も、皆、死んじまったってのか…!」

 

 悟空が静かに、そして悲痛に呟いた。それが否が応でも、皆が死んでしまったことを実感させられる。瞬く間に訪れた敗北に、感情が追い付かない。だが、それでも俺の中の冷静な部分がこれからのことを考え出す。

 

「(…デンデが死に地球のドラゴンボールは失われた。でもまだポルンガがある。新ナメック星に向かい、ナメック星人達に頼めば地球も皆も復活できる)」

 

 まだ終わったわけじゃない。すべてを元に戻す方法、ドラゴンボールはまだナメック星に存在する。そう自分に言い聞かせて、目下の問題を考える。

 

「(問題はブウだ。どうやって奴を倒せばいい?)」

 

 合体が解除されてしまい、ベジットは敗れた。しかしいくら合体を解除できる技を持っているとしても、あの剣に触れなければ発動はしないはず。同じ技を二度食らうベジットではないだろう。いや、ベジットでなくてもそれに相当する戦士であればいい。

 ベジータはもう現世に戻れないが、悟飯は別だ。魂だけとなった悟飯に肉体を与えて一日限定で地上に戻す、そして悟空が再び下界に戻り悟飯とポタラで合体。適当な星でブウに強襲すれば何とかなるかもしれない。

 この時俺はブウを倒す方法を考えることに必死で肝心なことを忘れていた。

 

「…なぁ、界王神様。ブウは今どこにいるんだ?」

「え、そ、そういえば、地球があった場所にブウの姿が見当たらない。いったい何処に…?」

 

 悟空と界王神様の会話を聞き、嫌な予感が頭をよぎる。

 本来の歴史、ブウは界王神様の瞬間移動を見て真似ることでこの界王神界にやってきた。展開が違うため忘れていたが俺達も悟空の瞬間移動でここにやってきた。つまりこの世界でも同じことが起こる可能性があるのだ。

 

「ま、まずい! ブウは孫悟空の瞬間移動を見ていた、奴は見た技を真似ることができる。すぐに瞬間移動でここにやってくるぞ!」

「な、なんだって!?」

 

 

 

 次の瞬間

 

 

 

「見つけたぞ、愚か者共め!」

「「ブ、ブウ!?」」

 

 突如としてブウが姿を現した。やはり俺の想像通り、ブウは悟空の瞬間移動を真似てここにやってきたのだろう。俺達を見つけたブウがニヤリと笑った。

 

「ククク、この私から逃げれるとでも思ったか? バカめ、絶対に逃がさんぞ! 地の果てまで追いかけてでも必ず殺してやる!」

 

 最悪なことに、ブウが界王神界にやってきてしまった。これでは悟飯かベジータをこの場に連れてくる暇もない。そして最悪なのはそれだけじゃない。

 

「なんてこった、ブウが瞬間移動できるってことはもう何処にも逃げらんねぇじゃねぇか…!?」

 

 悟空の言った通り、これでいよいよ俺達に逃げ場所はない。悟空の瞬間移動でどれだけ遠くに逃げようが、ブウもまた瞬間移動で俺達を追いかけてくる。こうなればナメック星に向かうことも、戦力を整えて立て直すこともできはしない。

 

「そういうことだ、孫悟空君。この瞬間移動という技、なかなか便利な技じゃないか。最高の贈り物をくれた君に、こちらもプレゼントをお返ししよう…」

 

 ブウが手を上に向ける。すると瞬く間に、ピンク色のエネルギー球が生成される。どんどんと大きくなるそれを、俺達には受け止めることも避けることもできないだろう。

 ブウはこの一撃で俺達を皆殺しにして、勝負に決着をつけるつもりなのだ。このままでは確実に俺達は殺される。そしてもう巻き返す方法は何もない。

 

「いよいよ君達ともお別れだな…、さぁ、消えてしま、ぐっ!? がっ、な、なんだ!? 体が…動かん!?」

 

 突如としてブウが動きを止める。生成されたエネルギー球は消え、ブウは頭を押さえて苦しんでいる。

 

「な、なんだ、何が起こっているというのだ?」

 

 誰かが何かしているのか、確認するために周囲を見渡すが誰も何かしているようにみえない。構える悟空に、慌てる界王神様達、そして何が起きてるか未だに呑み込めず唖然とするサタン。そこで俺は気がついた。

 

「(そうかサタンだ! ブウはサタンを攻撃することができないんだ!)」

 

 おそらくこのブウの中にも以前のブウ、つまり太っちょの、所謂ブウ(善)が取り込まれているのだ。そのブウがサタンと仲が良かったため、無意識の拒否反応によりこのブウもサタンを巻き込む攻撃を仕掛けることができないのだ。それこそ原作と同じように。

 なんとか首の皮一枚つながったが、この状況は長続きはしないだろう。きっとブウ(善)を吐き出し、改めて俺達を殺しにくるだろう。そうなればサタンがいようがお構いなしだ。

 

「(…原作と同じ?)」

 

 その時、俺にある考えが閃いた。この状況、奇しくも俺の知る歴史の流れとにているのだ。ベジータではなく俺だったり、ブウの強さが本来よりも桁違いなどと、異なる点も多いが大まかな流れは原作をなぞっている。

 考えを巡らせる俺に、悟空が呼びかけてきた。

 

「コルド! なんでかは分からねぇが今がチャンスだ! オラとおめぇで同時に攻撃すればもしかしたらブウを倒せるかもしんねぇ!」

「…無理だ、今の消耗した我々では例え同時に攻撃してもブウを倒せる威力の攻撃をだせるとは思えん」

「んなことは分かってる! でももうこれしか方法がねぇ、一か八かやってみるしか…」

「もう一つ方法がある!」

 

 俺が考えついた作戦、いや、思い出した作戦。それを実行するために、本来の歴史で彼らがどのように動いていたかを必死に思い出す。

 

「な、なんだよ、その方法って…」

「界王神様達にはすぐにナメック星に向かってもらいたい。そこでドラゴンボールを使い、ある願いを叶えてもらいたいのです!」

 

 悟空の問いを遮り、界王神様に指示をする。今の彼ならナメック星に瞬間移動することは容易いはずだ。

 

「ナメック星? そ、それは無理です、我々の記録ではあの星は10年以上も前に崩壊してしまっています。生き残っているナメック星人は地球に住んでいる彼らだけでは…?」

 

 思わぬところで躓いてしまった。界王神様はナメック星人が新たな星に移住していることを知らないみたいだ。状況の認識に齟齬があるのはこの場にデンデがいないからだろうか。しかし今はとにかく時間がない。俺は捲し立てるように説明する。

 

「ナメック星人はとっくに新たな星に移住している! 界王様、この状況は見ておられてますな!?」

『あ、ああ、気づいておったかコルドよ』

「界王神様に新ナメック星の場所を、早く!」

『わ、分かった分かった。聞こえますか、界王神様?』

「え、ええ」

 

 界王様と界王神様が会話していると、苦しみだしていたブウに異変が起きた。

 

「ぐ、うおおおおおおおおお!?」

「な、なんだ、ブウが…!」

 

 甲高い音と共に、ブウの体から煙が吹き上がる。先程、ブウの体内からヒルデガーンがでてきた時と似ているが、今回飛び出してきたのはまた別の存在だ。

 

「ぶうーー!」

「あ、あれは…ブウさん!?」

 

 サタンがその名前を呼ぶ。現れたのは太っちょのブウだ。幻魔人ブウが排出したのか、自らの意思ででてきたのかは分からない。しかしこうなった以上、時間はあまりないのは確かだ。

 

「おまえキライだ! サタンいじめるな!」

「はぁ、はぁ、…何かと思えば以前の私か」

 

 向き合う2人のブウ。同じブウ同士だが互いの目には敵意が浮かび上がっている。

 本来この太っちょのブウは悪ブウが理性を保つために必要な存在だ。それが体内から出てきても理性を維持していられるのはおそらくタピオンのおかげだろう。

 

「ふん、今となってはもはやお前も不要な存在だ。この世にブウは一人でいい、消し去ってやる!」

「ブウーーー!」

 

 そして戦いを始める2人のブウ。どれくらい時間が稼げるか分からないが、とにかく今がチャンスだ。

 振り返ると、界王神様達の姿がなかった。きっと界王様に場所を教えてもらい、ナメック星に瞬間移動したのだろう。この場に残されたのは俺と悟空、そしてサタンの3人だけ。…俺としては危ないからサタンも連れて行って欲しかったが、もう手遅れか。

 

『コルドさん、朗報です! ナメック星の方々は既にドラゴンボールを集めてくれています!』

 

 界王神様からの念話だ。俺の予想通り、この世界でもナメック星人達はドラゴンボールを集めてくれていた。時間がないので手早く界王神様に叶えて欲しい願いを伝える。

 

「叶えて欲しい願いは2つ。破壊された地球を元に戻すこと、そしてあの天下一武道会の後から死んだ者を極悪人を除いて全員生き返らせること、この2つです! とにかくお急ぎを!」

『わ、分かりました!』

 

 確か俺の知る知識でもこの2つの願いを叶えていた筈だ。このやり方なら地球を完全に元通りにして、死んでしまった人々を全員生き返らせることができる。

 そこで俺のやり取りを見ていた悟空が痺れを切らし、俺の意図を聞いてきた。

 

「なぁコルド、いい加減教えてくれよ。いったい何を考えてんだ?」

「元気玉でブウを倒す。それがワシの作戦だ」

「元気玉だって? …そりゃ無理だよ。ブウ相手じゃ威力が足りねぇ」

「ただの元気玉ではない。皆に協力を仰ぎ、全地球人からギリギリまで元気を集めるのだ」

 

 俺のやろうとしていること。それは本来の歴史と殆ど同じことだ。地球人全員の元気をかき集めた元気玉でブウを倒す。しかしそれに異を唱えたのは悟空だ。

 

「ギリギリまで元気を集める、か。確かにそれなら普通の元気玉よりも威力はずっと上がるけど…、それでも今のブウを倒せるかは分かんねぇぜ? そもそも元気玉をあいつに当てれるかどうか…」

 

 悟空の言うことは尤もだ。仮にどれだけ特大の元気玉を完成させようが今のブウに命中させることは至難の技だ。普通に投げても例の能力で確実に避けられる。

 だがそれに関しては俺にも考えがある。俺の作戦通りに事が進めば奴を元気玉で倒せる可能性は十分にある。

 

 その時、ピンク色の巨体が弾丸のようにこちらに向かって突っ込んできた。その正体は善ブウだ。幻魔人ブウに敗北し、完全に気を失っている。

 確かブウ同士だとダメージが蓄積する、という設定があった気がする。幻魔人ブウの攻撃で限界を迎えて気絶してしまったのだろう。気絶したブウはそのまま瓦礫の中に埋もれてしまった。

 

「ブ、ブウさん…!」

「フハハハハ、この程度とは…。以前の私はこれほどまでに弱かったのか。同じブウとして恥ずかしいことこの上ないよ」

「くっ、やはりこうなるか。だがそれにしても早すぎる…!」

 

 できれば善ブウにはもう少し時間を稼いで欲しかったが、こうなってしまっては仕方ない。もう一方のブウが強すぎるのだ。俺は悟空達への説明を大急ぎで終わらせる。

 

「孫悟空、いいからお前は元気玉の用意を! それと地球人の説得はこの男、サタンにやらせるのだ!」

「…分かった!」

「へ? お、俺!?」

 

 宙に浮かび両手を上げ、元気玉の構えをとる悟空。

 

「地球人の説得だと? い、いったい何を言っているんだ…?」

「界王様、我々の声を地球中に届くように! それとこの男への説明も頼みます!」

『わ、分かった! サタンとか言ったな、よく聞け、これから―――」

 

 目をぱちくりさせているサタンへの説明を界王様に任せる。これで準備は整った。時間がかかりがちと思われる元気玉だが、それは地球人達がなかなか悟空の説得に応えてくれなかったからだ。最初からサタンが呼びかければあまり時間はかからないだろう。希望的観測かもしれないが、今はこの考えに縋るしかない。

 

 

 それでも元気玉の完成までそれなりの時間を稼ぐ必要はある。その役目を請け負うのは勿論この俺だ。

 

「魔人ブウ! 貴様はこのワシ、コルド大王が倒す! さぁ、かかってこい!」

 

 ブウの注意が悟空に向かないように、大声で奴を怒鳴りつける。なんとしても元気玉を気づかれるわけにはいかない。

 

「また君か、コルド。この私には到底敵わないともうとっくに分かっているだろう。…それとも何か企んでいるのか?」

「ふん! 貴様を倒し、全宇宙に平和を取り戻すということを企みと呼ぶのならそうかもしれんな!」

「そういえばあの孫悟空とかいう男がいない…。やはり何か狙っているな? 貴様はその時間稼ぎといったところか」

「(鋭い奴め…!)」

 

 大袈裟に煽ったのが不味かったか、あるいはブウの勘が鋭いのか、俺の真意を探るためにブウは辺りを見渡している。このままでは悟空が見つかってしまう。言葉だけで奴の注意を引くことは難しい、他の方法が必要だ。やむを得ず、俺はブウに飛びかかった。

 

「ごっ、かはぁっ!」

 

 しかし俺の攻撃はブウに届くことなく、奴の拳が俺の腹にめり込む。とんでもない威力だ、まるで腹に風穴があいたかのような錯覚に陥る。

 

「残念だが君では時間稼ぎにもならん。君を殺してから、ゆっくりと孫悟空を探すとしよう」

「お、おの…れ……」

 

 俺は脱力して、ブウの腕にもたれかかる。ブウの一撃で気を失ってしまった、かのように見せかける。そんな俺に対して、ブウはもう一方の手を振りかぶった。

 

「さて、これで終わ…っ!?」

「(今だっ!)」

 

 俺の頭に振り下ろされたブウの拳を、全身を捩ることで回避する。そして回転の勢いを乗せた尻尾で、奴の頬を思い切り叩きつけてやった。俺の一撃は奴の実体を消す能力を掻い潜り、周囲にビタンッっといい音が響き渡った。

 

「ククク…、いい加減、貴様の相手にも飽きてきたわ。馬鹿の一つ覚えみたく、同じ技を使いおって」

「………」

 

 喋っている最中に頬を引っ張たたかれたせいで口の中を切ったのか、ブウの口元から一筋の赤い血が垂れる。それを見て俺は心底愉快そうに笑ってみせた。

 

「ハッハッハッ! どうした、血が出ているぞ? みっともない、待っててやるから早く拭うがいい!」

「………殺す!」

 

 俺の煽りが効いたのか、ブウの注意が完全にこちらに向いた。だがこうなってくると今度は俺の身が危ない。俺は防御に集中するために、咄嗟に腕を交差させ体を丸め込んだ。

 次の瞬間、身を引き裂くような攻撃が全方位から俺を襲った。

 

「ぐっ、ぬうううううううう!」

「貴様ぁ! よくもこの私に血を…、ズタズタに引き裂いてやるぞ!」

 

 ブウによって引き起こされる嵐の如き暴力を必死に耐え凌ぐ。ここで俺が倒れるわけにはいかない、なんとしてでも元気玉が完成するまでこいつをここに引きとどめる。体を丸め、歯を食いしばり、倒れまいと必死にブウの猛攻を耐え続ける。

 

 そこで一向に反撃の意思を見せない俺にブウが疑問を浮かべた。

 

「反撃はどうした! やはり貴様の狙いは時間稼ぎだな? 答えろ、何を企んで…、!? あ、あれは…!」

「(し、しまった! 気づかれた…!)」

 

 偶然か、あるいは第六感的な嗅覚で何かを感じ取ったのか、たまたまブウが視線を向けた先に悟空がいた。ブウに悟空と、その頭上にある元気玉を完全に捉えられてしまった。

 

「なんだあの巨大なエネルギーの塊は…、そうか、貴様が必死に隠していたのはあれだな? あんなものに私が当たるとは思えんが…、念のためだ。阻止してやるぞ!」

「ま、待て…!」

 

 俺を放置して悟空のもとに飛んでいくブウ。俺は慌てて追いかけようとするが、体のダメージが大きすぎて碌に速度がでない。そうこうしている間にブウは悟空の目前まで辿り着いてしまった。

 

「やあ、孫悟空君。こんな状況でも手を下ろさないのを見ると、どうやらその技は一度発動すると中断できないようだな」

「さ、さぁな…! もしかしたら、おめぇが隙を見せるのを待ってるだけかもよ…?」

「その不遜な態度、いつまでもつか…、試してみるとするか!」

 

 元気を集めている最中のため、身動きのできない悟空にブウは容赦なく殴り掛かる。

 

「そらそらどうした! 技を中断して逃げなければ死ぬぞ!」

「がっ…! ち、ちく、しょう…、かはっ!」

 

 動けない悟空をサンドバックに、一方的に殴り続けるブウ。いくら悟空でもあのブウの攻撃を無防備に受け続ければ死んでしまう。それでも悟空はその場を動かず、元気玉を作ることに集中し続けていた。

 

「こいつ…! ここまでやっても構えを解かないとは…、いいだろう、なら一思いに殺してやるぞ!」

「そうはさせん!」

「くっ、しつこいぞ、コルド!」

 

 なんとかブウのもとまで辿り着いた俺は、悟空に止めを刺す瞬間の奴を後ろから羽交い絞めにした。しかしブウは俺の拘束を実体を消すことで難なく抜け出してしまう。

 煙のように姿を消したブウを俺は見失ってしまった。

 

「ど、何処だ…、ブウは何処に…」

「コルド! 後ろだ!」

 

 悟空の声に従い後ろを向くと、少し離れたところにブウがいた。

 

「もういい、こいつで終わりだ! 纏めて消し炭になるがいい! かぁ―――!!」

 

 ブウの口から火炎放射が放たれる。ヒルデガーンが度々使っていた技、しかしブウの放つ火炎はヒルデガーンのそれを遥かに上回っている。圧倒的な威力、咄嗟に飛びのけばなんとか回避することはできたかもしれない。しかし俺はこの技を回避するわけにはいかなかった。

 

「お、おい、何してんだ、逃げろコルド!」

 

 俺は背後の悟空を守るように、両手を広げて迫りくる業火に立ち向かう。もはやバリアを張るエネルギーすら残されていない。俺に残された選択肢は、この身一つで悟空の盾になることだけだ。

 

「ぐわあああああああああああ!」

 

 全身を激しく焼かれ、無意識に叫び声をあげてしまう。

 

「ぐっ、ぎゃああああああああ!」

 

 それは背後の悟空も同じだった。俺の体が盾になり、直撃は避けられたものの遮り切れなかった熱が悟空を襲ったのだ。10秒か20秒か、はたまたそれ以上か、実際の時間は分からない。しかし俺にはこの時間が永遠に続くかのように、果てしなく長く感じられた。

 程なくして視界を埋め尽くしていた業火が途切れ、青空が目に映った。

 

「―――……、ククク、終わったか…、な、なんだと!? 今のを耐えたというのか!?」

 

 驚愕の声をあげるブウ。今の攻撃で俺達を確実に葬り去るつもりだったのだろう。しかし俺達はそれに耐えてみせた。流石のブウも想像以上に粘る俺達に動揺を隠せていない。

 

「ぶ…、無事…か? 孫、悟空……」

「…あ……ああ………」

 

 だが俺も悟空も満身創痍、立っているのもやっとな現状だ。それでも悟空の頭上には未だ変わらずに巨大な元気玉が煌々と光り輝いている。

 

「死にぞこない共が! ならば直接この手で葬って…っ!?」

 

 俺達に止めを刺すべく、こちらに向かおうとしたブウの動きが突如として止まる。俺にはその理由が分かった。俺の背後から感じる圧倒的な気配に止まらざるを得なかったのだ。

 

 

「でき、た…ぞ。完成…だ…!」

 

 

 悟空の頭上の元気玉が、一際輝き、一回り巨大になる。ついに元気玉が完成したのだ。

 

 

 

 

 

 しかしそれと同時にもう一つ訪れたものがあった。

 

 

「でも…すまねぇ…、オラ、もう…限、界…だ……」

「ご、悟空!?」

 

 糸が切れた人形のように、地面に落下していく悟空。度重なるダメージによりとうとう限界を迎えたのだ。その光景を見たブウが勝ち誇ったかのように笑う。

 

「ハハハハハ! あともう一歩だったというのに、残念だったな! 孫悟空がいなくなればその玉も消えるのだろう? これで貴様らの負けだ!」

 

 ブウの言う通り、悟空が倒れてしまった以上、この元気玉を維持することはできない。もう数秒もすればせっかく集めた元気も霧散してしまうだろう。

 

 

 

 

 

 

だがそうはさせない。

 

 

「…いや、まだ負けていない」

「なに…?」

 

 元々俺はこの元気玉を通常の方法で使用するつもりはなかった。今のブウに元気玉を当てることは難しいだろう。それに上手く押し合いに持ち込めたとしても押し勝つことは容易ではない。

 

 だから俺は最初からこうするつもりだったのだ。

 

「貴様っ何を!?」

 

 最後の力を振り絞り、俺は巨大な元気玉の中に飛び込んだ。

 

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