大王転生   作:イヴァ

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ということで今回は未来のコルドの話となります。
独自設定や独自解釈があります、ご注意ください。


絶望の未来 大王の最期

『あれが地球だよ、パパ…』

 

 初めてこの世界に来たことを思い出す。

 最悪の状況、なすすべのない死の運命。しかし、俺に待っていた光景は想像とは異なるものだった。

 

『やっぱおめぇは二度と悪さできないようにするしかねぇみたいだな』

『ば、馬鹿な! このフリーザ様が一度ならず二度までも!』

 

 地球に辿り着いた俺たちの前に現れた孫悟空。

 その髪の毛は金色に輝き、瞬く間にフリーザを追い詰めた。

 

『おのれ、超サイヤ人っ! おのれ、孫悟空!』

『かめはめ…』

 

 収束していく光を前に、怒りか、屈辱か、あるいは恐怖か、ただ肩を震わすことしかできないフリーザ。

 

『波ぁーーー!!』

『ぐわぁぁぁぁぁ』

 

 そしてフリーザは光の奔流の中に消え去った。

 俺はその光景を呆然と見ていることしかできなかった。

 

『次は貴様か?』

『ま、待て、待ってくれ、降参だ。もう二度と悪さはせん!』

『なんだと…?』

 

 咄嗟に口から飛び出した命乞いの言葉、ただ死にたくないがためだけに殆ど無意識で動いていたのだろう。

 

『まさかこの男が言っていることを本気で信じるのか!?』

『分かったよ。オラがしっかり見張っとく、それなら皆安心だろ?』

 

 もしあの時に戻ることができれば、毎日そればかりを考えている。

 

 

 あの日、なんとか生き残ることができた俺は孫一家に転がり込むように居候することになった。その際、トラブルもいろいろあったが、今となっては些細なことだったと思う。

 当時、俺はこの世界が、所謂、絶望の未来であることを確信した時、正直な話あまり悲観はしていなかったと思う。

 孫悟空さえ死なせなければきっとどうにかなる、そんな甘い考えが俺を支配していた。

 心臓病が発症してしまえばドラゴンボールに治してもらえばいい、といっても俺がドラゴンボールを集めようとすればおそらく皆が警戒してしまうだろう。

 ならば、孫悟飯やその仲間たちにその旨を伝えれば問題はないだろう。

 原作を、この世界の未来を本当の意味で知る俺ならば未来を変えることは簡単だと、本気でそう信じていた。

 

『コルド、おめぇは修行とかしないんか?』

『ワシはもう隠居の身だ。今更それをする必要もないだろう』

『なんだよ、そんなに強いのにもったいねぇな~』

 

 孫家に居候して2年ほど経ったころ、この時期にもなると少しはみんなの俺に対する警戒も薄れてきた気がする。

 とにかく、あの時は平穏な時間が流れていた。チチの手伝いをしたり、悟飯に勉強を教えたり、たまに悟空の修行に付き合わされたりと、この後何が起こるか知っているというのに、我ながら呑気に過ごしていたものである。

 

 ただ、この頃から違和感を覚えていた。そう、いつまでも経っても悟空が心臓病を発症しないのだ。

 俺が地球に来てもうじき3年、だというのにいっこうにその気配が感じられない。思えばこのタイミングで行動を起こすべきだったのだ。

 先んじて神龍に悟空の健康を願うだとか方法はあったはずだ、しかし当時の俺はフリーザの復活を目論んでいると誤解されるのでは、だとか、俺というイレギュラーがいるのだから悟空は心臓病を患ってないのでは、などと都合のいい言い訳ばかり考えて何も行動に移さなかったのだ。

 その代償はすぐに支払うことになった。

 

『大変だ悟空! 南の島の町で謎の二人組が暴れているらしい、すぐに止めにいかないと!』

『クリリン! 分かった、直ぐに向かっぐっ、く、苦しい…』

『お、おい悟空? どうしたんだよ!?』

 

 本当に最悪のタイミングだった。なんでこうも発症の時期がずれてしまったのか、考えればすぐに分かった。

 俺が、コルド大王が悟空と戦わなかったからだ。3年前のあの時、体にかかった負担が原作よりも少なかったから中途半端に発症のタイミングが遅れてしまったのだ。

 俺が悟空を助けるために考えた作戦は他ならぬ俺自身の所為で破綻してしまったのだ。

 

『悟飯よ、いますぐドラゴンボールを集め神龍に孫悟空の治療を願うのだ!』

『え、お父さんの? な、なんで神龍に?』

『早くしろ! 南の島にはワシが向かう!』

 

 悟空が復活さえすれば新ナメック星のポルンガで皆蘇ることもできる。それまでピッコロさえ死なせないように上手く立ち回ればいいと、こんな状況でも事の深刻さを理解していなかったのだろう。原作知識を知るが故の油断、常に最適解を選ぶことができるという慢心が変わらず俺の中に巣くっていたのだ。

 人造人間との戦いは苛烈を極めた。

 

『くそったれ、このベジータ様がこんなガキ共にっ…!』

『おいおい、まさかその程度で終わりなのか?』

『ま、まずいぞ、このままでは全滅だっ』

『なんだ、急に空が暗く?』

『…!(よ、よし、悟飯が願いを叶えたんだ、後はどうにでもなるっ…!)』

『どこ見てんのおっさん』

『しまっ、ガハッ!』

 

 結局俺の知る歴史通り、戦士たちは全滅してしまった。しかしその中でも何故か俺だけが生き残ることができたのはおそらくこの体の生命力の高さ故だろう。

 しかし悟空の復活が叶った今いくらでも巻き返すことができる。

 ズタボロの体を引きずるようにして帰った俺を出迎えた光景を見て俺は膝から崩れ落ちそうになった。

 

『ご、ごめんなさい、既に誰かがドラゴンボール集めて神龍を呼び出していたんです。僕が駆け付けた時にはもう願いは…』

『そ、そんな、じゃあ孫君は…』

『皆、聞いてくれ。悟空さはたった今、亡くなっただ』

『うっ…、うぅ、悟空さぁ!』

『お、お父さんっ…』

 

 ここにきてようやく俺はとんでもないミスを犯し続けてきたことに気が付いた。

 もうなりふりは構っていられなかった。どうしてそんなことを知っているのかなどの疑問になんて後で辻褄を合わせればいい。

 

『とにかく人造人間を倒さねばいかん、精神と時の部屋を使い修行するのだ』

 

 ダメだった。

 ミスターポポ曰く事前に神様があの部屋とこの世界を繋がないといけないらしい。

 そんな描写原作にはなかった。ピッコロと同化する前に念のために神様が事前に繋いでいたのか?とにかく、この世界の事を全て知った気になっていた俺のミスだ。

 

『新ナメック星のポルンガで孫悟空たちを生き返らせる、星の場所は界王様とやらにでも教えてもらえばいい。ワシの乗ってきた宇宙船ならすぐに着くはずだ』

 

 ダメだった。

 人造人間は優先的に人の多い、栄えた都市を攻撃し始めた。真っ先に狙われたのは西の都、カプセルコーポレーションもその被害を受け、コルド大王の宇宙船も、ましてや宇宙船を作る手段も共に失われてしまった。

 

 俺の考えうる作戦はことごとく失敗に終わった。

 この世界の絶望は、孫悟空の死は決定されたものであり、そうなるように目に見えない力が働いているのでは、などと都合の良い解釈を考え付いた自分の頭には嫌気が差したものだ。

 

 結局、俺たちは人造人間に気づかれぬように修行し、時たまに奴らに挑み、敗走を繰り返した。

 悟飯が青年と呼べる年まで成長し、トランクスが俺と悟飯に戦いを学び始めても、そんな日々はずっと続いた。

 こんなはずじゃなかったとずっと思いながら生きてきた。

 

 

 

(でも、それも今日で終わりだ)

 

 遠くに見える都が攻撃を受けている。

 眼前には、気絶したトランクス。そして超サイヤ人になった隻腕の悟飯。

 

「トランクス、お前を死なせるわけにはいかない。お前は俺たちの、この星の人々、全ての希望なんだ」

 

 原作同様、単身で人造人間に挑むつもりなのだろう。そして、彼は殺される。

 この時を俺はずっと待っていた。

 

「コルドさん、トランクスの事を頼みます。俺は奴らと戦ってくる」

「待て、悟飯。やみくもに戦って勝てる相手ではないことはよく分かっているだろう。…ワシに作戦がある。まずは超サイヤ人を解け、余計なエネルギーの消費を抑えるのだ」

「作戦…?」

 

 黒髪へと戻る悟飯、今なら可能だろう。これが最後のチャンスだ。

 

「あれを見ろ、悟飯」

「あれって…いったい何を? うっ」

 

 そう、未来を変える最後のチャンス。

 何も成すことのできなかった俺だが、これだけは失敗するわけにはいかない。

 不意を突き、悟飯を気絶させる。

 

「コ、コルド、さん…、どうし、て…」 

「悟飯よ、トランクスと共に生きるのだ。そして耐え抜き、いつか必ず二人で奴らを倒せ。それこそがワシの、最後の希望なのだ」

 

 俺は何一つ未来を変えることができなかった。

 しかし、そんな俺でもまだ変えることのできる未来が一つだけ残っている。

 

(悟飯、トランクス、苦しい思いをさせて本当にすまなかった。お前たちは怒るかもしれないが、これが俺にできる唯一の償いだ)

 

 

 

 

 瓦礫と化した都市、今ではその賑わいも失われ、ただ戦闘音だけが鳴り響いていた。

 

「ごふっ」

「トロいんだよ、おっさん」

 

 人造人間の、17号の拳がコルドの腹に突き刺さり、そのあまりの威力にコルドは膝をついてしまう。

 負けじと腕を振り上げ、その拳を17号に向けようとしたところで、横合いから不意にその腕を掴まれる。

 

「ちょっと、あたしもいることも忘れるな、よっと!」

「ぐぁっ!」

 

 鋭い蹴りによって勢いよく蹴り飛ばされるコルド、その体は廃墟と化した建物に体をめり込ませようやく止まった。

 

「「あははははははは!!」」

 

 二人の人造人間による猛攻はまだ止まらない。

 悪魔のような笑みと共に、凄まじい威力を持つエネルギー弾が雨あられの様にコルドに降り注ぐ。

 

「ははは、ん? ちっ、雨か」

 

 頬に触れた冷たい感触に、2人の人造人間の攻撃の手が止まる。

 ぽつりぽつりと降り出した雨は、やがてみるみるうちに激しさを増していった。

 

「最悪、ねぇ17号、もう行こうよ。きっともう死んでるよ」

「まぁ待てよ18号、こいつのしぶとさはお前も知っているだろう」

「はぁっ・・・はぁっ・・・、ま、まだだっ」

「ほらな」

 

 土煙の晴れた先、そこにはボロボロになりながらも剣を杖の様にして立ち上がるコルドの姿があった。その姿に18号が怒りを露わにする。

 

「ほんっとうにしつこいね、あんた」

「18号の言う通りだ、なぜそうまでする。俺たちに勝てないことはもうお前も分かっているだろう?」

「…くくく、ハァッハッハッハッハ!」

 

 17号の問いにコルドは大きな笑い声をあげる。それを訝しむ二人。

 

「何がおかしい、気でも触れたか?」

(ほんと、なんでこんなことになったんだか…、自分の無能っぷりに笑っちまうよ)

「ったく、ずぶ濡れじゃないか。17号、とっとと止めをさしちまおう」

「(どうせ最後なんだ、せっかくだからかっこつけさしてもらうぞ)…勝てる!」

「ふん、そんなズタボロの状態で何を言っている。もう立っているのもやっとじゃないか」

 

 体のいたるところから流れ落ちる血が、雨に流され消えてゆく。

 降りしきる雨の中、コルドは震える足を押さえつけ、剣を構える。

 

「ワシではない、だが、残された希望の戦士達がいつか、必ず貴様らを倒して見せる!」

「希望の戦士? ああ、孫悟飯とトランクスの事か。何をバカなことを、あの二人のパワーじゃ俺たちに敵わないことくらいお前も分かっているだろう」

「分かる、分かっているぞ、近い未来、お前たちは必ずあの二人に敗れるということを!」

「…話にならないな。18号、もう終わらせよう」

 

 二人の人造人間がコルドに向かい歩みを進める。

 迎え撃つようにコルドは構えた剣を大きく振り上げる。

 

「なあに、簡単なことだ。お前たちは我が息子同然の二人に、絶対に勝つことは・・・」

 

 そして、渾身の力をこめて振り下ろした。

 

「できんのだ!!」

 




正直、自分でも無理あるなぁと思ってます。
ただ原作知識持ってるのに絶望の未来ルートに進むとなると作者の力量的にこれが限界でした…。
未来の主人公が凄く怠惰な奴になってしまった、許してコルド大王…
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