魔法少女世界で怪人をやる話   作:筑紫満天星

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第二十話【魔法少女最後の戦い!?悪の女首領を討て!!】


第十話 完成

サイの頭をした怪人のツノを片足で掴み引き倒す。曝した背中の分厚い筋肉に猛禽の脚爪を突き立て心臓(コア)を抉り出す。

 

これで5体。

 

コアを丸呑みにする隙をついて飛びかかってきたカバの怪人とキツネの怪人を躱し、すれ違いざまに翼腕を叩きつける。

 

盛大にたたらを踏んでずっこけた2体のうち、小柄なキツネの方を踏みつけにして首を締め潰す。骨の砕ける感触が脚に伝わる。脱力したキツネを投げつけると、カバは泣きそうな顔でそれを抱き止めた。

 

重なった2体の胸を貫き、2つの心臓(コア)をまとめて奪う。

 

6体、7体。

 

壊した怪人たちが塵に還るのを確認してボクは長い息を吐いた。

 

ここは臨海地区に建つ街一番の高層建築。悪の組織が貿易会社に偽装していた秘密の本拠地だ。今夜、魔法少女の侵攻作戦に便乗したボクはこのビルに屋上から乗り込んだ。

 

偉ぶった金の女性像が屹立するヘリポートから最上階のやけに豪奢な執務室まで。見張りや警備を蹴散らしながら強引に突き進んだ。煙と悪いやつは高い所が好きだろうと期待していたのだけど、残念ながらここに悪の首領は居なかった。

 

今は丁度、歓迎してくれた怪人の群れとの連戦がひと段落した所だ。すでにボクの性能は一般の怪人とは隔絶している。この程度の数的不利はまるで問題にならない。

 

豪奢だった執務室は戦闘の余波でボロボロになってしまっている。革張りのソファは裂け、木目のテーブルも真っ二つだ。割れた窓からは夜の海風が吹き込んで心地よい。近づいて外を見下ろせば、ビルの正面広場で3人の魔法少女が戦っている。

 

赤色の魔法少女は獅子の精霊を宿した獅子丸(シシマル)アキラ。【炎を操る魔法】で闘志を燃やして怪人たちを真っ向から殴り倒している。

 

青色の魔法少女は鯱の精霊を宿した逆叉(サカマタ)サツキ。【水を操る魔法】と弓矢を駆使して獅子丸アキラの隙を狙う怪人たちを射抜いていく。

 

黄色の魔法少女は鷹の精霊を宿した鷹羽音(タカバネ)エリカ。【雷を操る魔法】が形作る翼で飛び回り怪人たちの連携をバラバラに切り崩している。

 

戦況は正義の味方に有利なようだ。怪人の増援が次々と現れては少女たちに倒されていく。

 

居た。

 

ステッキを振り回し怪人たちの指揮を取っていた女性が1人、ビルの中へ逃げ戻った。あのマントと髪型は屋上にあった金の像と同じものだ。きっとあれが悪の首領だ。

 

逃げた先は地下だろう。

 

この臨海地区には暗渠になった古い河口が存在していて、この建物は地下でその大霊脈と接続しているらしい。確か事前に教えてもらった情報ではそうだった。

 

きっと大霊脈の魔力を利用して一発逆転の何かを企んでいるはずだ。

 

地下に降りるためにエレベーターホールへ向かう。するとタイミングよくエレベーターが到着し、怪人の群れがゾロゾロと現れた。階段を上る慌ただしい足音もたくさん聞こえる。

 

8体目、9体目、10体目。

もっと、もっと、もっと。

 

悪の本拠地は怪人でいっぱいだ。

 

いいだろう、ボクはお残しはしない主義だぞ。覚悟しろ。

 

 

 

大霊脈に繋がる地下空間はひどくじめっとしていた。饐えた水に澱んだ潮が混ざった悪臭に顔を顰める。

 

地上の怪人を食べ放題して食傷気味だったボクは思わず口鼻を覆ってしまう。臭い。吐きそう。進まなきゃダメかな。帰ってもいいんじゃない? 正直帰りたい。

 

不快さに耐えて奥へと進むと果たしてその終点に悪の首領はいた。

 

背の高い女性だ。露出の高いボンテージ姿が襟の広いマントに見え隠れしている。マントの表は黒で裏地は赤だ。長いピンク髪は頭頂部で立体的に巻かれ盛られて複雑なウェーブを描きながら後ろへ流れている。

 

しかし、その派手な格好も見るからにボロボロだ。マントは破れているし、ステッキは途中で折れてしまっている。どうやら魔法少女たちに手ひどくやられたらしい。

 

悪の首領は先程から大霊脈に繋がる大型の機械をヒステリックにあれこれと弄り回している。そのカプセル型の機械には幾つもの魔力結晶(コア)が体表に露出した怪人が眠っている。

 

見覚えのないタイプだ。秘密兵器ってやつかな。どうやら悪の組織も複数の魔力結晶を結合する技術をようやく手に入れたらしい。遅かったね。

 

それとも、この期に及んで動かないってことは失敗作なのかな?

 

ねえ、動くまで待っててあげよっか?

 

そうすれば最高最強にして究極無敵の怪人が誰なのか、はっきりと証明できる。お爺ちゃんの復讐も完璧に達成できるってものだ。

 

悪の女首領がボクの声に振り返る。だけど、驚愕と怒気の視線はボクを見てはいなかった。

 

「その必要はない」

 

その視線の先、僕のすぐ後ろ。

そこにはいつの間にやって来たのか、お爺ちゃんがいた。

 

「ツバサよ、良くやった。これで完成だ」

 

背後に立つお爺ちゃんの声は初めて聞く冷たさをはらんでいた。

 

お爺ちゃんの手がボクの背中に触れた。

 

熱いと感じた直後、ボクのお腹をお爺ちゃんの腕が突き破った。

 

背中から貫通し真っ赤に染まったその手には、見たこともない巨大な魔力結晶が握られていた。

 

「どう・・・して・・・・・・」

 

腕が引き抜かれる。ぽっかりと空いた孔から血が溢れ、魔力が、全てが流れていく。寒い。立っていられない。瞼が重い。

 

「この輝き、この魔力。

 ついに手に入れたぞ、究極の魔力結晶を。

 ああ、ようやく、ようやく帰ることができる。

 あの懐かしの地球へ、故郷の空へ!」

 

頭上で響くお爺ちゃんの声はひどく震えて聞こえた。

 

それは喜びだったのだろうか、それとも・・・・・・。

 




大霊脈に超巨大な魔力の塊を衝突させると膨大なエネルギーが弾けて世界に穴が空きます。上手くコントロール出来れば次元跳躍が可能になるでしょう。

というありがちな設定。


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