魔法少女世界で怪人をやる話   作:筑紫満天星

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第四話【マッスルに真っ直ぐに!アルマジロー!】Cパート


第二話 敗走

ボクのお爺ちゃんはマッドサイエンティストでした。そのマッドさは悪の組織が『おまえおかしいよ』とドン引きしてクビにしてしまったほどです。子供を攫って人間ベースの怪人に改造することは悪の組織でもNGだそうです。コンプライアンスしっかりしてますね。

 

いえ、皆さんが戦っていたのは魔力結晶を心臓(コア)にした純魔法生物の怪人です。その証拠に、ボクがコアを食べちゃったので魔力が尽きて霧散してますよね。これが人間ベースなら死体が残ります。

 

夜の街、ビルが立ち並ぶ灰色の森の底で。

ボクは3人の魔法少女に囲まれて正座をしている。

 

ーーいや、負けてないが?

まだ強化が足りなかっただけだし、今日はただ偵察に来ただけで全然本気じゃないし、魔力捕食してハイになった挙句喧嘩売って返り討ちでフルボッコになんてされてないし。そもそも一対一なら絶対負けないもん、なにさ合体魔法ってズルじゃん、チートじゃん、ボクの地元じゃノーカンですぅー。それに野生の世界では死んだら負けで生きてたら勝ちだから。ボクは生きてるからボクの勝ち!やったぁ!ーー

 

正面にいるのは赤色の、獅子の精霊を宿した魔法少女。名前は獅子丸(シシマル)アキラ。短めの無造作なウルフカットで、大きな瞳が意志の強さを窺わせる。

 

左手にいるのは青色の、鯱の精霊を宿した魔法少女。名前は逆叉(サカマタ)サツキ。前髪を揃えた長いポニーテールで、メガネっ子。切れ長の鋭い眼は表情に乏しくて思考が読めない。

 

右手にいるのは黄色の、鷹の精霊を宿した魔法少女。名前は鷹羽音(タカバネ)エリカ。ボリュームのあるツインテールで、少し垂れた目尻が幼さを感じさせる。

 

3人は色違いの、共通するデザインのバトルドレスーー細身のブレザータイプにふわりと揺れる短めのスカート、膝上のロングブーツ、胸元のピンクのリボンにはそれぞれに対応した色味の宝石ーーを身に纏っている。

 

アキラは鬣と肉球、サツキは波濤と雪の結晶、エリカは鷹の羽に向日葵と、それぞれ異なる意匠のフリルや刺繍、髪飾りなどに彩られ、統一感を損なうことなく個性を主張している。スカートの後部から生えるそれぞれの精霊を象った尻尾も特徴的だ。

 

正義の味方らしい、実に秩序だった美しい立ち姿だと思う。胸と腰を羽毛が覆い隠す程度の、原始人丸出しのボクとは大違いである。でもこの格好もそう悪くないんだぞ。暖かいし、空も飛べるし。おへそはちょっと恥ずかしいけど。ところで服の損傷が勝手に直るのはおかしくない?魔力が自然回復してるの?あと、獅子丸アキラは距離感おかしい子だね。自己紹介に身長体重は要らないんだよ。『157センチ51キロ!ド平均です!』ってなんで自慢気なのさ。ちなみに、胸はボクが1番大きいぞ。羽搏くための胸筋がアドバンテージだ。

 

 

それはさておき、ボクの供述をまとめるとこうだ。

 

悪の組織を追われ無職になったお爺ちゃんはボクを改造(つく)った。目的は当然、悪の組織への復讐。自分の研究こそが最高最強だと証明するため、全ての怪人を壊すこと、だ。問題は悪の組織から持ち出した魔力結晶が低質の二級品だったこと。魔力が少なければ、当然怪人は弱くなる。その解決策がコアの捕食だ。倒した怪人の魔力結晶をお腹の中で混ぜ混ぜしてどんどん強くなろうって作戦だね。

 

魔力結晶の結合は悪の組織も研究してて失敗続きだったんだけど、お爺ちゃんは成功した。コツは魔法適合の高い子供をベースに怪人を改造(つく)ること。ドロドロに溶かした魔力結晶が一つに固まるまでの間、器としてこの体を利用するらしい。マッドの勝利だね。

 

そうして出来上がったボクは悪の組織と対立する『悪の敵』になった。お爺ちゃんの復讐を果たし、全ての怪人を捕食した最高最強の怪人になる為に。ちなみにボクがフクロウの怪人なのは体の適性を重視した結果とのこと。

 

ボクが言葉を切ると、獅子丸アキラが突然抱きついてきた。ホントに距離感おかしな子だな。しかも何かを喚いているようだが、涙声でボクの耳でも全く聞き取れない。

 

まあ良い匂いがするから許してやるが。

いや、待て締め付けが、強い、骨が、軋む!息が!離せ!バカ!!

 

 

それから5分か10分か。

パトカーのサイレンがようやく聞こえ始める頃、ボクはどうにか解放された。あの攻撃は卑怯だ。戦時条約で禁止してほしい。

倒れ伏すボクを無視して、獅子丸アキラは何かを決意するように天へと拳を突き上げる。その奇行に鷹羽音エリカが同調し、逆叉サツキは溜息を漏らす。

 

今、3人の意識が初めて、はっきりとボクから逸れた。

 

その隙をついて、瞬間、夜の街を完全な闇が包み込む。

 

月は消え星も無く、車のライトも街灯も、家々店々から漏れ出す僅かな光さえ感じられず。ただ音だけが混乱と狂騒を響かせる。

 

【夜を操る魔法】

それがボクの固有魔法。大層な名前だが、実際は単に周囲を暗くするだけの些末な奇跡だ。ただ、フクロウの眼と耳を持つボクはこの暗闇も見透して自由に飛ぶことができる。だから魔法少女の眼が暗闇に慣れる前に逃げおおせてしまえるだろう。怪人が魔法を使うのはおかしいって?お爺ちゃんの最高傑作、最高最強の怪人になるこのボクを舐めないでほしいな。

 

「魔法はキミたちだけの奇跡じゃないってことさ。

 さようなら、魔法少女。また会いましょ、う?」

 

音も無く飛び去っていくボクを短く奇妙な音が追い越した。直後に、風切音と翼腕を掠める鋭利な感触。嘘だ。これは逆叉サツキの弓だ。また同じ音が聞こえ、続く風切音と迫る射撃。何も見えないはずの闇の中でなぜ正確な攻撃が飛んでくるのか。

 

疑問と恐怖がぐるぐる回る頭を抱え、ボクはただひたすらに全速力で飛び去るのだった。覚えてろお!

 

**

 

「どうしてですかツバサちゃん!ワタシタチ!!心で通じ合えたのに!!!」

「アキラの鯖折りで死にたくなかったんでしょう」

「アキラちゃんの愛はいっつも一方通行だねェ」




身長はサツキ>アキラ≧ツバサ>エリカ
バストはツバサ>アキラ>エリカ≧サツキ

・白森ツバサ
フクロウの怪人。イメージカラーは白。固有魔法は【夜を操る魔法】。14歳。好きなものはお爺ちゃん。趣味は毛繕い。魔法少女は最後に倒すことにした。ビビってないが?

・獅子丸アキラ
獅子の精霊を宿した魔法少女。イメージカラーは赤。固有魔法は【炎を操る魔法】。15歳。好きなものはお父さん特製カレーとお母さん特製ハンバーグ。趣味は格闘技。さよならも言えなかったのが寂しいので、また会えたら全力でハグをしようと思っている。

・逆叉サツキ
鯱の精霊を宿した魔法少女。イメージカラーは青。固有魔法は【水を操る魔法】。15歳。好きなものは友達。趣味は水泳。あの魔法で割と洒落にならない被害が出たので、次は確実に斃すと心に決めている。反響定位は要練習。

・鷹羽音エリカ
鷹の精霊を宿した魔法少女。イメージカラーは黄。固有魔法は【雷を操る魔法】。13歳。好きなものはぬいぐるみ。趣味はアニメ観賞。暗いと怖いからあの魔法はもう使って欲しくないなぁと考えている。

設定は後から生えます。
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