魔法少女世界で怪人をやる話   作:筑紫満天星

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第八話【角と蹄に賭けて!シカ娘の野望!】


第三話 日常

小雨の降る休日の遅い朝。

厳かな鐘の音で目を覚ます。

一度大きな伸びをして、寝癖のついた羽毛を撫で付けながらのそのそと寝床を這い出す。

気が変わって再び毛布に包まろうとすると、見計らったように1人の女性が現れる。

 

お湯を絞った温かなタオルを受け取る。

穏やかな笑顔におはようを返すと朝の検診が始まる。

 

ここは街の郊外に建つ、この国ではちょっと珍しい西洋式の教会だ。半放置されてたものをお爺ちゃんが買い上げてカモフラージュ兼セーフハウスとして使っている。勿論、地下にはお爺ちゃんの秘密研究所がある。

 

シスターは表向きの教会を切り盛りしていて、ボクの健康管理も担当している。名前は知らない。お爺ちゃんが『シスター』と呼ぶのでボクもそうしている。年齢も知らない。見た目は20歳くらいだと思うけど、初対面で尋ねた時のあのプレッシャーはもしかしたら30代とか40代かもしれない。今思い返してもあの眼光は只者じゃなかった。実は元悪の女幹部とかなんじゃないかと睨んでいる。

 

朝の検診が終わると朝食の時間だ。

ベーコンとレタスとトマトのサンドイッチはボクの好物。バターの香るクロワッサン。パリパリのウィンナー。甘く焼いた卵焼き。塩茹でのアスパラ。鮭の揚げ焼き。柔らかく蒸した鶏と温野菜。砕いたクルミのポテトサラダ。盛り合わせのフルーツ。唐突なミソスープ。

シスターの料理はどれも美味しい。

飲み物はお爺ちゃん特製謎の薬効ジュース。

これは美味しくない。

 

食事は魔力補給を兼ねているから、朝からしっかり食べないといけない。怪人の心臓(コア)である魔力結晶は例えるなら巨大な燃料タンクのようなものだ。大量の魔力を内包していても魔力を生み出してるわけじゃない。使い続ければいずれは空っぽになってしまう。

 

魔力を直接補給するには霊脈やパワースポットが必要になる。そういう場所はたいてい悪の組織に抑えられていて使う事ができない。無理やり奪ってもケーサツやサイバンショが出てきて取り返されてしまう。悪の組織の手は長い。だから今は効率の悪い経口摂取に頼らなくちゃならないのだ。

 

つまりなにが言いたいかというと、これは強くある為の訓練とか修行とかなのであって決してボクが食いしん坊なわけではないということだ。わかったかな? よろしい。じゃあ、おかわり!

 

朝食の後は自由時間。普段はお爺ちゃんの研究を手伝っている。フクロウは賢いので。必要な知識だってとっくに刷り込み済みだ。

 

最近はボクの肉体変化を重点的に研究している。アレから3体の怪人を捕食した事で単純な性能向上とは異なる能力が現れたのだ。

例えばアルマジロの甲殻化。魔力を消費して一時的に外皮が硬質化、攻撃を弾くようになる。問題点は謎のポージングを強制されて動けなくなること。

他にはゴールデンレトリーバーの嗅覚強化。これも魔力を消費する一時的なもの。視覚聴覚を妨害されても戦えるようになる。問題点はめちゃくちゃ人懐っこくなること。あの3人に撫で回されてお腹を出したのは屈辱の極みだ。

あとの2種については未発現で調査中。

どれも副作用が厄介なので使いこなすのは難しいけど、研究が進めば問題点も解決されるだろう。ボクが最高最強で究極生物の怪人になる日は近い。

 

残念なことに、今日はお爺ちゃんが活動資金を集める為に出かけているので研究はお休みだ。行き先は銀行や投資家巡りではない。今や無職のお爺ちゃんは、ウマでお金を稼いでいる。超一流のマッドサイエンティストにして超一流の生物学者は一目でどのウマが勝つかを見抜くのだ。勝率は8割くらい。たまに負けておくのが長く続けるコツなんだって。流石はお爺ちゃんだ。

 

今日は大きなレースがあると言って、朝早くからウキウキと出かけて行ったらしい。

 

仕方がないのでシスターに毛繕いでもして貰おうとお気に入りのブラシを持っていくと、慌てたシスターがラジオの音量を最大にするところだった。

 

 

お爺ちゃんのいる競技場が怪人に襲われた。

 

 

ボクは窓を蹴破って一直線に飛び出した。

 




ツバサが行った街の破壊はお爺ちゃんのウマ貯金から弁済されます。
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