黄昏時。暗がりの路地裏で。
サルの頭をした怪人が走っている。
暗闇がぞろりと蠢く。ボクは身に纏った夜を
一矢。
眼前を通り過ぎた青い矢がボクの動きを妨げる。続く連射を翼腕で払い飛び退くと、散らばった矢が水に変じてサルを覆い隠す水牢となった。
【水を操る魔法】だ。
青色の、鯱の精霊を宿した魔法少女、
獲物を横取りされた苛立ちにボクはまたかと小さく舌打ちをする。
捕食した怪人が10を超えた頃から、魔法少女の妨害がずっと激しくなった。保有する魔力量が増大しボクは随分と強くなったが、魔法少女もまた強くなっていた。魔法の扱いに習熟し、連携はより精確に、戦術はより緻密になった。お陰で近頃は全く獲物にありつけていない。ボクは怒っている。
サルを捕らえた水牢がずりずりと移動を始めた。その行く先、路地裏の暗がりの向こう側、街の光の中に逆叉サツキがいる。真っ直ぐに弓を
ボクはかなり怒っているぞ。
1対1ならボクの方がずっと強いんだ。
ちょっとは痛い目を見てもらうからな。
ボクの固有魔法【夜を操る魔法】で路地裏が完全な闇に包まれる。暗闇の中、さらに濃い夜の塊が幾つも湧き出でる。ボクと同じ
鋭く短い音の直後、影法師の1つが射抜かれた。魔力が充溢した影法師は擬似的に質量を持つ。音の反射で暗闇を捉える反響定位でも聴き分けることはできない。
襲いくる矢嵐の中、影法師たちを盾に突き進む。矢に撃たれた影法師は端から水牢に囚われて身動きを封じられていく。狭い路地裏で左右に躱すことは難しい。飛び上がって縦に展開し射手へと迫る。
闇を突き抜け、光の中へ躍り出る。最後の影法師が射抜かれる。次の矢は無い。ボクの間合いだ。防御のために展開された薄い水膜を蹴破り、逆叉サツキのノドを鷲掴みにし、そのまま地面に叩きつけ押し倒した。
悲鳴は無い。相変わらず、表情の変化も見られない。もう詰んだハズなのに、何を考えている?
脚に力を込めてノドを締め上げる。地べたに組み敷いたまま幾度もしたたかに頭を打ちつけると、やがて体の力が抜け【水を操る魔法】が解除された。
水塊の崩れる力無い音が聞こえる。
ボクの目の前で風景が歪み砕ける。
光を屈折させ景色に同化していた水膜が弾け、隠れていた
誘い込まれた!
【炎を操る魔法】を持つ、赤色の、獅子の精霊を宿した魔法少女。
避け、られ、な
燃え盛る闘志を纏う全力全身全霊のぶちかましが炸裂した。
夜。
街の外まで吹き飛ばされたボクはようやく教会に帰り着いた。アルマジロの甲殻化が間に合わなければ体がバラバラになっていたかもしれない。1対1だと思って油断したせいだ。本当ならあんな大技、掠りもしないのに。卑怯者めえ。
・・・・・・今日も捕食に失敗した。
これは由々しき事態だ。このままでは最高最強の怪人となるために
もっと強くなれば捕食も邪魔されないだろう。でももっと強くなるにはまず捕食が必要なんだ。どうしよう?どうしたらいい?
「成程それは大問題!ですが御安心あれ。
門の前、頭を抱えて唸るボクの背後に、ちょび髭とシルクハットの怪しいおじさんが現れた。
おじさんの
魔法は自由です。【操る】の範囲は想像力に左右されます。
呪文や術式、原理、法則が必要なものは魔術に分類されます。
というありがちな設定。
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