魔法少女世界で怪人をやる話   作:筑紫満天星

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第十五話【見ざる言わざる聞かざる!?蓋を開ければサル軍団!】



第六話 掠奪

深夜。

いつもならとうに夕食も終わりベットの中で夢心地のこの時間に、食卓は多種多様なケーキで埋め尽くされている。

 

苺のショートケーキ。ガトーショコラ。ブルーベリージャムのレアチーズケーキ。焼き林檎のアップルパイ。洋梨のタルト。シフォンケーキ。ロールケーキ。パウンドケーキ。ミルフィーユにミルクレープにモンブランに。他にも、他にも、他にも。

 

街で評判のケーキ屋さん『あくの』の新作試作定番の人気作が選り取りだ。目を輝かせるボクの対面で、シスターは何故か憮然としている。目がちょっと怖い。食べても良いでしょ?今日はいっぱい魔力を使っちゃったし、ちゃんと歯も磨くから!ね?

 

やったあ!

 

ケーキをお土産に現れた怪しいおじさんは、なんと怪しいおじさんではなかった。お爺ちゃんの古い友人だったのだ。

 

阿久野(あくの)と名乗った彼は悪の組織の“元”首領であり、お爺ちゃんと悪の組織を創設した人物であり、彼自身もまた超一流の薬学者にして超一流のマッドサイエンティストでもあり、そして今は街で評判のパティシエをやっているらしい。

 

彼は資金の使い込みがバレて娘さんに実権を奪われ悪の組織を追放された。新たな職場と仲間を得て、今では悪事からすっかり足を洗ったらしいが、それはそれとして娘さんには一泡吹かせてやりたいと考えていて、それで同じく追放されたお爺ちゃんに協力しに来たのだという。逆恨みでは?

 

人物評や経緯はさておき、彼の“良い考え”をまとめるとこうだ。

 

街の北側、山沿いに廃ホテルがある。

そこは古い神社を解体した跡地に建てられたとかでお化けが出るなどと噂が立ち、何年も前から廃業になって放置されているこの街の有名な心霊スポットだ。

 

でもそれは表向きの話。実際は悪の組織が霊脈から魔力結晶を取り出すために秘密に運営している工場の1つなのだ。

 

魔法少女の活躍やボクの存在もあって、悪の組織では怪人の集団運用が進められている。そのため魔力結晶をすぐに怪人の心臓(コア)にすることは減り、規格の統一された怪人軍団を造るために一定数が貯まるまでは保管しておくようになった。

 

この廃ホテルはその保管庫も兼ねている。

だから襲撃して分捕ろう。以上。

 

流石は悪の元首領。考えることが乱暴である。

 

でもボクはこの作戦に賛同した。何より邪魔が入らないってところが良い。だって街を守る魔法少女がこんな廃墟まで出張ってくるはずないんだから。お爺ちゃんの許可も貰った。成功は間違いなしだ。

 

そして前祝いにと、その夜は美味しいケーキをお腹いっぱいに堪能して英気を養ったのだ。

 

翌日は胸焼けで気持ち悪かったからお休みにして貰った。シスターには叱られた。

 

 

 

翌々日。

元気になったボクは早朝から(くだん)の廃ホテルへ繰り出した。

 

結果から言おう。作戦は成功した。

手に入った魔力結晶は一級品が6つ、二級品以下が多数。強力な怪人1体も捕食して、1日どころか1ヶ月で見ても過去最高の戦果だ。

 

ただ、イレギュラーが1つだけ。

 

魔法少女が捕まってる。

 

あの赤色のバトルドレスは獅子の精霊を宿した獅子丸(シシマル)アキラだ。

 

廃ホテルの地下。魔力結晶の精製工場で。

眼と耳と口を機械に塞がれた獅子丸アキラが磔に吊るされている。

 

機械からは工場の設備へと幾つかの管が繋がっていて、魔力を吸い取っているようにも見える。魔法少女からも魔力結晶が作れるのだろうか?

 

獅子丸アキラに呼びかけてみるが反応がない。気を失っているのか、聞こえていないのかは判断できない。

 

さてどうしようかと足を止めて首を傾げていると、突然、視界が何かに覆われた。続けざまに耳も口も塞がれてしまう。

 

敵襲だと判断し闇雲に翼腕を振り回せば、複数の何かにぶつかり弾き飛ばした。感触は恐らく怪人のもの。とりあえず影法師で全周を防御する。

 

何も聞こえず、何も見えない。ついでに口も動かない。自分の顔に触ってみると機械の感触。なるほど、獅子丸アキラもこうやって無力化したのか。管は付いてないらしい。魔力は抜かれてない。鼻は無事。呼吸のためかな?これならどうとでもなるな。

 

ボクはゴールデンレトリーバーの嗅覚強化を発揮する。それまで閉じていた感覚が開き、情報量が急拡大する。

 

この匂いは覚えがある。一昨日のサル怪人だ。似たようなのが1、2、全部で3体。生意気にも3方向から取り囲んでいる。

 

甘くて優しいこの匂いは獅子丸アキラだ。彼女は体温が高くて撫でる手がとっても気持ちがう!集中!!これは副作用!!惑わされるな!!

 

ボクが頭をガンガン叩くと、機械を壊そうとしていると思ったのか、サルたちが一斉に襲いかかってきた。

 

しかしその動きは単純で単調そのもの。感知されてるなんて、まして反撃されるかもなんて思ってもいないのだろう。充分に引き付けて、取り返しのつかないタイミングでそれぞれに一撃。3体のサルは影法師のカウンターに遭って呆気なく沈んだ。心臓(コア)は二級品だった。さもあらん。

 

 

嗅覚強化を解除するとまた急速に感覚が閉じていく。遠ざかっていく甘い匂いに寂しさを感じてない!何にもない!平常心!

 

顔を覆う機械を壊して光と音を取り戻す。

改めて吊るされた魔法少女を見上げて溜め息をついた。

 

どうしよっか、コレ。

 

 

 

**

 

「アキラ。アナタ、サルに騙されたの?」

「いえこれはその!なんと言いますか!!」

「ごめんねアキラちゃん、私が一緒に行かなかったから」

「いいんですエリカちゃん!誰だってお化けは怖いですから!!」

「はぁ、おちおち寝てもいられないわね」




嗅覚強化の副作用は「人懐っこくなる」です。

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