魔法少女世界で怪人をやる話   作:筑紫満天星

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第十六話【友を救え!最強の怪人フクロウ女の陰謀!】


第七話 成功

廃ホテルに偽装された魔力結晶の精製工場。無機質で息の詰まる地下の閉鎖空間で。

 

ボクは2人の魔法少女と対峙している。

 

青色の魔法少女は鯱の精霊を宿した逆叉(サカマタ)サツキ。

黄色の魔法少女は鷹の精霊を宿した鷹羽音(タカバネ)エリカ。

 

2人の発する敵愾心と威圧感は凄まじく、地下の澱んだ空気はびりびりと震え、羽も髪も構わず全身が総毛立つほどだ。キミたちそんな顔もできたんだね。

 

当然ではある。

ボクの背後では彼女たちの大切な仲間、獅子丸(シシマル)アキラが未だ磔に吊るされている。しかも頭部を謎の機械に覆われ、そこから延びる管に繋がった怪しげな装置を、更に怪しげな2人のマッドサイエンティストが(せわ)しく操作しているのだ。

 

そして立ち塞がるのは人の姿に翼の腕と猛禽の脚を持つ異形の怪人。白い羽毛のフクロウ女(ボク)だ。

 

最悪の絵面だ。どう見てもナニカサレテいる。

 

 

この工場にいたサルの怪人を食べた後、獅子丸(シシマル)アキラの処理を決めかねたボクは結局、お爺ちゃんを呼ぶことにした。

 

その理由のひとつは機械の外し方がわからなかったからで、変に壊して何かあっても嫌だったのだ。

そしてもうひとつは、魔法少女から創る魔力結晶に強く興味を惹かれたからだ。

 

瞬間的な出力にこそ限界はあれ、魔法少女の魔力は無尽蔵だ。歩く大霊脈と言ってもいい。どれだけ傷つき疲れ果てても、願いの力で心を燃やし言葉1つ想い1つで魔力漲り、何度でも立ち上がるその姿は正しく正義の味方に相応しい。

 

そんな魔法少女の力を丸一日中も奪い続けて生み出された魔力結晶とは、どれほど上等なものだろうか。どれほど美味なものだろうか。それを頬張り、嚥下し、腹の中で融かしてひとつになった時、ボクは最高最強にして究極無敵の怪人に大きく近づくのだ。

 

今、お爺ちゃんたちの手で獅子丸アキラから吸い出した魔力の精製結晶化が行われている。新式の装置は初見だったらしく操作に多少手間取ってはいたけれど、完成はもう時間の問題だ。

 

そんな最中に、2人の魔法少女が捕らわれの仲間を助けにやって来たのだ。一触即発の雰囲気も已むを得ないだろう。

 

 

ボクは翼腕を拡げて魔法少女たちを大仰に威嚇し、その怒りがお爺ちゃんたち(マッドサイエンティスト)に向かないよう正面に構える。

 

 

コレはボクが最高最強の怪人になる為に必要なコトだ。邪魔はしないでくれるかな。

 

友達? ボクに友達はいないよ。

 

利用されて? いいや、お爺ちゃんの夢を叶えるコトこそボクの願いだ。

 

 

僅かな問答の末、魔法少女たちは武器を構える。

弓を引き絞る逆叉サツキの周囲に水が起こり、逆巻き渦巻き拡がっていく。

鷹羽音エリカの纏う雷が撥撥(バチバチ)と音を立て迸り、一振りの剣に集約する。

 

身震いがする。

緊張から意図せず口角が上がり表情が歪む。

 

さあ、正念場だ。

 

弾かれたように、鷹羽音エリカが飛翔する。雷光を帯びた魔法の翼はボクよりも迅い。【夜を操る魔法】が生み出す影法師たちで取り囲み自由には翔ばさない。

 

紫電一閃。

 

影法師の何体かが両断され四散する。

 

影法師はボクの姿(カタチ)をした魔力で操る分身だ。切り刻まれても痛痒はない。斬るよりも多く、散るよりも早く、次々と繰り出して包囲戦を継続する。消耗は激しいが数の優位で圧倒するしかない。

 

弓を持つ逆叉サツキには接近戦を仕掛ける。お爺ちゃんたちは狙わせない。

 

水を操る多角的な応撃が来る。だが動く水の音は消せず、フクロウの耳を持つボクには聴こ()えている攻撃だ。躱し、払い、決して距離は取らせない。また決して踏み込みすぎずカウンターのチャンスも与えない。ボクの狙いは時間稼ぎだ。

 

 

魔法少女の連携を断つ作戦は上手くいった。

 

戦況は膠着状態に陥っている。魔力消費の激しい戦い方は本来長期戦に不利だけど、事前にたっぷり捕食もしたし、何より今回は時間制限がある。

 

この狭い地下空間、状況を打破するような大技は味方も巻き込み使い難い。

 

このまま魔力結晶が完成するまで粘り続ければボクの勝ちだ。

 

 

「ごめんねサツキちゃん、歯を食いしばってえええええ!!」

 

突然、鷹羽音エリカが大声で叫ぶ。影法師たちを巻き込みながら、真っ直ぐに、一直線にこちらへ突っ込んでくる。ウソでしょ。

 

鷹羽音エリカを中心に雷と夜が一塊になった巨大な球体が迫る。逃げようとするボクを、今度は逆叉サツキが捕らえて離さない。

 

「つれないわね。もう少し付き合いなさい」

 

それは一切の加減も躊躇もなくボクと逆叉サツキに激突し、爆砕し、3人は諸共に弾き飛ばされた。

 

全身を強かに打ち、ふらつく脚で立ち上がる。粉塵と蒸気で視界が効かない。逆叉サツキを見失った。お爺ちゃんが狙われる!

 

身を挺しても射撃を防ぐ為、お爺ちゃんの側まで飛び退いて仁王立つ。

 

ほぼ同時に、立ち込める煙の中から一条の矢が飛び出した。その狙いはボクでもお爺ちゃんでもない。

 

その一矢は、獅子丸アキラの拘束を貫き打ち砕いた。落下する彼女を鷹羽音エリカが一瞬で受け止め回収していく。機械が外され、魔力の奪取が途絶えてしまう。煙の向こうで走り去る足音が聞こえる。

 

うー、逃げられたあ。

 

ボクは気を落として座り込んだ。途中までは上手くいっていただけに、欲をかいて失敗したみたいで落胆も大きい。

 

慰めるように、お爺ちゃんが優しく頭を撫でてくれる。そしてもう一方の手をボクの前に差し出した。

 

その手には燃え盛る火焔を固めた形をした、真っ赤な結晶が握られていた。

 

 

 

**

 

「悪の組織の首領たるこのワタクシが来たからには!もう!!侵入者の好きにはさせませんわ!!!」

 

「さあ!パパも魔法少女も裏切り者も!みんな纏めて掛かっていらっしゃい!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「なんで誰もいないのよ!?」

 




魔法少女視点のお爺ちゃんは子供を攫って怪人に改造して戦わせる極悪人です。

そんな魔の手から仲間を助けるためなら、そりゃあ捨て身にくらいなります。


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