全知は距離を詰められない   作:甘さかな

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中編です。

今度は先生のターンです。

ヒマリはどうしているのでしょうか?

ではどうぞ。


6話 中編

 

 

 

 

 

ーヒマリの「隠れ家」ー

 

 

 

「「う〜〜〜〜ん……………………」」

 

 

 

その日ヒマリとチヒロは二人して画面と睨めっこしながら頭を悩ませていた。

 

カチャカチャやってはため息をつき、ため息をついてはまたカチャカチャやる…を繰り返す二人はさすがヴェリタスの部長と副部長、という感じであったがその実画面に並ぶのはぎこちない検索ワードから引っ張り出されたWEBマーケットのサイトだった。

 

 

 

 

ー数十分前ー

 

 

 

「……でですねチーちゃん?」

 

隠れ家に連れてこられて部屋の存在を初めて知り、何とも言えない表情をするチヒロの言葉を待たずにヒマリが喋り出した。

 

 

「うん」

 

 

「私はこれからどうすれば良いのでしょうか?」

 

 

「それを今から考えるんじゃないの…?」

 

 

「はい、なので先生と私以外知らないはずだったここにチーちゃんを連れて来たのです!」

 

「ここなら、誰の邪魔も入ることはありませんからね」

 

 

「うん、そうだね」

 

ドヤるヒマリを軽く流し、チヒロは持って来たパソコンを開き思考を巡らせる。

 

 

そして閃いた。

 

 

「あ、そうだ」

 

 

「何ですか⁈何か良いことでもあったんですか⁈」

 

 

こういう時の食いつきは早いのがヒマリだ。

 

 

 

「これ、見てよ」

 

 

 

「あ……」

 

 

 

12/24 Christmas Eve! 

 

 

 

「これだよヒマリ、この日に先生とデートしてそのまま告っちゃうんだよ」

 

 

「え、ええぇぇぇぇぇっっっ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

「そ、そんなそんなまだ」

 

 

「早い、とか言うの?」

 

「こんな絶好のチャンス、他の生徒が狙ってないとでも思ってる?」

 

 

経験者は語る、とでも言うのだろうか。

 

チヒロは少し後ろめたくなりつつ言った。

 

 

「う、うぅ………」

 

 

「ヒマリ、モタモタしてる場合じゃないんだよ、早く行動しないと後から考えたんじゃ遅いんだよ?」

 

 

「そうですね……ありがとうございます、チーちゃん」

 

「12月24日、ですね……よぉし………」

 

 

ヒマリは何とか自分の中で腹を括ったようだった。

 

 

 

「そうと決まれば、その日は先生に何かあげないとだよね」

 

 

「そうですね…先生は…先生は何か欲しいものがあるんでしょうか…」

 

 

「私も知らないな、そう言えば」

 

 

「困りましたね…」

 

 

 

 

などと言い出した二人がパソコンに向かい始めてからかれこれ一時間が経過しようとしている。

 

奇しくも居合わせているのは恋愛初心者の二人であり、先程から訳の分からない方向に考えが向かい始めては途絶しの堂々巡りである。

 

 

 

「へぇ…こういう服が人気なんだ…でもこれ素材見た感じだとちょっと防寒性悪そうだな…じゃあこのベンチコートの方がいいんじゃないかな…」

「いや、これも首周りとか覆えてない…ダメだ」

 

「あ、これいいじゃん、寝袋にも服にもなるやつ。どう?ヒマリ」

 

 

「あの……好きな人…に贈るクリスマスプレゼント…ですよ?チーちゃん」

 

 

「あ」

 

 

ーーー

 

 

 

「電子カイロですか…良いですね、冬にぴったりです♪」

「しかし…これでは少しサイズが小さいように思えますね…もう少し大きいのはないのでしょうか…」

 

「わぁ!この大きなの……は湯たんぽでしたか、危ない危ない………」

 

「あら、これは…暖かさ二十四時間持続⁈」

「サイズもいい感じですよ、見てくださいチーちゃん!」

 

 

「…えと、クリスマスプレゼントで使い捨てカイロは流石に…じゃないかな」

 

 

「あ……」

 

 

 

 

などというやりとりを何度も繰り返した後、二人に遅すぎるくらいの結論が出た。

 

 

「………ねぇヒマリ」

 

 

「………そうですね、チーちゃん……」

 

 

「「先生に聞いた方が早い ですね(ね)」」

 

 

言うが早いかチヒロはヒマリのスマホをひょいと取り上げると、先生に電話をかけた。

 

 

「あっチーちゃん!」

 

 

「何?モモトークでも送るつもりだったの?」

 

「それじゃダメ、こういうとこからちゃんと行動しないと」

 

 

スマホを取り返そうと手を伸ばしてくるヒマリと揉み合っていると

 

 

 

 

 

 

ピ

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

ーとある大型ショッピングモールー

 

 

 

 

年末が近づき、多くの人で賑わっている人気の大型ショッピングモールの中で、いろいろなものを物色しながら難しい顔をする男が一人。

 

先生は服を手にそれを着ているヒマリを想像したあと、首をちょっと傾けて服をを元あった場所に戻しながら考えていた。

 

 

 

 

…………どうしたものか。

 

 

 

 

 

昨日エイミと別れた後シャーレに戻り、休日を捻出するため超速で仕事を終わらせたおかげで今日はヒマリに贈るプレゼントを買いに来れたのだ。

 

 

が、来たはいいもののなかなか決まらない。

 

 

ヒマリはどんな物をあげても喜ぶ、とエイミは言った。

 

そして同時に適当に選ぶのはだめ、と付け加えた。

 

 

もちろん適当に選ぶつもりはなかったがそう言われたことで、さらに下手なものは選べなくなってしまった。

 

 

 

「どういうものが良いのかな…迷うな………」

 

 

その後も先生はあーでもないこーでもないと化粧品やら服やらを手に取っては首を横に振り続けた。

 

 

するといい加減にしびれを切らしたアロナと久しぶりに眠そうなプラナがシッテムの箱から顔を覗かせた。

 

 

「先生ぇ!」

「どうしちゃったんですか、もうかれこれ二時間近くそうしてますよ?」

 

「疑問。先生、何をしていらっしゃるのでしょうか」

 

 

「うわっびっくりした……」

 

「ごめんね、ちょっと探し物…かな」

 

 

「探し物、ですか?」

 

「先生、私たちがお手伝いします。何をお探しですか?」

 

 

「ちょっとね、プレゼントかな」

 

「ある生徒がもうすぐ誕生日なんだ、今日はそれを買いに来たんだよ」

 

 

「理解、どうりで昨日のお仕事を頑張られていたのですね」

 

「えぇっ先生どうしたんですか?」

「今までは『仕事やりたくないぃ〜』って言って生徒さんのお誕生日前日でも平気で徹夜していたのに…」

 

 

先生はぎくりとしたが、すぐ取り繕うような笑顔になった。

 

 

「今回はね…ちょっと、特別なんだ」

 

 

 

「……!」

 

「プラナちゃん!」

 

 

「理解しましたアロナ先輩」

 

「今月、本日以降に誕生日を迎える生徒のうちシャーレ当番を経験した生徒……該当者七名。その内モモトークのやりとり、最近の会話数が最も多い生徒……特定完了」

 

 

プラナは何も言わずにアロナに目配せした。

 

アロナはコクリと頷くと、先生に向き直りちょっとむくれながら言った。

 

 

「先生」

 

 

「私たちの方が先生のこと、大好きですが!」

 

 

プラナも何度も頷く。

 

 

「その大好きな先生を全力でサポートするのが私たちの役目、です!」

 

 

 

「ですから先生?」

 

 

「先生が思う、“正解”は何ですか?」

 

 

 

 

「私の“………正解”…か」

 

 

 

 

その時

 

 

 

 

チャンチャンチャンチャラン♪

 

 

 

「⁈」

 

 

 

「先生!電話、ですよ」

 

「絶対大丈夫です、先生なら」

 

 

「ファイト、おーです」

 

 

プラナが腕をぐるぐる回す。

 

 

振り返ったアロナの目が少し赤くなっていることにプラナは気付かないふりをした。

 

 

 

 

「……ありがとう、ふたりとも」

 

 

 

先生はちょっと目を細め、スゥと息を吸い込んだ。

 

 

 

「………よし!」

 

 

 

ピ

 

 

 

「もしもし、ヒマリ?」

 

 

『あ、先生…ですか?』

 

 

「うん、どうしたの?」

 

 

落ち着け、私はいつも通り話せばいい。

 

 

『さ、最近はかなり寒いですよね』

 

『先生はなにか…好きなもの、だったり欲しいものはあったりしませんか?』

 

 

「えっっ?」

 

 

思わず笑みがこぼれてしまう。

 

ヒマリも私と同じことを考えていたなんて。

 

 

『い、いえ、深い意味はないですよ?先生へのプレゼントとかでもありません!』

 

 

「へぇそうなんだ……」

 

「ふふっ実はさ、私も同じようなこと考えてたんだよね」

 

 

『えぇっっ⁇』

 

 

何やら電話越しにバタバタと聞こえた。

 

 

「だからヒマリ、好きなものとか欲しいもの、ない?」

 

 

『え、えぇ………』

 

『私は……私はセンセイガクレルモノナラナンデモウレシイノデスガ……』

 

 

完全に語尾が消滅してしまっていたが、先生はヒマリが何を言おうとしたか理解し、安心した。

 

 

 

 

そして伝える。

 

 

私の出した“正解”を。

 

 

 

 

「ヒマリ」

 

 

 

『ひゃ、ひゃいいっっ⁈』

 

 

 

 

「えと……」

 

 

 

「12月10日……の放課後、空いてるかな?」

 

 

 

『12月10日の…放課後……?』

 

『ええと………はい、空いていますが…』

 

 

 

「その日、私とお出かけしないかな?」

 

 

 

『え、えぇぇ⁈⁈』

 

 

 

「だめ?」

 

 

『だ、だめじゃないです!』

 

『私としても都合がいいので…ぜひ、行きましょう』

 

 

「そっか、よかった…ほんとに」

 

「じゃあ私からはそれだけだから」

 

 

 

『はい…私も…です』

 

 

「ヒマリ」

 

 

「楽しみにしてるからね?」

 

 

 

『はい…私も、です!』

 

 

 

 

ピッ

 

 

 

 

先生はちょっと笑うとくるりと振り返り、ショッピングモールの出口に向かって歩き始めた。

 

 

 

口角が上がりまくっている。

 

足取りは軽く、一歩は大きく。

 

 

 

先生は走り出したい気分を堪えるのに必死だった。




次回、最終話です。

長らく読んで頂きありがとうございました。

最後までお付き合い下さい。

ではまた。
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