「勝者、
遠月茶寮料理學園.......もとい遠月学園某所にて、乾いた空気に響き渡る声。
この日、この場所で行われてきたのは食戟と呼ばれる料理対決で、今回のテーマはその料理人にとっては得意分野だったのだが、蓋を開けてみれば結果は惨敗。
なので
「嘘だ.......こんなの嘘だ.......」
頭を抱えながらブツブツとそう呟いていた。
そして、彼の雇い主らしき男は食戟の勝者である作務衣を着た金髪の青年に向けて、やれ裏工作でもしたのだろうやら、やれ卑怯なマネでもしたんだろうやらと主張していた。
そんな男に対し、青年はジッと見つめた後....こう言った。
「裏工作?卑怯?それ、お前が言うのか?」
そう言う青年の顔はニヤニヤしていて、そんな彼の様子を見た男は顔を真っ赤にするが、青年はそんな彼を気にするそぶりも見せずにこう言った。
「大体よぉ、俺が動いてる時点でお前が卑怯なマネをしたのは確定。つまりはお前の自業自得ってわけ。お分かり?」
青年はそう言った後、今度は料理人の方を向いたかと思えば.......料理人の袖を掴むと
「テメェもテメェで慢心しすぎなんだよ。良いか?料理で大事なのは隠し味程度の心遣いと貪欲なまでの欲望。だが、お前にはその心遣いも貪欲さも感じなかった。テメェは自分の作ったぬるま湯に浸かっているんだけなんだよ」
バッサリとそう言い切った。
「あ、あぁ....あぁぁぁぁぁぁ!?」
その言葉を聞いた料理人は、床に四つ這いになる状態で号泣。
そして、男の雇い主は悔しそうな顔になりながら黒服の男達に連れて行かれるのだった。
そんな男達を尻目に、青年は自前の包丁を鞄に詰めるとその場から去っていき.......施設の中の廊下にて長い髪を結んでいたゴムを外すと、オールバックにしていた前髪をわしゃわしゃと戻した後、携帯を取り出してどこかへ電話し始めた。
「あ、もしもし?学園長センセーの依頼通り、学園を乗っ取ろうとした輩を排除しましたわ」
青年がそう言うと、電話の主はこう言った。
『......そうか、では後処理は任せておけ』
「了解で〜す」
電話の主こと、遠月学園の総帥である薙切仙右衛門に対して青年はそう返事をした後、電話を切った。
「さてと.......そろそろフツーの学生に戻りますかね〜」
そう呟いた後、帰路へと着く青年。
彼の正体、それは遠月学園に仇なす存在を料理で排除する暗殺者。
ある者は対戦相手である料理人の闘志を折り、彼らを絶望させた化け物だと語り、ある者はこの学園最強と言っても過言ではないほどの実力・センス・カリスマを有する人物だと語り、ある者は絶対に敵に回したくないと冷や汗をかきながら語るほどの天才....いや、天災であった。
彼の名は柿沼朔矢。
遠月学園において十傑第零席という肩書きを持つ一人の料理人であった。
数日前に思いついたので書いてみたネタ
続くかどうかは分からない