朔矢、後輩を可愛がる
遠月学園は日本屈指の名門料理学校として知られている。
そのため、学園を狙う者が後を絶たず.......その結果、誕生したのが遠月の守護者こと十傑第零席なのである。
この日も、朔矢は学園を奪おうと企む者が雇った料理人との食戟に挑んでおり
「ククク....青臭いガキに学園を守らせるなんて、世も末だなぁ」
彼と対戦している料理人は嘲るようにそう言った。
その言葉に対し、朔矢は
「へぇ、口が動いている割には手は動いていないじゃないか」
料理人に向けてそう言った後、物凄い勢いで卵白を泡だて始めた。
そんな朔矢の様子を見た料理人はギョッとするが、雇い主の叫び声で我に返ったのか............再び調理を進めた。
今回のテーマは【卵】。
だからなのか、男は自分が最も自信を持つ卵料理を提供しようと考えていたのだが
(クソッ.......何だあの男は!?ノリが軽い割には調理技術がプロ並み....いや、それ以上だ!!学生だからと言って甘く見てたが....甘く見過ぎていたのかもしれない)
朔矢の調理を見て、考えを改めたのか.......慌てた様子で調理を続けた。
それから数十分後....料理人はウフマヨ、朔矢はたまごふわふわを完成させ、審査員に審査してもらうために彼らに提供した。
まず最初に料理人のウフマヨを食べた審査員達は彼の技術力の高さと味を褒め、料理人は朔矢の方を見ながらニヤリとほくそ笑むが.......審査員達が朔矢の料理を、たまごふわふわを食べた瞬間、その表情が良い意味で変わった。
「これは....鰯節、なのか?」
「えぇ、そうです。今回のたまごふわふわには鮪節を使いました」
審査員の言葉に対し、朔矢がそう言うと
「どうりでコクがある味なわけだ!!」
「しかもこのたまごふわふわのメレンゲ部分....とても手作業で泡立てたモノとは思えないぐらいのきめ細やかさ!!これは職人芸と言っても過言ではない!!」
「こんなモノを食べてしまっては、さっきのウフマヨが霞んでしまいますな」
ハハハと笑いながら、そんな会話をする審査員達。
その顔には、朔矢の料理に魅了されてしまったと言わんばかりの顔になっていた。
そんな審査員達の様子を見た料理人は信じられないという顔になり、雇い主に至っては自らの敗北を悟ったのか、それともその事実を信じたくないのか、ただただ喚き散らしていた。
そして、審査員達が食戟の勝者を決めるのと同時に会場にこんな声が響いた。
「勝者、柿沼朔矢!!」
その声が響いた瞬間、料理人は膝から崩れ落ち....朔矢はニッと笑いながら料理人の雇い主の方を見ると、こう言った。
「んじゃ、約束通りうちの学校から手を引いてもらうぜ」
朔矢がそう言うと、料理人の雇い主は分かりやすく顔を真っ赤にしていた。
一方、料理人の方はというと
「負けた....?この私、が.......?」
呆然とした表情でこう呟いていた。
そんな料理人に対し、朔矢はこんなことを言った。
「お前のウフマヨ、美味かったぜ。ただ....お前の料理からは驕り高ぶりな味がした」
「!?」
「料理人ってのはよぉ.......他人の技を盗み、その技を習得するのに時間を掛けるもんなんじゃないのか?」
朔矢がそう言うと、料理人は目を見開くと
「ぁ.......」
何かを察したようにそう言葉を漏らした。
「若造の俺が言うのもなんだけどよ。今のアンタは大分ムカつく野郎だぜ?今度俺と戦いたいのなら.......その性分をたたき直してから来い」
「....そうだな」
朔矢の言葉を聞き、俯きながらそう呟く料理人。
その様子を見た朔矢はニコッと笑った後、今度は雇い主の方を向くと
「リベンジならいつでもウェルカムだぜ〜」
ダブルピースをしながらそう言った。
すると、当然ながら雇い主の男は更に顔を真っ赤するのだが.......男はそのまま黒服の男達に引っ張られていき、そのままその場から居なくなるのだった。
「う〜む....やっぱ食戟は燃えるねぇ」
まだ消えない闘志を胸に、そう呟きながらポニーテールにしていた髪を解く朔矢。
そして、元の前髪に戻すと
「遅くならないうちに極星寮に戻らないとな」
そう言った後、朔矢は道具をカバンにしまうと.......その場を後にし、極星寮に戻ると
「カッキー!!只今帰還!!」
いつものように表向きの顔を演じるのだった。
【第零席の役割】
主に学園を乗っ取ろうとする輩、あるいは危害を加えようとする存在を食戟にて排除するという役割を担っていて、そのためか表舞台に立つことは滅多にない。
故に十傑内でも都市伝説扱いされている。
しかし.......その実力は第一席を軽々と超えており、仮に十傑全員と戦ってもフルボッコできる技術力とセンスを有している。