【TS】弱小国の王女に転生してしまいましたわ!   作:まさきたま(サンキューカッス)

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100話「タケルの試練」

 

 最強の戦士タケルに、人生最大の試練とは何かと聞かれたら。

 

 彼はきっと「まさに今この瞬間です」と答えただろう。

 

 

 ─────勇者タケルは、恋をしていた。

 

 サリパの第二王女リシャリ・サリパールに、淡く切ない恋をしていた。

 

 他人に怯えられ、疎んじられて生きてきた少年時代。

 

 そんな彼を孤独から救い上げ、優しく包み込んだリシャリ姫。

 

 平民と王族、決して結ばれるはずのない身分の差。

 

 本来ならば叶うはずのない、心の奥底に秘めた恋。

 

 

 しかしタケルは、生まれ持った強靭な肉体で武功を立てた。

 

 祖国サリパを何度も救い、功績を認められた。

 

 そしてとうとう、彼はサリパの国王から恋焦がれた美姫、リシャリ・サリパールを娶る許可を得た。

 

 

 正室、サリパ第二王女リシャリ・サリパール。

 

 側室、ドラズネスト領主メウリーン・ドラズネスト。

 

 この縁談こそ、タケルに用意された至上のご褒美。

 

 ただの平民が武功を上げ、これほどの縁談を結ぶなど前例がない。

 

 この縁談が成立すれば、勇者タケルの英雄譚は末代まで語り継がれることになるだろう。

 

 

 そして今日。勇者タケルは、リシャリ姫から会食に招待された。

 

 その会食は『メウリーン・ドラズネスト』との顔合わせが目的だ。

 

「で、ではタケル。会食の場に案内しますわ」

 

 タケルもその会食には、真剣に臨んだ。

 

 メウリーンを側室として娶ることが、リシャリ姫との縁談の条件だ。

 

 だがタケルはメウリーンを側室として、ぞんざいに扱う気はなかった。

 

 メウリーンの『人を見る』ため、真剣に向き合うつもりだった。

 

 そんな真っすぐな思いを持つタケルは─────

 

「……リシャリ様? と、ところで、その服は」

「さあ! 案内しますわ!! ついてきてくださいまし!!」

 

 想い人リシャリ・サリパールの臍だしミニスカ太もも巫女服を前に、顔を真っ赤していた。

 

 

 

 

 

 

 外交において大事なのは、相手の文化を知り、尊重すること。

 

 聞いたところ、ドラズネストにおいて巫女服は『神に認めてもらった証』らしい。

 

 なので縁談の場で巫女服を着ると、結婚が神に祝福して貰えたという扱いになる。

 

『まぁその神とは、龍神グルデバッハなのだがナ』

『……なるほど?』

 

 露出が多い理由は、布が少ない方が龍神が食べやすいから。

 

 赤と白の派手な色合いは、生贄として認識してもらいやすいように。

 

 この巫女服を自ら着ることでメウリーン一族は、ドラズネストで『絶大な信頼』を得た。

 

 それが転じ、ドラズネスト民の間で巫女服は『統治者の証』と認識されていたという。

 

『リシャリ姫も、ドラズネストではこの服を着ると良い。それだけで、民が尊重してくれる』

『あ、ありがとうございますわ』

 

 この巫女服をくれたことは、メウリーンの厚意に他ならない。

 

 サリパ的にはちょっと恥ずかしめというか、アレな衣装であるとは認めよう。

 

 だがメウリーンさんは当たり前のように着ているし、羞恥感情はない。

 

 ドラズネストの文化的に、マジに正装っぽいのだ。

 

 ……雪精の毛皮で作った防寒具が『至上の贈り物』にも『最悪の敵対行為』にもなる。

 

 ならばメウリーンが主役となる会食の場で、俺が着ないわけにはいかない。

 

 

 

 

 

「り、り、リシャリ様、そのお姿は」

「何も……何も、問うなですわタケル」

 

 ただし、その巫女服はおへそが出ていた。

 

 袴の裾は尋常でないほど高く、太腿がいっぱいに露出していて。

 

 ちょっと油断すれば、下着があらわとなってしまいそうだ。

 

「この衣装に思う所があったとして、口に出してはいけませんわよ」

「いえ、その……、はい! 分かりました!」

「良い返事ですわ、タケル……」

 

 無だ。心を無にするのだ、(リシャリ)

 

 ちょっとタケルの視線が、きわどい部分に釘付けになっているくらいなんだ。

 

 ヤツも男なのだ。こんな服を着ていたら、目が行くのはやむも得まい。

 

「この服はドラズネストの正装だそうです」

「な、なるほど」

「メウリーン様も同じ服装ですわ。文化の違いも受け入れねばなりません」

 

 気をつけて動かないと、下着が見えてしまう。

 

 これでは街中を歩けないので、王宮の貴賓室での会食にした。

 

 ドラズネストの文化を尊重はするが、下着丸出しで歩くのははしたない。

 

「では、この先の部屋でメウリーン様が待っていますわ」

「……はい」

 

 集中しろ、俺ならできる。

 

 さりげなく太ももを抑え、静かに揺れるように歩行しろ。

 

 視界の端、廊下の遠くにルゥルゥ姉上の姿が目に映った。

 

 唇を掌で覆い、笑いを堪えていた。後で殴りこみに行こう。

 

「失礼いたします、メウリーン様。タケルを連れてきましたわ」

「うム。御足労頂き、感謝すル」

 

 だが今は、メウリーンさんとの会食だ。

 

 貴賓室のドアを開けると、メウリーンがお辞儀で出迎えてくれた。

 

「では、席に着きましょうか。メウリーン様、タケル、どうぞお座りくださいまし」

「失礼する」

 

 席順は、タケルとメウリーンがテーブル越しに向かい合い、俺が脇に座る形だ。

 

 今日の俺の役割は『仲人』。司会をして、後はお若いお二人に任せる役目。

 

 メウリーンもタケルも、俺より年上だけど。

 

「メウリーン・ドラズネストだ。貴方に会いたかっタ、勇者タケル」

「きょ、恐縮です。タケルです……」

 

 二人を引き合わせると、ぎこちなく頭を下げて挨拶を交わした。

 

 社交界に慣れていないタケルは、左右に視線を揺らせている。

 

 時折チラチラ、と助けを求めるように俺の顔を見つめた。

 

「簡単ではありますが、料理をご用意しておきましたわ」

「うム、ありがとウリシャリ姫」

「では、会食を始めさせていただきますの」

 

 おう、任せとけタケル。こちとら、社交界の経験だけは深いんだ。

 

 見合いをセッティングしたことだって、何度もある。

 

「まずは、私から簡単にご両名を紹介させていただきます。まずはタケルから」

「は、はい!」

「ご存じとは思いますが、彼こそサリパで一番の戦士ですわ。入団試験の折にはあのパウリックを圧倒し、そこから数々の武功を立て続けた英雄ですわ。龍神グルデバッハ、ヤイバンのレヴィグダード、デケン七英雄アガロンなど倒した敵は数知れず。最強という言葉は、彼にこそふさわしい」

 

 まずは話題を作りやすいように、両名の略歴を紹介する。

 

 こうすることで『タケルの~ってどんな感じだったんですか』と、話が広げやすくなる。

 

「ただ強いだけでなく、優しい男性でもありますわ。敵であっても考えなしに殺そうとしません。それは勇気がないからではなく、彼は強者であるがゆえに余裕があるということ。強さと優しさを併せ持つ、まっすぐな性根の男性ですわ」

「か、過分な紹介を、ありがとうございます」

 

 タケルの紹介は、こんなもんでいいだろうか。あんまり長々と話すのも違うしな。

 

 さて、次はメウリーンさんの紹介だ。

 

「続きましてメウリーン様はドラズネストの現領主にして、ドラズネスト家の七代目のご当主です。ドラズネスト家は龍神グルデバッハが暴れないよう、自ら生贄に立てながら領地を守り続けた誇り高い一族です。民たちは、彼女の人徳に心服しているようですわ」

「うム」

「メウリーン様の特筆すべきは、聡明さでしょう。たった一人で領地を切り盛りし、ヤイバンから独立できる情勢を見逃さず、時代を見渡す戦略眼をお持ちです。また知将ベルカに唯一、『戦略で勝利した』指揮官でもあります。その叡智はきっと、これからサリパを支えてくれるでしょう」

 

 改めて考えてみたら、メウリーンさんって一回ベルカに勝ってるんだよな。

 

 まぁ龍神グルデバッハっていうド級の切り札があっての話だが……。

 

 事実だけ見るとブユルデスト防衛戦の時、タケルが間に合わなければ負けていたワケだ。

 

 そのことを聞くと、タケルは感心した表情になった。

 

「不肖ながら私の方から、簡単に紹介をさせていただきました。では、しばしご歓談いただければと思いますわ」

「ありがとウ」

「ありがとうございます!」

 

 さて、これで話題振りは終わったぞ。

 

 あとは適当に、お互いに質問タイムだ。

 

 俺はニコニコと、笑顔を振りまいて相槌を打てばいい。

 

「……」

「……」

 

 奥手なタケルから質問を投げる余裕はないだろう。

 

 必然メウリーンさんが主導権を握って、会話してもらう展開になると見た。

 

 俺は余計な口を挟まず、ニコニコと笑っておけば……。

 

「……」

「……」

 

 そのまま、一分ほど待ってみたが。

 

 タケルもメウリーンさんも、視線を左右に動かして……。

 

 困ったように俺の方を見つめてきた。

 

「えーっと、あの。何か、お互いにご質問などしてはいかがでしょうか?」

「え、あー、そうだナ」

「は、はい、えーっと」

 

 あの、メウリーンさん? 待ってもタケルからアクションは来ないよ?

 

 その男、超が付くほどの恋愛下手だよ? だからメウリーンさんの方から……。

 

「きょ、今日は、いい天気、なのカ?」

「いい天気、じゃ、ないでしょうか?」

 

 メウリーンさんは顔を真っ赤に手元を凝視して、ボソボソと呟くだけだった。

 

 ……。

 

「え、えーっと。そうですわね、メウリーン様」

「あ、あア」

 

 あかん、メウリーンさんも恋愛下手だこれ。

 

 何だよ、昨日は自信満々に『策を用意している』とか言ってたじゃん。

 

 知将っぽい雰囲気を出してたじゃん。

 

「私は普段、ドラズネストの民はどんな生活をしているか気になっていますわ」

「アー……! そうだナ、我らは部族単位で集落を作っていテ」

 

 こうなれば仕方ない、(リシャリ)アシスト全開だ。

 

 俺が出張って、話題を振りまくるしかない。

 

「朝、目が覚めると民たちは龍神(グルデバッハ)の祠を礼拝スる。それから、仕事を始めるのダ」

「……龍神が死んでしまっても、その風習は続いているんです?」

「もちろん。この風習は恐れから生まれた『どうか食べないでくレ』という命乞いダ」

「ははあ」

「龍神が死んだ今こそ、民は『復活してモ恨んで食べないでクれ』と熱心に礼拝していル」

「あぁ、なるほど。しっくりきましたわ」

 

 つまり龍神グルデバッハは『祟り神』的な扱いだったんだな。

 

 討伐された今も恐れられ、祈られているんだ。

 

「まぁ復活してもタケルは負けませんわ。ね、タケル?」

「そうですね。パウリック師匠に鍛えてもらった今なら、一人でも勝てるかも」

「え、タケルまダ強くなってるの?」

 

 うん。ウチの騎士団長パウリックは、タケルの弱点を徹底矯正している最中だ。

 

 パウリック曰く『一年貰えれば仕上げて見せる』とのこと。

 

 つまり来年には、究極完全体になったタケルを見ることができる。

 

 何それ怖い。

 

「礼拝って、どんな感じにやるんですか?」

「作法は簡単だが……。タケルは、知る必要がなイだろう」

 

 勇気を出したのか、タケルからメウリーンさんに質問が飛んだ。

 

 しかしメウリーンさんは、首を横に振った。

 

「どうしてですか」

「タケルは祭られル側だ。この縁談の如何にかかわらず、祠を建てる予定であル」

「祭られる側!?」

 

 まぁそうなるよな。タケルが信仰され始めてるって話だったしな。

 

 (タケル)が何を礼拝するんだって話だ。

 

「民たちの礼拝の対象も、今後はタケルだけになるだろう」

現人神(あらひとがみ)みたいなもんですか」

「ひぇえええ……」

 

 民たちは元々、龍神の脅威を恐れ敬っていたのだ。

 

 それより強いタケルが、信仰されないはずがない。

 

「だからこそ私と縁を結ビ、タケルをドラズネスト領主に迎えたイ」

「なるほど」

「権力を可視化する方が、統治しやすくなル」

 

 メウリーンはそんなタケルへの信仰を、政治にも利用する気らしい。

 

 宗教と政治は分けるのが近代の定石だが……。

 

 各部族で集落をつくっている文化レベルなら、それが正解なのかもしれない。

 

「タケル殿はふんぞり返っていて構わなイ。私はタケルに仕える巫女としテ、貴方に礼拝すルことになるだろう」

「その場合、私も礼拝したほうが良いでしょうか?」

「……リシャリ姫は、そうだナ。一緒に礼拝して貰う方ガ、民に分かりやすイだろう」

 

 分かってきたぞ。タケルは神で、俺とメウリーンは神の妃という立場。

 

 今までグルデバッハでやった統治構造を、受け継ぐ形で統治するんだ。

 

「リ、リシャリ様に礼拝してもらうなどと、そんな不敬な」

「……ちょっと面白そうですわ」

「何で乗り気なんですか」

 

 いやだって、絶対面白いだろその構図。

 

 民の前でタケルが、美女二人を侍らしてふんぞり返ってるわけだろ?

 

 タケルの顔、カチカチになってそう。

 

「ちょっとやってみましょう。メウリーンさん、どんな感じでタケルを礼拝するんですの?」

「ふむ。ではタケル殿は、椅子に座っていてくレ」

「え、本当にやるんですか?」

 

 俺は興味本位で、メウリーンに頼んで礼拝を実践することにした。

 

 向こうの文化を知って、かつ、タケルに権威を自覚してもらう。

 

「礼拝の手順はこうダ。地面に膝をつけ、頭を下げ、祝詞を捧げル」

「ほう……こんな感じですか?」

「あア、その体勢で間違っていなイ」

「あああ、リシャリ様ァ」

 

 礼拝の姿勢は、割とスタンダードな平伏だった。

 

 俺はメウリーンに倣って、厳かにタケルに平伏した。

 

「リシャリ様が、そんなことをする必要は……」

「ふふ。タケルの功績には、それだけの重みがあるんですわよ」

 

 あの奥手なタケルが、露出の多い巫女服の女性を二人も侍らせている図。

 

 タケルが顔を青くしているのを含め、とても面白い。

 

 ちょっと恥ずかしかったが、このエロ巫女服を着た甲斐があった。

 

「このまま、祝詞が終わるまデ頭を下げル」

「はいですわ」

 

 そこまでは良かった。

 

 タケルを持ち上げ、いい気分になってもらえたらなくらいの気持ちだった。

 

「豊穣の大地、天かラ遣わされシ恵みの雨」

 

 メウリーンはタケルに頭を下げたまま、熱心に祝詞を唱え始めた。

 

 俺は(ぼう)っとしながら、平伏するメウリーンを横目で眺め……。

 

 ─────そこで、致命的な事実に気が付いた。

 

「大いなル龍神を打ち倒せシ勇者タケル……」

 

 せり上がった巫女服から覗ける、メウリーンの太ももの奥。

 

 そこには、肌色しか存在しない。

 

 

 ……メウリーンは、この露出の多い巫女服で、下着を着けていないっ!!!

 

 

 気付いた瞬間、ガラにもなく俺は動揺していた。

 

 この巫女服って下着つけたらダメなやつだったのか、と。

 

 これがどれくらいの不敬なのか、分からないのだ。

 

 下着をつけて巫女服を着ることが、戦争の火種になる可能性はある。

 

 つい先日文化の違いで殺されかけたばかりなのに、同じミスを繰り返してしまった。

 

 こうなっては仕方ない。下着をつけていることをバレないよう、頑張るしかない。

 

 巫女服の裾を握り締め、気を引き締めると……。

 

 

 突如。近くから、強烈な視線を感じた。

 

 今まで向けられたことのない、野獣の眼光だ。

 

 思わずビクリと身をよじりたくなる、そんな強い視線を向けている人物は……。

 

「……」

 

 タケルだった。彼は俺に、かつてないほど強い視線を向けていた。

 

 どうしていきなり、そんな目で俺を見るんだ?

 

 ヤツの表情は真剣そのもの。鬼気迫る顔で、俺の太腿を凝視している。

 

 観察しろ。メウリーンが祝詞をあげている間に、タケルの心情を紐解け。

 

 彼はどうして、俺を睨んでいる? 何がタケルをそうさせた?

 

「……っ」

 

 俺が視線を向けると、とタケルの視線が揺れた。

 

 彼は目を逸らす際に、一瞬、メウリーンの太ももに目をやった。

 

 タケルは真っ赤で、強い困惑が浮かんでいる。

 

 しかし、磁石に吸い寄せられるように、俺のふとももに視線が向いてしまう。

 

 ─────そこで、俺はタケルの視線の意味に気が付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同刻。タケルは、人生で最大の試練を迎えていた。

 

 その試練とは想い人、リシャリ姫が露出の多い巫女服を着ていたことだ。

 

 いつも高貴なドレスに身を包んだ彼女が、お臍や太ももを露わにタケルを案内する。

 

 タケルとて、リシャリが無理をして巫女服を着ていることに気づいた。

 

 ならばあまりジロジロ見ないほうが良い。そもそも、今日の本題はメウリーンとのお見合い。

 

 リシャリ姫の露出が多い巫女服に、あまり目を向けないようにしよう。

 

 そう、心に決めていた。

 

 

 しかしそんなタケルの理性をぶっ壊す、衝撃の事態が発生する。

 

 会食するメウリーンの服装も同じデザインの、露出の多い巫女服だった。

 

 向こうでは正装らしいし、仕方ない。タケルは意識しないよう、会話を続けた。

 

 そして話の流れで、二人がタケルを礼拝する流れになった。

 

 気恥ずかしいが、なぜかリシャリ姫もノリノリで彼を拝もうとしている。

 

 ならば我慢してリシャリ姫のやりたいように、と受け入れたのだが……。

 

 

 チラリと、メウリーンの巫女服が捲り上がり、太ももの奥まで露わとなった時。

 

 タケルは、衝撃の事実に気が付いた。

 

 

 ……メウリーンは、この露出の多い巫女服で、下着を着けていないっ!!!

 

 

 頭をぶんなぐられるような衝撃。この女性は痴女なのか?

 

 そこでタケルの思考は、さらに加速する。いや、それは違うのだと。

 

 ドラズネストでは、これが正装なのだ。この巫女服は下着を穿かないのが正常。

 

 失礼なことを考えるな。メウリーンさんは痴女でも何でもない。

 

 

 ─────じゃあ。同じく巫女服を着ている、リシャリ様は?

 

 

 その考えに至った瞬間、タケルの視線はリシャリの太ももに吸い寄せられた。

 

 当たり前だ。想い人が、履いていない可能性があるのだ。

 

 その『仮定』から生まれる視線の引力は、抗いがたい。

 

 見てはいけない。凝視するのは良くない。そんなことは分かっている。

 

 しかしタケルとて男性。気づけば、リシャリ姫の太ももを凝視していた。

 

 

「……」

 

 

 そして、まもなくタケルは気づく。

 

 彼の主で、人の心を見抜く天才リシャリ・サリパールが……。

 

 全て理解した顔で、冷たい目をタケルに向けていることに。

 

 

 お見合いの結果。

 

 リシャリからタケルへの好感度が微妙に下がった。

 




???「下着をつけずに会食したラ、勇者を落とせるナ(必勝の策)」
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