【TS】弱小国の王女に転生してしまいましたわ!   作:まさきたま(サンキューカッス)

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2章『戦乱、勃発』
29話「リシャリ。俺はね、君のことが嫌いじゃないんだ」


 サリパ王国がドラズネストを併合して、およそ一か月が経った。

 

 ドラズネストの人たちは領主メウリーンの降伏を聞き、素直にサリパへの恭順を受け入れてくれた。

 

 これで、俺たちサリパ王国の国土が倍になったことになる。

 

 だがドラズネストを併合したことは、良いことばかりではなかった。

 

 ドラズネストは森林や山岳の多い土地で、手紙を届けることすら一苦労な未開の地。

 

 そんな場所への法規や徴税など、制定すべきことは山ほどあった。

 

 必然、父や兄たちは戦後処理に追われ、忙しなく王宮内を走り回っていた。

 

「ドラズネスト民が恭順してくれたのはいいですけど」

 

 父なんかはむしろ、併合したことで頭を悩ませていた。

 

 というのも、おそらく冬頃に深刻な食料問題が発生するらしい。

 

 ヤイバン軍は撤退の際、ドラズネストの食料をかっぱらったようである。

 

 ……食料物資を持ちだし撤退するのは戦の常套手段、責めることはできない。

 

 だがそのせいで冬の蓄えがなくなり、ドラズネストの民は飢え死にするほかない。

 

 こういう場合、サリパ王国が食料と住居を保証すべきなのであるが。

 

「サリパにも食料備蓄がない……」

 

 サリパ王国は決して裕福な国ではない。いきなり自国民が倍になったら、食料不足に陥るのは必至だった。

 

 デケン帝国に援助してもらうのが最良だろうが、それは『宗主国への借金』に近い。

 

 なんとか、自前の食料でドラズネストを食わせられないか。

 

 この問題に、国王(ちちうえ)たちは酷く頭を悩ませているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 と、そんな危機的状況ではあるので。

 

 俺にもできることはないか、色々と考えた。

 

「あの、守衛さん。ジケイ兄上は部屋にいらっしゃいますか」

「ええ、今は仕事をなさっています」

 

 ……ここでサリパ王国の第二王子、ジケイの話をしよう。

 

 彼は二つ年上の兄で、怠惰で女遊びが激しいが、軍略と政治によく秀でている男だ。

 

 幼少期より彼は神童と呼ばれ、姉ルゥルゥと共に国家の宝だともてはやされたらしい。

 

 その聡明さはジケイが十七歳という若さで、内政を取り仕切っていることからもうかがえる。

 

「少し、時間を頂きたいと思うのですが」

「分かりました。ジケイ様にお伝えいたします」

 

 しかし彼は、次男に生まれたというだけで、兄の『引き立て役』であることを宿命づけられた。

 

 まず長兄のサリオは『サリパの王となるように』サリオと名付けられている。

 

 しかし次男ジケイは『王を支え、敬うように』ジケイと名付けた。

 

 食事会では常に国王の次席にサリオを座らせて、ジケイはわざわざ王族の末席に置いた。

 

 サリオの誕生日は国を挙げて祝ったが、ジケイの誕生日はささやかな身内のパーティに留めた。

 

 サリオとジケイの扱いには、明確な差があった。

 

 ……こうも露骨にサリオを優遇した理由は、国王(ちちうえ)が跡目争いを嫌ったからだ。

 

 生まれる前からサリオを王にすると宣言することで、次世代を盤石にしたかった。

 

 二人の息子を、政争の種にされたくなかった。

 

 そして国王は第一王子サリオを優遇する代わり、ジケイよりずっと厳しく教育した。

 

 サリオは殆ど休みもなく、同世代の友人を作ることすらできず、王の知識や職務、剣技や軍略を学び続けた。

 

 一方でジケイはヘラヘラと、貴族の坊ちゃんを相手に遊び惚ける生活だった。

 

「入室しても良いそうです。リシャリ様、どうぞこちらに」

「ありがとうございますわ!」

 

 王となることを宿命づけられたサリオ兄上は、様々な重責と不満を感じていただろう。

 

 無理な教育は反骨心を生む。サリオが普通の少年だったら、グレていたかもしれない。

 

 しかしサリオは王子という立場の重さを自覚し、自らを律する真面目な男だった。

 

 サリオ兄上は厳しい教育に耐え、折れず立派に育った。

 

 そして二十年の月日が経った頃には、サリオは様々なものを身に付けていた。

 

 父である国王に負けず劣らずの政治手腕。若く新進気鋭な剣術。臣下を重んじる器の大きさ。国を守るためなら何でもする覚悟。

 

 彼は質実剛健、公明正大で厳しさと優しさを併せ持つ、理想の王様へと育った。

 

 サリオは見事、国王の期待に応えたのだ。

 

「……ふぅ」

「おや、リシャリ様。緊張されているのですか?」

「ええ、まぁ」

 

 ただ一つ、国王にとって想定外だったのは。

 

 それは第二王子ジケイが、百年に一人の天才であったということだ。

 

 

 ジケイが十歳の頃、国王がサリオを連れてヤイバンとの戦いに赴いたことがあった。

 

 しかし、二人が遠征している最中に大きな事件が起こった。

 

 ヤイバン側の工作なのか、国内の有力貴族がクーデターを起こし、買収された貴族と共に独立を宣言したのだ。

 

『そ、そんなことがあったなら、何故報告しなかった!』

『もう、解決してしまいましたので』

 

 国王がそんな国家を揺るがす事態に陥っていたのを知ったのは、ヤイバンへの遠征が終わった後だった。

 

『ジケイ様のご命令でクーデターは鎮圧され、買収の摘発も終わっております』

『……は?』

 

 ────ジケイがたった一人で、数日のうちに全てを解決して二人を出迎えたから。

 

 彼は軍を指揮して即座に反乱を鎮圧し、買収された貴族をその日のうちに投獄して、国王の帰りを待っていた。

 

 そう。ジケイは殆ど努力せず、政治も剣術も軍略も何もかも、サリオを圧倒する能力を身に付けていたのである。

 

 サリオは真面目だったが、平凡だった。たゆまぬ努力の果てに、王としての資質を身に付けただけだ。

 

 一方でジケイは、努力せずとも王になれる器を持っていた。

 

 冷静な性格、深い智謀、巧みな話術。運動神経も良く、剣術にも秀で、サリオの何もかもを上回っていた。

 

 内政能力に関しては、とっくに国王をも凌駕していただろう。

 

『こんだけ働いたんだから、しばらく公務はおやすみでいいよねー』

『ジケイ、お前……』

『俺、女の子と遊びに行ってくるから。じゃあね!』

 

 だから、彼は怠惰だった。労せず目的を達成できるため、努力をしなかった。

 

 サリオがウンウンと唸って数日かかりで案を作り上げても、ジケイは五秒で更に良い案を出す。

 

 ……その生まれながらの才能の差に、サリオ兄上はどれだけ苦しんだだろうか。

 

「ジケイ兄上は……ちょっと怖いですから」

「リシャリ様にも、怖いものはあるのですね」

 

 そして、俺が兄姉の中でもっとも疎遠なのはこのジケイ兄上だった。

 

 ……別に俺から距離を取っているつもりはない。ただ、相性が悪いのだ。

 

 第一王子のサリオ兄上は俺を溺愛してくれている。それこそ、目に入れても痛くない雰囲気で。

 

 第一王女ルゥルゥとの関係も良好。国外にも仲良し姉妹として有名だ。

 

 しかしジケイ兄上とだけは……、少しばかり心に距離を感じていた。

 

 

 

 だが今日、俺はそんなちょっと苦手なジケイ兄上の部屋に訪れていた。

 

 ドラズネスト併合に伴う食料問題について、俺なりに解決策を考えてきたのだ。

 

 ……だが内政の提案に関しては、どうしてもジケイに相談しなければならない。

 

「ごきげんよう、ジケイ兄上。入室を許していただき、ありがとうございます」

「……いらっしゃい。珍しいね、リシャリが俺に用事なんてさ」

 

 ジケイの部屋には、色とりどりの花が並べられていた。

 

 それらの観葉植物は、一つ一つジケイ本人に手入れされているのだそうだ。

 

 色鮮やかな華々しい部屋の中心に、その王子は座っていた。

 

 一見すると少女のように可憐で、人形のように透き通った肌の、小柄な王子。

 

「兄上がお忙しいのは承知しています。なるべく、お時間は取りませんわ」

「そう急かないでいいよリシャリ。俺はね、君のことが嫌いじゃないんだ」

 

 ジケイ王子は金色のサラっとした長髪を靡かせ、不敵な笑みを浮かべて俺を出迎えた。

 

 元男の俺ですら、その美しさに声が詰まった。紅い瞳に、ゾクリと背筋が寒くなった。

 

 眉目秀麗(びもくしゅうれい)、とは彼の為にある言葉かもしれない。

 

「俺の部屋を訪ねてくる奴はつまらないやつばっかりなんだ。君と違ってね」

「わ、私は別に面白いとは」

「例えば兵士長のヒューゲルンは、最近羽振りがよくなった。その代わり、彼の担当地区の検挙率が下がった」

 

 俺は、ルゥルゥ姉上の性癖を歪めたのはジケイ兄上だと思っている。

 

 線が細く体格は華奢、しかし剣の腕は立ち膂力は十分。

 

 優しく可愛らしい、一見すると少女にも見える見た目。

 

 それでいて獣のような威圧感も秘めた、獰猛な本性。

 

 姉上が理想とする男性は、ジケイのような人物なのだろう。

 

「贈賄を受けているのを黙認しろって、俺に金子を持ってやってきたんだ。笑えるよね」

「笑え、ますね」

「この部屋に入ってきたヤツの顔を見た時点で、どんな用なのか分かってしまうんだ。まったく、つまらないだろ?」

 

 しかし。はっきり言おう。俺はこの、ジケイ兄上の雰囲気が苦手だった。

 

 俺が純然たる女であれば、また違う印象を受けたのかもしれない。

 

 しかし俺は、ゾクリとする美形などに興味がない。

 

 むしろコイツを見ていると、凡人と天才の差を肌で感じさせられ凹むのだ。

 

 (ヘビ)に睨まれた(カエル)、とはこういう気分なのだろうか。

 

「でも君は違う。リシャリ、君の用事は毎回想像だにできない」

 

 ジケイ兄上の艶やかな長髪は、キラキラと黄金に輝いている。

 

 彼がサラリと手で髪を梳くと、ドキリとする妖艶さを感じる。

 

 ジケイ兄上は、自分の女のような容姿を『気に入っている(・・・・・・・)』と言っていた。

 

 何故なら、その容姿を使えば馬鹿を油断させ、騙すことが出来るから。

 

「きっと()()を訪ねてくるに足る、面白い話があるのだろう?」

 

 徹底した合理主義。利用できる者は惜しまず使う現実主義者(リアリスト)。それがサリパ王国の第二王子ジケイ兄上だ。

 

 彼が怠惰で適当なのは、『本気を出さなくてもミスなんてしないから』。

 

 俺が彼を怖がっている理由、お分かり頂けただろうか。

 

「さて、聞こうかリシャリ。この俺に何の用だい」

 

 だが、気おされてはいけない。ビビっていたら、何も始まらない。

 

 大丈夫だ。今回、俺はこのジケイ兄上を懐柔すべく秘策を用意していた。

 

「ええ、実は────」

 

 数時間かけて用意した、俺の渾身の秘策。

 

 きっと、兄上も気に入るはず。

 

 

 

「ケツキリムシの佃煮という料理を作ったので持ってきましたわ。一緒に食べましょう兄上」

「マジで意味わからんね君」

 

 

 

 

 俺が手料理(ひさく)を見せると、ジケイは乾いた笑みを浮かべた。

 

 ん、外したかな。妹の手料理なのに。

 

「悪いが、腹は空いていない。遠慮しておくよ」

「おや? ジケイ兄上が不要だとおっしゃるなら……サリオ兄上のもとにもっていくだけですわ」

「何、ちょっと交渉してる雰囲気出してんだよ。いらねーから持ってけよ」

 

 どうやらジケイは、本当にお腹が空いていないようだ。

 

 俺は少しションボリしつつ、ケツキリムシの佃煮をお盆に戻した。

 

「で、何。まさか本当にそのためだけに来たんじゃないよな」

「無論ですわ。今のはいわゆる、話の枕」

「その言葉が聞けて、俺は安堵しているよ」

 

 俺はケツキリムシの佃煮を兄上のテーブルの端に置き、話を続けた。

 

 ジケイ兄上はちょっと嫌そうな顔をした。

 

「ドラズネスト民の一部を、ジュウギさんのいる炭鉱に移住させてほしいのです」

「ふぅん? 理由は?」

「ジュウギさんから人手を増やしてほしいと、要望が来ていたのですわ」

 

 そう、俺が相談したかった内容とはドラズネスト民をジュウギの鉱山で働かせる計画だった。

 

 研究チームを得た後、ジュウギはどうやら『蒸気機関車』を実用レベルで試作したらしい。

 

 だが研究が進めば進むほど、実験に使う石炭の量が増えているのだとか。

 

 なので移民集落を建てて、炭鉱の開発を手伝ってほしいという話だった。

 

「ドラズネスト民の食料をどうするか、という問題があるのでしょう? 彼らを養う心つもりなら、サリパ王国内に呼んだ方が輸送の手間が省けますわ」

「ま、それは一理あるね」

「それにドラズネスト民は、龍の脅威に怯え僻地に隠れ住んでいました。龍が討伐されたのを受けて、移住を考えている村落もあるはずですわ」

「ふむ」

 

 俺はルゥルゥ姉上のプレゼンを真似て、炭鉱への移住政策のメリットを丁寧に列挙した。

 

 この移住計画は、きっと国の役に立つ。俺には、その自信があった。

 

「彼の炭鉱は、今後ますます人手が必要になるはずですの」

 

 ジュウギの研究は、いくら人材を注ぎ込んでも惜しくない有用なものだ。

 

 さらに彼の研究が進めば炭鉱付近に工業地帯が出来るかもしれん。

 

 どうだ、俺の渾身のプレゼンは!

 

「……三十、いや。うーん、二十点でいいトコだな」

「へ?」

「誉めていい部分はあった。でも、色々と見えてないものがありすぎ。却下だね」

 

 俺の提案を聞いたジケイ兄上は、フーンと微妙な笑みを浮かべ俺の案を却下した。

 

 ……駄目なのか。まさか国王のように、ジュウギの研究の価値に気付いていないパターン?

 

 いやジケイ兄上なら、ジュウギの研究の有用さくらい気付いてそうだけど。

 

「理由を聞いても、良いですか」

「まず一つ目、単純にドラズネスト民は移住を受け入れてくれないだろう。移住ってすごく勇気と手間がいることなんだよ? 財産を持ち出し、盗賊に怯えながら運ばないといけない。わざわざ国外に移住する意味って何?」

「そ、それは」

「食料がある土地へ移住ってなら話は分かるけどね。どこも食料不足なのに、リスクを抱えて移住するヤツがどこにいるんだ。ましてや、さんざん虐げていた龍が居なくなって一安心ってタイミングでさ」

 

 ああ、そうか。向こうの人も、食料がない未知の土地に移住なんかしてくれないか。

 

 それでも食事を用意して、少数の移民だけでも何とか……。

 

「そして二つ目、『人の輸送』ってすごく無駄な行為なんだ。輸送されている間、その人は生産活動を行わないからね。ただでさえ食料が足りない状況で、さらに生産性を落としてどうするんだ」

「うっ」

「リシャリの言う、炭鉱への移住計画自体は悪くないよ? ただそれは今じゃない、もっと余裕が出てからだね」

 

 ……グゥの音も出ない。そうか、生産性の問題か。

 

 そもそもの輸送コストも馬鹿にできないしなぁ。

 

「そして最後に、だけど」

「まだあるのですか……」

「我らの宗主国たるデケン帝国に、まだ話を一切通してない状況だ。まずは彼らに許可を得ないとね」

 

 そう言ってジケイ兄上は、ニヤニヤと笑った。

 

「俺たちはデケン皇帝に、ここら一帯を治めていいよって言われただけ。ドラズネスト領を併合する許可なんて貰ってないんだ」

「だ、駄目なんですか」

「多分許可はくれると思うけど、話は通さないとだめだろうね。その話し合いが済む前に、領民を自国へ移住させたらどうなるでしょうか」

「……大問題になります」

「よろしい」

 

 そっかー……。そうだよな、サリパ王国は弱小国家だもんな。

 

 デケン皇帝に許可を取らないと領地一つ併合できない立場なのか。

 

「うんうん、理解が早くて助かるよ。さて俺の方も、ちょうどリシャリにその話をしておきたかった」

「私に……ですか」

「ああ。今回のドラズネスト併合について、もうデケン帝国に報告は済ませたんだ」

 

 ジケイ兄上はそう言って、紙を手にヒラヒラとした。

 

 ……どうやら、デケン帝国からの返書? のようだ。

 

「デケン帝国からしても、これは好機のはずなんだよ。敵対勢力だったヤイバンが、弱体化している状況だから」

「そ、そうですわね」

「だから共同作戦を提案した。我々と歩調を合わせヤイバンを滅ぼしませんか、とね」

 

 おお、なるほど。確かに現状、デケン帝国にとってかなり美味しいはず。

 

 ここでデケン帝国がヤイバンを滅ぼしてくれれば……。

 

「デケン帝国が本格的に動いてくれたら、ヤイバンに間違いなく勝てる。そうすれば、サリパは安泰だ」

「おおー」

「だから俺たちが今すべきは、デケン帝国との外交交渉なんだけど」

 

 デケンに逆らいさえしなければ、俺たちは一生安泰。

 

 共同作戦が実現すれば、『最後の戦い』になるかもしれないのか。

 

「デケン帝国側も、この件に興味津々のようでね。デケン帝国のジャルファ王子がじきじきに、視察に来てくれるらしい」

「向こうの王子様が、ですか」

「その意味は、分かるよな?」

 

 お、おお。超大国の王子様が、わざわざウチみたいな田舎に?

 

 それって……

 

「デケン帝国も、ヤイバン侵攻をする気があるということだ」

 

 そうだよな。

 

 いつもの『時期を見てお日柄の良い日に侵攻しますね』という定型お断り文句ではなく、ガチで動く気だよな。

 

 だとしたら、サリパ王国にとって絶好の好機。

 

「だから絶対に、王子の機嫌を損ねたくない」

「はい」

「そこで、お前に頼みたいことがあるんだが」

 

 そんな千載一遇の好機だというのに、何か嫌な予感がする。

 

 見上げると、ジケイ兄上は楽しそうな顔で、俺を舐めるように見て。

 

「王子の出迎え役を、リシャリに任せる。国境まで出向き、ジャルファ王子に気に入られて来い」

 

 ……そう命令を下したのだった。

 

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