【TS】弱小国の王女に転生してしまいましたわ!   作:まさきたま(サンキューカッス)

46 / 81
46話「……たーまやー」

 

 デケン帝国の指揮官、ジャルファ王子は焦っていた。

 

「ジャルファ王子。悪い報せが届きました」

「……今よりも、悪くなるのですか」

 

 サリパとヤイバンへの二方面作戦は、皇帝になるための『試験』だった。

 

 デケン皇帝を継ぐに値するかを、見定めるための戦い。

 

 だというのに、ジャルファ王子の戦果は散々だった。

 

「圧倒的な戦力差を用意したのに、いまだに城塞都市ひとつ落とせない」

「王子……」

「ヤイバンへの侵攻計画は、既に三日も遅れています。……ここからさらに悪くなるというのですか」

 

 デケンは未だ、城塞都市ブユルデストを落とすことが出来ていない。

 

 すでに数千の兵士を失い、今なお包囲のために兵力を割かされている。

 

 そんな訳で不機嫌なジャルファ王子だったが、

 

「────え。デケン海軍が港町の占領に、失敗した?」

「サリパ軍に手も足も出ず、上陸すらできないまま撤退したそうです」

 

 デケン海軍が港町アナトで壊走したという報告を受け、思わず立ち上がった。

 

 計算が狂ったどころの騒ぎではない。

 

 戦況が一変する、衝撃的な報告だった。

 

「海軍がないサリパに、負けるはずがありますか!」

「それが、その。サリパは、四隻ほど軍船を所有していたそうで」

「四隻くらい蹴散らしてくださいよ! 二百隻は動員したでしょう!?」

 

 流石のジャルファ王子も、血相を変えて怒鳴ってしまった。

 

 四隻と二百隻の戦いで、どうしてデケン軍が蹴散らされるのか。

 

「デケン海軍は被害が甚大で、立て直すのに時間がかかると」

「意図が読めませんね。怨恨か、はたまた買収されたか……?」

 

 ジャルファ王子は、デケン海軍が正面から負けたとは考えられなかった。

 

 まず他の王子(きょうだい)による、妨害工作を疑った。

 

「これは悪質なボイコットです。まさか作戦に迷惑をかけてくるとは」

「王子……」

「いえ、これも私の求心力不足ですね。海軍の協力を得られないとなると、兵站をどうすべきか」

 

 物資を輸送するのに、やはり海路は効率がいい。

 

 ジャルファ王子は、港町アナトを兵站の中継拠点とするつもりだった。

 

 しかし海軍が撤退すれば、輸送計画が崩れてしまう。

 

「当面は陸路から輸送を行うしかないかと」

「……さらに時間がかかってしまうじゃないですか」

 

 ジャルファ王子は歯噛みをした。

 

 大軍を動かすということは、お金もかかるということ。

 

 予定より遅れれば、それだけ皇帝の心象も悪くなる。

 

「ジャルファ王子、いっそ予定通り侵攻してはどうでしょう」

「兵站を構築せず進めというのですか」

「アガロン将軍は優秀です。きっと、すぐに港町を占領してくれますよ」

「……む」

 

 だが兵站が確立されていなくとも、ジャルファ王子は侵攻を続けることは出来た。

 

 出陣の際、余裕をもって食料物資を運んできているからだ。

 

 仮に海路が確保されずとも、一か月は戦えるだろう。

 

 その一か月の間にアガロンが陸路から港町を占領できれば、海上輸送が可能になる。

 

「アガロン将軍が買収されるなど考えにくいでしょう。デケンの英雄を信じて、進んではどうでしょう」

「なるほど、一理ありますね」

 

 そんな部下の提案を受けて、一瞬だけジャルファ王子は考える素振りを見せた。

 

 実際、アガロン将軍が期待通りの働きを見せれば、予定通りに侵攻が可能だろう。

 

「ただ私は、無暗に突っ込むような人間が皇帝の器とは思えない」

「……はい」

「私に求められているのは、ギャンブルに勝つことではなく冷静であること」

 

 しかし王子は、強引な攻め手に出なかった。

 

 負ける可能性が上がる、無謀な賭けを避けたのである。

 

「進まず、待機を。あと、海軍に抗議文を作成して貰えますか」

「御意」

 

 周囲から見れば、臆病にも見える進軍停止だった。

 

 これを聞き、ジャルファ王子は腰抜けだとあざ笑う将校もいたという。

 

 

 ────しかしこの冷静な判断が、後にデケン帝国を滅亡から救うことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 話は戻って、デケン軍とサリパ軍の最前線。

 

 七英雄の一人『アガロン』と、サリパの新星『タケル』は、互いに名乗りを上げて向かい合っていた。

 

「俺を龍だと思って、かかってこい」

 

 『龍殺し』アガロンは龍の鱗で作られた、漆黒の鎧を身に纏った巨漢の戦士だ。

 

 そんな彼の前にして、軽装のタケルは静かに拳を構えている。

 

「……ふぅー」

 

 タケルの集中は、極限まで高まっていた。

 

 両の瞳はアガロンを見据え、身体中の魔力を集中し、指先まで緊張が張り巡っている。

 

 そんな若き武者を、アガロンは余裕たっぷりに待ち受けていた。

 

「いいねぇ。俺にゃあ分かるよ、戦士タケル」

「……」

「お前さん、強ぇだろ。龍を倒したのも、ほぼお前一人でやったんじゃねぇの?」

 

 余裕こそあるが、アガロンの瞳に油断はない。

 

 タケルという戦士を、強敵と認識してなお『余裕』なのだ。

 

「わかるよ、俺も本当は一人で戦いたかった。……危ねぇっつって、周囲が許してくれなかった」

「……」

「だからちょびっと、お前が羨ましいんだ」

 

 タケルは一言も、言葉を発さない。

 

 一方でアガロンは軽口をたたくように、ヘラヘラと語り続けた。

 

「龍を狩るのは、楽しかったか。タケル」

「……」

 

 ────アガロンは、待っているのだ。

 

 タケルという戦士が、最高の一撃を繰り出す準備を整えるのを。

 

 適当な口上を垂れ、場の熱気を保ちながら、タケルを待ってやった。

 

「……では、行きます」

「お、準備は済んだかい」

 

 一分ほどの静寂の後。

 

 タケルは一歩足を退き、肘を畳んで拳を握った。

 

 それを見てアガロンも、ようやく槍先に手背をかけた。

 

 

 

 

 

 戦場に、緊張が走る。いつ仕掛けるか、お互いに機を伺い続けている。

 

 アガロンの部下も、ポーリィたちサリパ軍も、固唾を飲んで見守るだけ。

 

「あの、なんか話が変じゃない?」

 

 その静寂を破って、ぼそりと呟いたのは。

 

 困惑した表情で一騎打ちを見つめる、ヤイバン軍の助っ人『レヴィ』だった。

 

「この空気……何? タケルが倒したのって、龍じゃないよね?」

 

 

 

 

 

 

「龍じゃないって何?」

 

 ポーリィはそんなレヴィの呟きに、ムっとした顔で反応した。

 

「私はその場にいたけど、どう見ても龍だったわ」

「君は、ポーリィさんだっけ? なら聞いてみなよ、デケン軍(むこう)に」

 

 一騎打ちの最中は、両軍とも手を出さないのが礼儀。

 

 タケルとアガロンの睨み合う中、レヴィの言葉は静かに響いた。

 

「何を聞けばいいのよ」

「タケルが倒した奴は、どんな化け物だったか説明してごらん」

「はあ」

 

 それを聞いた両軍に、困惑が広がる。

 

 タケルは龍殺しではないとは、どういうことか。

 

「本当に龍だったわよ? 身体は鱗に覆われ、大きな翼で宙を舞い、口から灼熱の炎を吐く」

「うん」

「大きさは人間の数百倍で、着地の度に大地が揺れて。吐いた焔は、一息に何百人も焼き殺し……」

 

 レヴィが何を言いたいのか、ポーリィにはよくわからない。

 

 彼女は促されるまま、タケルが倒した龍について説明を続けた。

 

 そしたら。

 

「馬鹿を言うな! 大ウソつきめ!」

「誇張が過ぎるぞ、サリパ人!」

「嘘は上手くつかんと恥ずかしいぜ!」

「へ?」

 

 デケン軍の兵士は大笑いして、ポーリィに悪態をつき始めた。

 

 どうしてデケン兵が笑っているのかわからず、少女騎士はポカンと口を開くのみ。

 

「ほ、本当なのよ? 私たちが戦ったのは────」

「そんなのがこの世にいるわけないだろ!」

「そんなのおとぎ話の怪物……『龍神』じゃねぇか!」

 

 サリパ人にとって、龍とは大きく強く硬い怪物のことだ。

 

 だから、タケルが倒したのは『龍』で間違っていないはずなのだが────

 

 

「デケンに住む龍の大きさは、数メートルだよ」

「えっ」

 

 実はサリパ王国では、龍に対する認識はちょっとズレていた。

 

 なぜならサリパには、古代から巨龍が住みついていたから。

 

 タケルの祖父とスピオ卿に討伐されるまで、サリパには龍が巨龍(ソレ)しかいなかった。

 

 だからサリパで龍といえば『巨龍』を指すのだが……。

 

「特別に強い龍が数百年ほど成長を続けると、巨龍となる」

「……」

「人間から畏怖と敬意を持たれ、やがて信仰対象になり、『神』の名を冠する」

 

 しかしデケンなど海外には、龍はたくさん存在する。

 

 デケン帝国において龍とは、『山の奥にいる強力なモンスターの1種』に過ぎないのだ。

 

 確かにデケン龍も強力だし、並大抵の実力では討伐など出来ないが……。

 

 パウリックでも十分に、単独討伐が可能な敵だったりする。

 

「じゃあ最後に。ボクらはタケルが倒したのを、何て呼んでた?」

 

 その龍の中で、頂点とされる存在。

 

 数百年を生き、信仰対象にまで昇華した存在。

 

「……龍神?」

「そういうこと」

 

 それが、龍神である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「勝負」」

 

 そんな呟きが響いた直後、二人の体躯が風のように消えた。

 

 アガロンは雄たけびを上げて跳び、タケル目掛けて一直線に降下を始めた。

 

「我が槍撃、受けてみろォ!!!」

 

 それは、まるで赤く尖った隕石だ。

 

 『龍殺し』アガロン将軍の槍には、炎のような紅い魔力が渦巻いて。

 

 槍先が赤く輝き、うねり、空間を割いてタケルへと切り込んだ。

 

「……はぁっ!!」

 

 その槍先を、受け止めるように。

 

 真正面から、打ち返すように。

 

 タケルは全身全霊の拳を、迫りくる紅槍(アガロン)めがけて振りぬいた。

 

 

 

「……へ?」

 

 

 ────タケルの拳は、情けなく空を切った。

 

 彼の渾身の一撃はあっさり躱され、アガロンの姿が消失する。

 

「ど、どこに消えた!?」

 

 タケルは勢いあまって、尻もちをついた。

 

 慌てて起き上がって、周囲を見渡したが人影はない。

 

「く、どこだ?」

「何が起きたの? アガロンが、消え……」

「……たーまやー」

 

 キョロキョロと、タケルは周りを探し続けた。

 

 しかし、どこにもアガロンの姿はない。

 

 彼の顔に、焦燥が浮かぶ。いつ、不意打ちをされるかわからない。

 

「アガロン様……?」

「アガロン様が、姿を消した?」

 

 しかし焦っているのは、サリパ(がた)だけではない。

 

 アガロンが忽然と消えて、デケン軍も困惑していた。

 

 今までアガロン将軍は、『隠れる』という卑怯な手を使ったことがなかった。

 

 数秒ほど、場に困惑が広がって……

 

 

「うわっ!?」

「地震だ!」

 

 まもなくドスン、と地響きが鳴り。

 

 戦いの遥か後方、ここから数十キロメートルは離れているであろう場所に土煙が上がった。

 

「……あっ」

 

 デケン軍の兵士は、すわ地震かと慌てたが。

 

 タケルやポーリィは、何かを察して顔を青くした。

 

「……」

 

 恐る恐る、タケルは突き出した自分の右拳を見つめ。

 

 血がついているのを見て、冷や汗を噴き出す。

 

 アガロン将軍は、タケルの拳を躱したのではなく……。

 

「デケン軍の皆さん!! あの土煙の方向へ、回復術師を送ってください!! 早く!」

「な、何を言い出す。貴様、アガロン様との一騎打ちの最中だぞ」

「ごめんなさい!! 本当ごめんなさい、アガロンさん、多分吹っとばしちゃいました!!」

 

 タケルの拳に反応できず、勢いよく飛んで行ってしまったのだ。

 

 アガロン将軍が龍と同じ防御力ならば、本気で振りぬいても問題がないと思い込んでしまった。

 

「ど、どど、どうしよう! 死んだよね、戦争中だし良いんだよね?」

「貴族や敵将は、なるべく生け捕りにするのがマナーだけど」

「これは、仕方ないんじゃないかしら?」

 

 ポーリィは青い顔で、レヴィはニタニタと笑い、タケルに返事をする。

 

 アガロン将軍は、決して弱い将軍ではない。

 

 パウリックと打ち合える程度の実力は、兼ね備えていた。

 

 相手が悪かっただけである。

 

「ぽ、ポーリィ……。君なら治してあげられないかな」

「無理よ、タケル。そもそも原形をとどめているかどうか」

「大丈夫、痛みを感じる暇もなかったはずさ」

 

 ────なお。

 

 死人扱いされているが、アガロンは『龍鎧』のお陰で一命をとりとめてはいる。

 

「どういうことだ……。タケルとかいうお前、アガロン様に何をした!?」

「落とし穴でも掘ってたんじゃないか!?」

「な、殴っただけですよ!」

「いつ殴ったんだ、貴様はその場から動いていないじゃないか!」

 

 タケルの拳を、デケン兵は誰も目で追えなかった。

 

 なのでアガロン将軍が消えたのは落とし穴に嵌ったからだと、激昂した。

 

「恥知らず! 人でなし! 卑怯者!」

「正々堂々と一騎打ちを受けたアガロン様になんという無礼!」

「子供のようなハッタリを並べて恥ずかしくないのか!」

「龍神なんているわけないだろう!!」

 

 デケン軍兵士は色めき立って、一斉に剣を抜き始めた。

 

 今にも襲い掛かろうという雰囲気だ。

 

「突撃だ、攻撃だ!」

「皆殺しだァ!」

 

 不幸にも一騎打ちは、卑怯な落とし穴に汚されたと認識されていた。

 

 タケルという卑怯者を血祭りにしなければ、気が済まない。

 

「もはや容赦ならん。この龍殺しの五人(ファイズドラゴンキラー)の第三位、装甲盾のメリュリンがあの小僧を血祭りにあげてやる!」

 

 デケンの先頭で、黒銀の盾を持った騎士が吠えた。

 

 メリュリンはアガロンを慕う、忠義の騎士である。

 

「この私の防御力はデケンで一番。ありとあらゆる攻撃を受け止める最強の盾使い!」

「……」

「さあ、受けてみよ!」

 

 彼女が先頭に立ち、いよいよ突撃の号令が下った。

 

 こうしてとうとう、両軍が入り乱れての乱戦、殺し合いが始まる────

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ってください」

 

 始まる、はずだったが。

 

 タケルはその突撃を制止するように前に出て、右拳を掲げた。

 

「貴様、まだ何かするつもりか!」

「殺せ、こいつから殺せ!」

 

 デケン軍の注目が、タケル一人に集まった。

 

 兵士が目の色を変え、彼めがけて走り出そうとした瞬間。

 

 

「そいっ」

 

 

 タケルがグっと、拳を握りこみ。

 

 爆音とともに地面を殴打し、大地をえぐった。

 

「は?」

 

 その直後、凄まじい衝撃がデケン軍に向けて放たれる。

 

 雷鳴のような地鳴り、噴水のように吹き上がる土煙、波紋状に激しく揺れる大地。

 

 衝撃で立っていられず、『装甲盾のメリュリン』はガシャンと音を立てて転んだ。

 

「えっと、これが僕の拳の威力です」

 

 尻もちをついたまま、メリュリンは見た。

 

 彼が殴った場所を中心にいくつも亀裂が走り、地面は円形にえぐり取られている。

 

 ────およそ数十メートルの深さまで。

 

「……えっ」

「コレを受け止められるなら、相手になります」

 

 この時、タケルは本気を出していなかった。

 

 小突くように、地面を軽くノックしただけ。

 

「僕と戦う気なら、この穴を乗り越えてきてください」

「……」

「この穴を跨いだなら、容赦はしません。本気でいきます」

 

 繰り返すがタケルにとって、これは軽い殴打である。

 

 なるべくゆっくり、『見せつけるように』地面を殴った。

 

 だからこそ────

 

 

 

「………えっ」

 

 装甲盾のメリュリン、と名乗った敵将には。

 

 タケルは地面を殴っただけという事実が、『目で追えた』。

 

「へっ、そんなハッタリにビビるかよ! どうせ爆弾を仕掛けていただけだろうが!」

「ま、待てっ! ちょっと、ま────」

 

 タケルの警告を無視し、鉄鎧を纏った兵士が突っ込む。

 

 そして、クレーターに足を跨いだ次の瞬間。

 

 

 

「いいんですね」

「えっ」

 

 タケルは既に、兵士の真横に肉薄していて。

 

 拳を振りかぶっている、最中であった。

 

「さよなら」

「ちょ、待────」

 

 一秒後。

 

 カキーンと金属音が響き、兵士は空へと打ち上げられた。

 

「他に、かかってくる人はいますか」

「……」

 

 アガロンの部下、龍殺しの五人(ファイズドラゴンキラー)はデケンの精鋭だ。

 

 その実力が本物だからこそ、理解(わか)った。

 

 

「……ひ、ぃ」

 

 タケルの言葉に嘘はない。

 

 龍神を殺したというのは、ブラフでも与太話でもない。

 

 というか、コイツなら普通に殺せる。

 

「ば、化け物だぁあああ!!!!」

「逃げろ! 全力で逃げろ! あんなのに勝てるわけがない!」

「全滅する前に、逃げろぉおおお!!」

 

 目の前に立っているのは、人知を超えた理外の怪物だ。

 

 そう認識したメリュリンは、情けない声を上げて逃げだした。

 

「う、うわあああああ!!」

「退け、退けぇえええ!!」

 

 実力があるからこそ、タケルの脅威を認識してしまったのだ。

 

 あんな化け物を相手にするなど、冗談じゃない。

 

 一秒でも早くあの化け物から遠くに逃げなければ。

 

 指揮官が逃げだしたことで、デケン軍は総崩れとなった。

 

「……ポーリィ、ロウガさんからの命令は?」

「追撃はいらないって、旗信号が」

「ん、分かった」

 

 そんな逃げるデケン軍に対し、サリパ軍は追撃を選択しなかった。

 

 その理由は、

 

「おいおい、逃がすのかい?」

「そんな暇はないの。港町へすぐ援軍に向かわないといけないわ」

 

 まだ港町アナトにおける、ジュウギの戦果が届いていないからだ。

 

 第一王女ルゥルゥの救援が、最優先とされたのである。

 

「ルゥルゥ様に何かあったら、リシャリ様が悲しむ」

「そうね、すぐ戻らないと」

「つまんないの」

 

 

 

 

 

 

 ────この数時間後。

 

 第二王子ジケイは、タケルとジュウギの戦果を同時に報告されることになる。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。