【TS】弱小国の王女に転生してしまいましたわ!   作:まさきたま(サンキューカッス)

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57話「……世界は広いな」

 

「さあ、行きますよタケルさん、ベルカさん」

「はい、リシャリ様!」

「うむ……」

 

 翌日、俺はタケルとベルカを連れてスカウトに出発した。

 

 ベルカの顔色が悪いことには、気付かないふりをした。

 

「最初に会うのはどんな人ですか」

「えっと、ザクスさんという人です。喧嘩無敗の乱暴者で、手が付けられない怪力だそうです」

「大丈夫かなぁ、その人」

 

 ジケイ兄上から渡された人材リストには、七名ほど記載されていた。

 

 噂だけを聞くと、それなりに優秀そうに見える人材ばかりだ。

 

 しかし噂が全て本当とは限らない。尾ひれがついただけの可能性もある。

 

「おそらく、タケルに強さを測ってもらうことになりそうですわ」

「分かりました、任せてください」

 

 その人材は一人一人、俺がこの目で吟味していく訳だ。

 

 千の兵は得やすく、一人の将は得難しという。

 

 今後に向けて戦力を整えるため、俺たちの冒険(スカウト)が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして迎えた、最初のスカウト。

 

 首都の居酒屋(パブ)に朝っぱらから出入りしているというザクスに会いに行くと……。

 

「ザクスさん、弱かったですねぇ」

「大分尾ひれがついていたな」

 

 『喧嘩無敗』と噂される男ザクスは、残念ながら期待外れだった。

 

 俺からザクスに話しかけると、「小娘に興味はない、もっと色々デカくなって出直してこい」と悪態を吐き。

 

 話を聞きたいと言ったら「ここで乳か金を出すなら聞いてやる」と、俺の胸を指さしゲラゲラ笑いだした。

 

「褒められるところが一つもなかったです」

「まぁそうだな」

 

 この時点でタケルの額に血管が浮かんでいたが、俺は手で制し、会話を試みることにした。

 

 俺は王女の立場を明かし、ザクスの強さを見せて欲しいと頼んでみたが……。

 

 彼は邪悪な笑みを浮かべ「王女なら金持ってるんだろ、酒を奢ってくれ」とタカり始めた。

 

 逆らうなら全員ぶちのめすぞ、と脅し文句付きで。

 

「実際、ザクスとやらはどのくらいの強さだったのだ?」

「たぶん、わたしでもかてる」

「ルリちゃん以下ですか」

 

 ザクスがあまりに無礼だったので、俺はスカウトを諦めることにした。

 

 たとえ本当に強くても、こんな男を軍に入れたら統率に欠くだろう。

 

 そう考え引き上げようとしたら、ザクスは「おいコラ、帰るなら金を置いてけ!」と殴りかかってきた。

 

 ……王女相手に殴りかかるか、普通。

 

「……ただにげあしだけは、はやかった」

「あー。確かに撤退の判断の早さは、褒めてやってもいいかもしれん」

 

 当然のごとく、彼の拳はタケルにあっさり止められた。

 

 そしてタケルは低い声で「やっちゃっていいですか?」と俺に聞いた。

 

 怪我はさせないようにしてくださいね、と答えると、タケルはフンと鼻息荒くザクスを睨みつけた。

 

「結局逃げ切れてませんけどね」

「タケル相手に逃げ切れるわけがありませんわ」

 

 おそらくザクスは、そこでタケルとの実力差を感じ取ったのだろう。

 

 彼は拳を引くや否や、跳ね返るように逃げ出してしまった。

 

 誰もがあっけにとられる中、ザクスは数秒でドアをあけ放ち、大通りに飛翔(ダイブ)した。

 

 直後、タケルに襟首を掴まれ引き戻されたが。

 

「ザクスは自分は喧嘩無敗だと嘯いて、気の弱い人から金品を巻き上げていたそうだ」

「癌のような人物ですわ」

「しばらく、牢屋で反省して貰いましょう」

 

 店主に話を聞くと、ザクスはタカリ・恐喝の常習犯だったらしい。

 

 そして負けそうな相手からは逃げ、無敗を維持していたのだとか。

 

 つまり、ザクスは取るに足らないチンピラであった。

 

「一人目から、どっと疲れましたわ」

「そうそう優秀な人材など巡り合えまい。次の登用に向かいましょう、リシャリ殿下」

「まともな人だといいですねぇ」

 

 やはり、簡単に優秀な人材など手に入らないらしい。

 

 滅多に手に入らないからこそ、優秀な人には価値がある。

 

 タケルやベルカのような人と出会えただけでも、奇跡に近いのだ。

 

「次の方は……ピューリーさん。この人も首都在住ですわね」

「次は、どんな人材なんだ?」

「凄腕の傭兵で、山賊のアジトを滅ぼしたことがあるのだとか」

「おお、それは期待できますね」

 

 ジケイ兄上からもらった人材リストに、どれくらい『本物』がいるのだろう。

 

 噂が全てデタラメ、なんて可能性も否めない。

 

「ただし、御年は七十歳。最近は、歩くことすら難しいそうですわ」

「なんでそんなやつがリストに載ってるんだ」

 

 だけど一人でも、二人の助けになりうる人材がいるのであれば十分だ。

 

 タケルやベルカ級の怪物でなくても、彼らを補佐できる程度の器で十分。

 

 俺がよく見定め、仲間にスカウトせねばなるまい。

 

 

 

「大変光栄なお話ですが、健康面の問題がですな」

「お大事になさってください」

 

 ……因みにピューリーさんは、まともで理知的な老人だった。

 

 老将として知恵を貸してもらえないかとお願いしてみたが、痛風とギックリ腰の治療中のようで、自力で歩けないと断られた。

 

 あと三十、いや二十年若ければ文句なしに採用だったのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

「イースさん。このアイギスと沈黙の波、という本について説明してくださいますか?」

「えっと、デケン海軍准将ノーリウンが引退後に書き連ねた戦闘回顧録です。彼が得意とした海戦のノウハウを、面白おかしく冒険譚のように記しています」

 

 それから数日、俺は日が落ちるまでサリパ中を歩き回った。

 

 リストに載っていた人物を探し出し、話をして回った。

 

「なるほど、では読んだノウハウもイースさんの頭に入っているのですか?」

「はい、覚えています。ただし昔の書物のため、現代では通用しにくい作戦も多々含まれています。例を挙げると第二章に記された渡り鳥を餌で釣って進路を変えさせ、敵に東西南北を誤認させるという作戦は方位磁石の開発された現代では無意味でしょう」

「おお……」

 

 幸い、兄上から貰った人材リストは外れクジばかりではなかった。

 

 例えば魔本屋の娘イースさんは長身な体躯と、元気の良さがアピールポイントの二十八歳。

 

 幼少期より本の虫で、恋愛や金銭より読書を好む変人だそうだが……。

 

「一度読んだ本は、内容を纏めた記事を残しています」

「良ければ、それを見せていただきますか」

「はい、こちらです! 点滴穿石、積み重ねました」

 

 そのお陰でさまざまな知識を豊富に持っていて、聞けば大抵のことを答えてくれた。

 

 今や学者に引けを取らない知識人として、歩く大辞典の異名を持っているそうだ。

 

 さらにイースさんは文筆家でもあるそうで、読んだ書物を纏める習慣があるという。

 

 彼女は店の本を全て読破し、その記事を何百巻も書き連ねてきたらしい。

 

「おお、とても字が綺麗ですわ」

「読みやすいな……」

「僕は字が読めませんが、すごく上手なのが分かります」

 

 それを見せてもらったところ、彼女の字はまた綺麗で読みやすかった。

 

 字を書くのも早いようで、目の前でスラスラと詩を著して見せた。

 

「イースさん。よろしければ、ウチで働いてくださいませんか?」

「お話は光栄ですが、仕官したら本を読む時間が減ってしまうので────」

 

 読んだ本はスラスラと(そら)んじ、その知識はさながら歩く図書館。

 

 書類作成を依頼したら、丁寧な字でスラスラと仕上げてしまう。

 

 文句なしに優秀な人材だ。

 

「王宮図書館に出入りを許可しますわ」

「感謝感激! ありがとうございます、ぜひお願いします!」

 

 最初は渋い顔をされたが、王宮図書館の出入りの許可を引き合いにしたら凄い食いつきだった。

 

 貴重な本がいっぱいあるから、彼女にとっては宝の山だろう。

 

「魔本屋の主人様。イースさんの力を、私にお貸し頂けませんか」

「書字にしか興味のないヘンテコな娘ですが、よければ持って行ってください」

「父、今まで育ててくれてありがとう。堅忍質直! 今日より私はリシャリ殿下の文官としてお仕えします」

 

 彼女の父親にも許可が取れたので、正式にイースを雇うことになった。

 

 きっとベルカやタケルの苦手な事務作業を、強力にバックアップしてくれることだろう。

 

「詳しい話は後日に致しますわ。明日の朝、王宮に隣接した兵舎にお越し下さいまし」

「粉骨砕身、頑張らせていただきます!」

 

 一人は人材をスカウトできたので、ジケイ兄上へ良い報告は出来る。

 

 このスカウトが無駄骨に終わらずに済んだことに、少しだけ安堵した。

 

 

 

 

 

 しかし、その後も探し回ったが『雇うに値する人材』はイースさんだけだった。

 

 他の人は登用に問題があるか、雇う価値のない人ばかりだった。

 

「リシャリ殿下のお話は光栄ですが、俺は家族を置いて軍に行けません」

「そうですか、仕方ありませんわ」

 

 もう一人、雇いたかった優秀そうな若手剣士がいたが、家族がいるからと仕官を断られた。

 

 真面目で実直そうな人だった。奥さんと子供も『行かないでくれ』と目をウルウルさせていたので、仕方のない結果だろう。

 

 因みに強さは、タケル曰く『王宮騎士団にちょっと届かない程度の実力』だそうだ。

 

 王宮騎士団は、サリパ軍ではエリート中のエリート。平民でそのレベルとなれば、破格の実力だ。

 

 出来れば登用したかったのだが、家族を大事にしたいなら仕方ない。

 

「次で、最後の人材ですわ」

「最後はどんな人なんですか?」

「チムドンドムさん。資料によると、どうやら凄い人らしいですわ」

 

 そして、当たり前の話だが。

 

 スカウトしたイースさんを含め、タケルやベルカ級の怪物はいなかった。

 

「凄い人、ですか。何が凄いのです?」

「凄すぎてあまり記載することがない、と書かれてますの」

「どういうことだ」

 

 そりゃそうだ。タケルやベルカみたいなのがポンポン現れたらたまらない。

 

 彼らのような怪物と出会えたことが、奇跡だったのだ。

 

「とりあえず会いに行ってみるか、その凄いヤツに」

「チムドンドムさん、一体どんな人なのでしょうか」

 

 今回のスカウトで、少なくともイースさんは確保できた。

 

 それだけで十分だと、俺は自分を納得させた。

 

 彼女は文官としては、破格の人材である。

 

 そんな才女を得て『物足りない』と感じるなど、不遜極まりないじゃないか。

 

 きっとチムドンドムも怪物ではないのだろう。

 

 だけど、それでも雇う価値があるのかどうか、俺がこの目で見極めるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、本当に凄かったな」

 

 ……数日かけて探し回り。

 

 俺はとうとう公衆便所の脇で、その男と出会った。

 

 凄い男、チムドンドム。彼の噂は、確かに本当だった。

 

「あそこまで凄いとは思いませんでしたわ」

「……すごいというか、やばい」

「ああ……世界は広いな」

 

 資料に『凄すぎて記載することがない』と書かれていたが、まさにその通りだった。

 

 あれは凄すぎて、何も書きようがない。

 

 ジケイ兄上から貰った資料の記載がああなったのも納得である。

 

 タケルやベルカに並ぶ、怪物の類と言って差し支えない。

 

「ただ、アレは凄いだけだ。何の役にも立つまい」

「勿体ないですわね。何かの役に立ちそうな気もするのですが」

「確かに、凄いだけですよね。凄すぎて圧倒されますけど、それでおしまいです」

 

 だが、残念ながらチムドンドムは役に立つ人材とは言えなかった。

 

 噂通り凄い男ではあったのだが、軍で生かせる能力とは言い難い。

 

 例えるなら修学旅行先で売っている、木刀のような人材。

 

「何とか上手く活用することはできないのでしょうか」

「……少なくとも、(おのず)には思いつきませんな」

 

 俺は迷った。お金には余裕があるし、チムドンドムを雇ってもいいんじゃないかと。

 

 しかしタケルもベルカも口を揃えて、「彼を扱う自信がない」と否定的で。

 

 内乱の種になる危惧もあり、泣く泣く彼のスカウトを断念した。

 

「彼の特技を生かせる仕事が見つかるといいですね」

「うーん。やっぱり、もったいない気がしてきましたわ! 今は思いつきませんけど、何か役に立つ運用法を思いつくかもしれませんの。やはりスカウトをしに戻りましょうか」

「落ち着け、惑うな殿下。あの男の魔性は理解できるが、中身は虚無だ」

 

 チムドンドムは凄すぎる男だが、冷静になるとあんまり必要ではなかった。

 

 チムドンドムに出来ることは、運さえ良ければ他の人でも出来るだろう。

 

 あんなに凄いのに、そこはかとなく残念だ。

 

「でも、一曲も謳わずに音楽大会で優勝できる人材なんて彼くらいですわ」

「優勝だけして、何になる。奴の歌が上手いわけではない」

「本当に凄いだけですよねぇ」

 

 噂通りにただ凄かっただけの男、チムドンドム。

 

 彼の今後の活躍に、是非期待したい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という感じで、空振りばかりでしたの」

 

 こうして連日歩き回って、疲れ果てた俺は。

 

 王宮に戻ってスカウトお疲れ様会をしたあと、二人と別れて休むことになった。

 

「そりゃあ、噂なんて当てにならないもんよ」

「ルゥルゥ姉上、誰か優秀な人を知りません?」

「私に平民の知り合いなんかいるわけないでしょ」

 

 俺は部屋に戻った後、ルゥルゥ姉上の部屋で愚痴りながら駄弁った。

 

 こうして王女会(プリンセスパーティ)を開くのも、何だか久しぶりだ。

 

「貴族でも構いませんわ。筋肉……じゃなくてロウガ卿の伝手とかないんですの?」

「そうねぇ。私、最近アイツと話す時間がないから」

「え、どうしてですの。まさか、また社交界のボイコットを?」

「出てるわよ。だけど今の情勢で、ロウガが社交界に出てくる暇があるわけないでしょう」

 

 なるほど、考えてみりゃそうだ。

 

 ロウガ卿は軍のトップ、デケン軍の対策で大忙しなのだろう。

 

「私が会いに行ったら、アイツに気を遣わせるでしょ。放っておくのが良い女なの」

「……納得しましたわ」

「それに、私もそんなに時間ないのよ。ジュウギの件で忙しくて」

 

 そして姉上も、暇なわけではないらしい。

 

 先日、俺がポカしたせいで研究がルゥルゥ姉上の仕事になったからだ。

 

「ジュウギの仕事が早いもんだから、計画がどんどん前倒しになってさ」

「まあ……、それは良いことですわ」

「それで聞いてよ、まもなく鉄道が本格稼働できるの」

「え、もうですか!?」

 

 元々優秀なジュウギさんと、天才であるルゥルゥ姉上が組んだ結果。

 

 あれから一年弱しか経っていないのに、鉄道が開通する目前までこぎつけていた。

 

「港町アナトと首都の間だけだけどね」

「……凄いですわ! これで物流に革命が起きますわ」

「おそらく来年には正式に開通するはずよ」

 

 今までは港町まで移動するのに、馬車で数日はかかった。

 

 しかし鉄道なら、およそ半日で移動が可能になる。

 

「王宮で気軽に、海鮮魚が食べられる日が来ますわね」

「本当よね、技術の進歩は凄いわね」

 

 ジュウギの研究が実を結び、とうとうサリパを動かしたのだ。

 

 彼を見出した人間として、俺も嬉しくなった。

 

 まさかこの世界で、鉄道旅ができるようになるなんて。

 

 ジュウギさまさまである。

 

「鉄道が開通したら、アナトでもスカウトできますね。それまで、いったん人材発掘はお預けでしょうか」

「あら? まだ雇える人がいるんじゃない?」

 

 首都近辺の人材は、チェックし終えてしまった。

 

 しかし鉄道があれば、アナトまで行ってスカウトできる。

 

 来年は、スカウトの範囲をアナトまで伸ばしてもいいかもしれない。

 

 そんなことを考えていると、

 

「資料に載ってない人材を雇いに行ったら?」

「当てもなく人材を探しても、見つかりっこないでしょう」

 

 姉上はそんなことを、当たり前のように言いだした。

 

 当てもなく人材を探すなど、さすがの俺でも不可能だ。

 

「ふふふ。じゃ、私から一つアドバイスをしてあげる」

 

 そう言うと姉上は、ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべていた。

 

 ……何か、当てでもあるのだろうか?

 

「ロウガから聞いたんだけど、軍には大将よりも大事な役職があるの」

「……大将より重要な役職、ですか?」

「ええ。その役職は、兵士から大将より尊敬され、親しまれ、崇められるわ」

 

 ……大将より大事な役職なんてあるのだろうか。

 

 腕の良い、参謀とかだろうか。

 

「その役職って、何ですの」

料理長(シェフ)よ」

「えっ」

 

 俺の問い返しに、姉上はすまし顔でそう答えた。

 

 料理長……?

 

「食事を舐めちゃだめよ。兵士にとってご飯は、大将より大事なものなの」

「まぁ、そういうものですかね」

「部隊で出される食事の味は、そのまま士気に直結するわ。旨い飯が食べられる部隊は、脱走者が少ないの」

「ふむ、なるほど」

 

 兵糧が大切ってのは、軍に疎い俺でも納得できる話だ。

 

 ああ、なるほど。つまり姉上は……。

 

「なるほど、料理人をスカウトしろということですわね」

「そういうこと。知り合いのレストランで、料理人を引き抜かせてくださいって交渉してみなさい」

 

 確かに、それは盲点だった。

 

 腕の良い料理人を雇うことが出来れば、軍の士気は大きく上がる。

 

「アンタ、会食で使うレストランの伝手とかあるでしょ?」

「ええ、ありますわ。懇意にしているレストランが」

「いいじゃない。そういう交渉はアンタの得意分野でしょ」

 

 社交パーティを行う際、民間から料理人を雇うケースは結構多い。

 

 俺だって、そういう伝手をいくつか持っているのだ。

 

「ちなみにアンタの懇意にしてるレストランってどこ?」

「ヴァイオレットさんが経営する系列のレストランですの」

「ふーん、美味しいとこじゃない」

 

 そして俺が狙いを定めたのは……。

 

 ここ数年で急成長し、サリパ最大のレストランになったヴァイオレット食堂のオーナー。

 

 俺がよく料理を依頼する相手、ヴァイオレットさんであった。

 

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