ソロプレイヤー、ナザリックに挑む   作:No_46

100 / 103
何言ってんの!?

 声を張り上げじろりと店内を見渡す兵士、周りを統率している様子から隊長か何かだろうか。

 周りよりも若干装飾が多い装備を全身に纏っているが、隙間から見える皮膚は人間の物ではない、亜人だ。

 隊長は最終的に、見渡す目線を私たちで停止した。

 

 言い放たれた言葉、私は奴隷の少女に様々な装備を着せ能力を計っていた長文ネキへ視線を向ける。

 

「私はアンデッドだし人間じゃないんだけど」

 

「裏を読めよ。

 俺ら普通に外見人間だから門番が勘違いしたんだろ」

 

「はぇ~種族判別できないってことは相当低レベルってこと?」

 

「⋯門番とかの監視系で20レベルはあった筈だから、レベルの法則違うのかもな」

 

「20レベルあったら簡単な鑑定取れるんだっけ」

 

「結構有用なのも多いぞ。

 まぁ許可は貰ってたし行き違いかなんかじゃね」

 

 私と長文ネキが話していれば、最初に口を開いた隊長がずんずんと近づいてくる。

 やがてガン無視して丁寧に赤いアルコールを仰いでいた摩利支店長のすぐ後ろで止まり、口を開いた。

 

「隠れようともしないとは……舐めているのか? 

 それとも恐怖に竦んで足が動かないのか?」

 

「……俺たちはちゃんと門番から許可を貰った。

 言いがかりはやめてもらおうか」

 

 食事の為に兜を外した摩利支店長が眉間にしわを寄せながら兵士を睨みつける。

 それを隊長は鼻で笑い飛ばした。

 

「許可? 

 我々はエイン衛兵長の居る門から許可証も貰わずに通った7人組がいると聞いてここに来たのだ。

 今朝がた守護竜様が飛び去った好機に、偶然見つけたマジックアイテムかなにかで脅し通ったんだろうが、ここは守護竜様の帰る街。

 貴様らのような種族を入れただけで恥となる。

 許可を出す訳が無いだろう、脅されたエイン衛兵長の醜態は……笑えたがな」

 

 背後の兵士たちに堪えるような失笑が広がる。

 しかしそれに乗っかるかの如く、クーベラがブルースをからかったことで、彼らの失笑はほんの少し困惑へと変化した。

 

「やっぱMP少ないからって魔法で確認しないの失敗だったじゃんw

 換金の時もそうだけど雑に動きすぎwwww」

 

「あの手の連中は隙を見せると群がってきます、そこから伝手を作る予定だったんですよ。

 ですが……はぁ、もういいです。

 ここまでナメられてるなら伝手を作るのも容易ではなかったでしょうし、人間種以外にまともな相手は期待しないほうが良いですね」

 

 視線すら向けず、会話を続ける私達へ業を煮やした隊長は腰に下げた剣へと手を伸ばす。

 

「竜族にしか扱えない魔法を扱うとまで言い放つとは、どこまで竜王様を侮辱すれば気が済む! 

 下等種族が! 

 そんなに死にたいならここで殺してやろう!」

 

 だが、その手は空を切った。

 見れば剣の柄の部分が切り落とされている。

 

 困惑した様子の隊長に、ようやくブルースがいつの間にか抜いた直剣を鞘へ戻しながら視線を向けた。

 背後の兵士たちは未だ何が起こったのか理解できていないようで、武器に手を掛けてもいない。

 

「空腹は満たせましたし、気分がいいので見逃してあげても良かったんですが……

 魔法が竜族にしか使えないという話、詳しく聞かせてもらえますか?」

 

「ッなめるなァ!」

 

 隊長の手甲による殴打がブルースへと向かう。

 それはワールドチャンピオンからすれば遅すぎた。

 

 力が乗る前に、ブルースが手甲を素手で止め、隊長の鳩尾に膝蹴りが突き刺さる。

 腕を掴まれたことで鳩尾に深く入った膝蹴りは、金属製の鎧すら歪ませ隊長は崩れ落ちた。

 

 唖然とする周りの視線を無視し、椅子に座り直したブルースは何事もなかったかの如く飲む途中だったグラスを一気に呷る。

 

「クーベラさん、記憶閲覧の魔法、使えますか?」

 

「今日だけで二回も使ったし無理wwww

 おねロリすは純魔なんだし余裕あるだろwwww」

 

「俺かよ……

 つーか魅了でもよくね、記憶閲覧のMP消費デカいし。

 ここまでデカい町なら記憶操作までして騙す意味もないだろ」

 

「……そうですね、では魅了で」

 

 おねロリすの言葉にブルースは少し考え肯定した。

 

 対して蚊帳の外に置かれている兵士たちは、隊長に何をされようとしているのか理解できてない様子。

 とはいえ隊長が武器を抜こうとした為か、同じく柄に手を伸ばしていつでも抜ける状態にし、ジリジリと間合いを詰めてきている。

 

「どうすっぺ」

 

「ゾンビネキは火力高すぎて殺しそうだし⋯いやゾンビのスキルで状態異常撒くやつあっただろ、それで拘束すればいいじゃん」

 

「⋯ユグドラシルじゃ効かないから忘れてたわ。

 おk」

 

 パンデミック・キャリアーLv4スキル:感染爆発。

 自身を中心に状態異常をばら撒くこのスキルはある程度やりこんだプレイヤーの持つ状態異常無効化装備で確定無効化が可能だった。

 公式武術大会で活用できたのは、未だ無効化を付けられるゴッズ装備プレイヤーはおろか、100レベルにも到達していない観覧者が多かったからだ。

 

 基本レベルが低いこの世界の存在相手ならば、容易に状態異常をかけられるだろう。

 

 同じくパンデミック・キャリアーLv3スキル:病原進化を使用すれば、脳裏に現在選択されている状態異常と選択可能な状態異常が現れた。

 低レベル相手なことを考慮し、殺傷能力のない気絶と睡眠を選択、私は【感染爆発】を使用する。

 

 まるでドライアイスから流れる水蒸気のごとく、私の体から放たれた毒々しい色の煙は風も無いというのに一瞬で店内に充満し、窓や入り口からあふれ出した。

 本来はもっと広範囲にばら撒くスキルだが、使い勝手が変化したのか私の操作通りに広がったのを見ながら全員意識がなくなったことを確認。

 

「おお……低レベル相手だし良く効くな」

 

「とりあえず店の周辺まで撒いたけど、倒れてるのめっちゃ目立つし店内に運んだ方がよくね」

 

「もう目立ってるしこのままでいいと思うぞ」

 

 店内に居た亜人や入り口で近づこうとしていた兵士たちが軒並み倒れ、店の外の野次馬がそれを遠巻きに眺めている。

 目立つし店内に入れた方がいいのではという私の提案に料理をツマミながら答えた長文ネキ、横で様々な装備を着せられている奴隷の少女も装備によって抵抗に成功したのか意識を失わずにいた。

 

 内心(絶対運ぶのめんどいからだろ……)と思いながらも私自身運ぶのはめんどくさかったので頷きを返す。

 

 これで余計な手出しをしてきそうな連中は排除できた。

 

 魅了に掛けられた隊長を見れば、上手く効いたようで先ほどの怒り心頭な声色は落ち着きを取り戻している。

 

「仲間を疑ってすまなかった。

 それで聞きたいこととは何だ? 

 アイツの頼みだ、できる限り答えるが」

 

「魔法が竜族にしか使えないという話です」

 

 単刀直入にブルースが尋ねたのは、先ほど隊長が口走っていた内容の事だった。

 少し困惑したように、隊長は口を開く。

 

「竜族と言えば、かの種族だけが使える魔法だろう。

 知性のある者ならば誰でも知っていることだ。

 数百年を生きる竜族は曰く、世界に繋がり、世界の理を作り変えることができる。

 竜族以外の種族が使用する武技やまれに発現するタレントとはまさに格が違う、世界を統べるにふさわしい技術だ」

 

「……武技やタレントは……魔法とは違うので?」

 

「そりゃ違う。

 武技はある程度鍛錬を積み、才能があれば習得できるが、魔法は全く別物だ。

 竜族にしか扱えず、規模も武技とは比べ物にならない。

 何もない場所に新しく土地を創造したり、抵抗という概念すらなく万物を切り裂くなんて、竜族以外に誰ができるというんだ? 

 それに比べれば少し動きが早くなったり、体勢が崩れにくくなる武技のなんと貧弱な物か。

 タレントもそうだ。

 この街で見かけたタレントは吐息が冷たいというものだったり、爪が異様に伸びるといった下らないものばかりだ。

 竜族にも発現するらしいが、護神竜様は詳しく話したがらないのでな」

 

 語られた言葉に、私は少し驚きを孕んだ。

 周りも同様だったが、私の驚きは周りとは違う。

 原作では普通の人間や異種族も魔法を使っていたはず、それが無いということは、原作の時系列より大きく外れた年代に飛んでしまった可能性が出てくる。

 

「竜にしか使えないってどういうことなんだ」

 

「わからん、けどユグドラシルでそんな設定や匂わせもなかった……

 武技やタレントもストーリー追ってたけど噂すらない。

 共通点も少ないし……マジで夢見てんじゃないだろうな」

 

「いや他人と一緒に見る夢ってなによ」

 

「ゾンビネキとかはそういう実験体にされてそうだけど」

 

「まぁ間違ってはない」

 

 魔法の意外な設定に驚きを長文ネキと共有していれば、ブルースは聞く内容を魔法から広げた。

 

「……位階魔法や符術など、そういった名前の武技やタレント、魔法を聞いたことは?」

 

「……すまん、皆目見当がつかない」

 

「ではそれらで……それぞれ他人とコミュニケーションをとるものなどはありますか?」

 

 目を細め、ブルースが意外にも聞き出そうとしたのはコミュニケーションを取る魔法に関してだ。

 

(コミュニケーションを取る魔法……リアルに帰るためとか?)

 

 意外な質問の理由に当たりをつける。

 やはりブルースは現実世界への帰還を考えているのか、顔色からうかがい知れない内面に思いをはせていれば、隊長が答えた。

 

「武技に関しては言葉通り、戦いに関するものばかりだ。

 タレントに関しても⋯聞いたことはないな。

 可能性があるとすれば魔法だが、我らを庇護してくださる護神竜様も魔法に関して語らない。

 重ね重ね、役に立てず申し訳なく思う」

 

 隊長の言葉に「まぁ期待してませんでしたが」と返すブルースはどこか落胆した様子で、瓶からグラスへ酒を注ごうとする。

 しかし空だったことに舌打ちをして、唯一意識があった奴隷の少女に酒を持ってくるよう命令し始めた。

 ブルースの疑問が解決? したのを見て次に疑問の声を上げたのは摩利支店長。

 

「……守護竜ってどれぐらい強いんだ?」

 

「そりゃあ竜族以外のすべての種族が協力しても、一体の竜王様にすら勝てないぐらいだ。

 かなり昔に空から現れたという異形の怪物どもとは大きな戦いになった伝説がある……残っているのはその戦闘痕だけで殺しつくされたと」

 

「その竜王ってのが守護竜なのか?」

 

「いや、竜族の中でも魔法を扱うことのできる成人した竜族がそう呼ばれている」

 

「その数は……?」

 

「詳しい数は分からないが、この大陸中の種族を統べているのは竜族だ、過去の大戦では千を超える竜族で空が埋まったなんて伝説もある」

 

 思わず私は顔を顰める、他ワールドチャンピオンの反応も様々だったが、楽観的な感情を持つ者は居なかった。

 

「……竜が最初に出会ったレベルで、めちゃくちゃ数がいるとまずいどころの話じゃないぞ」

 

「あの竜ってユグドラシルの裏ボス的なのだろ。

 こっちの世界ならめちゃくちゃ弱いんじゃね」

 

「流石に考え甘すぎwwww

 ……ワールドアイテム持ち以外に抵抗できなかった魔法を全員が使ってくるなら舐めてると初見殺しに嵌められる可能性あるな」

 

「具体的にどのような魔法があるとかは分かりますか?」

 

「ここの護神竜様はすべてを切り裂く斬撃の魔法で過去の天災や竜王大戦を生き残ったと聞いたが……他の魔法に関しては詳しく知らない」

 

 摩利支店長が零した不安におねロリすが現実逃避染みた言動を行うが、クーベラは最悪を想定しろと苦言を呈す。

 事実、最初の竜帝程強力な竜が跋扈しているのなら、私の想像していた異世界ゆったり生活はほぼ不可能だ。

 

(時期が完全に悪すぎる……

 最初の竜王レベルがそこら中に居るとしたらマジで初見殺しのオンパレードだぞ……! 

 竜王がまだ多くいるのなら、予想だと原作よりもだいぶ過去⋯そしてプレイヤーは八人だし八欲王ルート確定です! 

 異世界でも好感度気にしなきゃダメってマジ⋯?)

 

 魔法についての回答は情報量の限られたしかもまた聞きの物、ブルースがため息と共に「魔法は竜に聞いたほうが良さそうですね……」とつぶやく。

 

「⋯普通に対話できるか?」

 

「ないない、この街で人間種奴隷にしてるってことは竜が見逃してるってことだろ。

 あと兵士とか街の雰囲気から人間蔑視すごいっぽいから竜も同じかそれ以上なのは確定的に明らか」

 

「だよなぁ⋯」

 

 話していればちょっとトイレと長文ネキが席を立つ。

 私は行ってらと手を上げるが長文ネキはその手を掴み、真剣な顔で口を開いた。

 

「やり方わからんからゾンビネキも来てくれ」

 

「ええ⋯街入るときにも言ったけど何一つわからんよ」

 

 何か真面目な話でもされるのかと身構えた私は予想外の言葉に気が抜ける。

 だが有無を言わさず引っ張る長文ネキに根負けした私は便所へとついて行き、長文ネキが扉を閉じた。

 

「【完全犯罪(ファントムシーフ・レッスンV)】」

 

 同時に発動された隠密系スキル、話を聞かれたくないからだろうが肝心の話を想像できず頭の上にハテナマークを浮かべる。

 

「不味いことになったって理解してないなゾンビネキ」

 

「え、いや竜がめちゃくちゃ強いってのは私もヤバいと思うけど」

 

「それもあるが、俺たち店長を味方に引き入れて同盟作るって話だったろ? 

 とんでもなく強い竜が大量にいるならワールドチャンピオンで敵味方とか言ってる場合じゃなくなる」

 

「⋯つまり同じプレイヤーに無断で記憶操作魔法使う連中と距離を置けなくなった⋯ってコト!?」

 

「あと竜と戦いになるかもな状況で仲間割れみたいな勧誘すれば店長からの信用もガタ落ちになるだろうな」

 

「八方塞がりじゃん⋯」

 

「ま、口には出さないで信用積めばまだ可能性はあるやろ。

 もう一つの問題よりかマシや」

 

 竜族の想定外な強さに安全な生活はおろか、面倒な連中との共同生活を余儀なくされた事実。

 それ以上の問題? と私が考えていれば、長文ネキは私の刀、ワールドアイテムを指さした。

 

「他の竜の攻撃もワールドアイテムでしか抵抗できないのなら、確実に奪い合いが起きる」

 

「⋯確かに! 

 え、やばくね」

 

「ヤバいぞ。

 俺は最悪ワールドアイテムパクって隠密すれば見つからんかもだし危機感ないけど」

 

「は?」

 

「隠密特化でよかったわホンマ」

 

「テメェええええ!!! 

 何言ってんだあああ!?!?!?」

 

 長文ネキのあまりにもあんまりな言い分に思わず叫んでしまったが、本気で奪うつもりなら私に教えないだろうし冗談だろう⋯冗談だよね? 

 

「忠告したから気を付けとけよ。

 じゃあ俺トイレするからやり方教えて」

 

「爆弾落とした挙句シモの世話までさせようってのか???」

 

「仕方ねぇだろこちとら女初心者だぞ」

 

 

 ***

 

 

 何処か緊張感に欠けるやりとりの末なんとかトイレを出れば、何やらワールドチャンピオン達だけで話し合っている。

 席に着いてたぬきから話を聞けばプレイヤーの話が出たらしい。

 

「こっからずっと北西に人間の国があって、そこで信仰されてるのがプレイヤーとかいう神だってさ」

 

「俺たち以外にも居たのか⋯」

 

 安堵した様子の長文ネキにタヌキは「それがおかしくてな」とちびちび飲酒しながら答えた。

 

「プレイヤーの国? が出来たのかなり昔らしい」

 

「⋯俺たちが今の状況になってまだ1日も経って無いだろうし⋯名前似てるだけの可能性もある、あんまり期待はできないな」

 

「ま、人間の国なら悪いようにはならないってことで行くのは決まった。

 ただここの奴隷をどうするかで割れてる」

 

 100年転移の法則を知っている私はプレイヤーの国と考えられる。

 行くと決まっているならば変に口出しをしなくても大丈夫だろう。

 

(変に疑惑を掛けられて記憶見られたらヤバいからな〜)

 

 そんな事を考えている私の横では人を連れて行くか否かの議論がヒートアップしていた。

 予想通り、助けようとしているのは摩利支店長。

 

「向かうのなら人間を助けて行くべきだろ! 

 ここの人間は家畜以下だ! 

 力を持ってる俺たちにはその力を良いことに使う責任があるッ! 

転移門(ゲート)】で一斉に脱出すればいいだろうが!」

 

「この世界の国家関係も分からないのに他人の物奪うのは馬鹿すぎるwwwww」

 

「店長さん、冷静に考えてください。

 それで竜と敵対して再度戦うことになったらどうするんですか? 

 ワールドアイテムがあるからと油断していれば足元掬われますよ」

 

「まぁ対話できる現地住民は連れていきたいよな。

 助けたって実績あるなら人間の国に入りやすいかも」

 

「そもそも、なんで未知の場所で話が通じるのかも謎ですし。

 喉の形的に全く同じようには話せないはずなんですがね。

 ……あなたは何か知っていますか?」

 

 堂々巡りの議論の中で、おねロリすの対話する現地民という言葉にブルースが疑問を持った。

 問いかけられたのは隊長、正直私含めだれもその答えに期待していない。

 

「……詳しいことは分からないが、この町だと今朝がたからどの種族とも言葉が通じるようになった。

 護神竜様が飛び立ったことから魔法によるものではないかと噂されているが、真偽は不明だ」

 

 転移したから俺達だけ言葉が通じるんじゃないのか、そう口にする長文ニキ。

 正直言語の問題に関しては何一つわからないので頭を捻るもこれだ! という答えは見つからない。

 ただ一人、おねロリすだけが顔色を変えた。

 

「五行相克使ったせいじゃね?」

 

「は?」

 

 何言ってんだと言葉を漏らした摩利支店長を無視し、おねロリすは続ける。

 

「最初魔法が使えなかったのがこの世界にそもそも俺たちの使う魔法が存在しなかったからって可能性だよ。

 ホリックお前設定知ってただろ、ユグドラシルのストーリーで考えるとどうなの」

 

「……そういえば設定上は魔法も唱えて発動するタイプだったな。

 ワールドアイテムはフレーバーでだけど世界を作り変えるって設定もあるし、魔法が誰でも使えるように言葉が統一されたのか?」

 

 長文ネキが設定上可能と言及したことで、本格的にフレーバーテキストが現実のものと化していると理解したワールドチャンピオン達は各々確かめるようにインベントリからアイテムを取り出し始める。

 

「言語はいいとして、その人間の国が虚偽だった場合は? 

 食料や生活道具は? 

 運ぶ方法はインベントリを使うとしても足りないかもしれません」

 

 確認しながらも未だに連れて行くことへ渋っているブルースへ、私は食事を終えたことで回り始めた頭に宿る疑問を吐き出した。

 

「人間種ならバフか空腹デバフ対策の食糧持ってないの? 

 あの手のアイテムってフレーバー的にめちゃくちゃ容量あっただろ、無限の水差し(ピッチャー・オブ・エンドレス・ウォーター)とか」

 

「……魔法使えるなら食える……か?」

 

「一応バフアイテムとか空腹対策のアイテムは持ってたな……

 ゲーム自体の感覚で食事とかはできないと思いこんでたが食えるかもしれない」

 

 おねロリすと摩利支店長が疑問を口に出しながらもインベントリから取り出したパンは、人間種プレイヤーなら一般的な重量が軽く大量所持が可能の飲食アイテムだ。

 バフの無い低位のものだというのに表面は文字通り輝いて見え、満腹に近いというのに香ばしいバターの匂いで涎が流れ出す。

 取り出した二人が口に含み、食べられることを確認していた。

 

「ゾンビネキそれ早く言ってよ……

 街に急ぐ必要なかったじゃん……」

 

「今考えついたんやすまんな」

 

 長文ネキは恨みがましそうな表情でこちらを見ながら、恨み言を零したが、私自身竜帝との戦闘で完全に食事アイテムの存在が頭から消えていたのだ。

 インベントリの食事アイテム自体アンデッドの私はそこまで使用していなかったのもある。

 問題なく食べられることを確認できた摩利支天長はいざ人間の国が無かった時の非常食にはなるだろうと、残りのワールドチャンピオンにも食料提供を呼びかけ始めた。

 

「とりあえず全員飲食物は隠さず出せ、俺がナヅキとホリックを除いた全員に平等分配する。

 奴隷の人間に配る際は俺がその都度徴収させてもらうからな」

 

「は????

 飯を食えないのと飯を食わなくていいのは違うんだが????」

 

 ナチュラルにハブられたことで困惑し苦言を呈した私。

 

「むしろ異形種のお前らは飲食不要で食料とか少ないし良いだろ、偶然得た物であれ能力であれ、力を持つものはその力をより良いことに使う義務がある、不平を生まないためにも、提供が少ない異形種二人には他の雑務を果たしてもらう」

 

 しかしその言葉を意に介さず、更に責任を課そうとしてきた摩利支店長へ抗議しようとするが、長文ニキに肩を掴まれ止められた。

 

(……好感度稼ぎしとけってことか。

 でもせっかくの食事だぞ!? 

 本当にそれでいいのか長文ネキィイイイ!!)

 

 内心穏やかではないが、ここで割れては竜との戦闘時不安が残る。

 

「……一先ず竜との交渉です。

 勝手に動いて心証を下げる行動は控えてくださいよ」

 

「聞く限り魔法に関して特権階級っぽいぞwww

 魔法の法則を変えてたならキレて交渉どころじゃなくなりそうwwww」

 

 諦めたようにブルースは不利になる行動をしないよう戒めるが、交渉という部分に疑問を持っていたのは私と長文ネキだけではない。

 クーベラが煽るように嗤いながら忠告する。

 

「これでも私はリアルで上流階級だったんですよ。

 特権階級相手ならある程度できます」

 

 それにブルースはニヤリと返した。




いつも感想評価誤字報告ありがとうございます!

没ネタ

「ちょっと待って…ここトイレットペーパーなくね!?」

「そりゃ異世界なんだしあるわけねえだろ」

「ええ…どうすんの」

「布系アイテムあるだろ、それで拭けば」

「手持ちの布系なんて装備ぐらいしかないんだけど」

「等級は?」

「一番下で伝説級」

「草」


下品すぎるので没
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。