ソロプレイヤー、ナザリックに挑む   作:No_46

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うわっ…俺たちのレベル、高すぎ…?

 何度目かの憲兵が感染拡大で倒れるのを見つつ、私はブルースの交渉とやらを聞く。

 

「交渉には手回しが必須です、セオリーとしては部下や共通の知人から渡をつけて交渉に行くのですが……

 残念ながら此処の竜王には家族や同じ竜族が存在しないので直接会って交渉する形になるでしょう。

 武器は絶対に抜かないでくださいね? 

 手を武器近くで抜けるようにするのもダメです。

 出来るなら姿勢を正したり形式なども調べたいんですが……時間も知識もここにはないでしょうね、竜同士のつながりしかないようですし。

 ただ、いざとなって今話したことを忘れてましたなんて言う人がいれば、責任を全部被ってもらいます」

 

 隊長から情報を聞き取り終えたブルースが、特に上位層ではない私を含めた4人を睨みつけた。

 

「信用ZEROって感じやな。

 流石に見つけてすぐ斬りかかるほど考えなしじゃないんですが」

 

「下層と外民と実験体だぞ。

 交渉のこの字もやったことないだろ」

 

「ラノベのタイトルでありそうな並びしてんな」

 

「あと俺に関しては最初に出会って逃げ出したドッグマンを焦って殺しちゃってたからなんも言えねぇわ」

 

「お前のミスやんけ……

 あ、私も見てるだけだったし同罪か」

 

 不本意だが言い返せない私と長文ネキで会話を進めていれば、摩利支店長が大剣の柄を撫でながらブルースを見る。

 

「とはいえ特権階級で、尚且つ肉体的な格差もあるんだろ? 

 ちょっとミスっただけでここの連中も殺されてる、正当防衛ぐらいはしないとナメられるぞ」

 

「わかっています、そもそも最初の対面では交渉自体できれば儲けもの程度、本命はホリックさん貴方です。

 たとえ交渉がまともに取り合ってもらえない場合、私とおねロリすさんで気を引いている間に竜王を拘束してもらいます。

 具体的にはおねロリすさんの幻術によって店長を隠してもらい、護衛の為に交渉する私の近くへ。

 クーベラはいざという時の為に後方待機、残り四人はホリックさんの隠密で近づき拘束をお願いします」

 

「それ交渉って言うのか……? 

 あと拘束って言っても無効化されるだろ最初の時もそうだったし」

 

 想像以上の脳筋っぷりに疑問を零す本命と言われた長文ネキ。

 

「もうゲームじゃないんです、拘束なんて腕や足を切り落とせば終わります」

 

「ええ……」

 

 ブルースの答えに少し引いた様子だが納得したのか黙る。

 そこで再度口を開いたのは摩利支店長だった。

 

「幻術が見破られたらどうする、不意打ちだと思われて交渉も何もなくなるんじゃないのか?」

 

「いえ、話を聞く限りこの世界では能力至上主義ともいえる価値観があるようです。

 だからこそ最初が弱い人間種はここまで落ちぶれている」

 

 ブルースがちらりと奴隷の少女へ視線を向ける。

 

「サプライズとしてお披露目するためなどの言い訳も使えますが、ある程度力のデモンストレーションとして見せることもできるでしょう。

 そして先ほども言いましたが交渉はあくまで可能性の一つ、目標は交渉の成功ではなく情報の引き出しです。

 竜帝との戦闘時にはホリックさんの隠密も通用している風に見えましたし、奇襲で何もさせずに拘束するのが一番です。

 拘束後は……魔法で聞き出すか無効化されれば優位に立ってからの交渉ですね、その時は私以外で口を開かないでください。

 変に情報を与えてしまっては折角の優位が崩れるでしょう」

 

 話し終え、継ぎ足した鮮やかな赤色のアルコールを一息で飲むブルース、そこで手を上げたのは意外にもたぬきだった。

 

「ちょい待ち、言語に関してなんだけど、最初の竜はワールドアイテム使う前にこっちの言葉話してたじゃん? 

 ワールドアイテム以外でなんかあったんじゃね」

 

「あれは頭の中に直接響く感じだったから……思考伝達系の魔法だと翻訳されて伝わるんじゃないか?」

 

「竜とほか種族じゃ会話方式が違う可能性もあるだろwwwwww」

 

 摩利支店長とクーベラが念話に言及すれば、ブルースも同調する。

 

「……確かに、アレは私たちの事も知っているようでした。

 竜という共通点で見てましたがゲーム内の隠しボスだった可能性もまだありますね」

 

「いやあの戦いのとき既に痛覚があった、地面の質感も現実そのものだったからゲーム内のボスの可能性は捨てて良い。

 何故私たちの事を知っていたのかはわからないが」

 

 そう締めた摩利支店長にブルースが「では交渉は一応無詠唱の伝言(メッセージ)で行いますか」と結論し、席を立ち始める。

 

「俺らがまだ飲んでんのに……やっぱあいつ嫌いだわ」

 

 未だジョッキに多くの酒が残っている木こりとタヌキが小声で文句を言うのを見ながら、長文ネキに私も続いて席を立てば、一人残されるのは奴隷の少女。

 みすぼらしかった見てくれは長文ネキの装備である程度マシになっていることに加え、気配も薄くなっている。

 彼女は無言で長文ネキの近くに歩み寄った。

 

「めっちゃ懐かれてんじゃん、それに装備上げちゃっていいの?」

 

「死蔵されてた伝説(レジェンド)級装備だしええやろ。

 それに兵士ぶっ飛ばしたらどうせ追われるやろし、レアキャラ一体ぐらいパクってもバレへんバレへん。

 本人も来るって聞いたら頷いたし」

 

「このロリコンめ! 

 通報しなきゃ⋯!」

 

「バックベアード兄貴かよ。

 ⋯電脳法ニキとかこんなに酒飲めるの羨ましがるだろうな⋯

 居るのか分からんけど」

 

「来てるとしたらもう事件起こしてそう。

 冗談はさておきレジェンドって……この世界で見たの軒並み遺物(レガシー)級どころか最上級も見ないんですけど……」

 

「……まぁここがクッソド田舎な可能性あるから。

 それに隠密と防御のどっちつかず装備だし高レベルが使用しても俺達なら対処余裕や」

 

「奪われて襲われる前提で草」

 

「基本のレベルが低いからなぁ」

 

 そうこう言いながら会計を済ませて店を出る。

 いつの間にか周囲に多くの人だかりができていたが私たちは素知らぬ顔で離れて行った。

 

 

 ***

 

 

 道中、食われそうになっている人間種の奴隷を「どうせ憲兵ぶっ飛ばして追われてるんだから」と助ける摩利支店長、それに乗じて人間種の奴隷を奪うタヌキと木こり。

 いつの間にか背後には十数人の人間種が集まっていた。

 

「目立つし推定高レベルの竜と戦うんだからどっかに隠しとけよ」

 

 そう言い放つおねロリすに分かってると言いたげな手の動きで人間たちは道中にあった廃屋に押し込められた。

 

 そうして鉱石で作られた見るだけで目が痛いほど煌びやかな豪邸、入口の内に居た門番を長文ネキが麻痺系の武装で気絶(スタン)させるのを眺める。

 やがて監視の目が無くなった門を長文ネキが開ければ、ぞろぞろと私たちはその豪邸へと侵入した。

 何故そんなことをしているかと言えば。

 

「ここで待つにしても無理やり侵入する必要なかったくね」

 

「町の人間に対する反応からまともな交渉が出来そうになかったので、何か弱みを探すんですよ。

 それに竜は自身の物を大切にするそうですから、自宅なら変に暴れる可能性は減るかもしれません。

 逆に町中だと反乱分子が建物ごと潰された話も聞けましたから。

 では無駄口叩いてないで動き出してください」

 

 長文ネキにさっさと動けと指示を出したブルース。

 

「探すって言ってもな……かなり広いぞ」

 

「とりあえず見て回ろうぜ」

 

 そう声を掛けた瞬間、私はピリッと脳裏に警戒色が浮かぶ。

 

「マジか……結構遠くでも感知できるんだな。

 長文ネキ、多分竜もう来たぞ」

 

「タイミング悪すぎだろ……」

 

 そう零す長文ネキに私は隠密をくれとせびった。

 

 

 ***

 

 

 巨大で煌びやかな豪邸を中心に存在する広大な庭。

 そこに一つの影が差す。

 

 ズシンッと音を立て着陸したのは鮮やかな赤い鱗を持つ一匹の竜、巧刃の竜王(ブレードマスター・ドラゴンロード)だった。

 

(まさか住処ごと消えているとは……

 全く……あの竜帝は余計な事しかしないのか。

 む?)

 

 広げていた翼をたたみ、豪邸の中へ細めた目を向ける。

 竜族特有の鋭敏な感覚からもたらされた自らの住処に存在する異変。

 

 視線の先、豪邸の中に佇んでいたのは明るい赤色のローブで身を包んでいる男と軽装に二対の直剣を携えている男の二人組。

 優れた種族としての瞳は暗がり且つ大きく離れているだろう人間の姿を鮮明に映し出していた。

 

(……また調子に乗った馬鹿が来たか? 

 門番たちは何をやってる、後で処分せねば)

 

 今までも門番を突破して彼に挑む馬鹿は数える程度に居た、その為かすぐ興味を失ったかのように、人間から視線を外し豪邸へ入ろうと足を進める。

 

『いきなり押しかけてしまい申し訳ありません。

 貴方が竜王と呼ばれる御方ですか?』

 

 その時、脳内に鳴り響いた言葉に目を見開き足を止めた。

 竜王は睨めつけるように再度視線を向ける。

 

(……魔道具、神託の竜王(オラクル・ドラゴンロード)が遊びで作ったものを適当に処分し、漏れ出た物か? 

 奇抜な装備ばかりでどれが魔道具か分からんが……問題はない)

 

 声を介さない意思伝達に驚きながらも彼は冷静に考えを巡らせた。

 とはいえ竜王の作り出したアイテムを悪戯に使用する、不届きものへの対処は既に決まっている。

 

『竜帝という方から紹介を』

 

 続く言葉が終わるのも待たず、動いたのは竜王の翼。

 大きく広げられ、たった一度の羽ばたきで数百メートルはあった距離を縮める。

 

 竜族以外では目にも捉えられない速攻をもって彼は尻尾を伸ばした。

 

(竜帝め⋯己の行いを鑑みれないのかアヤツは……

 異界の天災や人間を呼ぶのに飽き足らず、今度はその人間に魔道具を与え我が領地によこすとは。

 ⋯我が領地へ侵入した愚か者をどうするかはあやつも理解しているだろう、死んでも問題ない実験体ということか。

 住処が消えていたのは前と同じように息子が奪いに来るのを面倒に思ったからか? 

 我で試すなど能力が無ければ百殺しても足りぬぞ……!)

 

 竜帝への憎悪を秘めつつも思考は冷静そのもの。

 だからこそ気付く。

 

(こちらを目で追えている。

 それに動きも数段早い。

 あの二刀流が持つ武装も竜帝から授けられた魔導具だろう⋯まずいな。

 愚かだが才能は頭一つ抜けていた、何が込められているのかわからないのならば⋯)

 

 その動きに反応した二刀流持ちへの判断は一瞬、丁寧且つ高速な尻尾の動きが変化する。

 未だ二人組には届かない尻尾が石畳の通路へと突き刺さり、衝撃で浮き上がった二片のこぶし大はある石がすでに尻尾の到達点へ追いついた竜王の爪に弾かれた。

 

 竜王自身の素早さも乗った石が正確に腕へ当たり、武器を掴もうとした動きが数瞬遅れる。

 

 巧刃の竜王(ブレードマスター・ドラゴンロード)にとってはそれで十分だ。

 届く距離に近づいた彼は勢いのまま反転、鱗が丁寧に研がれ、鋭利さを持つ尻尾攻撃を行った。

 空中で体勢を大きく変更したというのに、鋭い鱗が揃う尻尾は、身に着けている装備だけを避け正確に二人の喉元へ向かう。

 

『ってもう攻撃してきたぞ』

 

 しかし鮮血が二人の喉元から流れることは無かった。

 

「⋯おねロリすさん、ちゃんと指示通り丁寧に話しましたか?」

 

「お前の指示が悪かったんだろ。

 ……こいつ最初の竜より動きも良いな」

 

「頭も回るようですね……私の動きも遅らせられましたし。

 まぁ良いです、拘束します」

 

 首に至る直前で尻尾が弾かれたからだ。

 現れたのは今まで感知できなかった全身鎧、手に持つ巨大な剣の腹が二人組を守るように掲げられていた。

 ゾッと今まで感じたことの無い寒気が背筋に走る。

 

「【無限切断】!」

 

 放つのは己が人生をかけ作り上げた魔法、気に食わないが力は認めている竜帝に見初められるほどの一撃。

 あらゆる抵抗を無視し、切り裂くこの魔法は巧刃の竜王(ブレードマスター・ドラゴンロード)という、二つ名に呼ばれるほど練り上げたもの。

 

(下等種族に使う事は恥だが、この感覚は天災により現れた異形共の上澄みと同等! 

 竜帝の本命はコレか!)

 

 それを。

 

「【次元断層(ワールド・ディスロケーション)】」

 

 いとも容易く弾かれる。

 

「なるほど、竜の使用する魔法もワールドチャンピオンのスキルなら止められるようですね。

 ワールドアイテムでは抵抗できるのでしょうか? 

 竜帝の時は可能でしたが」

 

「試す余裕なんてないだろ。

 次元断層で止められるのも他の魔法だと突破できるかもしれない、気を付けろよ」

 

 軽口を叩きながら追撃を仕掛けようとする3人、対する竜王が選択したのは迎撃だった。

 

「【剣山形成】【鋭爪】」

 

「おー変形した」

 

 緊張感のない赤いローブを纏う人間の言葉通りに、竜の尻尾、その鱗それぞれが研ぎ澄まされた剣のように鋭さを増す。

 

 だが振り回そうとした時。

 

 ズシンッと音を立てて落ちたのは今まさに鋭さを増していた尻尾。

 伏兵も何も感じられて居ないと言うのに切り落とされた衝撃に一瞬動きが止まり、鮮やかな赤色が尻尾の付け根から吹き上がる。

 

「右腕」

 

「では左を」

 

 痛みを感じる暇もなく迫ったのは、端的に役割分担を終えた戦闘職だろう全身鎧と二刀流。

 一拍遅れた事で防御をやむなくされた竜王は欠け一つない爪を交差させるように動かした。

 

「おお、物攻に振ってないんですかね、止めれました」

 

「大方DEX特化だろ、ユグドラシルじゃそういうステなかったけど」

 

 竜の膂力を片腕の剣で止めたのは二刀流、軽口を叩きながらももう片方の剣は鮮やかな軌跡を描き左腕の腱を切断、左腕が力なく垂れ下がる。

 対して全身鎧はまるで軽装であるかの如き身体性能でギリギリを避け、返すように大剣で右腕が切り落とされる。

 

(不味い、マズイマズイマズイ! 

 見誤った⋯! 

 力量を⋯!)

 

 一瞬で己の攻撃手段を奪われた竜王、しかしまだ後ろ足は動いた。

 

 全力で力を込め飛び上がる。

 同時に両足へ激痛、新たに現れたのは野蛮な姿の戦斧を持った男と巨大な盾と槌を持つ男。

 

 両足がグチャグチャに叩き潰されている。

 だが間一髪少しだけ飛び上がれた、この距離ならば武器を投げてもそう当たらない。

 

 全身を傷だらけにした竜王は唯一無事だった翼を広げ⋯

 

 無数の斬撃に包まれる。

 強靭な骨も、何年も風をつかみ丈夫に育った巨大な翼も、すべてがあまりに容易く切り刻まれた。

 

 今まで生きてきた中で一番の激痛、竜として生きてきてここまで一方的な戦いが起きたことなどなく。

 

(竜大戦も天災も生き残った我が⋯こんなところで⋯)

 

 後悔を最後に意識はすぐ闇へと落ちた。

 

 

 ***

 

 

「なんとかなったな、おねロリす、魔法通りそうか?」

 

「なんとかなったけどギリギリじゃね? 

 魔法はちょっと待てよ今確かめる」

 

「なんで最初に翼を攻撃しなかったんですか? 

 小学生でも飛んだら逃げられるってわかりますよ? 

 あっ、そういえばお二方は小学校行っていませんでしたね」

 

「無学なこいつらがそこまで頭回るわけないじゃんwwww

 使いこなせなかったブルースが悪いよこれはwwwww」

 

 無事竜を拘束し終え、待機させていたクーベラも合流。

 

 そんな中で煽りを受けているのは私だった。

 なんなら長文ネキまで流れ弾が飛んでいる。

 

「ウザすぎる⋯ウザさの次元が違う⋯」

 

「実際割と高かったけど届くもんなんやな」

 

「範囲攻撃スキル様々だね、あとジャンプしたら結構高くまで飛べたわ」

 

「ラビットマンかよ⋯」

 

「ゾンビなんだな、これが」

 

 と、そんな事を話しながらも鼻腔をくすぐる血の匂い、湧き上がる高揚感にやっぱり欲求増加系面倒だなと思いつつ、私は一度の攻撃で疑問に思ったことを尋ねた。

 

「こいつ何レベルだった? 

 めっちゃ柔らかかったけど」

 

「ああ、94レベル。

 ステは魔法戦士? みたいな。

 100レベル超えじゃなかったってことは割と弱い方だったんでしょ。

 情報隠蔽系持ってないっぽかったから初めて見るクラスとかも見えたけど⋯詳しい所はわからん」

 

「盗撮ネキが欲しくなるな⋯」

 

「つうか盗撮ネキいれば記憶見放題だから今の状況に特効すぎる」

 

「ほんそれ」

 

 予想外のレベルに運が良かったのか? と頭を捻っていれば、魅了の通った竜王が大人しく目を覚ました。

 早速人間の国だったり酒場で聞き出せなかった事を尋ねれば、簡単に情報が手に入った。

 

「⋯そもそも竜族以外は羽虫と同じ⋯ですか」

 

「94レベで最上位層って弱すぎだろwwwww

 ブルースが片手で止められるわけだwwwww」

 

「最初に戦った竜帝⋯傍若無人さで嫌われていたようですが世界最強は誰もが認めていたと⋯

 案外一番大きな難所は最初に越えていたみたいですね」

 

「プレイヤーを呼んだのもそいつっぽいし、蘇生すれば帰れるかもな。

 タレントの中でもその竜しか今まで発現したことのない、レベル上限を伸ばす希少なタレントに加えて天性の才能⋯

 製造系でも力があったっぽいし戦闘特化だったら負けてただろ」

 

「帰るどころかこの世界の資源を元の世界に持って帰ることができるかもしれません、いえ持って帰るよりも移住のほうが⋯」

 

「てか別の竜王が見つけたっていう空飛ぶ城って店長のギルドホームじゃね?」

 

 ブルース、クーベラ、おねロリすがそれぞれ話しているのを横目に私の意識は集まってきているこの街の亜人種に向けられていた。

 

「入っては来ないけど敵意ビンビンだな」

 

「気まぐれで作ったけど街自体は他の竜やモンスターとかから守ってたみたいだしな。

 ビビってるのかまだ乗り込んで来ないけどまた感染爆発で眠らす?」

 

「入ってきたらそうする。

 ま、竜は意外と一人でも殺せそうで良かったわ」

 

「ワールドチャンピオンなら余裕やろな。

 というか竜自体隔絶したレベルで強いって話だったけど⋯割と100レベル数人いたら余裕だろ」

 

「上手くやれば90レベル台でも殺せそう。

 つか天空城って摩利支店長のギルドよな」

 

「⋯ギルド来てるならワンチャン連合も居るのか?」

 

「来てたらろくな事にならないと思うが」

 

「それは本当にそう」

 

 そんな時、口を開いたのはずっと黙り込んでいた摩利支店長。

 

「俺のギルドかどうかは人間の国に行ったあと確かめるとして⋯

 もう、俺らで人間種の集団作っていった方が早くねぇか? 

 亜人も人間蔑視の連中ばっかりなら取り入るより早く簡単に終わる。

 アイツら人間遊びで拷問したりもしてるみたいだし俺達が助けてやったほうが幸せだ」

 

 その視線の先、亜人種たちの瞳には恐れと怒りが満ちている。

 

「確かに、最初から反感を持たれているのは面倒ですしね。

 竜もこの程度が上澄みならば気にする必要も無さそうですし。

 プレイヤーが居るという国へは人間を集めてからにしましょう。

 ついでにデモンストレーションも」

 

 そう言うブルースは片手に持っていた直剣で竜の首を切り落とした。

 下等種族の人間に護神竜が殺される、その衝撃に野次馬たちは動揺し静寂が広がる。

 

「デモンストレーションってなに」

 

 そんな周囲を無視して私はブルースを見た。

 

「この街にいる亜人種を凄惨に殺してください、できれば大量に。

 この世界ではプレイヤーが神として扱われているようですからね。

 人間種には受け入れやすく、亜人種には恐れを抱かせる神話を作ろうかと。

 簡単に言えば示威行為ですよ、人間を舐めるとどうなるか思い知らせる。

 人間の国も亜人共と戦っている様子ですし問題はないでしょう、むしろ人間の解放を賞賛される可能性もあります」

 

「マジ?」

 

 私は比較的まともな精神を持っているだろう摩利支店長とたぬき、木こりに視線を移す。

 

「害獣は駆除するべきだ。

 変に抵抗されても面倒だしな」

 

「いや、でも大量に殺す必要はないだろ」

 

 たぬきの言葉にコクコクと頷きを返す木こり。

 意外なことに摩利支店長は賛成だった。

 

「俺達が馬鹿な亜人連中に力を見せつければ、話が広がって別の場所の人間が助かるかもしれないだろ、もっと先のことを考えろ。

 それに力を見せつける事は俺たちの安全にも繋がることだ、獣でも力量差の見分けくらいはつく」

 

「だったら竜を殺した事で格付けはできた!」

 

「竜王は半ば信仰に近い接し方だった、おそらく現実味がないんだろう。

 こういうのは身近な方が効きやすい。

 それに人間は奴隷として、所有物として扱われてる。

 さっきみたいに抵抗するやつを殺さずに離す甘さを見せると寝首を掻かれるぞ」

 

「だったらお前も道中殺さずに奴隷を解放してただろうが、それはどういう事だよ」

 

「⋯俺が甘かった、この世界は想像以上に人間に対して厳しい。

 人間種全体を助けるためには所有者を殺すぐらいしないと他の連中は手放さないだろうし、悪習は続く」

 

「⋯だったらせめて逃げる相手は殺さない、それ以上は無理だ」

 

「ああ、お前たちは抵抗する奴だけでいい」

 

 結論が出たのと同時、私は背後にいつの間にか薄れていた長文ネキの気配が表れ声を掛ける。

 

「なんか隠密パッシブつけてなかった?」

 

「面倒事になりそうだったから気配消してたわ」

 

「お前さぁ⋯」

 

「ナヅキさん、ホリックさん、少しよろしいですか?」

 

 勝手に隠れていた事に呆れていれば呼び出したのはブルース、あの流れで私と長文ネキを呼び出したということはろくな話じゃないだろうと、私は飲食で上がったテンションが落ちるのを感じた。

 




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