ソロプレイヤー、ナザリックに挑む   作:No_46

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長文ネキそういえば性転換してたので性転換タグ追加しました。


欲望の高まり

 ブルースに呼び出されたのはちょうど亜人の処遇について話して居る摩利支店長達3人から見えない場所。

 クーベラも一緒にいる。

 

「ホリックさん、防音を」

 

「⋯【静寂の帳(サイレント・ヴェール)】」

 

 長文ネキのスキルが発動したのをブルースは確認し、口を開いた。

 

「お二人には逃げる亜人達の殺害をお願いしたいのですよ、たぬきさんと木こりさんは逃げる弱者を殺せないでしょうからねぇ。

 そして店長さんも、恐怖を与えるほど盛大には殺せそうにない」

 

 侮蔑の混じった表情は意外にも店長を含めた3人に向けられている様子。

 最初に話していた内容と相違はないが、私と長文ニキは正直やりたくなかった。

 

「はぁ? 

 そんな事すれば店長だけじゃなくタヌキや木こりとも敵対が確実になるわ。

 なんでそんな面倒事を俺達が引き受けるんだよ」

 

 同意するように私も首を振れば、ブルースは分かっていますと前置きしながら話し始める。

 

「ええ、もちろんタダでとは言いません。

 この世界にいる間は私の部下として扱い、元の世界への道が開通した暁には確実な報酬をお約束します。

 部下としてのメリットは……そうですね、食料などの融通や意見が割れた時の後ろ盾となります。

 それに反感は持たれるでしょうが、店長は必要なことだと理解しているでしょうから敵対とまでは行かない筈です。

 なにより、ナヅキさん、貴方のワールドアイテムを奪われたくはないでしょう?」

 

「……脅してんの?」

 

「まさか、可能性の話ですよ。

 ただワールドアイテムはこの世界において、一個人が有するには過ぎたアイテムであることは確か。

 遅かれ早かれ共用アイテムとして差し出すことになるでしょうね。

 その時誰かが貴方の味方に付けば、避けることも可能というだけの話です」

 

 ムカつく顔で私じゃなくメイン武器でもあるワールドアイテムの吸血残滴を見るブルースに苛立ちながらも反論するが、飯の時に長文ネキと話していた通り、ワールドアイテムが火種になるのは確実。

 味方としてブルースとクーベラがつくのならば火種を早いうちから消火できるかもしれない。

 

(ただ……信用できねぇえええええ! 

 絶対裏切るだろこいつら! 

 部下にするとか言ってるしよおおおおおお!!!!! 

 ぶち殺してぇ! ぶち殺していいか!? 

 とはいえここで拒否って味方が長文ネキしかいない状況で詰められるのもアカン……! 

 詰んだわ!!!)

 

 一見筋が通っているように見えながら、私と長文ネキを脅し且つ、手元に置くような内容に私は強烈過ぎる不快感を覚える。

 ただ部下になれと言われただけではありえない不快感に疑問を抱く寸前だった。

 私の内心を察したかのように、長文ネキが口を挟む。

 

「……そもそも俺らの理由が分かんね。

 自分で店長とか上手く言いくるめろよ」

 

 ブルースはようやく私のワールドアイテムから目を外し、私と長文ネキを見据えた。

 

「亜人を殺すということに対して、あなた方2人はどうとも思っていない、でしょう? 

 私達が村で亜人を殺した時も、むしろ楽しんでいる節さえありました。

 この手の行為を無理にやらせれば精神に異常をきたし、結果不和が広がることも多いんです。

 特に今、店長さんたちは厳しい現実に動揺している様子です、精神的な負担を軽く抑えれるのならばそのほうが良いでしょう?」

 

 その答えに渋い顔をしながらも視線を寄こした長文ネキ。

 

(私にどうするか任せる……ってこと!? 

 ここから逆に言いくるめるのなんて無理やろ……)

 

 不快ではあるものの、考えてみれば部下とはいえワールドアイテムを持っているのは自分だし、最悪長文ネキがいるから逃走は容易だろう。

 

(……まぁ別に部下とか言われても何でも言うこと聞く訳ないしな)

 

 思い返すのは指示をまるで聞かずに好き勝手やっていた2ちゃん連合の面々。

 ギルドマスターである筈なのに面倒事や尻拭いを丸投げされ、ブチギレながら後始末に奔走していた集会主。

 比較的常識人の長文ネキですら周りの行動を止めようとはしなかった中、唯一統制しようと奮闘していた彼によって2ちゃん連合はサービス終了まで存続していたと言っても過言ではない。

 

(集会主も仲間の扱い上手くなったよなぁ……

 最後らへんはログインしてなくても上手く情報操作したり秘匿情報ばら撒いて分裂抑えてたし。

 ……いや分裂はしなかったけど扱いが上手くなってたか……? 

 諦めて最低限のことしてたらブチギレなくなっただけじゃないか……? 

 ……。

 ま、まぁ私も裏切られることを前提に動けばそこまで悪いようにはならんやろ。

 何かこの約束とかで強制力が働くスキルとかあったらマズいけど、ワールドチャンピオンが絡め手系ビルド組むと方向食い違うし前見た戦闘からして持って無い……はず)

 

 集会主の努力を思い出しながら先ほど述べられた内容を脳内で反芻し、裏は無いかと考え、しかし何も思いつかなかったので了承を伝えれば、長文ネキは驚いたように二度見する。

 

(えっ!? 何!? 

 なんかやらかしたか私!? 

 部下になるのそんなにマズかった!?)

 

 内心あたふたする私をよそに長文ネキは溜息をついた。

 

「……わかった。

 ただしっかりと店長たちへの言い訳はしてもらうからな」

 

「ええ、もちろんです。

 私は魔力の少なくなった魔法職お二人の護衛として着きますので、低能な貴方方とは言えモブ狩り程度、できますよね?」

 

「一言余計なんだよなぁ……」

 

 煽るブルースの言葉を無視し、呆れたような長文ニキが文句を言いながら亜人たちへ向かって行くのに追従する。

 どうやら丁度、摩利支店長たちも覚悟を決めた様で各々の武器を構えていた。

 その様子を見ながら私は口を開く。

 

「一応亜人積極的に殺しますって意思表明しとくか?」

 

「結局殺すのは変わらんし言わなくてええとは思うが、てか今その話しても不和広がるだけだし仲間割れして竜にその隙を突かれるかもしれない。

 殺し始めてから一旦店長たちとは反対に行けば街も広いからそうそう目にはつかんやろ」

 

「最悪、違う! 今のはスキルが勝手に! って誤魔化すか」

 

「俺はそういう一発で周囲の血がブシャーみたいなスキル持ってないからナイフ投げオンリーよ。

 てかゾンビネキ的にアイツの部下って立ち位置に組み込まれたけどいいのか? 

 なんか死ぬほど不快だから変なスキルかけられた可能性あると思うんだが」

 

 長文ネキは不快感を露わにしながら足元の石を蹴り飛ばした。

 めっちゃ飛んでて草。

 

「私は別に絶対服従ってわけじゃないって考えればそこまで不快感無くなったが。

 部下だからって私らに強制できる程の弱みまだ握ってないでしょ、最悪逃げればいいって長文ネキも言ってたじゃん。

 つか集会主なんてギルマスのはずなのに連合メンバーが言うこと聞くとか稀だったし、部下とか立ち位置なんて形だけのもんよ」

 

「……確かにそうだな。

 なんか楽になったわ、サンガツ。

 ただこの不快感は一体……? 

 部下にする奴に不快なスキルぶち込むとか、いやアーコロジー住みっぽいし鞭ってことか? 

 ……今考えても埒がないわ、一先ず俺は範囲攻撃の手持ち少ないからゾンビネキに目の前に居る奴殺すの頼む」

 

「了解、取りこぼしはヨロ」

 

 近づいてきた私達に亜人からの視線が集まるのを感じながら、私は吸血残滴を引き抜き、切っていたツジギリスキル、【辻斬怪道】を起動した。

 

 

 ***

 

 五百年前、空よりも高い身長を持つとも、竜のようだとも言われる八欲王という存在が現れた。

 ソレらは瞬く間に国を滅ぼし、圧倒的な力を背景に世界を支配していった。

 魂は欲によって歪み、慈悲も持たず、ただ「望むもの」を奪うためだけにこの地を歩いた。

 ソレらが動き出したとき、世界は変わった。

 理は変化し、無数の種族が消え去った。

 

 中でも大規模な虐殺の象徴として語られるのが──「紅き花の八欲王」

 他の八欲王が多くの遺跡やアイテムを残している中、紅き花の八欲王だけは花という名前とは裏腹にただ殺戮の痕跡だけを残している。

 ソレは顔も形も知られていない、残されているのは深い剣の傷跡だけ。

 象徴である赤き花の伝承とは矛盾するように、誰もソレが振るった力を近くで見た者はいないとも語り継がれている。

 ただ、通り過ぎた場所には咽るほどの血と臓物が香り、血が空を描く。

 その花は、雷より速く咲き、泡沫より速く朽ちた。

 見た者は既に一人も生きていないが、亜人の大地へ数多の紅き花を咲かせ、虐殺を繰り返したという伝説だ。

 

 ある伝承にはこうある。

 

「その残虐性は留まるところを知らず、遠方からでもその惨劇の証左である紅き花を見せた」

 

 一説によるとその赤き花こそが名前の由来なのではないかと推察されている。

 世界各地の遺跡に残る、刻みこまれた不可解な刀傷。

 それは数百年を経てもなお、紅き花の八欲王、その存在を示す唯一の証。

 

 その本当の名はすでに風に消えた。

 八欲王の中でも群を抜く残虐さを誇った八欲王は、欲望の果てに何を見たのか。

 それを知る者は、もう誰もいない。

 けれども未だ、大陸に残る多くの国には似通った伝承が残っている。

 

「赤き花が咲いたのなら、ただ神に祈るのみ」と。

 

 かくして、紅き花の八欲王の伝説は、今もなお語り継がれていた。

 

 

 ***

 

 

 悲鳴がこだまするように響き渡り、血や首が宙を舞う。

 地面は血や臓物をまき散らした死体で溢れ、そのすべてが歪み一つ無い鋭い刀傷によるものであった。

 周囲の建物は私のスキルで切り刻まれ、殆どが雨風も防げないほどに破壊されている。

 既に目に見える範囲の亜人たちは微動だにせず、探知スキル【死角覚知】と変容した異形種としての聴覚が隠れて息を殺している吐息、嗅覚が汗ばんだ芳しい体臭によって正確な位置をもたらす。

 

(うーん、やっぱり一撃が実際に差し込んだ刀よりも深い傷になってるな! 

 雑に振っても血がドバドバ出てるし、クリティカルの恩恵これなのか? 

 ゲーム時代はクリティカルだとダメージが上がるってだけだったけど、こっちの世界だと致命傷になるのか? 

 よく分かんない!)

 

 私はそれを見ながらも心が揺れることは無く、それ以上に自らのメイン火力を担うクリティカルの仕様変化ともう一つの体の変化に頭を悩ませていた。

 長文ネキとはすでに攻撃範囲の違いから少し離れ、私は一人破壊と殺戮を繰り返している。

 

 クリ率とクリダメの上昇というゲーム時代の仕様が現実となった今、刀による傷はその身幅より傷を広げ、尚且つ重要な臓器や神経に到達しているのが良く見て取れた。

 とは言え指先を切り飛ばしてもゲーム時代の様にHP全損とまでは行かない。

 

 頭を悩ませながらも既に私と長文ネキは店長やたぬき達から離れた場所で亜人狩りを進めていた。

 

 逃げようとした亜人の背後に《極致:怪出死没》で回り込み首を切り飛ばす。

《極致:怪出死没》のワープは問題なく効果を発揮。

 ここに居る亜人はプレイヤーという判定なのか、短距離転移の指輪を無くしていた私としてはありがたい。

 

(左腕も結構慣れてきたし、前の体以上に馴染んでる気もするな!)

 

 そう考えながらも、もう一つの体の変化が誤魔化し切れないほど高まったことによって動きを止めた。

 

 身体がこわばり、そして弛緩する。

 見なくても分かっていた、私の下は今、とんでもなく濡れていることに。

 

(めちゃくちゃムラムラする! 

 なんで!? 

 私そんな危険な性癖持ってたっけ!? 

 死体のはずなのに体が熱を持ってる気がするし! 

 血の匂い嗅いでるだけでなんかテンション上がってくるし! 

 ……なんか電脳法ネキに聞いた酩酊してる時と状況似てるけど、ゾンビって血で酔っ払ったりするの? 

 ヴァンパイアかよ! 確かに進化先にはあったけどさ! 

 それに……ナァ……)

 

 私は視線を下げ、地面に広がる血だまりと臓物、そして死体を見る。

 まるでそれらがステーキやケーキであるかのように旨そうな感覚、更に。

 

(まだ生きてる存在が沢山居ることがうれしくて、それをどうやって切り殺すか。

 最初に広範囲ぶっぱして気持ちよくなってからずっとそんな事ばかり考えちゃう……

 パッシブのせいだろうけど、でもめっちゃ気持ちいいんだよなぁ! 

 やばいなこれ、性欲と満足感と高揚感が一気に押し寄せてくるとか、ほぼ麻薬だろ!)

 

 私は既に限界だった、これ以上殺せば止められなくなりそうな予感と、それ以上にブルースからの大義名分でやっちゃいなよ! という気持ちがせめぎ合っている。

 

「……ッ! 死ねぇ!」

 

 と、心地よさに身を浸しながら立ち止まったことで隙を見せたと勘違いしたのか一人の兵士が直剣を片手に飛び出てきた。

 

 その首を私は無意識の内に切り落とし、同時に快感が絶頂に至ったことで、首を無くした胴体のすぐ横で立ち止まる。

 

 ドクドクと未だ力強く鼓動する心臓が既にない頭部へ血を送ったことで、近くに居た私の頬へ、血飛沫がかかった。

 

 思わず出したのは今まで気にもしていなかった舌、10㎝以上に伸びれば私の頬に付いた血液を嘗めとる。

 

(ああ、人食べる設定の異形種って、こんなにうまく感じるのか)

 

「クヒ、ヒハッ!」

 

 口角が上がる。

 堪えきれない愉しさに笑みが溢れる。

 

 店で食べた食事とは種類の違う、本能の渇きを癒すような充足感。

 どこか他人事な思考を最後に、私はこの欲望へ身を任せた。

 




二か月…!?
本当に申し訳ありません、ペースを戻していきます。
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