アインズ・ウール・ゴウンの襲撃によって失ったのは価値の低いドロップアイテムや金貨、そして七色鉱と私の装備の一つだ。
ドロップアイテムや金貨は……まぁまだ良い。
だが私が所有していた行動阻害完全無効化の指輪をドロップしてしまったのは正直結構つらい。
私の装備はまだ完全に完成してはいない、そんな中でドロップした指輪は数少ない完成品ともいえるレベルで作りこんだ逸品だった。
造型・素材・効果、すべてを現在のユグドラシルにおいては最高レベルで組み合わせたその指輪は、装飾も結界のような幾何学模様が刻まれており豪華絢爛さはないが幽遠を感じさせる造型を作り出されていたもので、ユグドラシルプレイヤーが指輪に力を入れるところが少ないという部分からも、自信作な逸品だった。また指輪に対して一部を除いた行動阻害系全般の無効化というデータクリスタルは破格の効果に相応しいデータ容量を誇る。
大まかに行動阻害と言える時間系はなぜか別で装備しなければならないのは運営君に疑問を投げかけたいところだが、これ一つで時間操作系以外をすべて無効にできるというのはやはり非常に有用だった。
とりあえず、膨大なデータを誇るデータクリスタルを入れるためには、特に設定容量が低い指輪だとゴッズアイテムの中でも上澄みレベルの鍛冶ガチャを繰り返さなくてはならなかった。
ようやく作りだせた時の喜びはほとんどなく、苦行がやっと終わったという解放感のみがあったのはここだけの話。
元はユグドラシル公式大会にて、超課金ニキからの最後のアーティファクトで行動阻害によってトドメを刺されたことから作成し、特に動き回る前衛職である私には必須ともいえる装備だろう。
装備系七色鉱アンオブタニウムと超希少貴金属のブルースカイ・メテオライトをふんだんに使用し、町の一番レベルが高く、隠された鍛冶NPCに超高額のユグドラシル金貨を払うことで作成された指輪は支払ったユグドラシル金貨によって上限値の幅が可変する仕様(それでもガチャ)によってプレイヤーメイドレベルと遜色ない出来になっていた。
(つーかプレイヤーメイドならユグドラシル金貨馬鹿みたいに使わないんだから‥次は鍛冶系のNPCをずっと作らなきゃって言ってる気がするけど……
良いキャラがなぁ……女キャラは大前提としてどんなキャラにすべきか……
……まぁそれは置いておいて、状態異常無効系の指輪もういらんのよな……ワールドサバイバーのクラススキル強すぎ! まさにチートやでホンマ。
他のプレイヤーが意外と作りこんでない指輪自体の外装もめちゃくちゃ力入れて作ったからな、売ればかなりの金貨にもなっただろうし、完全無効だからNPCの誰かにあげても良かった。
クッソ……なんか冷静に考えると辛くなってきたわ……レア度高い方がドロップしやすいなんて仕様作ってんじゃねぇよ! 糞運営!
あれ売ったら多分今死んでるNPC全員生き返らせてもおつり来るっていうのに……
いや、拠点が無い今は夢子の蘇生はしないほうが良いな、流石にずっと連れ歩くのは危険すぎるし……)
そう考えながら私は金貨をよく落とす二足歩行のカエル型モンスターを狩り続けていた。
こういう時に広範囲斬撃スキルの千斬刀閃はありがたい。
凡そ1日こもれば1億程度稼げる狩場であり、カエル型モンスターの巣には高額でNPCに売れるアイテムもたまに存在している為比較的人気である。
経験値効率はそこまででもないが全NPCを蘇生させる金貨が貯まるころには、レベルも100にまで戻せるはずだ。
周りで同じように狩りをさせているNPC達がいるので更に早く蘇生できるかもしれないが、ゆったりとやっていこう。
羽川が爪を巨大な刃物に変形させて敵を切り刻んでいたり、カペラが周囲のカエルを竜のように変化した腕で薙ぎ払い、生き残りは状態異常にして動きを止める。
そこをヘスティアが一気に浄化させるのを横目に私はただスキルを延々と発動し続けるだけだ、こういう間はちょうどいいと今月の仕事ノルマを早く終わらせるために片腕でスキルを発動しながらもう片方は仕事という二刀流を行う。
たまに襲い掛かってくるPKをワールドサバイバーによって特に上昇したHP、スタミナ、そして速さで返り討ちにしながら私は黙々と仕事と狩りを続けていた。
そんな面白みも糞もない一日が終わりかけになった時、
ピピッ
私に来たのは
「あ~聞こえていますか?」
その声はたっち・みーのものだった。
驚きに一瞬固まるが
「ハァ……聞こえてるが」
と返答をする、そういえば昨日の襲撃メンツに居なかったなと思い出し
(やっぱり、ワールドディザスター返してってところかな……?
済まねぇたっち、もう私にはないんや……
まぁあっても返さへんけどな!)
そんな予想は最初の一言目で裏切られることとなった。
「まず、謝罪をさせてください。
昨日の襲撃、本当に申し訳ありませんでした!
ましてやギルドホームすら破壊してしまうなんて、弁解のしようもないです」
その言葉には、多くの罪悪感と少しの怒りが籠っていると私は感じた。
「え!? あ~いえ、別に、何もしなくて、大丈夫ですよ……?
元々継続課金の、ハリボテギルドだったので……」
まさかの謝罪に驚きつつ、そこまで思わなくても……と内心私はドン引きする。
「いえ、だとしても一人で活動しているプレイヤーにこちらが大人数で攻め込み、アイテムを奪うどころか、あまつさえギルド武器まで破壊してしまった。
元々はそれを止めるために結成したギルドだったというのにです。
止めるべき私が止められなかった償いとして、せめてウルベルト達が奪ったアイテムだけでも返させてください。
ギルドは……破壊されたギルドホームの代わりにはなりませんが、こちらで見つけている高レベルダンジョン型のギルドホームがいくつかあるので、一緒に攻略をさせてください。
その道中のドロップ品やボスを撃破した時の最初のアイテムも、すべてお渡しします」
「は!? い、いやいや! 悪いですって! さ、流石に、そこまでしなくても大丈夫ですよ!
ふ、普通に金貨と私のドロップアイテム返してくれれば大丈夫ですって!」
「ですが、貴方のNPCをギルド武器の破壊によってすべて失わせてしまった……
貴方がどれだけNPCの製作に力を入れていたのか知っていたというのに、です」
横目で元気にモンスター狩りをしているNPC達を見ながら、私はさっさとギルドホームを作らないとNPCのウソがばれる確率が爆増する事実に、冷や汗をかいた。
「え!? あっ……いや、まぁそうなんですけどね……
……わ、分かりましたよ、謝罪をう、受け入れます……
えっと、どこで受け渡しますか? め、メールとかです?」
「……本当は目の前で謝罪を行いたいのですが、私たちが貴方を罠に嵌めて更にキルをするという可能性が無い事を証明できません、最初にすべてのアイテムやドロップした指輪、七色鉱をメールに添付させて返します。
ギルドホーム攻略は、信用できないというのなら場所と私たちが分かっている限りの情報を添付して送ります。
……謝罪を受け入れてくれて、本当にありがとうございました……
何か要望があれば、返す金貨の量を増やすことやレアドロップ品を渡すぐらいならできますけど……」
「い、いや大丈夫ですって! 気にしないでください……
いや……
あ~じゃあ七色鉱の半分、ペロロンチーノさんにあげてくれませんか?
NPC狙わないでいてくれて感謝しているっていうのと、シャルティアの装備めっちゃ可愛いの期待してるって言ってくれると助かります」
「……それでいいんですか?」
「ま、まぁ防衛戦も楽しかった部分もありますし……ペロロンチーノさんはNPCには攻撃をしてなかったんですよね……
私にも最初の攻撃以外はほとんど当てる気が無かったみたいですし……」
「わかりました……伝えておきます」
その言葉を最後に
(うぉ……マジで返ってきた……
指輪もちゃんとある! ヨシッ!
これは意味なかったのにつけっぱにしてた自分も悪かったからなぁ……
NPC……羽川にあげるかな……
意外と転移系で逃げられてたしこれで阻害無効付けたらもっと捕らえられなくなるぜ!)
予想外の返還によってまるで激レア宝箱から新しくアイテムをゲットした時のようにテンションが上がった私は、とりあえず金貨を色々な金庫で分散させて保管することに決めた。
(新しくギルドホームを探す手間も省けたし、なんかようわからんけどラッキー!)
*
*
*
ナザリック地下大墳墓、円卓
話しながら頭を営業職のように下げていた純白の騎士、たっち・みーが通話を終わらせた。
「……なんとか許してはもらえました」
その言葉に円卓に座っている数人がほっと息を吐いた。
「まさか、マジでソロギルドだとはね……
最初のNPCの動き、下手なプレイヤーかと思うレベルだったし、2ちゃん連合のマーク付けてたから連合系のギルドに入ってるもんだとばかり……」
「AIも自作でしょうね……
データは残してるでしょうけど、あの数のNPCをもう一度作るのにはどれだけ手間かけたのか……」
「ホワイトブリムさんも確かメイドめっちゃ作ってましたもんね……」
「1体でも結構時間かかるんですよ……
しかもそれぞれ造型が滅茶苦茶激変してるのに……」
内二人、ウルベルトとやまいこが特に意気消沈している。
「やっぱ最初に提案したことがばれて、たっち・みーさんにやってることが悪じゃなくてただの小悪党って言われたのが効いてるんでしょうね……」
「襲撃もたっち・みーさんがログアウトして言い始めたのでやっぱり自分でも情けないってわかってたと思うんですけど…」
「やまいこさんも、レズっぽいからって苦手意識と教師生活の経験から普通の子供じゃなくて子供のフリをしたプレイヤーだと思って多対一の状況を忘れちゃったのは不味いですよね……」
「優勝するんだからてっきり連合ギルド入ってるもんだとばかり……」
「ウルベルトさんも流石にギルド武器破壊はねぇ……最後に煽られたからってやりすぎ、止めれなかった私も責任はあるけど……」
「相当恨んでるでしょうね……NPC全員いなくなるってことですし、装備とかも一緒に消えてる可能性も……」
「逆に良く許してくれましたね……」
「確かに怪しいところ多いけど、やっぱり疑わしきってだけでリンチみたいな行為になっちゃったのはダメだよねぇ……」
「タブラさん? 怪しいところって? 俺それ聞いてないんだけど」
「異様に速度変化とかバフとかに適応するのが早いんですよね……
ただ運営からずっと見逃されてるところを見ると本当にチートしてない天才って可能性もあります。
まるで知ってるみたいにワールドアイテムやワールド職を習得してますし疑わしいのは否定できませんが」
「計算高すぎて子供とは思えないってやまいこさん言ってましたし、そもそもやまいこさんの話だと上級の子供はそもそもしっかりと勉強させられるらしいですからこんなゲームにかまってる暇もないって言ってましたね……」
「だからって集団で一人を袋叩きはやばいよ」
「意外と生き残るから熱くなっちゃったわ」
「ニシキ、俺が言えた事じゃないがそういうことは心の中に留めておけ」
「ロンギヌスとか言うアカウント削除できるアイテムも持ってたんですし、ワールド職取れてるから使う可能性は低そうだったとはいえ使わないともいえないので、これからはこうやって恨みを買うようなことは減らさなきゃですね……」
アインズ・ウール・ゴウンの面々が暗い雰囲気の中、ぷにっと萌えの言葉で後に【誰でも楽々PK術】の最後に、時と場合によるがPKした相手のドロップ品を返すなどして恨みを抱かせない行動は必須。との文言が入るのは別の話。
「ペロロンチーノさん、ちょっといいですか?」
その言葉にギクリと体を強張らせたペロロンチーノ、「お前なんかやったんか? 殺すぞ?」という雰囲気を滲み出したぶくぶく茶釜の視線を受けつつたっち・みーの下へ向かう。
まるで死刑場に向かう囚人のような足取りで
「茶釜さん、そんな怒るようなことでもないですよ。
ナヅキさんからペロロンチーノに「NPCを狙わないでいてくれた事に感謝と、シャルティアのめっちゃ可愛い装備期待してる」って伝えてくれと言われて、七色鉱の半分をあげるとのことです」
「マジですか?」
「マジです」
「おお……弟、良かったな」
「え! じゃあもっと全身ゴッズとか見えてくるよ!?
やったー! どうしよ、どういうふうな装備作ろうかな……
後でメッセージで感謝しとこう……うん」
一瞬で茶釜の雰囲気が和らぎ、ペロロンチーノは喜びをそこそこに、既に装備のことに頭が埋め尽くされたようですっかり考え込み始める。
ゴッズ装備2つ分の七色鉱は2つだけとは言え膨大でありその分流通しているものから購入しようとすればギルドの金貨を大きく減らすことになるだろう。
「マジか……良いなぁ」
「七色鉱探しもしたいですよね」
「やっぱりゴッズ装備は必須ってバトロワでも実感しましたしね」
アインズ・ウール・ゴウンの雰囲気も少し和らいだように思えた。
***
【ユグドラシル】質問スレ【part37】
107:名無しの電脳
ゾンビネキ降臨したってマジ?
108:名無しの電脳
マジやぞ
109:名無しの電脳
上スクロールすらできないの?
110:名無しの電脳
普通にギルドホームが炎上してるのを笑ってたのはちょっと怖い
111:名無しの電脳
もう笑うしかなかったんだろ
112:名無しの電脳
いや、優勝したらこういうデメリットもあるのか……
113:名無しの電脳
上位ギルドのお礼参り、連合側にはまだ来てないね
114:名無しの電脳
まだ←ここ重要
115:名無しの電脳
対策考えないとな……
まぁなんとかなるやろ
116:名無しの電脳
どうせ勝てんしええわ
117:名無しの電脳
考えるの苦手なんや、すまんな
118:名無しの電脳
ええんやで
119:名無しの電脳
いざとなったら誰か考えるやろし
120:名無しの電脳
他力本願の極み……!
121:名無しの電脳
ゾンビネキギルドホーム燃えたってマジ?
122:名無しの電脳
写真付きやぞ
>>33
123:名無しの電脳
ええ……
124:名無しの電脳
なんで呑気に写真撮ってんだよ
125:名無しの電脳
めっちゃ燃えてて草
126:名無しの電脳
つーか前から言われてたけどマジでネキここ見てたんだな
127:名無しの電脳
そりゃエンブレムつけて参加してるんだから見てるだろ
128:名無しの電脳
もっとデカい本スレあたりの住民だと思ってた
129:名無しの電脳
わかる
130:名無しの電脳
意外と質問スレ強者多くない?
131:名無しの電脳
なんで質問スレなのに強いのか
132:名無しの電脳
本スレにも全裸ネキ(ネカマ)とか電脳法ギリギリニキとか白濁した三連星とかいろいろいるぞ
133:名無しの電脳
ええ……
134:名無しの電脳
白濁した三連星、めっちゃ臭そう
135:名無しの電脳
全裸ネキが電脳法ギリギリニキなのでは?
136:名無しの電脳
ちゃんと全裸ネキ(ネカマ)って書け
137:名無しの電脳
やだよめんどくせぇ……
138:名無しの電脳
>>135
ちゃんと別人だぞ
139:名無しの電脳
ちゃんと別人なんだ……
140:名無しの電脳
そっちのほうが最悪じゃん
141:名無しの電脳
くだらねぇ話ししてねぇでなんで本スレよりここのほうが強いんだよ
142:名無しの電脳
情報収集したり未知に挑んだりするプレイヤー多いらしいしそれじゃね?
143:名無しの電脳
このゲームは未知を探索して切り開くゲームだからな
144:名無しの電脳
割と常識的な答えが返ってきて驚いてるよ俺は
145:名無しの電脳
今気づいたんだけどゾンビネキってギルドホームモッてるってことはギルド所属してたんだよね、どこ?
146:名無しの電脳
どこも何もソロギルドだぞ
147:名無しの電脳
ソロギルド!?
148:名無しの電脳
ええ……存在が矛盾してんじゃん
149:名無しの電脳
それ言ったらゾンビのワールドサバイバーの方が矛盾してるから
150:名無しの電脳
草
151:名無しの電脳
確かにそう
152:名無しの電脳
言われてみれば
153:名無しの電脳
目からウロコだわ
154:名無しの電脳
バカしかいねぇ……
155:名無しの電脳
またギルドランキングとかで見れば中位ぐらいには居そうだけどそんなギルド見たこと無いぞ
156:名無しの電脳
課金ギルドホームだとランキング乗らないんだよなぁ
その分ギルド作成アイテムいらないけど
157:名無しの電脳
課金ギルドホームちょっと課金してみたけどほぼ倉庫だよあれ
158:名無しの電脳
NPC作れないのもあるし、作れるところは高いし
159:名無しの電脳
まぁこれでギルド課金で最強ホーム買えますとかだったら激萎えだし
160:名無しの電脳
普通のダンジョンギルドホームでも課金して拡張できるぞ
161:名無しの電脳
銭ゲバ運営め……
162:名無しの電脳
新たな運営の呼び方来たな
163:名無しの電脳
アインズ・ウール・ゴウンに攻められたのか、ワールドディザスター奪っちゃったしな
164:名無しの電脳
しゃーない
165:名無しの電脳
ゾンビネキでも数には勝てないのか……
166:名無しの電脳
戦いは数だよ兄貴!
167:名無しの電脳
やっぱり報復対策考えたほうがいいのでは……?
いつも感想評価誤字報告ありがとうございます!
鍛冶NPCについての情報は活動報告の方にお願いします。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=320971&uid=294136&flag=1