ソロプレイヤー、ナザリックに挑む   作:No_46

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連続投稿したいけど時間ががが…


ボス戦だぁ!

 私はPKができない町の中に入り一息つく。

 確認した限り、インベントリ内ならばワールドアイテムのバフである世界の守りは発動しないが、装備するとバフがついて、もろバレになるようだ。

 

(あれ…? これってつまりインベントリ内にWIを入れてて、それが盗まれる可能性もあったよな…

 だったら気付けなかったじゃん…! 今回は運がよく気付けたけど…こういう未確定なものに時間をかけるのは今後気を付けよう。

 はい! 自省タイム終わり! 

 ふふふ、ワールドアイテムの効果は見ずに取得したことだけ確認してたから、実際どんな効果なのかな!)

 

 私がインベントリを開いて、ワールドアイテムを探せば、ソートせずとも一番上に、一つだけ存在感の違うアイテムが入っていた。

 形はネックレス型、アイテム名は

 

(ダヴはオリーブの葉を運ぶ…か

 効果は…??? なんだこれ)

 

 薄い緑色でオリーブの葉をイメージしたようなネックレス。

 ワールドアイテムなだけあって効果は破格なのだろうが、

 

 *

 ダヴはオリーブの葉を運ぶ

 

 効果

 1日1回、ネックレスによってプレイヤーが行ったことのない新天地に転移する。

 *

 

 新天地とはどこなのか

 そもそも1日一回使えるとして、瞬時なのか否か

 

(一応緊急脱出みたいな使い方はできそうだけど、行ったことのないっていうのがなぁ

 未知の場所でそこがゾンビに特攻がぶっ刺さる炎ゾーンとかだったら終わりだし

 何より一度行った場所にもう一度いけないっていうのが微妙感をさらに強くしてる…

 いやっ!! ワールドアイテムというだけで十分なんだし、詳しい使用感とかは今後考えるとして、次は何をするか)

 

 私は考える、この1か月と数日間は作業のようで楽しくなかった、転移するからこそ本気で取り組まないといけないが楽しくないとやる気も削がれる。

 せめて仲間がいればいいのだが…

 

 正直、私は迷っていた。

 ナザリックに入ることが目的とは言え、本当に参加できるのか。

 そもそも同じプレイヤーで転移をして、仲間割れが起きないのか。

 私は、絶対に安心できる相手が欲しかった。

 だがそんなものは人間である限りあり得ない。

 

 そんな時、私は天啓を感じた。

 

 生産職によって製造されるゴーレムやホムンクルスなど、味方のモンスターを扱えば、ある程度AIを組み込むこともできるかもしれない。

 設定で絶対に裏切らない楔を打ち込むこともできる。

 何よりも私が自ら作り出すことで、転移先では私だけを完全に信じ裏切らない存在を作り出せるだろうと! 

 そうと決まれば善は急げと、私はまず高レベルモンスターの制作に必要な高レアドロップアイテムの為に定期的に開催されていた公募系のレイドやボス討伐に参加しようとクエストカウンターへ向かった。

 

 

(いきなり梯子を外された感

 こんなに異形種ってハブられてるんやなって…)

 

 意気揚々とクエストカウンターに行くも、誰も己をレイド戦に入れるどころか、ボス討伐の仲間に入れてくれることもなかった。

 

(勝てそうなボスだけソロで受けてみるか…)

 

 そうして私の長い一日が始まった。

 

 クエストに導かれ、瘴気の森というマップに入った私を出迎えたボスは私と同じくアンデッド種のゾンビ系、恐らく状態異常特化だ。

 

 通常のゾンビが無限ポップする中、ボスである群体のゾンビたちがそれぞれ口から瘴気のようなものを放っている。

 多様な色の瘴気に触れれば黄色ならば麻痺(パラライズ)、紫なら猛毒、赤なら火傷といった形だ。

 全部アンデッドの特性状態異常無効を貫通してくる、流石はボスといったところだろう。

 

 だが、触れても問題がない瘴気もいくつかある。

 くすんだ錆色の腐食、下に停滞している黒色の鈍足等だ。

 

 腐食は装備の耐久値を減らすものだが私が持っているのは店売りモンクバフのチャイナ服だけ、鈍足に至っては足がゾンビの初期レベルの動きに落ちるだけであり、上半身は全く動きが鈍らない。

 

 アイアン・スキンを発動し周りの雑魚を活かしながら掠りダメージも減らす。

 突破できる瘴気は無視をして接近し、ナイキスキル【気爆掌】を叩き込んだ。

 接触状態では個人攻撃、接触していなければ拡散する衝撃波を放つ範囲攻撃へと変化するこの攻撃は、範囲攻撃の威力が特に低い代わりに接触状態の威力は格段に上昇する。

 だが

 

 減ったのはゲージの2%弱、手持ちで最も威力のあった攻撃が予想していたほど急激に体力を減らすことができずに終わった事実。

 私が驚愕するまもなく群体ボスゾンビは群体として取り込まれているゾンビたちの体を繋げ、巨大な腕にするとそのまま振りかぶってきた。

 

(やべぇ逃げなきゃ…って足が動かない! 

 いつの間に鈍足の瘴気撒かれた!?)

 

 周囲の雑魚ゾンビによってかき乱された瘴気は私が視線を外しているうちに足元へ接近し、それを私は踏み抜いた。

 

 目の前には迫りくる巨腕、もう逃げる時間はない。

 だが私は覚えている、前世の記憶のとある避け方

 

(うぉおおお! 

 マ ト リ ッ ク ス 避 け !)

 

 足を動かさず膝から上だけ急激に地面に接地するレベルに仰け反る。

 身体スレスレをゾンビで形作られた巨腕が猛スピードで通り過ぎるが、ダメージは入っていない完全に避けきった。

 上半身にぶち当たれば打ち上げられるような巨腕の一撃を命からがら躱した私は起き上がり小法師の様に勢いよく体を起こし強力な攻撃を外した隙を晒す群体ボスゾンビに気爆掌を再度叩き込む。

 

(あっぶな、ギリギリだったわ。

 そろそろ鈍足効果も…よし解けた。

 脚元も見ないとだめだな。

 ダメージはやっぱりそこまで入ってない…

 次はちゃんとボス用の装備とか買ったり特攻武器作らないとダメージ通らないっぽいな、でも行けるところまでやろう)

 

 周りの雑魚を減らしつつ、空いたスペースからちまちまとボスに攻撃を叩き込んで数十分、ようやく体力は半分を切るが

 

ギィイイイイイ!!! 

 

 金切声と共に群体と成っていたゾンビがバラけ、地面へと落ちてゆく。

 

 ゾンビを落とし現れたのは、通常以上の体躯を持っていたスライムであった。

 

(あれ? スライムってゾンビにならないって聞いたけど…

 ゾンビ取り込んでてスライム自体はアンデッドじゃないとか? 

 っていうかスライムだからこっちの物理攻撃効かなくなったじゃん!? 

 ナイキ、ガイキ系のスキルならダメージ通る?)

 

 振り落されながらも瘴気を吐き出し続けるゾンビを間引いて、瘴気の層自体は薄まる。

 しかし近づいてスキルを使おうにもボスであるスライム自体の攻撃は一層過激になった。

 幾本もの触手を伸ばし薙ぎ、振り落とすゾンビの攻撃に私は下がりながらも遠距離系ガイキスキル【遠気当て】を使うもほとんどダメージが入っていない。

 

(やっぱり魔法系じゃないとほとんど通らないみたいだな…

 もったいないけどここが使いどころだぁ! 

 散々倒しまくったデーモン系モンスターのレアドロップ、悪魔の頭蓋! 

 使用すると無差別に攻撃を始めるレベル70以上のランダムなデーモンを召喚するアイテム! 

 こっからは持久戦だぜ!)

 

 悪魔の頭蓋をインベントリから取り出し使用すると宙に浮きあがり、禍々しい瘴気のエフェクトと笑い声を発しながら砕ける。

 発生した瘴気から出てきたのは頭冠の悪魔(サークレット)、膝辺りまである長い2本の腕と2本の足を持つ枯れ木のような悪魔だ。

 2つの頭部を付けて一度に合計で第6位階まで使うことが出来、最高の発動位階は5位階の魔法職、魔法を扱う、ランダムで出現する悪魔の中では当たりの部類だろう。

 だが

 

(いや、でもアイツ首付けないと弱いんだよなぁ)

 

 素の状態では頭部がもともとある一つしか使えないためそれほど強くないという弱点がある。

 

(ランダムなデーモンの中で魔法使える悪魔を引けたんだし、当たりだろうけど…

 これ時間がかかるぞ~どうするか…もう一回悪魔の頭蓋を使おうにも仲間割れ起こしそうなんだよなぁ)

 

 私のそんな危惧は意外にもすぐに解消された。

 頭冠の悪魔(サークレット)は周囲の瘴気ゾンビの頭を体に括り付け、魔法を発動する。

 スライムの体にいくつもの第3位階から第5位階の魔法が叩き込まれていく。

 ボスに対して位階の低い魔法ではそこまで大したダメージにはならないがそれでも全く入らないよりかはマシだ。

 

(うぉおお!!! いいぞ頭冠の悪魔(サークレット)! がんばれ頭冠の悪魔(サークレット)! 

 ってめちゃくちゃ狙われてるぅ! 

 援護しなきゃすぐ死ぬぞこれ!)

 

 いくつも叩き込まれる魔法によってスライムのターゲットが移り変わり、頭冠の悪魔(サークレット)に集中的に触手が延ばされる。

 いくつかは避けてるがユグドラシルのAIはそこまで頭がよくない、劇的に減少する頭冠の悪魔(サークレット)のHPを見た私は後ろに回り込み、気爆掌を叩き込んでターゲットを移させる。

 第5位階の魔法よりも通っていないダメージを見ながらも、近くの私にターゲットを移したスライムの攻撃を躱しながら、頭冠の悪魔(サークレット)にヘイトが向かないように、ちまちまとスキルでヘイトを稼いでいく。

 

 やがてスライムのHPがなくなった時、私と頭冠の悪魔(サークレット)のHPは殆ど残っていなかった。

 

(ありがとう頭冠の悪魔(サークレット)、ではさらばだ)

 

 私はボスのスライムだけでなく頭冠の悪魔(サークレット)にも狙われていたため挟まれて攻撃を受けた時は本当に死を覚悟したが、何とか生き残ることができた喜びを噛み締める。

 ボスが消えたことを確認した私は頭冠の悪魔(サークレット)に向けて気爆掌を放つ、頭冠の悪魔(サークレット)のおかげで倒せたとは言え一番周囲に攻撃を撒き散らしヘイトが大きかったスライムが消えたことでヘイトは私に移った。

 HPはもう殆ど残っていないのだから気爆掌で倒せるだろうと適当に放つ。

 そんな私の考えと裏腹に頭冠の悪魔(サークレット)は大きく後ろに下がると気爆掌の範囲外に退避し、確保していた首から火傷の瘴気を空に撒き散らす。

 

(嘘ぉ、私と戦う時だけAIの知能上がってない? 

 ま、簡単に避けられるんだけどね!)

 

 そうして背を向け瘴気から逃げる私に第5位階【龍雷《ドラゴン・ライトニング》】が突き刺さり、残ったのは召喚された頭冠の悪魔(サークレット)だけになった。

 

 

 ***

 

 ああ? 

 私が売ったガキのことが知りてぇって? 

 

 そんなことでアーコロジーの外までご苦労なこったね。

 

 情報はタダじゃない、分かるだろう? 

 

 ふん、アーコロジーの社員様は随分金持ちみたいだねぇ、唯の話にこんなに金をかけるなんて。

 

 まぁ良いさ、話してやるよ。

 

 ここは孤児院さ、里親が見つからなければ就職先まで見つける優し過ぎるぐらいのね。

 対価として金は貰ってるが、まぁ労力の紹介料みたいなもんさ。

 

 ここにガキを捨てていくのは娼婦や落ちぶれた企業社員の夫婦とかだよ。

 私はそのお礼として少し金を払ってるだけ。

 

 元々企業はストリートチルドレンとかを使おうとしてたらしいんだけどね、まぁある程度育ってたら自意識確立してて使えず、幼いガキも知識が足りてなくて失敗。

 

 というわけでこんな孤児院に目をつけて赤子の頃から自動で刷り込みと教育を終わらせてるってわけさ。

 

 …ん? 

 

 ああ、随分前に売ったあのガキかい。

 

 アレは不気味だったねぇ

 わざとこっちに来なって言ったら扉を開けて初めて起き上がったはずなのに、ある程度歩いてきたんだから。

 普通は足が悪すぎて歩くことはできないはずなんだけどねぇ

 

 しかも他のガキと違って最初からテストとかの試験をかなり理解してた、理解も早かったのさ。

 

 長くやってると稀にそういう天才が生まれるのは知ってるけど、普通はまとめて何人も一斉にってのが多いのに、その時はアレだけだったのさ。

 

 売った親がわかるかって? 

 ちょっと待ってな。

 

 ま、見てきたけど馬鹿な娼婦のガキだよ。

 特に親が特別ってわけでもない。

 

 聞きたいことは終わったかい? 

 

 じゃあさっさと帰りな、そろそろテック競馬の時間だ。




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