暗い世界、意識だけが存在する。
鎮静剤を投与された後、私の世界は自意識だけが存在する謎の空間に置かれていた。
(何もない空間に閉じ込められた人間は48時間しか意識を保てないって聞いたけど……
今どれぐらい時間が経ったんだ……?
時間感覚がつかめねぇ……秒数数えるか……?
いや、途中で面倒くさくなるだろうし、正確な時間感覚がつかめてないんだから意味なくないか?)
何かを考え続けないと私という存在が消えていくかもしれない恐怖に無意味な思考を続ける。
私の世界が明瞭に開けたのはすぐの事だった。
フォン!
機械的な音が脳味噌に鳴り響くような感覚、視界にはいつも使っていたニューロンナノネットワークのインターフェイスが現れていた。
「やぁ、気分はどうだい?」
今度は電話がつながるように響き渡る男の声、電話の男だ。
「えっと、問題は無いです。
……私は何をすれば?」
私がそう聞けば男はフッと笑う。
「なに、ただいつもの様にゲームをすればいい。
それだけだよ」
「ゲームを……
それだけですか?
いつものような仕事やノルマは……」
「気にしないでいい。
我々は君の状態を記録するのが目的だ。
つまり遊ぶことが仕事だと言い換えてもいい、給料は出ないがね。
ああ、ゲームの内容を聞かれて不味いと思ったりするのかね?
君があの契約書にサインをした時点で君の自由意志から行った善意の協力者ということになってる。
何を話したとしても現状が変わることは無い、死ぬまでね。
理解できたかい?」
「……私の体は今、どうなってますか?」
「フハッ、その問いかけをするということは大方予想がついてるのだろう?」
(いや……全くついてないんだが……
そもそもこんな簡単なことでいいのかって聞きたかっただけなのに……)
戸惑いながらも目の前に現れた映像、映り出されたのは一度も直射日光があたったことの無いような病的な白肌、巻かれた幾重もの包帯に、黒髪が伸び放題になっている少女の頭部。
その頭に直接機械を接続してある姿はさながら前世のディストピアと言えば定番な、培養層にプカプカ浮かぶ脳味噌を想起させる。
(めっちゃディストピア感出てきたな……
まぁ……うん)
「私、ですか」
「ほう、驚かないんだね。
他の協力者は少なからず動揺したというのに」
「まぁ……契約書にサインした時点でこれぐらいは覚悟してましたよ……」
「これぐらい……
全身を見てもかい?」
男がそういえば、私の体の全体が映し出される。
だが私の全体は予想以上にコンパクトになっていた。
「脊椎全摘、両上肢切除、両下肢切除、内臓群除去、声帯摘出、眼球摘出、生殖器摘出、鼓膜焼灼、舌切除、皮膚剥離、延髄接続。
いやはや、ここまで協力してくれたのはまだ数えるほどだけだ、誇るといい」
顎から下は存在せず、下からも多数のチューブやケーブルが首の様に接続された姿。
「ええ……? ありがとうございます。
ご飯とかは……?」
問いかけに少し間を置き、男は口を開いた。
「……接続されてるカテーテルから必要な栄養素は随時供給される。
こちらも君とこんな無駄話を続けるほど暇じゃあないんだ。
詳しい仕様は添付した資料にすべて記載されている。
まぁ君がゲームをしたくないというなら別にそれでいいだろうがね、では」
映像と男の声が途切れる。
とりあえず私は仮想空間で準備運動のように体を動かすと
(これは……左半身が動く!?
万全ってわけじゃないけど……
微動だにしなかった時よりかは全然マシだ!
どうやって動かしてるんだこれ……?)
私は言われていた資料とやらを探し、閲覧した。
(脳神経の異常な信号伝達を補正……
元々脳の障害を持った人向けの技術を応用?
治療してくれたのか?
意外だ……絶対そのままだと思った)
正確に動かせず、感覚も大分現実と違うが、あのまま左側がすべて死んでいた場合、通常のようにプレイすることは不可能だっただろう。
ダイブの感覚は通常と変化していない、気を取り直してユグドラシルをダウンロードする。
(お、メールは私がもらってたのそのままじゃん!
良かった~! また一からやり直しは流石にきつ過ぎたからなぁ……)
事前準備を終えた私は、久方ぶりのユグドラシルへのログインにドキドキしながら選択したアバターで仮想世界へと接続。
(あっ! そういえば日時確認してねぇ!
どれぐらい寝てたんだ……? 体感2日ぐらいか?
まぁ二日ぐらいなら……ヴァルキュリア今やってんじゃん!
これめちゃくちゃスタートダッシュ遅れたのでは……?)
不安を感じながらも正直(まぁ大丈夫でしょ……二日ぐらいなら……)という楽観視をしてしまった私の意識が完全にユグドラシルに入り
ヴァィィィン——ッ!!!
存在しない鼓膜に叩きつけられる、超高周波の連続発砲音。
目の前にはまるで機械で作られたような巨大な異形が聳え立ち、私はその真上から落下を始めていた。
体中に取り付けられた砲身から実弾、ビーム問わず放ち続けるその巨躯を眼下に収めつつ、確認したエネミーのネームバーは。
「ワールドエネミィ!?」
唐突に始まった最終決戦に、私は驚愕を隠しきれなかった。
*
*
*
チッ……気味の悪いガキだ。
やっぱポッドで生きてると何処かおかしくなるモンなんすかね。
逆にあんな環境に居て普通のままという方が異常だと思うがな。
それにしてもまさか二度と現実に戻れないと聞いてあの反応とは……
でも、ゲームだけしてればいいって優しいっすね~
そうでもないさ、人間は、人間であることを辞めるにはまだ早すぎる。
……どういうことっすか?
今までも何人か、仮想空間のみで生きる試験に応募した者がいることは知ってるだろう?
ええまぁ……でもその応募者も2年と経たずに死んでますよね?
それらの死亡要因が発狂というのは?
……それは初耳でした。
我々の企業がお客様に提供するには未だ仮想空間は完璧ではないということさ。
現状、電脳法によって味覚や嗅覚を筆頭とした五感が規制されていることで完璧な現実と錯覚されず、リアルの仕事に従事をさせている。
だが実験で発狂した場合の環境は五感をある程度完璧に再現させていた。
……じゃあなんで死んだんすか?
それを調べるために、今あれを監視しているのだよ。
今回与えた仮想空間では環境は現行法の範囲内の五感のみ備え付けられている。
それによる、いわゆる人間性の喪失、発狂までの観察が我々の仕事だ。
……可哀そうなガキっすね。
そうでもない、あれの仮想空間における適性は非常に高いだろうと予想されている。
何せ現実では食事をあの保存食と水分だけ取り続ける生活を十数年以上続けながら発狂せず会話ができたんだ。
貴重な検体という意味でもある。
それに契約時は元々瀕死で私たちが手を差し伸べなければ1か月生きていたかも怪しいんだ。
感謝されてもいいぐらいさ。
確かに……そう考えると俺たちは命の恩人っすね!
そういうことだ。
会話や行動はAIによって今までのゲームプレイ時のデータと照合されている。
何か異常があった場合は自動で知らせてくれるさ。
それまで我々はどうやって彼女がここまで仮想空間に適応してるのかも考えるぞ。
はい!
***
【ユグドラシル】質問スレ【part156】
1:名無しの電脳
テンプレ
ホームページ https://yggdrclxxxx
バグ報告メールフォーラム https://yggdrclmailxxx
ユグドラシルwiki https://yggdrclwiki.xxx
2:名無しの電脳
大規模イベントラスボス告知
本日20時からイベント開始、恐らくワールドエネミーが出現するので参加するプレイヤーはアースガルズへ
参加したいギルドは集会主まで
プレイヤーはいつものステッカー張っとけばええやろ(ハナホジ)
長文ニキと情報班1,2の情報から出現場所はアースガルズの宇宙船から首都までの中間地点と予想されるので頭に入れとけ
ついでに集団戦知らん奴はこれ嫁
幼卒向け:しゅうだんせんのやりかた.pdf
3:名無しの電脳
一乙
4:名無しの電脳
そろそろですな
5:名無しの電脳
テンプレはり乙
6:名無しの電脳
pdfか……
掲示板でダウンロードとかウィルスやばそうで落したくないんだけど
7:名無しの電脳
お前がそうヒヨってる間にワイはもうダウンロードしたで
これで一つ”上”に行かせてもらうわ
8:名無しの電脳
この程度ユグドラシルやりこんでるなら常識的な事しか書かれてないから応用編も張れ
9:名無しの電脳
応用編なんてものもあったんか
10:名無しの電脳
あるで、量やばいけど
11:名無しの電脳
>>8
お前が張れ
12:名無しの電脳
嫌だよ量多すぎるしそれでも漏れがあるかもしれんし
13:名無しの電脳
人に言っておいて自分はやりたがらないこのカス感
14:名無しの電脳
実際ビルド多様化しすぎて応用自分で考えるしかないんよな
15:名無しの電脳
敷居高いわ
そもそもそんなプレイできるのなんて廃人ぐらいしかおらんやろ
16:名無しの電脳
そういやコテハンも数えるぐらいだよな
17:名無しの電脳
言うほど数えるぐらいか……?
18:名無しの電脳
このスレだけで
集会主
掘ホリホリック(長文ニキ)
居合ゾンビ(ゾンビネキ)
全開放ネカマ(全裸ネキ)
性癖爆盛(性癖ネキ)
酩酊覚めず(電脳法ギリギリネキ)
二眼レフ(盗撮ニキ)
OJT様(お嬢様)
情報班1,2
と10人もいるぞ
19:名無しの電脳
しかも
名無しのヒーラー
名無しのウェポンマスター
とかの名無しだけど誰か分かる奴もいるし
20:名無しの電脳
はぇ~こんなに居たんすねぇ
21:名無しの電脳
課金ニキとか白濁した三連星とか画面破壊ニキとかこのスレ以外でもいるからな……
22:名無しの電脳
大杉を超えた大杉
23:名無しの電脳
まぁ正直コテハン勢は強いけど一般プレイヤーからすればそこまで接点ないし知ってても変わらんやろと
24:名無しの電脳
せやろか? (ワイらの尻ぬぐいをする集会主)
25:名無しの電脳
せやぞ
26:名無しの電脳
頼んだわけじゃないのでセーフ
27:名無しの電脳
う~んこれは屑
28:名無しの電脳
pdfダウンロードしたけど幼卒ってなんや
29:名無しの電脳
幼稚園卒業者や
30:名無しの電脳
幼稚園????
31:名無しの電脳
アーコロジーにある6歳ぐらいまで育てられる施設やな
32:名無しの電脳
ここの奴ら絶対幼稚園とか行ったことないだろ……
33:名無しの電脳
それはそう
昔は大卒が前提だったからなぁ
34:名無しの電脳
まさか大学どころか小学すらいけなくなるなんて過去のネラーは考えただろうか
35:名無しの電脳
絶対考えてなさそう(小並感)
36:名無しの電脳
昔から変わってないのはネットの用語だけか……
37:名無しの電脳
ネット民は成長しないってこと
38:名無しの電脳
煽りが弱いぞ、もっと個人を抉るように煽れ
39:名無しの電脳
ワイは”小卒”やで
学歴バトルで勝てるやつ居るか?
40:名無しの電脳
アーコロジー民なら余裕だろ
41:名無しの電脳
アーコロジー民はアーコロジー民で更に学歴バトルしてそう
42:名無しの電脳
上も下も変わんねぇんだな
43:名無しの電脳
エアプ乙
アイツらはそもそも外郭民を同じ人間と思ってないから
44:名無しの電脳
ひぇ~
45:名無しの電脳
怖いねぇ
46:名無しの電脳
悲しいけど、これが現実なのよね
47:名無しの電脳
そういえば体感なんやけど今やってるイベントでプレイヤー減った気がするんですが
48:名無しの電脳
それは分かる
49:名無しの電脳
そう?
ウチのギルドは結構復帰してくれたけど
50:名無しの電脳
硬派だった純ファンタジー世界にいきなり機械系のSF要素ぶっこんだからな
51:名無しの電脳
マジ?
もう結構新発見とかも出涸らしだった気がするしテコ入れでいいと思ったけどな
53:名無しの電脳
俺も銃のDPSがトップって聞いて辞めたわ
新要素優遇かよアホくさ
54:名無しの電脳
なるほどなぁ……
55:名無しの電脳
意外と賛否両論で驚いた。
銃好きだし一応魔導銃なんだから良くね?
56:名無しの電脳
パワードスーツは?
57:名無しの電脳
弱いやん
現状あれ交通手段ぐらいでしか使われてないぞ
強化しても弱いって現状なってるからだれも強化研究せんし
でも交通手段としては有用だから人間プレイヤーはかなり持ってて使用率高めで強化アプデ来なさそうだし
58:名無しの電脳
>>53
そう言うお前のビルドは?
59:53
異形種のトレント、物理特化のアタッカー
60:名無しの電脳
馬鹿すぎる……!
61:名無しの電脳
そりゃDPS低いわ
トレントの適正ドルイド系やぞ
62:名無しの電脳
は~お前のビルドの方がアホくさいわ
最高DPS目指すなら普通人間種、せめて亜人種だろJK
63:53
実際森林地帯での種族バフとかあってハマればDPSかなり出るんだよ
64:名無しの電脳
異形種の特徴、ハマれば強い
65:名無しの電脳
なおハメようにも対策一つで無効化される模様
66:名無しの電脳
可哀そう……
つーかDPS求めるなら>>62も言ってるけど人間種取れよ
67:53
ステータス弱いじゃん
68:名無しの電脳
はいエアプ確定
人間種は初期ステ弱いけど100レベ近くだと種族クラス無いお陰で上位クラス2つや3つ取れるからステータスの差も縮まるしスキルで挽回余裕なんだよなぁ
69:名無しの電脳
ユグドラシルの戦闘で重視されるのはスキルだと御存知でない!?
70:集会主
フルボッコで草
質問中悪いけどそろそろ時間だってわかってる?
71:名無しの電脳
マジか、もうそんな時間か
72:名無しの電脳
DPSでいえばゾンビネキ
何やってんだろうな
73:名無しの電脳
ワールドエネミー戦マジで来ないんかね
74:調査班
今回のワールドエネミー常設されてる竜や大罪よりヤバそうだから欲しかったけどなぁ
75:名無しの電脳
ソーナノ?
76:名無しの電脳
伊達に時間指定かつ参加人数無制限の平原をバトルフィールドに選んでないってことか
77:名無しの電脳
90レベルだけど参加していい?
78:名無しの電脳
弾避けぐらいにはなるやろしええぞ
79:名無しの電脳
なんか対策とか弱点とか分かってないの?
80:調査班
不明、元々来るかもっていうのが宇宙船の破損したデータを復元して分かったことだし
81:名無しの電脳
宇宙船がこっちに攻めたじゃなくて逃げたってことなんだっけ?
82:名無しの電脳
ようわからん
83:名無しの電脳
ユグドラシルのストーリーはある程度知識持ってないと読み解けないし強い敵倒したら糞つよアイテム貰えるぐらいの認識でいいぞ
84:名無しの電脳
りょ
85:名無しの電脳
時間や
86:名無しの電脳
おお……めっちゃ登場エフェクト豪華やな
司令船の手前側か……
結構近そう
87:名無しの電脳
空いたあああああ!!!!!
突っ込めえええええ!!!
88:名無しの電脳
突撃ぃいい!!!!!!!!!
89:名無しの電脳
あれ? マニュアルだと初手バフと魔法職の攻撃らしいけど
まぁええか! ワイも混ぜろや!
90:集会主
良くねぇよおお!!!!!!
何のために集団戦のやり方まとめたと思ってんだよ!!!
91:名無しの電脳
誰一人集会主の指示聞いてなくて草
92:名無しの電脳
死んだンゴwww
93:名無しの電脳
やべぇなんだあの全方位爆撃?
94:名無しの電脳
痛すぎ
95:名無しの電脳
連合メンバー半数吹っ飛ばされてるwwwwwwwwwww
96:名無しの電脳
ええ……
って誰だあの距離まで詰めたの
97:集会主
はぁ!? ゾンビネキ!?
98:名無しの電脳
まさかのログイン時ワールドエネミー直上は草
99:名無しの電脳
ゾンビネキ! 生きていたのか……!
100:集会主
普通に死んだと思ってたっち・みーのチャンピオン装備課金ニキと交渉始めちゃってるよ……
これで拒否られたら関係終わるっピ!
101:名無しの電脳
ええ……
いないからって勝手に交渉は……やめようね!
いつも感想評価誤字報告ありがとうございます!