「じゃあタイミングは⋯任せていいっすか?」
「了解」
話し終えた集会主がトリリンガールと別れ私たちへと合流する。
「大規模な妨害行為して本当に大丈夫なのか?」
「俺ら既にシェヘラザードの件で目をつけられてると思うんだが⋯」
「まぁ運営エロ系には厳しいけど狩場独占とかは緩いからな」
プレイヤーの何人かはそれでも不安そうだがすでに動き出した状況、グダグダ言っていても始まらないのは分かっていた。
新クラスの取得に向けて行動を移そうと腰を上げる。
「あ、ここじゃ邪魔になるからバッファーとバフ受けるプレイヤーは俺と長文ニキに付いてきてくれ」
「了解〜」
集会主の言葉に追従するように集められたプレイヤーは歩き出す。
その足取りに迷いはなく、話題にも上がらないようなプレイヤーが居ないフィールドを通過していた。
「そう言えばゾンビネキって肉体捨てたらしいじゃん?
半年前だっけ、どんな感じよ」
「うーん⋯何ていうか現実味がない感じ?
空腹も感じないし仮想空間だから触覚も鈍い。
一番近いのだと⋯意識だけはっきりした夢?」
「はぇ~やっぱ現実みたいにそっちで生活するの厳しいんすねぇ」
「法改正待ちっぽいよな、最近は通常医療でも解放させないかって話あるし」
「覚めない夢とか頭おかしくならんのか⋯?
ポッド生活で生き残った適性もありそう」
「法改正したら性産業終わるだろ。
ついでに付随する医療系にも波及するだろうし」
「集会主〜!
そろそろ良いんじゃない!」
後ろ側に位置していた長文ニキが声を上げる。
「⋯せやな。
盗撮ニキ周囲にプレイヤーおる?」
「俺? ちょい待ち⋯
居ないぞ」
答えられた言葉を聞いて彼がインベントリから取り出したのは魔封じの水晶。
ヒビ割れ発動したその魔法は
「⋯
私の疑問の声を無視し、集会主は手早く【
通り抜けた先、そこには巨大な日本風の大寺院が燃え盛りながらも聳え立っていた。
壁にぽつぽつと掛けられている松明は青く、何処か地獄を想起させる。
「⋯え、ここどこ?」
「日本風の寺⋯こんなダンジョン見たこと無いんだが」
「見た感じそこまでデカくないし小規模ダンジョンやろ」
「未発見ダンジョンだろ、7年近く経ってまだ未発見が存在した事実のほうが驚くけど」
「ユグドラシルの魅力、死ぬほど見つけにくいダンジョン」
「魅力じゃなくて欠点だと思うんですがそれは⋯」
「普通にバフかけるだけじゃないんか?」
「はいはい静かに。
常識的に考えて唯バフ付けまくって新クラス取得できるような簡単な仕様にあの運営がしてるわけが無いだろ。
絶対バフ以外の何らかの条件がある」
疑問を抑えるように手が動き、落ち着かせる。
「つまり特化状態でダンジョン踏破が要求されると?」
「
「だったら最初からそう言えよ。
頭回ってないんか?」
「それな」
「⋯今回はガチだ。
最速最短、バフ以外の消費も少なく行くぞ。
盗撮ニキと長文ニキ、その二人で周囲の索敵と会敵の回避を熟す。
やむを得ない接敵でもMPやクールタイムが重いスキル魔法は使うなよ。
あと掲示板も、よそ見してまたゴキブリ部屋みたいなクソトラップルーム送られたらたまらんわ。
攻撃はできるだけゾンビネキに頼む。
クールタイム最短で最高火力出せるのネキだけだ」
一息に言い切った集会主、それだけか? と私は少し違和感を覚えながらバフを受け取る。
様々な魔法、スキルやアイテムが発動し私のネームバーにバフアイコンが積み上がっていくのを見ていれば、一人の巨大なスナイパーライフルを担いだプレイヤーが疑問を呈した。
「なぁ、俺が発案みたいなもんとは言えさ、この狭そうなダンジョンで俺が参加する意味あった?」
「ん? ああスナイパーニキか⋯
ねぇな。
まぁ今回は近距離スナイパーで頑張ってくれ」
「はぁ????
うちのバレットちゃんにそんな野蛮な使われ方をしろと?」
それを見た電脳法ネキが来てたんだと溢す。
「あのスナイパー知っとるんか?」
「え? ゾンビネキ居なかった?
スレでバフかけまくった超長距離狙撃して新クラス見つけたプレイヤーだよ。
その報告から今回のバフ盛り祭りが来たと言っても過言じゃないよ〜」
「多分そこら辺のレス見逃してたわ。
⋯まぁ近距離スナイパーで特殊クラスとか出て来そうだから無駄や無いやろ」
慰めのような言葉をスナイパーニキに掛けた私は再度装備の見直しに入った。
今回のイベント用の調整した攻撃威力特化の刀、おかげでデメリット反転のリジェネ効果が低下したがなんとかなるだろう。
緊張感無く雑談に興じているがそれはある程度のプレイヤースキルを持っている自信の現れである⋯筈だ。
「終わったな?
じゃあ行くぞ」
かけられたバフが基本的に時間制限付きだからか、最終確認も即座に終わらせるスピード感。
数秒で終わるようなごく短時間のバフはダンジョンボスの時に重ねるらしい。
「そういや長文ニキのパワードスーツどうしたん? 最近着てるの見ないけど」
「あ~あんまり使ってないんだよなぁ。
俺はパワードスーツ特化ってわけじゃないし」
「おい!
長文ニキにこの攻略かかってるんだから無駄な話は辞めろマジで!」
入り口の大門を開いた集会主の言葉は何時ものことだった、だが言葉通りほとんどのプレイヤーが口を閉じた理由は別だ。
「ひっろ」
「これ小規模ダンジョンじゃねぇぞ⋯」
想像以上の内部の広さに気圧されるプレイヤー。
「あ~エネミーは少ないけど60レベルが大量や」
盗撮ニキの言葉通り、入り口を開けても未だエネミーは見えなかったがそれでも何処か普通のダンジョンと違う雰囲気を感じさせる。
「ボケっとしてないでいくぞ!
長文ニキ!」
「おけ、あんま離れんでな」
発動された隠密効果はこの場全てのプレイヤーを包み込む。
「言っとくけど俺以外の隠密付与はおまけみたいなもんだから。
じゃ先導頼むわ」
「了解」
先導の魔法も発動させず、行き先がわかるかのように走り出した盗撮ニキ。
一斉に走り出した連合プレイヤーの中で、私は知識だけ知るマラソンを連想した。
*
*
*
「はぁ⋯
あのさぁ⋯」
「うん⋯なんか⋯ごめんな?」
「死ね」
明確に疲労が見えるスナイパーニキ、最終地点であろう大扉の前まで十数分で到着した素早さは長文ニキと盗撮ニキの2人の力が最も活躍したと言える。
だが、2番目を決めるのならスナイパーニキだろう。
「骸骨侍や住職ほとんど一人で処理してたからなぁ」
「近接職の俺ら出る幕ほぼゼロだったけど⋯これ新クラス解放できるのか?」
「わからん」
「お、俺らは最後とかの強モブ殺したし⋯!」
「倒した数が違い過ぎる」
回避できない位置にいるエネミーを探知が届かない遠距離から連続で殺し、消耗を最小限に抑えた手際は熟練のそれだった。
「⋯じゃあ最後だ、短時間バフをかけた瞬間扉を開ける。
そしたらボスに向けて速攻で攻撃を仕掛けろ。
んでそのボスに向かう前に渡すものがあるから並べ」
スナイパーニキの愚痴をシャットアウトするかのように指示を出した集会主は早速アイテムを配り始める。
何番目かに渡されたそれの名前は、『桔梗紋の書状』。
「⋯こういうアイテム配布して、挑むタイプのボスに覚えがあるんだが⋯」
「いや⋯まさかね⋯違うよな?」
「流石に騙してそれは無いやろ」
「攻略プレイヤーに桔梗紋⋯明智の書状と燃え盛ってる寺⋯
嘘やろユグドラシルこんなん追加したんか⋯?
いや⋯銃追加されたしあり得る⋯」
「ほら全員に渡ったんだからさっさとバフかけろ」
集会主の指示で疑問や少し察したようなプレイヤーも手早く準備を整える。
私も少しの疑問と既視感を覚えたが、頭を振ってボス戦のことを考えた。
短時間しか効果のないバフ、私が初手で使うとしたら遠くにも届く真髄:一刀遼断、近ければ至刀:独閃だろう。
(長文ニキのお陰で真髄:禍福倚伏の隠密時威力増加効果入ってるしな)
やがて、それぞれバッファープレイヤーの準備も整い、いつでも発動できる状態になる。
「じゃあ、行くぞ」
ぎぃいいいいという悲鳴のような音を鳴らしながら、扉が開かれた。
***
【ユグドラシル】質問スレ【part189】
204:名無しの電脳
そろそろ始まるな
205:名無しの電脳
何が始まるんです?
206:名無しの電脳
大惨事大戦だ
207:名無しの電脳
一歩間違えばガチでありそう
208:名無しの電脳
ネタで見たことあるけど元ネタ知らんわ
209:名無しの電脳
一歩間違わなくても連合以外のプレイヤーに不興買って開戦しそう
210:名無しの電脳
元ネタは20世紀に公開された映画
211:名無しの電脳
20世紀!?
212:名無しの電脳
そんな昔だったんだ⋯
213:名無しの電脳
版権が伸ばされた漫画とかと違って洋画とかは版権切れでいつでも見れるの多いししな
映画館とかユグドラシルで作れないんだっけ?
214:名無しの電脳
映像持ち込みとかクソデカスクリーン投射魔法とかあるしできそう
溜まり場拡張して作るか?
215:名無しの電脳
作られても場所わからなくて誰も使わなさそう
216:名無しの電脳
割と面白いの多いよな映画
映画館とかは行ったこと無いけど
217:名無しの電脳
大戦かぁ最近は紛争ばっかりだよな
218:名無しの電脳
資源なさすぎてもう争ってる場合じゃないんでしょ
219:名無しの電脳
じゃあこれは⋯? つ紛争
220:名無しの電脳
テロリストの鎮圧だからセーフ
221:名無しの電脳
大戦と紛争って規模ぐらいしか違いがわからん
222:司書of司書
お前らそうやって版権切れた本を図書館に投げ入れるのやめろよ!
誰が整理してると思ってんだ!
勝手に積み重ねすぎてもはや足の踏み場がねぇよ!
223:名無しの電脳
お前
224:名無しの電脳
アルターエゴリスペクトやぞ
225:名無しの電脳
エスちゃんのオススメでカフカの変身読んだんだけど救いなさすぎて泣いた
226:名無しの電脳
まだ家族生きてるから恵まれてるだろ
227:名無しの電脳
大黒柱が消えてまともに生活できるわけ無いんだよなぁ
228:名無しの電脳
司書ガチ勢の君をみんな頼りにしてるってことや
229:司書of司書
頼りにしないで⋯
230:名無しの電脳
おい、マジで始まるぞ
231:名無しの電脳
実況配信しながらだしめちゃくちゃ妨害されそうなんですけど⋯
232:名無しの電脳
>>230
始まらねぇよ
タイミングはトリリンガールが決めるって言ってただろ
233:名無しの電脳
一応言われた場所待機中なんだけど普通に町中やぞ?
大丈夫かこれ
234:名無しの電脳
チャート構築したトリリンガールを信じろ
235:名無しの電脳
ガバチャーではないことを祈る
236:名無しの電脳
結局ミスってもそこまでワイらに被害無いやろ
気楽にやろうや
237:名無しの電脳
ミスってやり直しになったら妨害しないといけない時間も増えるし他プレイヤー妨害でまたヘイトが溜まる
もちろんヘイトが向く先はめちゃくちゃ2ch連合
238:名無しの電脳
俺達が何をしたっていうんだ⋯
239:名無しの電脳
今からするんだぞ
240:名無しの電脳
お、始まった
241:名無しの電脳
>>231
そうならないための出発時間未定だぞ
242:名無しの電脳
意味あるんかそれ
243:名無しの電脳
マジで始まっとるやん!
244:名無しの電脳
おマジやん
245:名無しの電脳
はっやフライの何倍だこれ
246:名無しの電脳
この速度にタイミング合わせてバフ発動って無理じゃね?
247:名無しの電脳
ターゲット動かしながらやれ
248:名無しの電脳
頑張ればできる
今回使うバフアイテムは残留が長いし
249:名無しの電脳
一応失敗した時のためにかなり余裕もってバフかける人数揃えたんじゃね?
このスピードなら最初のバフ地点到達でも残り時間半分以上あるし
250:名無しの電脳
AOGの件でこっちもかなり嫌われてるのにこんな大規模なイベントやったらバレて狩られるだろ
251:名無しの電脳
スピードから到達時間を逆算⋯!?
やるな⋯!
252:名無しの電脳
小学で習えるぞ
253:名無しの電脳
ここに居るようなやつは行ったこと無いだろ
254:名無しの電脳
それはそうだけど⋯
255:名無しの電脳
AOGで中堅ギルドをバカが襲撃したせいで俺みたいに善良なプレイヤーも割り食ってるんだよなぁ
食事ギルド出禁は痛いです
256:名無しの電脳
食事ギルドも出禁になってたの?
257:名無しの電脳
せやで
258:名無しの電脳
中小で潰したところが食材めちゃくちゃ卸してくれてたらしい
259:名無しの電脳
残当
260:名無しの電脳
お、バフちゃんと受けれてるな
261:名無しの電脳
>>255
自分で善良とか言っちゃうやつは大体邪悪
262:名無しの電脳
確かに否定はできない
263:名無しの電脳
速度ちょっと落ちた?
264:名無しの電脳
自己バフのいくつかがクールタイム入ったっぽい
265:名無しの電脳
落ちたとは言え早いっすね⋯
266:名無しの電脳
もう3つ目のバフ地点到着しそう
267:名無しの電脳
あ、ダメだこれ
268:名無しの電脳
あ~PKされてたか
まぁ残り時間自体は未だあるし行けるやろ
269:名無しの電脳
アイテム系なら自分で使えばいいと思うんですが
270:名無しの電脳
自分以外対象のアイテムとかもあるし
お前エアプだな!?
271:名無しの電脳
お、良かったちゃんとバフできた
もう転移門前か、とんでもなく早いな
272:名無しの電脳
なんか街歩いてたらめちゃくちゃ高速で追い抜かれてクソビビった。
原因ここかよ
273:名無しの電脳
これは検証だから⋯
274:名無しの電脳
コラテラルダメージに過ぎない⋯
軍事目的のための、致し方ない犠牲だ
275:名無しの電脳
軍事目的と言うよりは娯楽目的ですね
276:名無しの電脳
ワールド転移門突っ込んだら上裸のムキムキビキニアーマー!?
277:名無しの電脳
クソ暑苦しそう
278:名無しの電脳
一瞬動揺したのか後ろに引いてて草
279:名無しの電脳
なんて変態野郎だ⋯
でもしっかり仕事はこなしてんだよな
280:名無しの電脳
ニブルヘイム終わったから撤収〜
281:名無しの電脳
はよ散れ散れ
282:名無しの電脳
画面には映らなかったけどこれでも狙ってきたっぽいプレイヤー殺したり妨害頑張ってたんですよ??
283:名無しの電脳
偉いね〜
じゃあもう帰っていいよ
284:名無しの電脳
泣いた
285:名無しの電脳
可哀想だけど草
286:名無しの電脳
会社の新年懇親会に呼ばれた俺かな?
287:名無しの電脳
新年懇親会とかブルジョアっすね
288:名無しの電脳
なお参加費はきっちり取られた模様
クソ企業休日にやんなよボケが⋯
289:名無しの電脳
まだ懇親会できるだけマシ定期
290:名無しの電脳
そんな定期はない定期
291:名無しの電脳
参加費とられたのに帰らされたのは草
292:名無しの電脳
元取ろうと保存容器に料理詰め込みまくっただけなのに⋯
293:名無しの電脳
おっと?
294:名無しの電脳
う~んまともな上司オチか……
この格差の時代に珍しいな
295:名無しの電脳
まぁ元取りたい気持ちはわかる
296:名無しの電脳
やっぱスレ民だわ
297:名無しの電脳
もうほとんど話題にしてないけど次のワールド行ったぞ
298:名無しの電脳
全然スピード落ちないな
299:名無しの電脳
割とバッファーはきっちり仕事こなしてる?
300:名無しの電脳
残留時間が長いバフアイテムのおかげやろ
301:名無しの電脳
2連続不在か
302:名無しの電脳
これ厳しいぞ
303:名無しの電脳
間に合うか?
いつも感想評価誤字報告ありがとうございます!