亡霊たちの████アカデミア 作:炭火カルビ
研究所で破壊と虐殺を繰り広げた後、
その間、娯楽も睡眠も削って
親らしい行動といえば、熱がないのを慌てて確認したのと病院までの車を出しただけ。運転したのは父じゃなくてお髭のトンガリしたおじさんだったし、病院に付き添ったのは
カレンダーの日付が4月に戻ってないかな、とか。
全部悪い夢だったんだ、とか。
そんな希望は全て、無慈悲な現実の前に踏み潰された。
カレンダーはもう6月の終わり。
〈俺、個性が強いからかな。ある程度権限があるみたいで、聞きたくなけりゃシャットアウトさせれると思う〉
(やっ。みんなの声わすれちゃう)
〈……。辛くなったら話くらいなら聞けるからな〉
望は申し訳なさそうにした。
「今日もお腹痛い?」
「うん…………」
「お粥食べれそう?」
「ううん……」
「桃と林檎は食べれる?」
「がんばる……」
発熱、頭痛、腹痛、下痢、嘔吐。
吐きすぎたせいで声もおかしい。食道も胃もお尻もヒリヒリ。特にみぞおちが辛い。したくもないダイエット大成功。
〈……ごめん凍火ちゃん〉
(お兄さんのせいじゃないよ)
〈何もしてあげられないから。こうして話すのも、凍火ちゃんしんどいだろ〉
(だいじょーぶだよ)
〈大丈夫じゃないって〉
時間だけはたっぷりあった。凍火はあの研究所で起こったことを──自分がしたことを考える。
あの時は破壊衝動と、大人がみんなを騙して殺したという大義名分があった。でも、冷静になるとそんなもの何の言い訳にもならなかったと気付く。
そういえば
22時間寝て、残りの時間で食事とトイレと
そんな生活を続けていくうちに、段々良くなった。
「凍火ちゃんが元気になったお祝い!」
「無理しない程度にいっぱい食えよ!」
と、冬美と
これで終わり。
凍火は精一杯の笑顔で、おいしいとありがとうを泣きながら伝える。
「泣かなくっていいのに」
「だってぇ、なんかひさしぶりの、ふつうのごはんおいしくってぇ……」
「いっぱい食えよ。今度また、ちょっと高いプリン買ってあげようか」
「いいのぉ!? 凍火ね、まっちゃ! あれすき!」
「凍火ちゃんは本当に抹茶のお菓子が好きだなぁ」
(げんき!)
〈元気! 良かったなぁ!〉
(さいごのばんさん!)
〈最後の晩餐!?〉
(じしゅするから)
〈え? 自首って……、まさかあの時のことか? 証拠もないし良いだろ!? あんな奴ら殺してもノーカンだ! 俺たちは被害者だぞ!?〉
「コラコラ、注目されたいからってそんな嘘吐いちゃダメだろ?」
「うそなんかじゃ」
「そんな
「うわっ……!?」
背中をグイグイ押され、凍火は追い出されるように交番を後にした。
〈
(じしゅいやがってたから、お兄さんにとってはいいんじゃないの?)
〈良くてもあの対応はムカつくんだよ!!〉
自首する気が失せてしまった。罪の意識が元よりこの程度だったのだろう。
自分のしたことに罪悪感がないの、お父さんみたいだなと自嘲する。
両親といい、凍火の周りにはろくな大人がいない。来年通う小学校の先生もそうなのだろうか。何だか将来に希望が持てなくなってきた。
〈あー……学校の先生はガチャだから〉
(ガチャガチャ?)
〈うん。ちょっと悪い人が居たからって、全員が悪いとは限らないっていうか。でもSSRはそうそういないっていうか……〉
でも、凍火の中には死んだ9人の記憶……というほどハッキリしていないが、強い感情と結びついた断片的な思い出がある。
「いじめじゃないでしょ。
『思考誘導』の
「えー、先生、怖い個性の医者になんて怖くてかかりたくないなぁ。違うお仕事にしなよ」
『毒』の
「望! 個性のことを
『肉体強化』の望。
「うちの子よりアンタが死ねば良かったのに!!」
『シェルター』の
両親による生来の大人不信と、彼らの記憶。研究所の大人の──特に信用していた
あのオールマイトすら、9人の子供が死ぬ時に助けに来てくれなかったのだ。
〈…………ごめんな、俺のせいで〉
(かんけいないよ)
何を謝られたのかわからなかったから、適当に返事した。
◇◆◇
幼稚園のない土曜日。てちてちと足を進め、
目的は吸収した個性の把握。万が一感情が高まり『毒』が暴発、一家心中だなんてことがないよう個性の詳細を知る必要がある。
選んだ理由は少年が亡くなった山火事のせいで人がいないから。
〈そいや亡くなった子も轟だったような……?〉
(……? わかんない)
〈そっか。今日やることわかるか?〉
(こせいのはあくだよね?)
〈把握の意味わかるか?〉
(わかるよ! 凍火、本いっぱいよんでるの! かんじだって、かけないけどたくさんよめる!)
〈ふーん凄いなぁ、算数は?〉
(ふふん! 7のだんよりあといがいはいえるよ!)
〈7の段より後以外!! ふははは!!〉
(むぅ!)
〈ごめんごめん〉
望はケラケラ笑って続ける。少し不愉快だ。
〈凍火ちゃんの個性は、『温度操作』だっけ?〉
(うん、でもね、まえは『ひょうけつ』つかえたよ)
〈お兄ちゃんとお姉ちゃんの個性だっけ? それ、お母さんとお父さんどっち側の遺伝?〉
(お母さん)
〈お父さんのは?〉
(……『えんねつ』)
〈なら理論上は『氷結』みたくそっちも使えるのか? 炎と氷、すげーじゃん〉
(…………やだ。こわい)
赤ん坊のころの記憶。
火が、凍火と
細かいことは覚えていない。誰がやったのか、事故だったのか。どうせ父のせいだとは思うけど。
火傷が残っていないから
〈あっいや、提案とかじゃなくて俺の独り言だった。ごめん、生きてるのは凍火ちゃんだから、キミの好きにするんだ〉
(うん……)
個性の把握のため、凍火はまず『温度操作』を試す。
ポケットの中のハンカチに触って、温度を『吸収』。
「えいっ!」
ハンカチはドライアイスみたいになった。
普通なら凍傷一直線だが、凍火には
そして、今までならたったこれだけで熱を出していたけれど、それもない。
「『はっさん』っ!」
今度はハンカチを温める。
でも、凍火は熱さへの耐性もある。これだけなら焦凍くんに勝るという熱冷耐性が。
「ぁ……」
ハンカチが手から滑り落ちた。風に吹かれて、木の上に引っかかる。
「
〈凍火ちゃん!? なんか高いぞ!? どうした!?〉
「えぇと、よくわかんな……羽根?」
〈氷の羽根だな……。『氷結』でお姉さんたちも似たこと出来るの?〉
「できないとおもう。あ、羽衣ちゃん!」
〈あのバカっぽい、じゃなくて、アホそう、じゃなくて、おっとりした子。『白鳥』の。あの子がどうした?〉
「凍火おこるよ!」
〈ごめんって〉
『実験』の参加者で凍火と最も仲の良かった少女。
大きいだけで飛べない
それを原因に、炎系個性のクラスメイトに羽根を炙られるなどのいじめを受けていた少女。
空を飛べて逃げれるようになりたいと、飛べたら凍火ちゃんも一緒に空のお散歩をしようと、約束したのだ。
「羽衣ちゃんのこせいなの……?」
〈『白鳥』と『氷結』の足し算か……?〉
「いっしょに、お空のおさんぽできたね」
〈痛〈何で助け〈生き〈や〈死にたくない〉だよぉ〉たくない〉てくれないの〉いよお母さん〉
悲鳴の中の羽衣は何も言ってくれなかったけれど。
凍火は『白鳥』が自分の中にあることに、少し救われた気分になった。
〈元が異形型なのを考えると、周りにも不審がられないし、オンオフ出来るからこれでいいのか……?〉
「凍火は冬姉と夏兄のてんしさんだから、ずっと羽根があってもだいじょーぶだとおもうよ!」
〈末っ子根性逞しいなおい〉
ハンカチをポケットの奥の方へ押し込む。
少しばかり飛行を楽しむと、個性把握に戻ることにした。
◇◆◇
凍火が歩くと夕日が着いてくる。なんだか嫌だから早歩き。今日の成果を振り返った。
凛の『毒』、望の『肉体強化』は安易に試せなかった。
『毒』の出力は0か100かしかない。周りに絶対人がいないという保証もないから、事故ると大変。
『肉体強化』の方は強化幅が大きいと多大な反動が来るためだ。
凍火が2ヶ月も寝込んだのも、『氷結』が使えるように無理矢理母の遺伝子を活性化したからだろうと言われれば、怖くてどれだけ微弱な効果の強化もやる気になれない。
灯の『思考誘導』は周りに知性を持つ生物がいないため効果がわからなかった。
よくわからない個性といえば、覆一郎の『シェルター』も。
ヒト1人が体操座りでピッタリ合うサイズ。外部からの攻撃を一切受け付けない
箱は無事に作れた。暗くて狭くて無音で、ちょっと怖い。しかし敵なんていないので、どんな効果があるのかは確かめられていない。
〈俺たちの個性を使えるのが、あの自称天才美少女サマのおかげなのかもな〉
(芽愛お姉さんすごい! それと、じしょーって何?)
〈自分で言ってるってこと。凛ちゃんのが可愛いし賢いのに、よく言えるよ〉
(凛お姉さんも芽愛お姉さんもかわいいよ?)
話しながら、でも冬姉の方が可愛いなぁと凍火は思った。
周辺の木々や地面をパステルカラーに、絵本の世界にして楽しんだ。
彼の緑の肌。指先と髪先、体の先端からは葉っぱが生えていて、飾らない自然特有の臭いもした。
凍火は光を嫌ってない。けど、女の子的にはあの姿になるのは少し辛い。
なので、結構覚悟を決めて個性を発動させた。
〈これがガチの頭お花畑か〉
「……? お花、1つだけだからはたけじゃないよ?」
〈比喩だって〉
頭に花が咲いた。冬美からもらった折り畳み鏡で見る。種類は分からないが白くて大きい。良い匂いもする。
本能的に日当たりの良いところに移動し、花に日光を当てる。何だかとても元気になってきた。
〈凍火ちゃん〉
「なに? ポカポカでねむいよ……」
〈だから起こしてやったんだよ。ここで寝て夜になったらヤバいだろ?〉
「かわいい凍火をしんぱいして、冬姉と夏兄がねんねできなくなる……!」
〈自己評価高くて羨ましいなぁ。あれ? ご両親は?〉
「冬姉と夏兄が凍火のママとパパだよ」
〈あー……。了解、聞かないでおく〉
個性解除。
無事頭から花が消えてほっとした。
最後に
魂と呼ぶナニカを体から分離して移動出来る力。
ただし周りへの干渉は一切不可能。幼い頃は自分が霊体かどうかわからなくて、よく無視をされたと思って泣いていたと聞いた。
凍火にとっても怖い個性だ。
「ゆ、ゅ、ゆうたいりだつ……! ちょっとこわい!」
「無理しなくていいからな、凍火ちゃん……あ?」
「う?」
「俺……生き返った、ってわけじゃないか」
目の前に凍火が現れた。
ショートヘアの
前髪の下を見ると、凍火と同じ、父に付けられた傷跡も残っている。
どこをどう見ても凍火で、けれど何かが決定的に違う。
冬美や夏雄なら変身系の個性を持つ
「幽体離脱……魂を切り離した……? うぉっ、」
「だ、だいじょーぶ!?」
“凍火”はこの体に慣れず転んでしまった。
擦りむいた膝小僧には中身の
「っはーっ! なんで『氷結』と『幽体離脱』を掛けて、『氷分身』になるんだよ!」
「……お兄さん、だよね?」
〈そうだぜ〉「ああ!」
「あれ、凍火のかっこうのお兄さんじゃなくて、凍火の中にもお兄さんいる……?」
「凍火ちゃんの格好のお兄さんって、ただの変態じゃねえか〉
前半は“凍火”が、後半は台詞を引き継いで望が言った。
「……? わかんない……なにこれ」
「幽体離脱で魂を切り離して、氷で具現化させた体にセットしたってことだと思う」
「むずかしぃ……」
「だろうな。一旦『幽体離脱』……というか『氷分身』を解除して、分身の中に凍火ちゃんの魂も入れれないか?」
「むずかしそう……」
不安になりながら試す。
全員の魂を半分に分けて氷分身に。
(凍火が2人)
(ふしぎ……)
魂を分ければテレパシーのようなことも出来た。
分けすぎるとどうなるのか試してみたかったけど、望に必死に止められたのでやめた。
今や魂だけの存在だからか、魂を分けることで自分の意識が希薄になるのが怖いらしい。そうやって恐怖を言語化されると、凍火も怖くなった。
◇◆◇
2週間ほど個性訓練を続けた。
何が出来て何が出来ないのかは初日で大体把握出来てたけど、体調不良を気にせず個性を使うのは楽しかったから訓練した。
「
「
「視覚情報への『追加』完了。ポイントEへ誘導します」
〈なんか……ヤバそう、だよな?〉
(『まったん』の上からのおって?)
〈今まで何もなかったから、マジでいるとは考えてなかった〉
望と顔を見合わせて(彼に肉体はないので比喩だ)、凍火は考える。
明らかにまずい。小説で読んだスパイ同士の通信のような会話。
ヒーローなら普通に声をかけるだろうし、捕まったらまともな扱いを受けないのは想像に難くない。
(にげる!)
〈おう!〉
『白鳥』×『氷結』を名付けた『
顔を見られるのは不味いと感じて、『氷結』と『色塗り』で黒いヘルメットを作った。
〈凍火ちゃんが考えたの。良い発想だな〉
(ありがとっ)
彼らは銃を向けてきた。どうしよう、どうしよう!
銃口を凍らせれば予備は無かったらしく狼狽えている。良かった。
しまった。すでに発射されていた弾丸が肩に掠って痛い。『光合成』で治るかな。冬姉とお風呂入れなくなる。
〈……! 凍火ちゃん、さっきアイツら罠がどうこう言ってた! 何があるかわかんねぇ、『シェルター』でやり過ごせ!〉
「わかった!」
自分を中心として、体操座りになってピッタリなサイズの箱を生成。
きっとオールマイトのパンチもエンデヴァーの炎も通さない、防御なら無敵の個性だ。
──2つの大きな欠点を除けば。
(なんか、ゆれてる?)
〈……。まさか、運ばれてる?〉
(うそっ)
1つ。中から外部を知覚出来ない点。
2つ。攻撃を通さない代わりに、攻撃以外の干渉にはなす術のない点。
さらに、発動すれば一定時間経たないと解除出来ない。
凍火を守るためのシェルターは、獲物を閉じ込める檻となっていた。
「どうしよ、どうしよ! 凍火どうなるの!? こわい、お兄さんたすけて!!」
〈待て、待ってくれ〉
凍火はあっという間にパニックになった。真っ暗で、身動きが取れなくて、どこかに攫われる最中かもしれない。
〈凍火ちゃん! 『思考誘導』を使え!〉
「まって、わかんないよ、どうすればいいの、こわい」
普段心の声だけで望と話すようにしている。それすらも出来ない。
〈凍火ちゃん。大丈夫だ、俺がいる。俺の言う事を聞いてれば絶対に何とかなる。まず深呼吸だ。吸ってー、吐いてー〉
「すー……はー……」
〈落ち着いたか? それじゃ、『思考誘導』で『凍火を追いかけずに帰れ』ってやるんだ〉
「……。やったことないけど、やってみる……!」
とりあえず、指示通りに強く願ってみる。
「……弾薬が尽きた。指示を求める」
「こちらも同様」
「あー……野生動物が
何やら指示を受け取り、覆面3人組は踵を返した。
「た、たすかったぁ……?」
〈『思考誘導』とはちょっと違うな? ……。凍火ちゃん、次からはもっと弱く思え〉
「うん? わかった……」
やけに真剣な口調で望が言ったから、凍火も真面目に返事した。
その日はシェルターが解除された後もしばらく瀬古杜岳で息を潜めて、ついでに『光合成』で撃たれた傷を回復すると、周りに誰もいなくなったのを確認してから帰宅した。
◇◆◇
「冬姉おやすみっ!」
「おやすみー」
冬美はいつも通り、妹と同じ布団に入る。
小さな体を
こうしているうちに妹は夢の世界に旅立ち、ミルクみたいな凍火の髪の毛の匂いで、冬美も眠くなる。
「凍火ちゃん!」
「うぇ? なに、おねぇちゃ──」
うとうとと、微睡む中の轟音。
ゴウゴウ、バチバチ。炎が噴射される音と、銃声と。
襖ごしにチカチカと閃光が見える。
冬美は凍火を押し倒した。そのまま妹を庇うように丸くなる。ガタガタと、誰かの暴れるような動きに合わせて家が揺れる。何だか体が──違う、凍火ちゃんの体が熱い。密着しているから?
「凍火! 姉ちゃん! こっちに逃げろって、クソ親父が!」
今にも解けてしまうくらい弱々しく不慣れに、焦凍と夏雄は手を繋いでいた。
「うん! 凍火ちゃん、立てる……?」
「熱っ! よりによってこんなときに……」
妹の額に手を当てて、夏雄は思わずといった様子で呟いた。
「びっくりしてお熱出しちゃったんだね。今はこれくらいしか出来ないけど……きゃっ!」
「うわあ!?」
『氷結』でやんわりと妹を冷やして、冬美は悲鳴をあげる。
明らかに地震とは違う揺れ方で、家が大きく傾いた。
「姉ちゃん、とにかく逃げてから凍火ちゃんの看病しよう!」
「わかった!」
妹をおぶり、冬美は夏雄の後を追う。
着いたのは道場。かつては兄が、今は焦凍だけが入るのを許され、家でのほとんどを過ごす場所。
木造ながら金と技術を惜しみなく使い、耐火耐震加工は十分されている。戦闘の余波が家中にある中で、一番安全なところだ。
「凍火ちゃん、だいじょーぶ?」
「大丈夫。すぐに治るよ!」
心配そうな焦凍に言ったとき、ちゃんと笑えていただろうか?
家中が焼け落ちていてもおかしくない規模の炎。父がそこまでやらないといけないレベルの、ヒーローを恨み家まで襲撃してくる
今すぐに救急車を呼んで病院に連れて行くのは出来なくても、せめて柔らかい布団で寝かせてあげたいのに、道場にはそれがない。
ここが1番丈夫なのはわかるけど、物が足りないよ、お父さん。
戦ってくれている父に不満を垂れるのを後ろめたく思いながら、冬美は『氷結』で妹の体中を冷やす。
「……っ!」
長い間そうしていると頭がクラクラしてきた。
冬美の人生の中で、最も長い時間、大きな面積に個性を発動させている。これまではせいぜい、夏場にスーパーから家へ氷菓子を持ち帰る時使う程度。
「姉ちゃん大丈夫? 俺変わるよ」
「でも……」
「顔真っ白だよ。それに、凍火は俺より姉ちゃんのことが大好きだからさ、姉ちゃんが元気じゃないと不安がっちゃう」
「わかった。ごめんね」
「良いって」
「……ぼ、ぼくも! ぼくも凍火ちゃんのおせわする!」
焦凍が言ったのに、冬美も夏雄も困ってしまった。
確かに個性の出力もコントロールも、この中できっと1番だけど。
「お前までそれで調子崩したら、また凍火ちゃんがアイツに叱られるだろ」
「……!」
「ちょっと夏! ごめんね、ほら、こんなことになって、ちょこっとイライラしてるみたい。焦凍は悪くないよ。まだ小っちゃいんだから、とりあえず今は寝てよう?」
「おきてる。
「そっか……無理しないでね」
弟にこう言わせる自分に無力感を感じながら、冬美は道場の入り口のところまで動いて、倒れるように眠った。
無駄かもしれないけど、
あくまで凍火視点の三人称なので、覚えていないことについては凍火の補正が入ります。この話で言うと、赤ん坊の凍火をエンデヴァーが焼き殺そうとした、はさすがに冤罪。
冬美・夏雄・冷の個性名は明らかになってませんが、この小説内では『氷結』です。エンデヴァーの個性名は『ヘルフレイム』ですが、彼について余計な会話を増やしたくないので凍火は『炎熱』と言いました。
オリキャラ・オリ個性等の設定まとめ
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欲しい(各章の最後に、その章でのまとめ)
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欲しい(最新話段階でのまとめを第1話)
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どちらでも良い
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いらない