『じゃあお前でいいだろ。俺たちの中じゃ一番顔がまともだから女子ウケが良いだろう』
『え』
『じゃあ決まりだな。あそこは口が上手い生徒も多いからな。俺たちが上手い事言いくるめられるし、その辺も任せたぞ』
『え?え?』
『さーてそれじゃあ担当くん!君はこれからトリニティに行ってもらう!我らが組織の代表として
『え?え??え?!』
最初にトリニティに行くことになった経緯はこんなものだった。相変わらず酷い始まりだと思う。押しに弱すぎでしょ。
『へー♪君が最近話題の……なんだっけ?名前忘れちゃった♪』
『失礼ですよミカさん。本日からよろしくお願いします担当さん。トリニティにてティーパーティの一員をしています、桐藤ナギサといいます』
『百合園セイアだ』
『なーに、名前は覚えなくてもいい。その代わり今日からこいつが入る事は覚えておいてくれ』
『ど、どうも……本日からトリニティ総合学園の担当になりました、名前は……』
『よろしくねー♪担当くん!』
『え?』
『ちょっと聖園さん?失礼ですよ?』
『えー?なんでー?いいじゃん担当くんでー?どうせ名前なんて覚えてらんないんだしー』
『ぐ!』
『アッハッハッハッハッハ!それもそうだな!じゃあこいつの事は「おい」とか「お前」とか適当に呼んでくれ。なんだったらさっきの「担当くん」でも可だ。どうせ浅い付き合いだ。お互い近すぎない方がいいだろう。な、担当くん?』
『あんたが勝手に決めないで下さいよリーダー』
『んじゃなんて呼ばれたい?トレーナーか?旅人か?それとも指揮官?あるいはプロデューサーとでも呼ばせたいのか?』
『なんの話してんですか……なんでもいいですよ……なんか馬鹿馬鹿しくなってきましたし』
『との事だ。という訳で、短い付き合いになるかもしれんがよろしく頼む』
『ええ、よろしくお願いします。担当さん』
『……どうも』
ファーストコンタクトは……成功とは言い難い。あの時点ではだいぶ警戒されてたしな。
『いやー!上手くいったな!ファーストコンタクトは上出来といったところじゃないか?』
『何処がですか?思いっきり突き放されましたよ』
『うん?担当さんと呼んでくれただろう?早速愛称で呼ばれるとは、トリニティ総合学園と我が組織の未来は明るいな!』
『愛称じゃなくて蔑称ですよ。聖園さんに注意してた蔑称をあえて使って自分達はお前らを警戒しているってアピールしてましたから』
『ほー』
『それに、他の二人も警戒心丸出しですよ。一人は最初から僕に自己紹介させる気なかったし、もう一人は名前だけ言ったら黙って傍観だし……これの何処が明るいって言うんですか?』
『いや明るいだろ。お前がそれに気付いたんだから』
『へ?』
あの時のリーダーの楽観思考にも呆れたものだったな。
『俺じゃあんな裏を読む事はできん。そもそも読む事自体面倒臭いから諦めているからな。その辺お前はしっかり相手の意図に気づき読み切っている!それならどうこうなるはずだ!』
『そうは言っても、俺一人じゃどうにも……』
『なーに心配するな!いざという時は俺らを呼べ!お前のピンチは裏を返せば世界のピンチ!どんな逆境だろうと諦めんさ!』
『……なんでそんな楽観的なんですか?一応世界の危機なんですよね?
『だからこそお前をここに配属させた。切れ者の多いこの学園において、
『…………失敗しても文句は言わないでくださいよ?』
『安心しろ。失敗して文句を言われる暇は、この世界にないさ』
あの時のリーダーの姿は、呆れるほどに頼りになるものだった。
「よう。生きてるか担当くん」
「なんとか生きてますけど、この状況で生きてるって言えますかね?」
「安心しろ。俺もつい先程まで似たような状況だったが今も生きている。つまりお前もまだ生きている」
「そうですか……」
そんな頼りない会話を、こうして鉄格子の扉越しにするとは思わなかったけど。
「ん。リーダーさん早くして。そろそろここの生徒に気づかれる」
「それもそうだな。よーし、祈ってろ担当くん!!これまで積んできた徳の準備はまだあるか!」
「普通こう言う状況の時は下がってろって言うべきじゃないですか?!なんで祈り前提!?」
「どうせここの生徒のことだ!指一本動かせんだろ!!だったら確認する前にこの扉を吹き飛ばす!安心しろ!多分お前なら無事になるさ!!」
「扉吹き飛ばす以外の手段は?」
「思いついたらやってたさ!!」
俺の祈りは届かなかった。
僕が無事だったのは絶対にリーダーのおかげじゃない。僕の祈りが通じたからだ。
「さーてと、ようやく仲間が増えてパーティに活気が出てきた訳だが……ここからどうするかねー」
「やっぱり何も考えてなかったんですね……」
「当たり前だろ?その辺の頭脳労働はお前や
ハンドルを握りながらあっけらかんとそう宣うウチのリーダーに毎度のことながら頭が痛くなってくる。
「て言うか今更ですけど、ほかのメンバーはどうしたんですか?なんで僕だけ?」
「まずは作戦を立てるところから形勢を立て直す。戦力も必要だが、先ずは作戦立案の為の脳みそが無いことには始まらん」
「それで僕ですか……」
「それ以上理由が必要か?」
「……いらないですね」
僕とリーダーさんは逃走の為の車に乗りながらそんな話をしていた。オフロードも余裕で進めるゴツい車だ。車種はよく分からない。と言うかこんな車
「…………ちょっと気になる点があるんで聞いていいですか?」
「この車のことか?まぁ確かにウチにこんな車無かったからな。だが残念ながらこれは俺達の車ではない!
「そうですか……じゃあ車に関してはそれでいいです。それよりも……」
俺が気にしていたのはそんな所じゃない。この人がいつも突拍子もない無茶をするのはいつもの事だ。アリウス助ける為とは言え、ベアトリーチェ相手に秤さん人質にとった時は流石に引いたけどね。
閑話休題
「リーダーって免許持ってましたっけ?」
「ある訳ないだろ」
「…………ですよねー」
《そこのアビドスの車止まりなさーい!さっきから何kmスピードオーバーしてると思ってるの!!これ以上このトリニティで罪を重ねる暴挙は許されません!!大人しく止まりなさーい!!!》
《ダメです隊長!さっきからタイヤを撃ってますけど、弾が弾かれてます!》
《うわーこっち来た!…………第二関門突破されましたー!》
「………………」
さっきから無言で吐くのを我慢しているシロコテラーさんを横目に、先程からぐるぐると目まぐるしく変わる景色を見ながら僕は黄昏ていた。
アクセルベタ踏みでハンドル捌きもメチャクチャな運転で嫌な予感というか予想はしていた。普段運転はほかのメンバーがやってリーダーは基本的に助手席にいたから運転する場面を見た事はなかったが、実際無免でこのような運転をされるとたまったものではない。
「リ、リーダーさん……気持ち悪い……」
「おおシロコ姉、もう少し耐えて……くれ。あと少しでこのエリアは突破出来そうなんだ、今の場所は確かあのエリア付近だからこの先を右折か……しかし流石は小鳥遊達が選んだ車だな。見ろ、フロントガラスを撃たれたのにヒビひとつないぞ」
絶対改造してる。とは言えなかった。と言うか今の状況ではそんな事を詰めても無駄なので、別の事を考えないと脳のリソースが無駄になってしまう。早くこの地獄から抜け出す方法を……。
「そ、そうだリーダー!今度はミレニアムにぃ……行こう!あそこで装備をぉおお……整えてついでに『助手』さ……んと合流しよう!」
「ふーむミレニアムか……あっちもキレものが多いから戦力を整えて……曲がるぞー。から、せめて『組長』か『監督』のどちらか一方だけでも合流してから向かいたかったんだが……危ない!……確かに
「よかっ……たぁああああ!!」
「んんんんんんんん!!!!」
方向性が定ったからか、リーダーはさらに一段スピードを上げてトリニティを走り廻る。
鳴り響くエンジン音。
飛び交う銃声。
止まらない悲鳴(敵味方問わず)。
トリニティは更にカオスを増していった。
「全く、やはり無駄に広いなこの学園は。ようやく出口だ」
「やけを起こして壁に突っ込もうとしたときはさすがに焦りましたよ」
「仕方ないだろ。カーナビが上手く機能してくれなかったんだ」
そりゃあんなスピードで走ったらナビも出来んわ。と言う気力はもう残っていない。これからミレニアムまでこの運転に付き合わされるのだ。体力気力共に残しておかないと、いつくたばるか分かったものじゃない。でも、トリニティから出ると思うと少しみんなに申し訳なさが残る。
『全く、担当さんも罪な人ですね。こんな事態を起こしてしまうとは』
『ねーねー、ナギちゃん?今回は私が捕まえたんだから最初は私だよね?』
『そもそも逃げた後の場所を予知したのは誰だったかな?そこを忘れずにね』
『二人とも落ち着いてください。はやる気持ちは分かりますが、一度冷静に。先ずは正実とシスターフッド、それと救護騎士団の方々も呼び掛けてください。今回の件は内密に済ませるには規模が大きすぎます。抜け駆けは大きすぎる軋轢を生みますし、ここは一度馬を収める方が先決です』
『それもそうだね。担当さん、しばらく待っていてくれよ。すぐ終わらせる』
『絶対に逃げちゃダメだよー♪逃げたらどうなるか……あたしにも分かんない』
うん。そこまで申し訳なさが浮かばない。話の徹頭徹尾意味が分からないし最後の彼女のハイライトのない目が怖すぎた。あれは部屋の照明が暗かった所為だと信じたい。
「さーてミレニアム向か」
「んお?」「え?」「んん……」
グロッキーなシロコテラーさんを除き、僕とリーダーは声の方を見上げる。上の方から聞こえたのほほんとしているが何処か響くその声を僕は何度も聞いた事があるし、ついさっき思い出していた所だ。
「あ!パンツ見えるパンツ見えるパンツ見える!!!」
リーダーはなんか横で碌でもない事言ってたけどどうでもいい。
見上げた先には太陽をバックに人影が落ちて来ていた。その着地点は。
「あああ!!!フロントがーー!!」
「あー、リーダーさんも一緒だー。もー逃げちゃダメだよー?あたし言ったよねー?」
僕たちの車のフロント。特撮ヒーローよろしく華麗な着地を決めた彼女は朗らかな笑みを僕に向けた。
「どうなるか……あたしにも分からないって」
その笑みに僕は笑顔で返すことはできなかった。
久々の更新
覚えてる人いるのかな?
この作品を放置している間にもブルアカは進化を続けていると言うのに……情けない作者を許さないで下さい