「おーおー聖園、久しぶりの出会いだと言うのに随分と心臓に悪い登場の仕方だなぁ。その登場が許されるのは特撮ヒーローだけだぞ?◯映スタジオに許可はとったか?」
「相変わらず変なことしか言わないねリーダーさん?と言うか、今トリニティで騒動になってた2件ってリーダーさんが犯人だったんだねー♪まぁ予想はついてたけど」
フロントガラス越しにリーダーと聖園ミカは軽口を交わす。一見してみれば和やかな景色だが、周りがそうはさせてくれない。
「しかし随分と粘るな。法定速度はとっくの昔に超えているはずなんだが?足にドリルでもついてるのか?」
「女の子にそんなこと聞かない方がいいよー?繊細な生き物なんだから」
「繊細というなら、その大樹のようにフロントに伸びた足を離して、早く振り落とされろ。後ろのシロコ姉を見習え、ちゃんとグロッキーになって吐くのを必死に我慢してるんだぞ。繊細というのはああいう姿を見せる事を言うのだ」
「リーダー煽らないで……」
一向に減らず口をやめないリーダーに、担当は段々嫌気がさしてきた。タダでさえ現在進行形で体力の消耗が激しいのに、今気力まで消耗されたら脱出した意味がまるで無い。このままでは彼女に連れ戻されて余計に状況を悪化させるだけである。
「なーに安心しろ。あいつの銃は威力がとんでも無いからな。この状況では下手に撃てんさ」
「じゃあ撃てるようにするね」
「「え?」」
彼女のなんて事ない一言にリーダーと担当が素っ頓狂な声をあげたその直後だった。
「どーん!」
彼女は躊躇いなく銃を放った。
「「おああああああああ!!!?」」
それと同時に爆音と閃光が二人を襲う。
二人は盛大に吹っ飛ぶ。
「リーダーさん!担当さん!」
「ナイスだシロコ姉!」
「あっぶな!」
すかさずシロコテラーがドローンを飛ばす。それに気付いた二人はすかさず手を伸ばし爆風の勢いを殺してゆっくりと着地した。
「ふー、間一髪というやつだな。まさかフロントぶち抜いて
「絶対にリーダーの影響多少なりとも受けてますよ……」
「強みがより大きくなったという事だな。いいことではないか」
「二人とも、前」
「「ん??」」
着地後に身だしなみを整えながら軽口を言い合う二人に、シロコテラーは近寄りながら前を見るよう促す。二人の視線の先にはスクラップと化したオフロード車が燃えており、それをバックにその爆発の元凶が立っていた。
「ただの聖園ミカが立っているだけではないか驚かすな」
「それが大問題では?」
「こんなの
「いや何言って……え?なんで引っ張るんですかちょっと?」
「あ。リーダーさん、担当さん……」
悠々自適にリーダーは足を進める疑いなく迷いなく足は聖園の方へと進んでいき、やがて止まる。そこには無理矢理引っ張られて同行させられた担当もいる。
「おい聖園!!」
「なにかなリーダーさん?さっさとその担当さんこっちに引き渡せいてくれれば、担当さんを逃した件は見逃してあげる」
「そうは行かんな。これからの逃避行にこいつは不可欠でな。いてもらわんと困る」
「じゃあ撃つね」
「ステイステイステイ、話を聞け。お前も一緒に逃避行に来てほしい。聖園ミカ」
「は?」
「ふーん……」
唖然とする担当をよそに、二人は向かい合う。
突然の提案に聖園は特に驚く事なく張り付いた様な笑顔を向けていた。暗に話を進めろと急かしていることは明白だ。
「どうしてそんな提案をするのかな?トリニティ側のあたしにそんな事する義理はないんだけどなー?」
「うむ、先ほど桐藤からこんな連絡をもらってな」
「え?桐藤さんから?」
「……やっぱり」
『こんにちわリーダーさん。先ほど正義実現委員会とシスターフッドから実働部隊が出ました。私がそれとなく穴のある陣形を指揮しますのでそこから担当さんと共に抜けてください。その代わり、後日穴埋めは期待していますよ?』
「こんな文面が飛んできてな。いやはや穴がわかりづらい事この上ないから焦った焦った」
「……ふーん、ナギちゃんあの時は場を納めるのが先決だなんて言ってた癖にちゃっかり抜け駆けしようとしてたんだー……まぁなんとなく予想はついてたけど」
聖園からどことなく黒いオーラが浮かび出る気配がした。背景は特に変わっていないはずなのになんか少し照明が暗くなった気がする。サスペンス映画なら黒幕との対峙というクライマックスシーンくらいピリ付いていただろう。
「やっぱりここかい。急に飛び出して行ったからどうしたものかと思えば、こんな所まで逃げ仰せていたとは。相変わらず君は予想を遥かに上回るね」
「おっと、時間を食い過ぎたか。お前らそんなに暇か?予言はまだ続いてんのか百合園?」
すると聖園の反対方面からゾロゾロと多数の精鋭を引き連れて、セクシーなフォクシーがリーダーと担当の背後に立つ。
「リーダー様、今回の一件は流石に擁護できません。早く担当様をこちらに引き渡してください」
「まぁそう悲観的な顔をするな歌住。確かに法定速度を超えたスピードで校内をぶっちぎったのは申し訳ないと思ってる。だがあれは仕方がない事だったのだ」
「リーダー多分彼女が言ってるのそこじゃない……」
「ああ担当様!やはりそこにいらっしゃいましたか!ナギサ様から誘拐されたと聞き及んだ際はどうなっているか心配でしたが、やっと会えました」
「同僚とドライブに出掛けただけなんだから心配する事ないだろ?」
「苦手意識が強い同僚っているでしょ」
「なるほど納得だ」
シスターフッドの長が悲壮感漂う表情を浮かべながら逃走者3名に歩み寄る。しかしリーダーは意にも介さず普段の態度を取り続け、担当は冷や汗を感じるばかりだ。
「なーにちょっと外出届の提出が遅れただけだ。男子はそれくらいヤンチャな方がいいんだよ。母さんは心配しすぎだ。少しは自分の息子を信じたらどうなんだ?担当くんはいい子だ。家出と称して夜遅くに出て行っても律儀に夕飯の時間になったら帰ってくるヤンキーになりきれない良い子なんだ」
「何の話?!」
「ねーねー、もういい加減縛り上げようよ〜。リーダーさんと話しても時間の無駄だって」
話が一向に前に進まない状況に痺れを切らしたのか、聖園が肩を左右に揺らしながら声を張る。気が緩む様な声色だが、その奥には微かな苛立ちが見えた。
「うん、それもそうだね。さてリーダーさん?大人しく捕まってくれるかい?これ以上無駄な話をするとなると……流石に容赦はできないよ?」
「慣れない事をするな百合園。それに無駄話では無いぞ?俺は無駄なことは極力避ける主義だからな」
「なら事ある事に面倒ごとに巻き込まれるのはやめてくれるかい?何なら自分から面倒事を引き起こす時もあるじゃないか?なんだいキヴォトス統一腕相撲大会って?無駄の極みじゃないか。あんな予知夢を見せられたこちら側のみにもなってくれ」
「あれは無駄なんかじゃない。女には接種する事ができない男限定の栄養素を空気中から接種するために必要な行いだ。それになんだかんだみんなも楽しんだだろ?特に聖園ミカvs栗浜アケミのエクストラマッチは歴史に名を刻む激闘だったし、第二回も決まったじゃん」
「はいはい、その話はまた今度ねー?それじゃ最後に何か言い残すことある?」
リーダーが百合園との温度差のある会話をしていると、後頭部にガツンと硬いものが突きつけられる。それはいつのまにか背後に歩み寄っていた聖園が持っていた銃の銃口であり、それに気付いたのかリーダーの口が止まる。
「……ふーむ流石だな聖園ミカ。仮にもシロコ姉がドローン飛ばしていると言うのにここまで一瞬で近づいてくるとは……トリニティ最強は伊達ではないな」
「それが最後の言葉?」
「いいや違う。言いたいことはこの後だ」
「じゃあさっさと言って?意外かも知れないけどあたし気分屋なんだー」
「そうか。ならさっさと一言…………
紫はお前のイメージに合わないからやめといた方がいいぞ?派手な色合いよりもピンクとか淡い色の方がお前には似合うと思う」
「…………………………は?」
「よし今だシロコ姉!稼いだ時間分の働きはしろよ!」
「ん!サイテー!」
「え?ちょ!リーダーなん」
「いいか担当くん!結局最後は爆発オチが手っ取り早いのだよ!」
そう高らかに宣言するリーダーの雄叫びと共に、
トリニティが爆ぜた。
間を開けた割には酷い完成度……まあ勢いで描いてるのでこうなるのは当たり前か……
爆発落ちなんてサイテー