スーパーモモイストレート!!   作:空にかかる野正レイ、野正レインボー

5 / 8
■ 一般人の認識

シロコ:銀行と戦う人
ホシノ:おじさん。水着がかわいい
ノノミ:アイドル
アヤネ:知らん
セリカ:アビドス高等学校1年生対策委員会の会計担当。誕生日は6月25日。趣味はアルバイトと貯金。
小言が多く、自分の感情を表すことに躊躇しないタイプ。
日々口癖のように「こんな学校なんか、潰れちゃえばいいのに!」と言ってしまうが、実は学校の借金を返すために他のみんなに隠れてバイトをしているほど、学校に対する愛情が深い子である。


5球目 初戦

 

「今日は休みで良いって言ったのに。明日は試合なんだろう?」

 

 アビドス高等学校から徒歩でそこそこ。砂漠化の進む中、砂の上にドシンと、芳醇な香りを共にして聳え立つ店が一店。名をば、"柴関ラーメン"。

 砂砂と権力の侵攻は留まることを知らず、混迷を極めるアビドスにおいて、どんな厳しい現実にも膝を付くことなく抗う漢が一匹。ラーメンを愛し、隣人を愛し、人情を重んじる大人の中の大人。ラーメンの境地に手を伸ばさんとする飽くなき向上心と、学生の懐に優しいお値段が人気の秘訣。

 店内厨房で機敏な動きを見せる彼こそが、柴関ラーメンの主。柴大将その方である。 

 

「そういうわけにはいかないわよ。シフト入れたのは他ならぬ私自身なんだし。それに、この程度の疲労を持ち越す様なやわな体作りしてないわよ」

 

 机の上を拭きながらセリカは答えた。

 手慣れた様子で掃除を行うセリカには、三角巾とエプロン姿がよく似合っていた。

 

「"休む"ってのは、何も肉体だけのことじゃあないんだぜ」

「でも来ちゃったもんはしょうがないでしょ。今から帰りますってできないわよ」

「今日だけはお客さんが来ないことを祈るとするかね」

「いやダメでしょ大将」

 

 ただでさえ人が来ないんだから。セリカがそう二の句を告げようとした矢先に、店のドアが開いた。グレイのパーカーのフードを目一杯に深く被った人物が入店した。一瞬でセリカの顔に笑顔が貼り付く。お手本のような営業スマイルだ。

 

「いらっしゃいませ!」

「へェ~、お前がアビドスのサードかァ」

「!」

 

 挑発的な言葉に営業スマイルが剥がれる。

 

「借金のある学校はたァいへんだねェ……無能な先輩がいてごォくろォなこった」

「何よ。言いたいことがあるならハッキリと言いなさいよ!」

「別にないけど」

 

 フードの中から笑い声が聞こえる。

 

「……は?」

 

 パーカーの人物は肩をすくめた。

 

「だってェ、人数も足りずにガリ勉ミレニアムの文化部に助っ人を頼むような学校だろォ? そんなところに負けるわけがないじャんよォ」

 

「言ってくれるわね……!」

 

「それに、お・ま・え」

 

 セリカに向かって指を差された。

 鼻の先に指を突き付けられたセリカは不快感を覚えた。

 

「知ってるぜェ。第一中の"ノーコン"黒見」

 

「それは……ッ!」

 

 このパーカーを着た人物はどうやらセリカの中学時代のことを知っているようだった。

 セリカにとってはあまり触れられたくない過去のことを。

 

「傑作だったぜェ。お前がマウンドを降りる姿はよォ……」

 

「…………!」

 

 身体が強張る。

 少しでも気を緩めれば、あの時のトラウマが蘇りそうだった。

 

「もうピッチャーはやめたんだろォ? 懸命な判断だなァ……次は何だ? "逃げ腰"の黒見とでも呼べば良いかァ?」

 

「過去は、関係ないでしょ」

 

「でもマウンドにゃ立たないんだろォ」

 

「ッ! それは……」

 

 今は違う。

 昔のことは関係ない。

 何も臆することはないはずなのに。

 何も悪いことではないはずなのに。

 なぜかセリカは"ピッチャーを辞めた"現状を肯定する言葉が言えなかった。

 

 


 

 

『1回の表、ミレニアム・アビドス連合チームの攻撃は、1番、ショート、砂狼さん。ショート、砂狼さん』

 

 初回の攻撃。先頭バッターのシロコが打席に入った。

 しかし、試合特有の高揚感と裏腹にセリカの表情は暗い。

 

「ん!」

 

「ヒットだ!」

 

 初球打ち。ショートの頭を越えた打球は左中間を割る二塁打になった。

 ノーアウト二塁。スコアリングポジション(得点圏)走者(ランナー)を置いて、ノノミに打順が回る。

 

「相手の選手にも1年生はいるんだね」

「へー、私達とおんなじだね」

 

 スターティングメンバーが書かれた紙を見ながら、ミドリが呟いた。相手チームにも1年生がいるというのなら、より一層負けたくはない。

 

『アウト!』

 

 ノノミはライトへフェンス寸前の大きなフライ。その間に、二塁ランナーのシロコは三塁に進塁した。

 

「えーと、確か今のが……」

「"タッチアップ"だね」

 

 飛球(フライ)をノーバウンドで捕球すると、バッターランナーはアウトになる。

 そして、フライが上がっている間にランナーが進塁することはできない。ランナーは、フライが捕球されるまではベースに触れていないといけないのだ。もしフライが捕球されたタイミングでベースに触れていなかった場合、そこのベースに送球がされればランナーもアウトになってしまう。

 

「例えば先程の状況だと、フライが上がっている間にシロコ先輩が二塁から三塁に行くことはできません。

 捕球されるまでは二塁にいないといけないんです」

 

「えーっと、送球されたらアウトになるってのは……?」

 

「いわゆる踏んだら(フォース)アウトなんですけど……うーんと。

 走塁してるときに、ベースを通り過ぎちゃったらダメなのはわかりますよね?

 それと同じ感じ……ではないんですけど、同じ感じに捉えてもらっても良いかと」

 

「うわぁ……何だかこんがらがって来たよ……」

 

「まぁ、難しいですよね。この辺のルール」

 

 フライが打ち上がっている最中もランナーが先の塁に進めるなら、とりあえず高いフライを打つだけのゲームになってしまうからだ。

 

「じゃあ今シロコが進んだのは……」

「フライが捕球された後に動いたから」

 

 フライが捕球されるまでに進むのは、ゲームのルールが崩壊してしまう。だが、捕球された後なら問題はない。

 これを利用して、守備側がフライを取った後にランナーが進むことを"タッチアップ"と言う。

 

『フォアボール!』

 

「わっ、お姉ちゃんもうすぐだよ!」 

 

 3番のアリス、4番のホシノに連続で四球が出た。

 ワンアウト満塁。打順は5番のセリカ。モモイは6番打者なので、ネクストバッターサークルに行かなければならない。

 

『ストライク!』

 

 初球はど真ん中のストレートを見逃し。

 いつも初球からブンブン振っていくセリカらしくないプレイだ。

 

「!」

 

『ストライクツー!』

 

 外角の直球。高めに甘く入ったが、ここは空振り。

 ノノミがベンチでうんうんと頷いている。

 

「ストレートは110キロ前後って感じですね~♧」

「それは速いの?」

「中の下ぐらいですね」

「ふーん」

 

 コツン。

 バットの先っぽに当たっただけの打球はピッチャーのグローブに収まった。

 

「ホーム!」

 

「ひとつ!」

 

 本塁、一塁に続けて送球がなされた。

 

『アウト!』

 

 1-2-3のホームゲッツーだ。これでスリーアウトとなり、攻守交代(チェンジ)。初回、ミレニアム・アビドス連合チームは大きなチャンスを作りながらも無得点に終わった。

 

「っ! ごめん……」

「切り替えていきましょう☆」

「よ~し、0点に抑えてこ~!」

「おー!」

 

『守りますミレニアム・アビドス連合チームの守備を紹介します』

 

 マウンドを軽く足で(なら)して、投球練習に入った。練習試合とはまた違った緊張を感じる。当たり前だが、公式戦の空気は公式戦でしか経験することはできない。モモイにとっては未知の世界だ。

 

「残り1球!」

 

 でも、不思議と怖くはなかった。

 投球練習を終える頃には、もう周囲の音は全てシャットアウトされていた。モモイの眼には、捕手(ユズ)しか見えていない。

 

『プレイ!』

 

 1番打者がバットを構えた。左足の踵を浮かせてタイミングを測っている。

 

「(さっきの素振りの感じからしてアッパー気味の大振りかな)」

 

 軽く思考を終えたユズが合図(サイン)を出す。モモイが頷いて腕を振りかぶって(ワインドアップ)から投球フォームに入った。

 二人の間でサインはひとつ。

 

───スパン!

 

 全力で投げる。

 それだけだ。

 

『ストライク!』

 

「……え」

 

 打者の目が大きく見開かれる。

 

『ストライクツー!』

 

「なっ……!?」

 

『ストライクスリー! バッターアウト!』

 

「はっや!」

 

 大会4日目。元より観客の少ないアビドス杯。その中でも今日は群を抜いて観客数は少ない。しかし、その数少ない観客のざわめきは、グラウンドまでしっかりと届いていた。

 三球三振。

 完璧な立ち上がりだ。

 

「モモイ、ナイスピッチ!」

 

「ワンアウト~」

 

「ワンアウトー!」

 

 雑音は聞こえない。

 まるで静寂の中にいるように感じられる世界。

 今のモモイに聞こえるのは、バックの頼もしい声だけだ。

 

「ふしっ!」

 

『ストライクスリー!』

 

「うりゃ!」

 

『バッターアウト!』

 

 三者連続の三振。

 静まり返る相手側ベンチとは対照的に、観客席にはどよめきが溢れていた。

 

「な、何だあの1年! こんな奴いるなんて聞いてないぞ!」

「おいおいおい~! 更に進化してるじゃねぇか~!」

「ンすばールァしぃー……なンといぅーピッチィンヌグ……ンパーフェクトゥー……!」

「へっ、こんなヘロヘロストレートも打てねぇ打線なんて見る価値もねぇぜ!」

 

 完璧なピッチングを見せたモモイは、ミドリやアリスと拳を合わせながらベンチに戻った。

 

 


 

 

『二回の表。ミレニアム・アビドス連合チームの攻撃は、6番、ピッチャー、才羽モモイさん。ピッチャー、才羽モモイさん』

 

 2回の表の攻撃は、モモイからの打順だ。

 

「打てるかな……」

 

 大会が始まるまでのゲーム開発部には各人に個別の練習メニューが課されていた。

 ミドリは基礎体力の向上。

 ユズはキャッチャーの訓練。

 アリスはバッティングは申し分無しなので守備練習。

 そして、モモイはピッチャーのルールの勉強に全てのリソースを割かれていた。当然、打撃練習なんて全くしていない。

 

「いくら才能があっても、基礎練習の差は出ますからね☆」

 

 とはノノミの言葉だ。

 

「(ミレニアムのピッチャーの球は"遅い"って話だったけど……)」

 

 モモイはこの前の練習試合で対戦した、ミレニアムの投手の球を思い返していた。

 あの球速は一般的な投手のストレートに比べると遅い。モモイからすればあれでも十分に体感速度としては豪速球だったのに、だ。ということは今回はもっと速い球が来るのだろう。

 しかし、打者にいつまでもウダウダと思考を重ねている時間はない。

 投手が腕を振り上げた。

 

「ふんっ!」

 

『ストライク!』

 

 初球はインコースのストレートに空振り。

 頭では速いボールが来ると分かっていたが、振り遅れてしまった。

 

「(次はもっと早いタイミングで───)」

 

 が、投手の指を離れたボールは先程よりも()()()()軌道を描いて向かって来た。これでは逆にタイミングが早すぎる。

 体制を崩されながらも何とか当てに行く。

 

「───ひくっ、め!」

 

『ストライクツー!』

  

 結果は空振り。

 モモイは打席を離れて、バットを構え直しながら軽く思考する。

 

「(あれが"変化球"……)」

 

 変化球。

 読んで字のごとく、変化する球のことだ。

 真っ直ぐ直線的な軌道を描くのがストレートなら、沈んだり、横に曲がったりする軌道を描くのが変化球だ。

 

「(確かアヤネによると今のが"カーブ"ってやつだよね)」

 

 カーブ。

 スライダーと並ぶ代表的な球種だ。

 

 強く振った腕から()()ように投げられる遅い球。山なりの緩やかな軌道を描き、利き腕と逆の方向に曲がりながら落ちる。例えば今回の場合、右利きの投手なので右打者のモモイからすると『自分から遠い方へ曲がりながら落ちる球』になる。

 

「(ストレートとのスピードの差が大きい……これじゃあ、タイミングが合わないよっ!?)」

 

 カーブの特徴は、"球速がストレートよりも遅い"ことだ。

 ストレートのタイミングではカーブは打てず、カーブの感覚でいるとストレートに振り遅れる。

 緩急はピッチングの基本だ。

 

「アリスからすると、そこまでカーソルが合わないものなのかと思ってしまいます……来たボールに合わせるだけの簡単なQTEです」

「アリスさんってナチュラルにこう……何というか凄いですよね」

「?」

 

 ベンチでモモイの空振りにアリスが首を捻った。アヤネが無自覚にスペックの高さを見せつけるアリスに苦笑する。

 しかし、今回ばかりはアリスの感覚の方がマジョリティだったようだ。シロコがアリスの言葉に同意する。

 

「ん、確かにあれはションベンカーブ」

「しょ、しょんべ……!?」

「ほとんど曲がってないカーブを"ションベンカーブ"って言ったりする」

「じゃあモモイのシナリオはションベンシナリオですね! 進捗がゼロなので」

「アリスちゃん!?」

 

 カウントはツーストライクノーボールの2ー0。投手有利のカウントだ。

 

「(このバッター……ノーデータだから一応警戒していたが、どうやらただの人数合わせのようだな。遊び球はいらない。三球で行くぞ!)」

 

「(えっと……ユズによるとこういうカウントの時はストライクゾーンの厳しいところとかボールになる変化球が来やすいんだったよね……)」

 

 マウンドの上の投手は軽く頷くと投球モーションに入った。

 投げられた球は。

 

「(! 内角(ちかく)のストレートっ!)」

 

 インサイドのストレート。

 緩いカーブの後に、内角の直球。

 

「(な、んっ、とか! 芯に当たれーっ!)」

 

 パキャッ。

 若干詰まった打球はショートの後ろへ。前進守備をしていたレフトがしっかり掴んだ。

 

『アウト!』

 

「くぅ~! ちょっと根っこの方だった!」

 

 ジンジンとする手をブラブラさせながらモモイは悔しがった。

 ベンチに帰ったモモイにノノミがグローブを差し出す。

 

「惜しかったですね☆」

 

 ノノミは続ける。

 

「内角のボールを打った時、左足を開いて(オープン)いましたよね。あれは意識して……?」

「うん。この前、ホシノがやってたから真似してみた」

 

 真ん中やアウトコースのボールを打つ時よりも、インコースのボールを打つ時の方がバットを早めに振らないといけない。そうでないと、バットの根っこの方で打ってしまうからだ。根っこの方で打った打球に勢いは無い。いわゆる"詰まった"というやつだ。

 しかし、左足を三塁側にズラして踏み出せば、より芯に近いポイントで捉えることができる。

 理論だけなら簡単だ。だが、実際に行えるかどうかは別の話。

 

「えっ、ダメだった?」

「いえそういうわけじゃないですよ~。単に気になっただけです」

 

 首を捻るモモイの肩をシロコが叩いた。

 

「ん、とりあえず次はピッチング。バッティングのことは打席に入ってから考えればいいから」

「オーケーっ」

 

 ミドリが三振。ユズがセカンドゴロに倒れてスリーアウト。

 モモイは気合い十分、グラウンドに向かった。

 

 


 

 

「ふしっ」

 

『ストライク!』

 

 モモイの放ったストレートはストライク。一球見逃した打者はバッターボックスの中で冷や汗をかいた。

 

「(何だ……球速以上に速ぇ……)」

 

 これは一巡目では打てないのもしょうがない。チームの四番を任されている自分だからこそ気付いた。

 軽くベンチに目をやる。ベンチに控える主将とアイコンタクトを取った。

 

「(しょうがねぇ。"例の作戦"でゆさぶってくか)」

 

 モモイが次の球を投げようとした瞬間、バッターがバットを寝かせた。

 

「バントっ!?」

 

 インコースのストレートにしっかりと当たった。打球は三塁側へ。モモイが慌てて三塁方向を振り向く。

 が、サードのセリカは前に来ていなかった。捕球した時にはバッターランナーはもう一塁の上。

 

「ごめんっ。今の私が捕るやつだったよね」

 

「いや……私が前に出るべきだったわ」

 

 付き合いの短いモモイにも分かるぐらいにセリカの態度はおかしかった。「何でもない」と言い残し、結局モモイと目を合わせずにセリカは守備位置に戻った。

 

「(何やってんのよ私……!)」

 

 集中していなかった。

 集中できていなかった。

 モモイはバント処理の練習はしていない。特に先程の打球は三塁側。バントの構えを見た瞬間に前に出る(チャージ)する必要があった。

 

「(先輩達と戦える最後の大会。こんな初戦(ところ)で絶対に負けてられない)」

 

 ぎゅっと握り拳に力を籠める。

 もうミスはしたくない。

 

「(()()()()()()絶対にミスしないんだから……!)」

 

 打者の一挙手一投足を凝視する。

 モモイが足を上げた瞬間にバッターがバントの構えを見せた。

 前のめり気味の体制から即座に前に走る。

 

「かかったな!」

 

「セリカ、バスター!!」 

 

 ショートからシロコが叫ぶも、もう遅い。

 バントの構えから一転。バントの構えを辞めて打ってきた(ヒッティング)。勢いに逆らわず流された打球は三塁線へ。

 かなり前に出てきていたセリカはボールを弾いてしまう。

 

一塁(ひとつ)!」

 

「!」

 

 しかし、幸運なことにボールは身体の前に落ちた。そのまま拾って投球動作(スローイング)に入る。

 

「……っ!」

 

『セーフ!』

 

 だが、送球はマウンドを越えた辺りでバウンド。勢いなく転がったボールを捕球するも間に合わずセーフ。

 サードのエラーだ。

 ノーアウトでランナーは1・2塁。ランナーが塁上でガッツポーズをした。

 

「ん、セリカ?」

 

 シロコが駆け寄った。

 

「大丈夫?」

 

 モモイでも見て取れる程に今のセリカの様子はおかしい。それをシロコが見抜けないわけがない。

 

「ちょっとぐらいミスしても負けるわけじゃない。落ち着い───」 

 

「わかってるわよ!!」

 

 シロコの言葉を遮るような形でセリカが叫んだ。 

 グラウンドが静まり返る。

 

「ぁ、っ……」

 

 セリカがハッと一瞬固まった。

 俯いたその表情は目深に被った帽子に隠れ、シロコの方からは窺えなかった。

 

「……ん、とりあえず終わってから」

 

「…………」

 

 悪い空気が流れるグラウンド。不安げな視線がダイヤモンド内を彷徨う。

 一方、攻撃側のベンチは降って沸いたチャンスに盛り上がっていた。

 

「まだ克服してないみたいだな……」

 

 ベンチにドカッと座った攻撃側の主将は呟いた。

 

()()()()()()()()()()()ってのはよぉ……!!」

 

 


 

 

「(何であんなこと言っちゃったんだろ)」

 

 セリカの脳内に渦巻くのは生産性のない後悔だった。

 何であんなことを口走ってしまったのか。

 わざわざ心配して声をかけてくれたシロコを突き放す様なことを。

 

「(これじゃあ何も成長してない……!)」

 

 6番打者がバットを回しながら吠えた。

 

「(私のせいで負ける、()()私のせいで……?)」

 

 モモイがセットからボールを投げた。それと同時にバッターはバントの構え。

 

「(そんなの認められるわけないッ!)」

 

 転がった打球は三塁方向。

 モモイが素早く捕球。視界の左から急に飛び出して来たかと錯覚する程の動きだ。

 

三塁(みっつ)です!」

 

 ノノミが叫んで投げる場所を伝えた。くるりと身体を回してモモイが三塁に送球。

 セリカはここで初めて三塁がフリーになってしまっていることに気が付いた。バントの構えを見て前に出てしまったせいで、三塁ベースに入れていない。

 

「! しまっ───」

  

 不運は連鎖する。

 モモイの送球が高めに逸れた。グローブの上を掠めて、ボールはファウルグラウンドへ。

 

「わ、わっ」

 

 レフトはミドリだ。

 ミドリは送球へのカバーに入っていなかった。急いでセリカが拾うもランナーは一人ホームに生還。

 

「もう一個進んでやる!」

 

 更に一塁ランナーがそのまま三塁を蹴って本塁へ走った。タイミングは完全にアウト。暴走だ。

 

「セリカ、バックホーム!」

 

 が、

 

「……っ!」

 

 がむしゃらに放り投げられた球は大きく逸れた。ユズが何とかキャッチするもタッチは間に合わない。

 一塁ランナーも返り2点を先制された。

 なおもノーアウト3塁。

 守備のタイムを取り、一旦集まった。

 

「……はっ、はっ、はぁっ」

 

「セリカちゃん、とりあえず落ち着いて」

 

「だい、じょうぶ……大丈夫だから……」

 

「全然大丈夫じゃないよ!」

 

 見かねたホシノが優しくセリカの頭に手を置いた。

 

「ひとまず外野いこっか」

 

 守備位置の交代を告げた。

 

『ミレニアム・アビドス連合チーム、シートの交代をお知らせします。

 ショートの砂狼さんがサード。

 センターの小鳥遊さんがショート。

 サードの黒見さんがセンター。

 1番、サード、砂狼さん。

 4番、ショート、小鳥遊さん。

 5番、センター、黒見さん。以上に代わります』

 

 その後、7番打者はバント失敗でのキャッチャーフライ。8番に四球を出すも、続く9番打者を6-4ー3のゲッツーで抑えて2回の裏の守備を終えた。

 

「次の攻撃はアヤネちゃんからだね~」

 

「はい、行ってきます」

 

 まだ2回だが、もう喉が渇いていた。ベンチでお茶を飲みながら空を見上げる。

 

「(そんなに暑いわけじゃないのに……)」

 

 空はまだ、灰色の雲が太陽を隠していた。

 




野正レイ実装!!!!!!(大声)

えー、何か更新サボってる間に公式から供給が来たので、とりあえずアプデ前に突貫工事で1話だけ書きました

多分、イベントによってキヴォトス野球について色々と明らかになると思うんですけど
(野正レイが右バッターな事とかね! 勝手に左打者だと思ってたよ!)
まぁ、その辺は取り入れたり、取り入れずに独自設定でゴリ押したり、ラジバンダリ……

うぉおおおおお!! 野正レイ!!!!!!!!!
レイ!!!!!!!!!

センバツも楽しいですね(正気)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。